※この作品はR-18です。

どことなく壊れていて、どことなく甘い生活   作:MC RAT

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第170話 出発

 そして日曜日。待ちに待った竜胆君との旅行の日。

「えっと………荷物はこれとこれと………うん、全部ある」

 荷物の最終チェックを終えた私は、ベッドに身を投げ出した。ノースリーブの襟をパタパタと仰ぐ。

 その時私の額にツーッと汗が流れたのを感じた。やっぱり暑いなぁ。

 竜胆君との待ち合わせまでまだ時間あるよね。

 シャワーでも浴びてこようっと。汗だくの状態で竜胆君の近くにいるのもねぇ。

 私は着替えを持ってお風呂場に向かった。服を脱いで髪を解くと浴室に入る。

 ちなみに今の髪型はポニーテールにしている。

 暑い夏という事でしているのもあるけど、この前竜胆君が似合ってるって言ってくれたし。褒められたのが嬉しくてつい抱きついちゃったけど。

 私はシャワーのスイッチを押してお湯を身体に浴びせる。あぁ………気持ちいい。

 水滴が身体を滑り流れ落ちる。私は自分の身体を見下ろした。何かまた胸とかお尻がおおきくなってるような………まぁ嬉しいけどさ。

 私は浴室の窓から外を眺めた。ついにこの日が来たんだなぁ。

「竜胆君………楽しみにしてくれてるかなぁ」

 突然決まった旅行だけど、せっかく二人きりで行くんだし。もっと竜胆君の隣にいたい、隣で彼のことをもっと知りたい。

 どんな事をするかは既に決めてある。というか一泊二日の旅行で出来ることは限られている。

 竜胆君との距離が縮まれば縮まるほど、頭に浮かぶのはそんな事ばかりで。彼の隣にいるとつい盛り上がって話しちゃう。

 最近だと空いた時間に『竜胆君ノート』を書く頻度も増えてきた。竜胆君について感じたこと、思いついたことを少しでも書いている。

 つまるところ、私はもっと竜胆君の中で大きな存在になりたいのだ。

「私、本当に竜胆君のこと………大好きなんだなぁ」

 そう呟いた瞬間。私の言葉に応えるように、心臓が甘く締めつけられるような感覚がした。

 分かりきってた事ではあるけど、自分でもこんなに好きになるなんて思わなかった。

 好きな人のためなら、今の私を受け入れてくれた彼のためなら、出来ることを惜しみたくない。

 自然と仕事の質も上がって、お客さんに喜ばれる事も多くなった。

 竜胆君のためのブレンドも少しずつだけど良くなってるはず。

 ちなみにこの前のお泊まりでコーヒーに母乳が入ってしまって、竜胆君がは美味しいって言ってくれたけど。あれはあれで嬉しかった。

 とにかく今回の旅行は絶対に成功させたい。竜胆君にも楽しんで欲しいなぁ。

 それでもっと距離を縮めたい。もっと好きになって欲しい。

 私は自分の胸に手を当てた。ドキドキと心臓の音が強く伝わってくる。

 ダメだ………抑えられない。竜胆君に会いたい。あの声で名前を呼んで、強く抱きしめてもらいたい。そのまま押し倒して………

 そんな事を想像すると、お腹の奥がキュンと甘く疼いた。私は慌てて首を振って思考を打ち切る。

 淫らな事を考えてしまった自分に恥ずかしくなり、顔がとても熱くなる。

「うぅ………何考えてるのよぉ………」

 シャワーの温度を下げると、熱くなった顔に冷水をかけて冷やす。その冷たさに思わず身体が震える。

 最近ついこんな事を想像する事が多くなってるなぁ。ふとした瞬間に竜胆君とのえっちを思い出しちゃう。ちょっとは自制しないと。

 そう思っていても思考を止める事は出来ない。身体に当たるシャワーが少しずつ快感を生み出す。

「はぁ………はぁ………んっ」

 このままだと出会い頭に竜胆君を押し倒しちゃいそう。ちょ、ちょっとだけ………ちょっとだけなら………

 私は自分の手を秘所に伸ばした。

 私はもう竜胆君じゃなきゃ満足出来ない。それでも、ちょっとだけ………

 自分の手が秘所に触れそうになって………

 

 

「罔象──。いる?」

 

 

 その時、浴室の外から声がした。私が待ち望んだ、最愛の人の声が。私の意識の全てがその声に傾く。

 私は本能にも近い感覚でシャワーを止めると、浴室を飛び出した。

 

 

 

 

