※この作品はR-18です。

どことなく壊れていて、どことなく甘い生活   作:MC RAT

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第135話 囁き

「ん………」

 カーテンの隙間から差し込む陽の光で、私は目を覚ます。

 身体が軽くてどこかに飛んでいってしまいそうな感覚だった。けどそれと同時にすごく満たされているようでもある。

 私はゆっくりと目を開けていった。そこが自分の部屋である事を確認する。

「んん………あれ?」

 けど………何かすごい匂い。何とも言えない匂いが充満している。

 そこでようやく私は、自分と周りの詳しい状況を理解した。

 私は何も身につけず裸で寝ていて、隣には………私の大好きな竜胆君が今も気持ちよさそうに寝ている。

 私は竜胆君に抱きしめられるような形になっていて、手を繋いでいた。

「竜胆君………」

 彼の姿を目の前で見ただけで、私は目に熱いものが込み上げてするのを感じた。

 こんな光景、もう絶対無理だと思ってた。私から振って竜胆君と別れて、もう一生一人なんだと思っていた。

 それなのに彼は、それでも私と一緒にいようとしてくれた。今もこうして私の隣にいてくれる。

 昨日は色々あったな………

 竜胆君と別れた事を(くまり)に責められて、木偶さんに暴力を振るわれそうになって、竜胆君が助けてくれて、ちゃんと彼と付き合う事になって、それで最後は………

 本当に夢のような一日だったなぁ………でも。

 私は自分の左手を見た。その薬指には昨日まで身につけてなかったシルバーリングが輝いている。

「私、竜胆君に……プロポーズされたんだよなぁ………」

 昨日の指輪を差し出してくれた時のことが、頭に浮かんだ。

 しかもこれ、デザインがすごいシンプル。エンゲージリングというよりはマリッジリングみたい。

 たぶん竜胆君その辺りの知識が乏しかったのか、それとも何か意図があるのか。まぁその辺はどうでもいい。

 何かもう既に竜胆君と結婚したみたいで………

「私が、竜胆君と結婚………かぁ」

 そっと口に出すと、私は心の底から湧き上がってくる何かを感じた。

 ふと昨日竜胆君が言ってくれた事を思い出す。

『罔象………大好きだ!』

 あの恥ずかしがり屋な竜胆君が初めて『好き』って言ってくれた。それは私の顔をニヤけさせる。

「〜〜〜〜〜〜〜ッッッ‼︎‼︎えへへへへ♪」

 私は嬉しさのあまり、思わずベッドに顔を埋めて身体をよじらせる。

 ずっと夢見てた。彼とこれからもずっと一緒にいられたらって。

 それがこうして現実になったんだ。私、竜胆君の奥さんになれたんだ。それで竜胆君はわたしの旦那さんに………

 もちろん正式に結婚するのはもっと後、いやもしかしたらあるのはどうかも分からない。

 それは竜胆君が学生だから、という理由だけじゃない。

 最も大きな理由は、竜胆君の正体だろう。

 竜胆君は実は殺し屋だったのだ。それもおそらくそれなりに名の知れた。

 こんな子が殺し屋なんて………この目で見て本当だと分かっていても心で信じられない。

 裏社会に住む竜胆君が、そうでない私とちゃんと結婚出来るのか。それはたしかに怪しいところではある。

 でも、私としては竜胆君がどんな人であろうと構わないし、それによる危険も覚悟の上だ。

 それ以上に彼とこれからも一緒にいられるなら………まぁいいよね。

 私は竜胆君をジッと見た。年相応の、もしかしたらそれより歳下にすら見える。

 そんな子にプロポーズされて喜ぶ私はおかしいかな?………いや、私と竜胆君がいいならどうでもいいか。

 そう思って私はふと自分の身体を見下ろした。

「うわぁ………すごい」

 私の身体にはたくさんの赤い痕がついている。全部昨日竜胆君がつけてくれたものだ。

 それは首筋や胸だけに止まらず、手の甲にまでついている。

