「罔象、もう大丈夫?汚れてない?」
「うん。というか、私は君が気持ちよくなってくれて嬉しかったし、気にしないでいいよ」
僕達は湯船の中で抱き合いながら湯に浸かっていた。さっきと同じように罔象が僕の脚の間に座っている。
湯船には罔象の胸がぷかりと浮かんでいて、どうしても目を惹き寄せられる。
「本当に、すごい気持ちよかったよ」
「うん。私も、気持ちよかった。ありがとう♡」
僕達は見つめ合うと手を繋いで唇を重ねた。
「んっ、ぐちゅっ………んくっ、れろっ、ちゅるっ………んんっ、はぅ、くちゅ、んふぅ、んあっ………♡」
ゆったりと舌を絡めると、唇を離した。抱き合っている身体をさらに密着させて、お互いの体温を身体に刻み込む。
「あぁ………竜胆君、今日はすごい積極的だね」
「な、何か勝手に求めちゃうんだよ。罔象が、側にいると」
「またそんな事言って………嬉しい♡」
軽くキスをすると、僕は罔象の首筋に顔を埋めた。そのまま首筋に吸いつきキスマークをつける。
「んっ♡!………もう、またつけたの?」
「罔象と一緒にいる事、ちゃんと残したくてさ」
「ふふっ、それなら、私もつけちゃお♡」
罔象は身をよじらせて僕の首筋に吸いつくと、強く吸いついた。ギュッとした甘い痛みがジンジンと焼きつく。
「んっ…………ねぇ、私達って、いつまでこうやって側にいられるかな?」
「? 急にどうしたの?」
「いや、竜胆君が側にいてくれるって言ってくれた事、疑ってるわけじゃないんだよ?けど、何かね………」
そう言って罔象は僕と手足を絡ませた。まるで離れたくないと言わんばかりに。
「そうだなぁ………永遠に罔象の側に添い遂げる、とは言えないよ。どこかでバラバラになる可能性は充分にあり得る」
「君が殺し屋だから?」
「だけじゃないよ。ただ僕達の関係が変わって離れていく。可能性としてはあり得るでしょ?」
「………うん、そうかもね」
気持ちだけの関係が永遠に確実に続くなら、この世に離婚してる人達はいない。
「今はこんなに一緒にいても、何年かしたら離れてる。これが一生に一度の結婚とも限らないし。今は考えたくはないけど、絶対に無いとは言えないよ」
「あんなに熱いプロポーズしてくれたのに?」
「ちょ、それやめてってば。僕の中だと割と黒歴史に入るの」
言ったことは本心だけど、僕らしく無い発言だったしな。二人きりだったとは言え、思い出すと恥ずかしくなる。
「人の気持ちなんかコロコロ変わるし、それは予測出来ない。そんな中で永遠の愛なんて、あるわけない」
いくら誓ったってこの世に絶対は無い。別れて、それぞれの人生を歩む可能性もある。
「それじゃあ、何で私と結婚しようとしてくれたの?別れるかもしれないんでしょ?」
「それは………い、今は、罔象と一緒にいたいから」
僕は罔象を抱きしめる力を少しだけ強めた。どこかに行ってしまわないように。
「別れる事も、一緒にいる事も、悪い事じゃないんだよ。その中で得られるものは、絶対あるから」
昔は殺し屋として表社会にいる事が、罔象や東風、分達といる事が悪い事だと思ってた。
でも、今は違う。彼女達といる事で得られたものはたしかにあって、それが今の僕となっている。
「だから傷つかない、っては難しいけどさ。いや、我ながらアホらしくて情け無いかな。別れる事なんか、当たり前の事なんだけどねぇ」
父さん達が死んだ時も、罔象と別れた時も。状況はともかく、誰かと別れるなんて当たり前だ。
何を悲しむ、何を悔やむ、そんなの流せて当たり前。その中で得られたものもあった。それを喜べばいい。
そのはずなんだけど…………
