「ん………」
カーテンの隙間から差し込む陽の光で、私は目を覚ます。
身体が軽くてどこかに飛んでいってしまいそうな感覚だった。けどそれと同時にすごく満たされているようでもある。
私はゆっくりと目を開けていった。そこが自分の部屋である事を確認する。
「んん………あれ?」
けど………何かすごい匂い。何とも言えない匂いが充満している。
そこでようやく私は、自分と周りの詳しい状況を理解した。
私は何も身につけず裸で寝ていて、隣には………私の大好きな竜胆君が今も気持ちよさそうに寝ている。
私は竜胆君に抱きしめられるような形になっていて、手を繋いでいた。
「竜胆君………」
彼の姿を目の前で見ただけで、私は目に熱いものが込み上げてするのを感じた。
こんな光景、もう絶対無理だと思ってた。私から振って竜胆君と別れて、もう一生一人なんだと思っていた。
それなのに彼は、それでも私と一緒にいようとしてくれた。今もこうして私の隣にいてくれる。
昨日は色々あったな………
竜胆君と別れた事を
本当に夢のような一日だったなぁ………でも。
私は自分の左手を見た。その薬指には昨日まで身につけてなかったシルバーリングが輝いている。
「私、竜胆君に……プロポーズされたんだよなぁ………」
昨日の指輪を差し出してくれた時のことが、頭に浮かんだ。
しかもこれ、デザインがすごいシンプル。エンゲージリングというよりはマリッジリングみたい。
たぶん竜胆君その辺りの知識が乏しかったのか、それとも何か意図があるのか。まぁその辺はどうでもいい。
何かもう既に竜胆君と結婚したみたいで………
「私が、竜胆君と結婚………かぁ」
そっと口に出すと、私は心の底から湧き上がってくる何かを感じた。
ふと昨日竜胆君が言ってくれた事を思い出す。
『罔象………大好きだ!』
あの恥ずかしがり屋な竜胆君が初めて『好き』って言ってくれた。それは私の顔をニヤけさせる。
「〜〜〜〜〜〜〜ッッッ‼︎‼︎えへへへへ♪」
私は嬉しさのあまり、思わずベッドに顔を埋めて身体をよじらせる。
ずっと夢見てた。彼とこれからもずっと一緒にいられたらって。
それがこうして現実になったんだ。私、竜胆君の奥さんになれたんだ。それで竜胆君はわたしの旦那さんに………
もちろん正式に結婚するのはもっと後、いやもしかしたらあるのはどうかも分からない。
それは竜胆君が学生だから、という理由だけじゃない。
最も大きな理由は、竜胆君の正体だろう。
竜胆君は実は殺し屋だったのだ。それもおそらくそれなりに名の知れた。
こんな子が殺し屋なんて………この目で見て本当だと分かっていても心で信じられない。
裏社会に住む竜胆君が、そうでない私とちゃんと結婚出来るのか。それはたしかに怪しいところではある。
でも、私としては竜胆君がどんな人であろうと構わないし、それによる危険も覚悟の上だ。
それ以上に彼とこれからも一緒にいられるなら………まぁいいよね。
私は竜胆君をジッと見た。年相応の、もしかしたらそれより歳下にすら見える。
そんな子にプロポーズされて喜ぶ私はおかしいかな?………いや、私と竜胆君がいいならどうでもいいか。
そう思って私はふと自分の身体を見下ろした。
「うわぁ………すごい」
私の身体にはたくさんの赤い痕がついている。全部昨日竜胆君がつけてくれたものだ。
それは首筋や胸だけに止まらず、手の甲にまでついている。
毛布を少し捲ってみる。私の秘所にも真っ赤な痕がはっきりついている。つけられた時、狂いそうなほど気持ちよかった。
竜胆君と身体を重ねると高確率でつけられるからか、もうそこまで驚かない自分がいる。
それでもやっぱり改めて見ると恥ずかしいなぁ。昨日の事がどうしても思い出されてしまう。