 毛布を少し捲ってみる。私の秘所にも真っ赤な痕がはっきりついている。つけられた時、狂いそうなほど気持ちよかった。

 竜胆君と身体を重ねると高確率でつけられるからか、もうそこまで驚かない自分がいる。

 それでもやっぱり改めて見ると恥ずかしいなぁ。昨日の事がどうしても思い出されてしまう。

 胸がすごい軽く感じる。昨日あれだけ母乳搾ってもらったからなぁ。竜胆君に食べられそうな勢いだった。

 いっぱいキスしてくれて、身体吸いついてくれて、私がヤラシいおねだりしたりして、その後はひたすら激しく………

「うにゃあぁ〜〜〜〜〜‼︎恥ずかしいよぉ〜〜〜〜〜‼︎」

 私は枕に顔を埋めて悶えた。いや、後悔はしてないんだけどさ。それにしたってちょっとやりすぎた気がした。

 特におねだりのところ!よくあんな事言えたなぁ。今なら絶対言えない気がする。

 というか頼む竜胆君も竜胆君だよね!まぁ、竜胆君なら別にいいんだけどさ………

 竜胆君も今までで一番激しく求めてくれた気がする。まだアソコがヒリヒリする。

 けど、全然悪い気はしない。それどころか昨日の子を思い出すと胸が熱くなって、お腹の辺りがキュンとなる。

 ダメだ………どんなに恥ずかしくても、それ以上に………

「んっ………すごい、気持ちよかったなぁ………」

 昨日の事がどうしても頭から離れない。そしてそれを思い出すたびに身体が熱くなる。

 ただ身体を重ねたからでは無い。お互いの関係が深まって、ちゃんと結ばれたから。

 これまでの関係で表せなかったものを、全部出し切れたからこそだ。

 私はそっと呟いて、竜胆君の方を見る。

 身体を重ねる時、私が早く起きる方が多いけど、こうやって竜胆君の寝顔を見るのが日課のようになっている。

 何というか落ち着くんだよなぁ。好きな人が側にいるって、こんなに嬉しい事なんだな。

 昨日身体を重ねながら、私達はお互いの過去について話した。

 これまで人に過去のことを話すのには抵抗があった。

 でも竜胆君ならいいかなって。これから一緒にいるなら知っておいて欲しい、という思いもあった。

 そして竜胆君もまた、自分の過去を話してくれた。

 正直言って私が受け入れられるような話じゃなかった。こんな人生を送る人っているんだなって思った。

 その事で私が竜胆君にしてあげられる事は、たぶん何も無い。竜胆君の過去は竜胆君が何とかしないと。

 だからせめて、彼の側にいられる人ではありたい。

 竜胆君がその手を汚す生き方を選ぶなら、私は彼の手を拭える人でいたい。

 隣で竜胆君を支え続けてあげたい。それが妻となった、家族である私の役目だと思う。

 竜胆君からしたら全然頼りないかもしれないけど、それでも彼の隣にいたい。

 だって私が心から愛した人だから。ずっと添い遂げたいと思えた、初めての人だから。

 たとえ犯罪者だろうと関係ない。彼の側にいたいという思いは強くなる一方だ。

 私はギュッと竜胆君を抱きしめた。それだけでも心が熱い想いで満たされる。

 竜胆君が目を瞑っているのを確認すると、口を彼の耳元に近づけた。

「竜胆君………私ね………」

 私は竜胆君の、未来の旦那さんの耳元で囁いた。

 どうしてもいつもは言いにくいから………こんな時くらいはね。いっぱい想いを伝えたい。

 

 

「君が側にいてくれて、毎日が変わったんだよ♡朝お弁当食べてくれてありがとう。いつも美味しかったって、ありがとうって言ってくれてすごい嬉しかったな♡次はどんなの作ろうかなって、楽しくなってたっけ」

 

 

 自分が誰かのお弁当を作る事になるなんて思いもしなかった。

 最初は迷惑かなとも思ったけど、竜胆君がいつも感想を聞かせてくれるのが楽しみだった。

 

 

「夜になったらいつもお店に来てくれてコーヒー飲んでくれて。私、ちゃんと君好みのコーヒー淹れられてるかな?いつも寝る前に色々試したりしてるんだ。一時間もしない短い時間なのに、私にとっては一日で一番楽しい時間だったよ♡」

 

 