 数時間前

「これで………よしっと」

 罔象との旅行のための荷物をリュックにまとめた僕は一息ついた。

「竜胆、ご飯できたよ」

「あぁ、行くよ」

 下で(くまり)の声がした。一階に向かうとそこには彼女が作ってくれた朝食が並べられている。分はフライパンを洗っている。

 分もある程度洗い物が終わり、僕達は椅子に座ると手を合わせた。

「「いただきます」」

 僕達は朝ご飯を食べ始めた。最近では当たり前になった光景だ。

 何というかこの光景に慣れつつある自分も大概なんだなぁ、と最近思うようになった。

「竜胆、行く準備出来た?」

「うん。もう行くだけにしてある」

 昨日のうちに仕事は全部済ませたし、依頼人にも話は通しておいた。この際ゲームは問題外として、録画したいものもしておいた。

「そっか。せっかくの旅行なんだし、楽しんできなさいよ。あと、お土産も忘れないでね」

「はいはい。ありがとう」

 分は僕が居ない間ウチで留守番だ。ついでに一人で大掃除もやってもらって………というのは僕の思惑だ。

「ごちそうさま」

 食器を片付けるのを手伝うと、僕は出かける準備を済ませた。まぁ言うても一泊二日だからそんなに荷物も無いんだけどさ。

「それじゃあ行ってくるね」

「行ってらっしゃ………って、アンタその格好で行くの?」

「ん?そうだけど。何か変?」

 いつも通りの黒い七分丈のパーカーと黒のデニムだけど。

「アンタ家でも出かける時もほとんどそれでしょ?旅行の時くらいは違うの着てみたら?」

「1、僕はこれ以外に服はほとんど持っていない。2、一々選ぶのが面倒。以上」

「なるほど、アンタらしいわね。行ってらっしゃい」

「うん。行ってくる」

 僕は分に見送られながら家を出た。自転車に乗って待ち合わせ場所へと向かう、

 罔象の家で待ち合わせとなっているため、僕はいつもの道を通って『Cafe Red Poppy』へと向かった。

 待ち合わせ時間よりも少し早めに『Cafe Red Poppy』に着いた僕は扉を叩いた。

 …………おや?出てこない。何か作業中かな?社会人は忙しいだろうしな。

 試しにドアノブを捻ると………お、鍵は開いている。僕はそっと『Cafe Red Poppy』の中に入った。

「罔象──。いる?」

 すると奥の方から何やらバタバタッと音が聞こえた。あ、そこにいるんだ。

「竜胆君!ごめんね、まだ準備中で」

「あ、いや、ごゆっくり………ってぇッ⁉︎」

 罔象は奥から僕の方へとやって来て顔を覗かせた。しかし僕は彼女を見て顔が真っ赤になる。

 やってきた罔象はバスタオル以外何も身につけていなかった。

「ちょッ、罔象‼︎服!服‼︎」

「え?ひゃあッ⁉︎」

 僕の指摘に罔象は顔を真っ赤にして蹲る。何か前に東風でこんな事があったような。

 バスタオル一枚で罔象の艶かしい身体を申し訳程度に隠していて、肩や手足、胸の谷間は隠される事なく剥き出しになっている。

 濡れた髪が光を反射し、顔に貼り付いている。その姿から目が離せない。

「ご、ごめん!汗かいたからシャワー浴びてて………す、すぐに着替えてくる!」

 罔象はスクっと立ち上がるとお風呂場へと戻っていった。というか、普通に着替えてから来ればよかったのに。何をそんなに焦ってるんだ?

 でもまぁ………朝からいいもの見れたなぁ。

 それからしばらくして、ノースリーブに短パン姿の罔象が出てきた。手には荷物を持っている。

 さっきよりかは大丈夫だけど、こっちもこっちでちょっと破壊力が………

 白くて柔らかそうな二の腕や太もも、服を押し上げている胸にどうしても目が向いてしまう。

 髪型もポニーテールに変わっていて、この前初めて見た時つい見惚れちゃったっけ。

 それで思わず褒めたら抱きつかれて理性トぶかと思ったけど。

「竜胆君?どうかした?」

「え?あ、いや………何でもないよ。その………おはよう、罔象」

「うん、おはよう。さっきはごめんね」

「べ、別に………まぁ、ちょっと襲いそうになったけど………」

「ッ‼︎…………もう」

 すると竜胆君は身体を前に倒した。僕に抱きつくとそっと唇を触れ合わせた。すぐに離すと、耳元に口を寄せる。

 

 

「だったら………ちゃんと襲ってよ………」

 

 

 耳に熱湯を注がれたような衝撃に僕の背筋が震えた。

「み、罔象………」

「その、遠慮とか………しなくていいから、ね」

 罔象は僕を強く抱きしめると、頰をペロっと舐めた。

「そ、それじゃあ………車、出してるから」

 そう言うと罔象は僕から離れて外に出た。頬に温かい感触が残っている。

 正直離れてくれてよかった。でなければ周り関係無く間違いなく襲ってたし。

 今から旅行でたくさん人がいる所に行くわけだけども………

「理性持つかな………」

 熱くなっている顔を手で扇ぎながら僕は外に出た。

 

 

 

 罔象の車に乗り、僕達は出発した。

「竜胆君って家の大掃除とかやるの?」

「毎年ってわけじゃないよ。でも今年は分もいるし、それなりにやろうかなと」

「あぁ………そうだっけ。ごめんね。竜胆君も生活があるのに分を泊めてもらっちゃって。竜胆君に勉強教えてもらいたいなら、ウチに来るようには言ったんだけど」

「いいよ。前と同様に家事やってもらってるし。まぁ休みの日にも関わらず早起きされるのは勘弁だけど」

「分は早起きだからねぇ。最近だと早く起きて勉強してるんだって。お母さんから連絡来てた」

「アイツらしいなぁ」

 相変わらず真面目だねぇ。ウチでも勉強の時はすごい真剣に取り組んでるよ。

「でも、彼女として言わせてもらうと………竜胆君が他の女の子と暮らしてるのは、ちょっとなぁ」

「いや、あのさぁ………別に手出したりとかしないから」

 僕ってそんなに信用無い?まぁたしかに罔象相手だと襲ったりする事もあるけどさ。

「君じゃなくて、分がだよ。あの子に何か変なことされてない?」

「変なことって………特に何も」

 そういう関係になった覚えもなる予定もない。

 まぁたまに一緒に寝ようとしたりとかくっつこうとしたりはするけど、それはまた違うものだろうし。

 何かアイツスキンシップが激しいんだよな。最近の子ってあれが当たり前なのかな?

「そういえば分にお土産よろしくって言われたな。どこで何買えるんだろ?」

「旅館でも買えるんじゃない?あ、一応それなりに私も買いたいものピックアップしたんだ。よかったら見る?」

 そんな事を話しながら、僕達の旅行が始まった。




 最後まで読んでいただきありがとうございました。
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