「私は、竜胆君と別れたら悲しいよ?」
「今は、でしょ?」
「…………そう、だね。うん」
今はどんなに思ってても、それがずっととは限らない。まぁ、それは僕もなんだけどさ。
「僕もそうだよ。だから永遠の愛なんて誓えないけど、今この瞬間罔象と側にいたいって想いは本当だよ」
「竜胆君………」
「これからがどうであれ、僕は今は罔象と一緒にいたいんだ。いつ別れるか分からないからこそ、今は全力で罔象と向かい合いたい。自分の今の気持ちを伝えたい。ただそれだけなんだよ」
それで今こうして罔象の側にいる。それは少なくとも今の僕には、この上ない幸せだ。
「そっか………うん、ありがとうね。素直に言ってくれて」
罔象は優しく微笑むと、少しだけ俯いた。
「私も、いつか離れる事になっても………今は、大好きだよ♡」
罔象は顔を上げて僕と見つめ合う。自然とお互いの顔が近づいてしまう。抱き合った罔象の身体の熱が、僕と混じり合う。
すると罔象の手が伸びてきた。それは僕を優しく包み込んで………くれずに、僕の頰をむぎゅっと引っ張った。
「うにゅっ⁉︎」
頰を引っ張られて僕は驚いた。罔象がジト目で僕を見てくる。
「でも、仮にも彼女、しかもプロポーズまでした人に対してそういう事言うの、どうかと思うなぁ。そんな別れる前提の話さ」
「
「そういう問題じゃなくてね………まぁいいや。君らしくて安心したし。でも、そうだよね。私の友達で離婚したって人、ちょこちょこ見かけるもん」
「ちょ、僕が言い出しといてアレだけどやめて。年齢も相まってリアルすぎるから」
罔象は僕の頰から手を離すと、そっと僕に身体を預ける。
「そういえば今更だけどさ、罔象は何で今日お泊まりしようなんて言い出したの?僕としては嬉しいしいいんだけど、わざわざ平日にさ」
別にこのまま流してもいいんだけど、気になったから一応ね。何かあったのかな?
「え?………あぁ、まぁ君ならそうか」
「ん?何の話?」
「本当に憶えてないんだ。いや、そうかなとは思ったけど」
え?僕も知ってるべき事なのか?でもそんな事無かったような………
「あ!終わった春アニメ一気見したいとか?」
「………何だろうね、もう安心したまであるよ」
どうやら違うみたいだ。でも他に思いつく事が本当にない。
罔象は頬を膨らませて言った。あ、すごい可愛い。
「覚えてないかな?前にこうやって一緒にお風呂入った事あったでしょ?」
「え?あぁ、そうだね。たしかあの時も雨が降ってて…………あ!」
僕は思わず動きを止めて顔を上げた。
「思い出した?」
呆れたような罔象の声に、僕は小さく頷いた。
「一年だよ。竜胆君と私が一緒にいるようになって、今日で一年経ったの」
ッ⁉︎………そう、だったな。
去年の6月28日にあの大雨があって、罔象が店に置いていってしまった僕の耳栓を大雨の中届けてくれた。
それを見て急いで家に連れてきて、なんだかんだで一緒にお風呂入って、夕ご飯どころか寝るのも一緒だった。
その次の日に罔象に襲われて、僕が店に行って、初めて身体を重ねた。それで今がある。
今思えば、あの時の罔象は木偶との一件で、色々と混乱していたんだろうな。
「あれから一年なのか………いや、まだ一年なのか」
「そうだよねぇ、私もそう思う」
あれから色々ありすぎて、体感的には何年も経ってるように思えていた。まだ一年なんだよなぁ。
「だから今日がよかったの。竜胆君と仲良くなれたこの日は、君との一日にしたかったから」
罔象が僕の手を握り指を絡めてこちらを振り返る。その眼差しと手の温度は温かくて溶けてしまいそうだった。