胸がすごい軽く感じる。昨日あれだけ母乳搾ってもらったからなぁ。竜胆君に食べられそうな勢いだった。
いっぱいキスしてくれて、身体吸いついてくれて、私がヤラシいおねだりしたりして、その後はひたすら激しく………
「うにゃあぁ〜〜〜〜〜‼︎恥ずかしいよぉ〜〜〜〜〜‼︎」
私は枕に顔を埋めて悶えた。いや、後悔はしてないんだけどさ。それにしたってちょっとやりすぎた気がした。
特におねだりのところ!よくあんな事言えたなぁ。今なら絶対言えない気がする。
というか頼む竜胆君も竜胆君だよね!まぁ、竜胆君なら別にいいんだけどさ………
竜胆君も今までで一番激しく求めてくれた気がする。まだアソコがヒリヒリする。
けど、全然悪い気はしない。それどころか昨日の子を思い出すと胸が熱くなって、お腹の辺りがキュンとなる。
ダメだ………どんなに恥ずかしくても、それ以上に………
「んっ………すごい、気持ちよかったなぁ………」
昨日の事がどうしても頭から離れない。そしてそれを思い出すたびに身体が熱くなる。
ただ身体を重ねたからでは無い。お互いの関係が深まって、ちゃんと結ばれたから。
これまでの関係で表せなかったものを、全部出し切れたからこそだ。
私はそっと呟いて、竜胆君の方を見る。
身体を重ねる時、私が早く起きる方が多いけど、こうやって竜胆君の寝顔を見るのが日課のようになっている。
何というか落ち着くんだよなぁ。好きな人が側にいるって、こんなに嬉しい事なんだな。
昨日身体を重ねながら、私達はお互いの過去について話した。
これまで人に過去のことを話すのには抵抗があった。
でも竜胆君ならいいかなって。これから一緒にいるなら知っておいて欲しい、という思いもあった。
そして竜胆君もまた、自分の過去を話してくれた。
正直言って私が受け入れられるような話じゃなかった。こんな人生を送る人っているんだなって思った。
その事で私が竜胆君にしてあげられる事は、たぶん何も無い。竜胆君の過去は竜胆君が何とかしないと。
だからせめて、彼の側にいられる人ではありたい。
竜胆君がその手を汚す生き方を選ぶなら、私は彼の手を拭える人でいたい。
隣で竜胆君を支え続けてあげたい。それが妻となった、家族である私の役目だと思う。
竜胆君からしたら全然頼りないかもしれないけど、それでも彼の隣にいたい。
だって私が心から愛した人だから。ずっと添い遂げたいと思えた、初めての人だから。
たとえ犯罪者だろうと関係ない。彼の側にいたいという思いは強くなる一方だ。
私はギュッと竜胆君を抱きしめた。それだけでも心が熱い想いで満たされる。
竜胆君が目を瞑っているのを確認すると、口を彼の耳元に近づけた。
「竜胆君………私ね………」
私は竜胆君の、未来の旦那さんの耳元で囁いた。
どうしてもいつもは言いにくいから………こんな時くらいはね。いっぱい想いを伝えたい。
「君が側にいてくれて、毎日が変わったんだよ♡朝お弁当食べてくれてありがとう。いつも美味しかったって、ありがとうって言ってくれてすごい嬉しかったな♡次はどんなの作ろうかなって、楽しくなってたっけ」
自分が誰かのお弁当を作る事になるなんて思いもしなかった。
最初は迷惑かなとも思ったけど、竜胆君がいつも感想を聞かせてくれるのが楽しみだった。
「夜になったらいつもお店に来てくれてコーヒー飲んでくれて。私、ちゃんと君好みのコーヒー淹れられてるかな?いつも寝る前に色々試したりしてるんだ。一時間もしない短い時間なのに、私にとっては一日で一番楽しい時間だったよ♡」
今にして思えば、殺し屋の仕事で忙しい時もあったはずなのに。それでも平日は毎日来てくれてた。
お客さんとしての竜胆君じゃなくて、一人の大切な男性として淹れるコーヒー。どんなものが好みなのか、今でもずっと勉強中だ。
