※この作品はR-18です。

どことなく壊れていて、どことなく甘い生活   作:MC RAT

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第145話 お話

『ごちそうさまでした』

 夕ご飯を食べ終わり、僕達は席から立ち上がった。

「そういえばりん兄、お昼の時に帰ってすぐ上に行っちゃいましたけど、何か掴めたんですか?」

「ん?あぁ………掴んだには掴んだ。ためにはならなかったけど」

 食器を片付けながら、僕と東風は話していた。

「というと?」

「昼間に車見た時、あの時の状況が近くの監視カメラに映ってるんじゃないかと思ってな。色々調べたんだ」

「それで、映ってたんですか?」

「あぁ………ただ、裏の仕事で使われるためにディーラーから買った車みたいでな。ナンバーも偽装。人間を特定するのは難しいかな。中の人も見えなかった」

 あの後水鶏の逃げてきたルートを探したが、特にこれといった進展は無し。向こうもどうやら慎重らしいな。

「ママ、お風呂入ろ?」

 キッチンにやってきた水鶏が、僕達を見上げて言った。

「もちろん。食器片付けたら後一緒に入ろうね。それまでにパジャマ用意しておいてね」

「うん。分かった!」

 水鶏はてこてことリビングに向かっていった。

「お前もすっかり子供のお世話に慣れてきたよな」

「当然ですよ。そのために私は来たんですから」

 いや、そうなんだけどさ。正直一緒にやってくれて、ここまで頼れるとは思わなかった。

「東風が手伝ってくれて助かったよ。ありがとう」

「い、いえ、そんな………」

 東風が顔を赤くして俯く。お昼に帰ってきてからずっと赤いんだけど、どうかしたのか?

 食器も片付け終わり、東風は水鶏とお風呂に入った。

 僕はその間に布団を敷いておくと、のんびりとソファーに座った。

 さてと、ちょっとゲームでもするかな。

 すると部屋の奥の方から浴室の扉が開いた音がした。

 お、出てきたか。と思った瞬間、浴室の方からタッタッタッと音がした。

「パパ!」

 水鶏だ。バスタオルを身体に巻いただけの水鶏が、僕の方に走ってきた。

 つるんとした肌も、長い金髪にも僅かに水滴がついていて何やら急いでいるのは分かる。

 何をそんなに急いでるんだ?というか服着ろよ。

「ちょっと水鶏ちゃん!ダメでしょ、そんな格好で走っちゃ」

 そんな水鶏を連れ戻すためか、東風までやってくる。

 水鶏同様、バスタオル一枚の姿で。

 まだちゃんと身体を拭いていないのか、うっすら上気した肌についた水滴が身体のラインに沿って流れている。

 首筋を流れた水滴は鎖骨の窪みを通り、そのまま胸の谷間へと溜まっていく。

 当然だけど身体が全て隠れているわけではなく、特に胸の谷間が際どいラインで見えている。

 下も短くてミニスカのようになって、太ももがほとんど見えてしまっている。

 髪も解かれて濡れていて、いつもよりもとても艶やかだ。

「ちゃんとパジャマ着てからじゃないと………って、ひゃあッ!」

「ちょッ⁉︎お前なんて格好してるんだよ!」

 いきなりの東風のバスタオル姿に驚いた僕は、慌てて目を逸らした。何も東風相手に見惚れてるんだ!

「ご、ごめんなさい!ほら、水鶏ちゃん行くよ!」

 それから脱衣室でバタバタする音が聞こえたかと思うと、今度こそパジャマを着た二人がやってくる。

 僕と東風はふと目が合うと、少し逸らしてしまう。まったく、ちょっとは注意してくれよ。

 水鶏は僕の方に駆け寄ると、僕の膝の上に座った。何でそこ?別にいいけど。

「それで、いきなり走ってきてどうしたんだ?」

「あのねあのね、ママがパパは色んなお話知ってるって言ってたから聞きたいなぁって」

「はぁ?おい東風、お前余計なこと吹き込むなよ」

「実際色々知ってるじゃないですか」

 そりゃあね。それなりに知ってはいるけど、わざわざ話すようなものかどうか………

「聞きたいな………」

 ジーッと期待するような目で僕の方を見てくる水鶏に、僕はため息を吐いた。何で今になってこんな事を。

 そうだなぁ………何か話せるヤツ………あ!そうだ。せっかく水鶏はハーフなんだし。

「それじゃあとある戦士達の話をしようか」

「せんし?………戦うの?」

「そうだよ。でも彼らは人間じゃない。いや、人間だった人達なんだ。そして主人公の男は水鶏と同じ、親のいないハーフなんだよ」

 それから僕は、水鶏にお話を聞かせてあげた。

 

 

 

 