 今にして思えば、殺し屋の仕事で忙しい時もあったはずなのに。それでも平日は毎日来てくれてた。

 お客さんとしての竜胆君じゃなくて、一人の大切な男性として淹れるコーヒー。どんなものが好みなのか、今でもずっと勉強中だ。

 そこで話す他愛無い話が、私は大好きだ。

 

 

「遊園地とか夏祭りとか、二人で色んな場所行けて楽しかったな♡大人になってデートなんて初めてで、ちょっと子供っぽい事もしちゃったっけ。これからは、もっとデートしたいな」

 

 

 いつもとは違う日々も、少なくはあったけどその分一つ一つが鮮明に思い出せる。

 どこへ行くかじゃない。竜胆君の隣で色んなものを見れるのが楽しかった。

 

 

「東風ちゃんや(くまり)と仲良くするのはいいけど、あんまりデレデレしないで欲しいな。友達が多いのはいい事だしめんどくさい性格かもしれないけど、君の一番近くにいれないと、また妬いちゃうよ♡それに私だってもっと君に甘えたいな。頭撫でてくれたりとかさ」

 

 

 たぶん竜胆君は二人の想いに気がついていない。だから問題なんだけどね。本当に、もったいない子だ。

 あの二人は私達が結婚するって言ったら、身を引くだろうか?………いや、するわけないか。あの二人はそんなにヤワじゃない。頑固に想いを最後まで貫くだろう。

 

 

「いつもは手を繋ぐのも恥ずかしがるのに、えっちな事する時は腰が抜けるくらい激しくて。母乳とか潮噴くの、すごい恥ずかしいんだからね。キスマークもこんなにつけて、いっぱいシてくれた。ピル飲んでても妊娠しちゃいそう♡けど………すっごく気持ちいいよ♡私、君のせいですごいえっちな人になっちゃった♡」

 

 

 えっちな事をする時、私の頭はいつも快感と愛情に染められる。いっぱい抱きしめてキスしてくれるからかな。

 回数は多くないけど、一回がすごい激しくて、頭から離れない。

 母乳体質なの昔は嫌だったけど、竜胆君のおかげで少しだけ好きになれた気がする。

 竜胆君とのえっちのせいか、自分でシても気持ちよくないし、ヤラシい夢を見る事も多くなってきたし、母乳搾る時中途半端に感じちゃうし。

 でも、だからこそ竜胆君とするのがすごい気持ちいい。

 

 

「いつもはマイペースだしちょっと怖いけど、誰かのためにどんな事でも一生懸命になれる。恥ずかしがり屋ですごい真面目で、自分の正しさのために何があっても前に進む事が出来る。そんな君が、私は尊敬していて、好き」

 

 

 こんな言葉では言い表せないほど、自分でも気がつかないほど竜胆君への想いは強くなっていく。

 本音を言えばもっと竜胆君の方からガツガツ来て欲しいけど、今は難しいかな。けど、そこが竜胆君のいいところだ。

 たとえ歪で壊れていても、彼の側にいたい。そうであれる人間でいたい。

 

 

「これからもコーヒー飲んだり、お出かけしたり、イチャイチャしたり、たまにえっちな事して、ずっと君の隣にいさせてね………大好きだよ、竜胆君………ううん…あなた♡」

 

 

 私は竜胆君の頬にチュッと唇を触れさせた。今度は普通に起きてる時に言えるようになりたいな。

 そんな事を思いながら、私は竜胆君が起きるまで待つ事にした。

 その時

 

 

「………こ、こちら、こそ」

 

 

「ッ⁉︎」

 竜胆君の声がした。

 ふと見ると耳の先まで真っ赤にした竜胆君が、僅かに目を開けてこちらを見ている。

「え?………な、何で?」

「そ、そりゃあ………あんな隣で大声出されたら、普通は起きますよ。ただ、目を開けるタイミングが無くて………」

 あ、しまった。今回は声のボリューム考えてなかった。

「…………って事は、もしかして………全部、聞いてた?」

 竜胆君は黙って頷いた。私の顔が一気に熱くなる。

「シャ、シャワー浴びてくる………」

 私はベッドを抜け出すと、そのまま浴室へと向かい入っていった。身体がかつてないほどに熱くなっている。

「うぅ………うにゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ‼︎‼︎」

 私の羞恥に悶えた声が浴室に響き渡った。




 最後まで読んでいただきありがとうございました。
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