※この作品はR-18です。

どことなく壊れていて、どことなく甘い生活   作:MC RAT

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第11章 家族とヤク
第140話 遠足


「きゃ〜〜〜〜〜〜〜ッ‼︎‼︎」

 とんでもなく大きな絶叫の中、強い風圧と浮いているような感覚が襲ってくる。

 ガンガン方向転換していて、大丈夫と分かっていても安定感が心許なく感じる。

 そんな感覚を約二、三分味わった僕は、それが止まって少し落ち着く。

「ふぅ、結構くるもんだな………疲れたぁ」

「はい!すごかったですね!髪型崩れた以外は、特に問題ないです」

「そりゃジェットコースター乗りたいって言い出したのお前だからな。僕まで付き合わせやがって」

 そう、僕と東風は今遊園地でジェットコースターに乗っていた。

 感覚的には乗ってるというより、浮いて振り回されるだったが。

 今日はいわゆるクラス遠足ってヤツで、三年生みんなで遊園地に来ていた。

 園内では自由行動なので、僕はその辺のカフェテリアで読書か殺し屋の仕事の計画でも立てるつもりだった。

 しかし東風が一緒に回ろうと言い出して、何やかんやで連れ回されてるわけだ。

 友達と回れよと言ったんだが、既にどこにいるか分からないんだと。連絡先も交換してないので連絡も取れないらしい。

 そういう事で僕と東風は一緒に回る事になった。

 そして定番のジェットコースターに乗ろうという話になり、まぁ待ち時間と多いからその間に何かしようと思って列に並んだ。

 小一時間仕事の計画で時間を潰し、ようやく僕達の番がきた。そして終わり今に至る。

 僕は隣の東風を見た。フレアパンツにカーディガン、ベレー帽を身につけている。

 今回は私服での遠足となった。僕はパーカー一枚だけど。

「何か、骨折り損のくたびれもうけって感じだな………」

「言葉的な意味ですか?物理的な意味ですか?」

「前者言葉、後者物理だな」

「全部物理じゃないだけ良しにしましょうよ」

 まぁ空き時間は有効活用させてもらったから、別にいいんだけどさ。ごっそり体力持ってかれた。

「そろそろお昼ご飯にしますか?」

「いや、僕はそろそろ一人で………」

「そんな事言わないで、もう少し付き合ってくださいよ。あっ!クレープありますよ!」

 東風はお店の方へと走っていく。仕方なく僕も後を追いかけた。そこでチョコのクレープを買う。

「りん兄、どうせなら観覧車でお昼ご飯とかどうですか?」

「ん?構わんけど」

 そういうわけでクレープを買った僕達は、そのまま近くにあった観覧車に乗った。

 僕が右側に座ると、東風は僕の隣に座る。いや、向かいに座れよ。

 そんなこんなでゆっくりとゴンドラが上昇し始める。

 僕は腰掛けてクレープを食べた。お、意外と美味しい。帰りにもう一個買っておくかな。

「クレープ美味しいですね。あ!ここから海見えますよ!」

「さっきのジェットコースターでも見れただろ。どうしたんだ?今日はやけにテンション高いな」

 東風がこんなに積極的に歩き回るのも珍しい。

「こういう遊園地、小学校の修学旅行の時以来なんですよ。りん兄だってそうでしょう?」

 いや決めつけるなよ。気持ちは分かるけど。

「遊園地なら一回来たことはあるよ」

「え⁉︎一人でですか⁉︎」

「んなわけないだろ。罔象とだよ」

 昔恋人未満の関係になってすぐの時だ。あれはあれで楽しかったな。

「へぇ、それって………デート、ですか?」

「いや、どうだろう………まぁそう、とも言えるか」

 その時はそんな事意識してなかったからな。ただのお出かけって感覚だった。

「それじゃあ、今は私と、その………デ、デート、ですね」

「おい、もれなく僕が浮気者になるから、その表現やめろ」

 春休み以降、僕と罔象の関係は精神的な面でそこそこ変わった気がする。

 僕としては一応プロポーズもしたわけだし、龗さんにご挨拶をと思っていた。

 ただ罔象が『知ってるとはいえ高校生が私との結婚の挨拶に来たら、お母さん戸惑うから』と言ったので、まだしていない。

 果たしてそれで大丈夫なのか。

 まぁやる事はこれまでと変わらない。朝はお弁当を受け取り、夜にコーヒーを飲む。前と変わらずだ。

「もう………りん兄も少しは楽しんだらどうですか?さっきから仕事の事気にしてばっかりじゃないですか。というかここ最近ずっとですよね?」

「まぁな」

 木偶の一件があって、サドイーターをばら撒いていたヤツらが焦り始めたのだ。

 どうも木偶の父親が周りに圧力をかけて売人達を守っていたらしく、それが無くなってその売人達があたふたしてるのだ。

 このままだと逃げられてしまう。ヤサは特定してある。早く殺さないと。

「りん兄、仕事熱心なのはいい事ですけど、こんな時くらいは楽しみましょうよ。せっかく耳栓無しで集団行動しなくてもいい日なんですから」

 父さんの事があって、周りからその事で『犯罪者』だの『人殺し』色々たくさん言われるようになって、人が信じられなくなって。

 それはある意味父さんを社会的に殺されたようなものだ。それが怖かった。