「………そして宇宙から地球へ落ちた二人は流れ星となって、それを見たある人はこう祈った………」

 お話の一区切りというところで、僕は自分の腕の中から寝息がするのに気がついた。

 ありゃ、水鶏寝ちゃってるよ。途中まで面白そうに話聞いてたのに。

 僕は寄りかかってきた水鶏の頭をそっと撫でた。気持ちよさそうに寝てるねぇ。

「水鶏ちゃん、寝ましたか?」

 すると後ろにいた東風が僕の隣に座った。さっきの事もあって、ちょっと顔合わせづらい。

「そのお話、久しぶりに聴きました」

 そういえば、昔東風にも聴かせてやったっけなぁ。いつも続きを続きを、ってせがまれたっけ。

「りん兄も水鶏ちゃんと仲良く出来てよかったです」

「あのなぁ、僕達は水鶏の里親じゃない。あくまで保護するだけだ」

 どんなに続いてもゴールデンウィーク明けまで。そうしたらもうバラバラだ。

「それはそうですけど………りん兄、事件は解決しそうなんですか?りん兄なら、確実では無くても予想くらいなら………」

「………まったく。お前はそういうところ、変に鋭いよな。たしかに、ある程度の予想は出来てる」

 犯人もやり口もいくつか候補は絞った。後はそれを確かめるだけだ。

「でももし、ゴールデンウィーク中に解決出来なかったら、水鶏ちゃんは………」

 東風が寂しそうに呟いた。

 年魚さんとの約束通り水鶏は警察へ引き渡す。

 けど、警察内に誘拐犯と繋がってるヤツがいるのは確かだ。未だに行方不明届は出ていない。

 そうなると、水鶏を渡したら、そのまま誘拐犯はと流される可能性も………

「何とか、なりませんか?」

「この件は、解決以外に対処方法が無い。警察もそうだけど、幼児施設の人達も届を出せない理由があるわけだし。施設見つけて戻したらどうなるか………」

「それなら、お母さんに理由話してもう少しだけ………」

「ヤクの事も話す気か?年魚さんが信じないとは思わない。でも危険だって言われて、それこそ引き離されるよ」

「それは、そうですけど………警察の事とかも話せば!」

「おい、年魚さんは僕の事は知らないんだぞ。クラッキングで調べましたなんて言えるか」

 悲しそうな表情で東風は水鶏を見つめた。何を言いたいのか、言わなくても分かる。

「引き受けた事だ。ちゃんと解決はさせるよ」

「………はい。ありがとうございます、りん兄」

 それからしばらく静かな時間を過ごすと、いきなり肩にズシッと重みを感じた。

 見てみると、東風が僕の肩に頭を預けて眠っていた。まったく、これじゃ布団敷いた意味ないじゃん。

 そう思っていると、東風の着ているパジャマの奥から、深い胸の谷間が見えた。僕は慌てて目を逸らす。

 コイツは無防備すぎるんだよ!一応僕、思春期の男子なんだけど。

 僕は近くにあった大きめタオルケットを掴むと、それを隠すようにして東風と僕、そして水鶏に被せた。

「親子で寝るか………悪くないな」

 こうして僕も眠りについた。

 

 

 

 それから日曜日、月曜日と僕は誘拐事件のことを調べて、それなりに分かってきたことも多くなっていた。

 ただ絞られはするんだけど、特定は難しい。何というか、上手く噛み合わない。

 そして現在火曜日。

 おやつも食べ終わり夕方、のんびりとしているとインターホンが鳴った。

 東風は洗濯物の取り込み、水鶏は熱心にお絵かき、出るのは僕かな。

「はーい」

 僕は家のドアを開けた。するとそこにいたのは、何と罔象だった。

「罔象?どうしたの?」

「竜胆君!よかったぁ、何ともない?」

「ん?何の話?」

 何故いきなり来た人間に心配されにゃならんだか。

「最近竜胆君がウチに来ないから、もしかしたら夏休みの時みたいに体調崩したのかなって」

 あぁ、そういう事。ちなみにお店は今日明日は休みらしい。祝日だしね。

「えっと、実は色々あって………」

「パパ?どこ?」

 理由を説明しようとした時、水鶏が僕を探してか玄関の方にやって来た。

「ん?竜胆君、その子は誰?」

「パパ、その人誰?」

「パパ⁉︎」

 いきなり現れた水鶏に罔象は訳がわからなくなっている。

「コラ、水鶏ちゃん。りん兄は今お客さんが………って、雛罌粟さん?」

「ママ、この人誰?」

「え?東風ちゃん?というかママ⁉︎」

 あぁ………何かめんどくさくなってきたぁ。

 めちゃくちゃになってきた状況に、僕は頭を抱えた。

 

 

 