「あの時、めちゃくちゃでどうしようもなかった私を、助けてくれてありがとう。それと………一年間、私を愛してくれて、ありがとう♡」
「罔象………ダメだなぁ………」
「へ?」
首を傾げる罔象の肩に顎を乗せて、僕は息を吐いた。お風呂のせいで少しのぼせているのかもしれない。
「罔象といると、ずっと罔象の事だけ見ちゃう。罔象の行動の一つ一つに、目が奪われちゃう。特に笑顔に」
いつも僕を出迎えてくれるエプロン姿に、夜にコーヒーを淹れてくれる動きに、楽しそうに話してる様子に、この一年間僕を支えてくれたこの笑顔に、どうしようもなく惹かれてしまうんだ。
「私だって、君といると君の事ばっかり考えちゃう。竜胆君がどう思ってるのかなとか、そんな事ばっかり考えちゃうんだ」
お互いが相手から目を逸らせない。ジッと見つめあって無意識に距離を近づけてしまう。
「これから先、私達がどうなっても今のこの気持ちは変わらないよ。一年前竜胆君と出会えて、本当によかった」
「罔象………うん、罔象と出会えて得られたもの、ちゃんと見つけられた」
これからどんな事があっても、今貰った罔象の言葉は僕への愛だ。それは変わらないし、これから絶対に忘れない。
僕も罔象をギュッと抱きしめる。
「僕も、罔象が側にいてくれて、すごい嬉しい。一年間側にいてくれて、好きでいてくれてありがとう」
いつかはこんな風に罔象と一緒にいる事がなくなるかもしれない。だから今罔象と一緒にいる事は、決して当たり前の事じゃない。
だから、恥ずかしいけどちゃんと言わなきゃ、だよね。
「これからも、好きでいて欲しい」
「うん、私も。もっと竜胆君と、一緒にいたいな………大切な、私の家族だから………」
罔象はそう言って左手の薬指に光る指輪を撫でた。それはただの装飾品にも見えるし、もっと深い何かにも見える。
「何か、長くなっちゃったね。良くない傾向だ。うん」
僕の腕の中で罔象は一人納得した。
密着した肌からお互いの心音が混ざり合う。罔象の口が僕の耳元に近づいた。
「この一年間、そしてこれから別れるまで。大好きだよ………あなた♡」
罔象の甘い言葉が吐息と共に、僕の耳に入り込んできた。背筋にゾクゾクッと快感が走る。
「ふふっ、竜胆君顔真っ赤だよ?」
「し、仕方ないでしょ、それは!というか、罔象だって顔真っ赤じゃん」
「そ、それは………もう!」
罔象は腰を浮かせると体勢を入れ替えて僕と向かい合った。そのまま僕にギュッと抱きつく。
豊満な胸が僕に押しつけられて、むにゅんと潰れた。
「大好きな人が目の前にいるんだから、当たり前でしょ」
そう言って罔象は顔を近づけて、僕と軽くキスをした。フッと微笑むと抱きしめる力を少し強くする。
「竜胆君、大好き〜〜〜♡」
全身を密着させて頬擦りしてくる罔象は、とても可愛くてつい僕は彼女の頭を撫でた。
それと同時に罔象のいい匂いがフワッと漂ってきて、心臓の鼓動が速くなる。抑えていた欲望がフツフツと湧き上がってくる。
「あ…………竜胆君の、もうこんなに大きくなってる」
罔象は僕のモノを見ると、そっと握った。甘い快感が全身に広がる。
「それじゃあ、ゆったりとしたおしゃべりはここまでだね」
恍惚とした表情の罔象は僕を見つめながら、僕のモノを優しく扱いた。
「これからは激しいえっちの時間、だね♡」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今回の一年間というのは、私がこの作品を初めて投稿したのが去年の6月28日(カクヨム様にて)だったからです。
評価、感想等ありましたら、ぜひよろしくお願いします。