そこで話す他愛無い話が、私は大好きだ。
「遊園地とか夏祭りとか、二人で色んな場所行けて楽しかったな♡大人になってデートなんて初めてで、ちょっと子供っぽい事もしちゃったっけ。これからは、もっとデートしたいな」
いつもとは違う日々も、少なくはあったけどその分一つ一つが鮮明に思い出せる。
どこへ行くかじゃない。竜胆君の隣で色んなものを見れるのが楽しかった。
「東風ちゃんや
たぶん竜胆君は二人の想いに気がついていない。だから問題なんだけどね。本当に、もったいない子だ。
あの二人は私達が結婚するって言ったら、身を引くだろうか?………いや、するわけないか。あの二人はそんなにヤワじゃない。頑固に想いを最後まで貫くだろう。
「いつもは手を繋ぐのも恥ずかしがるのに、えっちな事する時は腰が抜けるくらい激しくて。母乳とか潮噴くの、すごい恥ずかしいんだからね。キスマークもこんなにつけて、いっぱいシてくれた。ピル飲んでても妊娠しちゃいそう♡けど………すっごく気持ちいいよ♡私、君のせいですごいえっちな人になっちゃった♡」
えっちな事をする時、私の頭はいつも快感と愛情に染められる。いっぱい抱きしめてキスしてくれるからかな。
回数は多くないけど、一回がすごい激しくて、頭から離れない。
母乳体質なの昔は嫌だったけど、竜胆君のおかげで少しだけ好きになれた気がする。
竜胆君とのえっちのせいか、自分でシても気持ちよくないし、ヤラシい夢を見る事も多くなってきたし、母乳搾る時中途半端に感じちゃうし。
でも、だからこそ竜胆君とするのがすごい気持ちいい。
「いつもはマイペースだしちょっと怖いけど、誰かのためにどんな事でも一生懸命になれる。恥ずかしがり屋ですごい真面目で、自分の正しさのために何があっても前に進む事が出来る。そんな君が、私は尊敬していて、好き」
こんな言葉では言い表せないほど、自分でも気がつかないほど竜胆君への想いは強くなっていく。
本音を言えばもっと竜胆君の方からガツガツ来て欲しいけど、今は難しいかな。けど、そこが竜胆君のいいところだ。
たとえ歪で壊れていても、彼の側にいたい。そうであれる人間でいたい。
「これからもコーヒー飲んだり、お出かけしたり、イチャイチャしたり、たまにえっちな事して、ずっと君の隣にいさせてね………大好きだよ、竜胆君………ううん…あなた♡」
私は竜胆君の頬にチュッと唇を触れさせた。今度は普通に起きてる時に言えるようになりたいな。
そんな事を思いながら、私は竜胆君が起きるまで待つ事にした。
その時
「………こ、こちら、こそ」
「ッ⁉︎」
竜胆君の声がした。
ふと見ると耳の先まで真っ赤にした竜胆君が、僅かに目を開けてこちらを見ている。
「え?………な、何で?」
「そ、そりゃあ………あんな隣で大声出されたら、普通は起きますよ。ただ、目を開けるタイミングが無くて………」
あ、しまった。今回は声のボリューム考えてなかった。
「…………って事は、もしかして………全部、聞いてた?」
竜胆君は黙って頷いた。私の顔が一気に熱くなる。
「シャ、シャワー浴びてくる………」
私はベッドを抜け出すと、そのまま浴室へと向かい入っていった。身体がかつてないほどに熱くなっている。
「うぅ………うにゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ‼︎‼︎」
私の羞恥に悶えた声が浴室に響き渡った。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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