 だから僕はその場に相応しく無い騒がしさというものに、拒否反応を示すようになった。

 その中に今度は僕を殺す言葉があるかも、と思うとどうしてもね。

 それでもこういった騒いで当たり前の場所なら、問題なく普通でいられる。

「こういう時はちょっとした息抜きは大切ですよ?焦るのと急ぐのは違いますし」

「…………そうだな、分かったよ」

 まったくコイツは………変わらないな。

 僕は隣で楽しそうにしている東風を見た。うん………いい感じだ。

「そういえば、さっき雛罌粟さんと来たって言ってましたけど、何したんですか?」

「ん?えっと………コーヒーカップ乗って、お化け屋敷行って、それでお弁当食べて、観覧車に乗って、それで………」

 その後の事を思い出して、僕は顔が熱くなる。そうだ、僕達あの時観覧車でちょっとシちゃったんだった。

「りん兄、どうかしましたか?顔赤いですよ?」

 東風がグッと顔を近づけてきた。ちょ、今はやめろって!

「い、いや!何でもないよ!それより、そろそろ終わるよ」

「あ、そうですね」

 こうして僕達は観覧車を降りた。

「次はどうしますか?」

「しばらくはゆっくり散歩でもしてようよ」

 別に無理にアトラクションに乗る必要は無いだろ。少しはのんびりとさせてもらうか。

 すると東風がどこか一点を呆然と眺めていた。そこには小さな子供連れた親子がいる。平日でもいるんだな。

 東風は何とも言えない表情をしていた。

「………東風」

「え?あ、はい!行きますか!」

 まったく………いや、これに関しては僕は何も言えないな。

 そんな事思っいながら、どちらに進もうかと考えていると

 

 

 ぎゅっ

 

 

 東風が僕の手を握ってきた。僕の手が柔らかい感触に包まれる。

「? な、何だよ、どうかした?」

「別に………その、しばらくこうしていたいなって」

 そう言う東風の表情はどこか赤くなっている。まぁ僕もなんだろうけど。

「あ、あんまりこういう事されると、困るんだけどなぁ」

 一応彼女いるし、あんまり良くない気がするんだけど。

「雛罌粟さんとは………付き合う前からしてたんですよね?なら、私とだって、いいじゃないですか」

 それを言われると何も言えないな。まぁ、いいか。

「分かったよ」

「ふふっ、それじゃあ行きましょう!」

 こうして上機嫌な東風を連れて、僕達は遊園地の中を歩いて行った。

 

 

 

 

「う〜ん!楽しかったですね!」

「あぁ!おかげさまでな」

 帰りのバスから降りて、僕と東風は歩いていた。その手はちゃんと握られている。東風が頼んできたの。

 僕は大きく膨らんだビニール袋を掲げた。

 たまたま入ったゲームコーナーに特撮アイテムのガチャガチャがあったのだ。

 という事で僕はそこで回しまくり、おかげで大漁大漁。またコレクションが増えたな。

 思ったよりかは楽しめたかな。帰りにおやつ代りのクレープも買えたし。

 東風は年魚さんにお土産を買ったらしい。僕も鯨波さん………は必要ないと思って買わなかった。

 というよりガチャガチャに使いすぎて大層なものを買える残金がなかった。罔象には買おうとしたんだけどな。

「りん兄、明日から連休ですけど、何かしますか?」

 そうだったな。今年は五月の頭から連休だ。

「仕事かな?やっぱり早く終わらせないと」

 サドイーターは危険なヤクだ。売ってるヤクザやマフィアを早く潰さないと。報酬もたんまりだしな。

「殺し屋も大変ですね………って、ん?」

「どうかしたか?」

「りん兄、あれ………」

 東風は路地裏の方を指差して言った。

 

 

 

 そこにいたのは…………子供だ。子供が倒れている!

 

 

 

「東風!」

「はい!」

 僕と東風は急いでそこに走った。

 やはりそこに倒れていたのは小さな子供だ。五、六くらいの女の子だ。長い金髪からして、ハーフの子なんだろう。

 顔色は優れず、着ている服も汚れている。まるでどこかから逃げてきたみたいだ。

「何でこんな所に女の子が⁉︎」

「知るか!」

 僕は女の子の息を確かめると、腕を持って脈を図る。

「どうですか?」

「衰弱してるな………とりあえず病院に………」

 そこまで言って、僕は路地の奥から人の気配がした。僕達を見ているな。

 近くにあった小石を握ると、そっちに向かって投げる。

「誰だ⁉︎」

 するとザッという音と共に人の気配が消えた。一瞬がだその姿はちゃんと見えた。もう逃げたのか?

 もしかして、この子を?何でだ?

「りん兄?今のは?」

「分からない。とりあえず計画変更だ。ウチに連れて行く。これくらいなら僕でも何とかなるから」

 今の人が気になる。このまま病院に連れて行くのは良くないか。

「分かりました!私の上着使いますか?」

「頼む。この子に被せてやってくれ」

「はい!」

 東風は着ていたカーディガンを女の子に被せると、その子を背負う。

 僕達は急いで僕の家に向かった。




 最後まで読んでいただきありがとうございました。
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