「………というわけ」

「なるほどね。それで忙しくてお店に来なかったんだ」

 とりあえず罔象を家に入れて、僕は遠足の日にあった事を話した。

「そ、それじゃあ、その子は君達の本当の子供ってわけじゃないんだね?」

「んなわけないでしょう」

 一体いくつの時の子供になるんだよ。

「でも………そうなると、このお休みの間ずっと東風ちゃんと一緒だったの?」

「まぁ、そうだな」

 そうか………いつも一緒にいるから全くそんな気がしなかった。

「そっか………ズルい」

「ん?何が?」

「べ、別に!一言言ってくれてもよかったじゃん………」

 そう言って罔象は唇を尖らせた。あのなぁ………

「まぁそれは悪かったって。こっちも早めに対処する必要があったの」

 っと、そうだ。そろそろ時間だな。

「ちょっと出かけてくる」

「どうしたんですかりん兄、殺し屋(お仕事)ですか?」

「あぁ、ちょっと依頼の確認をね。ついでに例の車のブローカーも訪ねてみるよ。近くにいるかもしれないんだ」

「分かりました、行ってらっしゃい。夕ご飯までには戻ってきてくださいね」

「はいはい」

 僕は頷くと、家を出て行った。

 

 

 

 

「ママ、パパどこ行ったの?」

「お仕事だよ。すぐ帰ってくるから、待ってようね」

 私は目の前で東風ちゃんとハーフの女の子、水鶏ちゃんの会話を何とも言えない気持ちで見ていた。

 まぁ竜胆君が元気なのは分かったし、今回の事も竜胆君なりの優しさ故なんだろう。

 けど何だろう、このモヤモヤ感。

 つい二ヶ月ほど前に結婚(仮)をしたのに、今は別の女の子とちょっとした家族みたいに暮らしている。

 いや、竜胆君の話によれば、これは道楽とかじゃない。むしろ結構危険な事だ。

 ヤクザに狙われている(らしい)女の子を保護してるわけだし。私にホイホイ話すわけにもいかなかったのだろう。

 私を巻き込まないため、なんだろうな。けどさ………

「うん!今日もお話してもらう!」

「そうだね。そしたらみんなで寝ようか」

「うん!」

 へぇ、一緒に寝てるんだ………何だろうね、この気持ち。

 いや、微笑ましいんだよ。仮とはいえ立派な家庭が成立してる。素晴らしいじゃない。

 けどさ………まぁいいや。竜胆君にその辺求めても無駄なのは分かってる。たぶん意識してるのは東風ちゃんだけだし。

 そんな事を思っていると、家のインターホンが鳴った。

「パパ?」

「だとしたらインターホン鳴らすわけないんだけど………ちょっと見てこようっと」

 東風ちゃんは玄関に向かった。家のドアを開ける。

「はーい」

 私も気になったので、ちょっと顔を覗かせる。

 するとそこにいたのは、一人の男の子だった。歳は竜胆君と同じくらいかな?

 薄いジャケットを着て、キャップ帽を被っている。でも服はどこかよれていた。洗濯してないのかな?

 竜胆君の学校のお友達………は違うか。誰だろう?

「あ、どうも。こんにちは」

「はぁ、どうも………って!」

 東風ちゃんは顔を強張らせると、大きく後ろに下がった。

「東風ちゃん?どうかしたの?」

「その人に近づいちゃダメです!」

 東風ちゃんに叫ばれて、私は動きを止めた。え?この子がどうかしたの?

 

 

 

「あなたは………文化祭の時のスリ、ですよね?」

 

 

 

 東風ちゃんの言葉に私は耳を疑った。

 スリ?って、あの人の物を盗むスリ?

「お?あなたは………あぁ!あの時僕を追いかけ回してた!私服なので分かりませんでした。お久しぶりです」

 緊張している東風ちゃん対して、男の子は礼儀正しく頭を下げた。

 あれ?普通にいい子じゃん。

「ここに何しに来たんですか?盗む物なんてありませんよ」

「あの、そんなに警戒しなくても………おたくの殺し屋に比べれば、よっぽど平和的ですよ?」

 この子、竜胆君の事を知ってるの⁉︎

「ママ、どうかしたの?」

 気になったのか水鶏ちゃんが玄関に来た。

「水鶏ちゃん来ちゃダメ!向こうに逃げてて」

「ん?おぉ!いたいた!」

 水鶏ちゃんを見るなり男の子は嬉しそうに手を叩いた。

「その子、鴨舌草 グレース 水鶏、ですよね?その子に用があるんです」

 ん?水鶏ちゃんの知り合いなのかな?

「水鶏ちゃんに何の用ですか?」

 東風ちゃんの問いに、男の子は少し首を捻る。

 

 

 

「まぁ簡単に言うと、その子供をこちらに引き渡してください」




 最後まで読んでいただきありがとうございました。水鶏に聞かせてあげたお話、知ってる人いますかね?
 評価、感想等ありましたら、ぜひよろしくお願いします。
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