私と竜胆君は海から上がると、シートのところまで戻って身体を拭いた。この後お昼ご飯食べるためにね。
持ってきたタオルで身体を拭く………んだけど。
さっきから妙に竜胆君の視線を感じるなぁ。それも何となくすごい熱い視線を。
まぁどういう意味かは何となく分かるんだけども、そんなに見られると恥ずかしいなぁ。
でもその反面、すごい嬉しい。水着選びとか体型キープとか、色々頑張った甲斐があったなぁ。
本当はビキニとかは露出が激しいから苦手だったけど、竜胆君が喜んでくれるなら全然嬉しい。
人目が気になるのかチラチラとだけしか見てくれないな。どうせならじっくりと見て欲しいのに。何ならちょっとくらい押し倒してくれても………
竜胆君も恥ずかしがっているのか、私と微妙に離れている。
さっきまで竜胆君と普通にベタベタ出来てたんだけどなあ。やっぱり人前はダメなのかな?
「竜胆君、それじゃあご飯にしようか」
「うん」
私達は立ち上がると上着を着て海の家に向かった。竜胆君は私の前をスタスタと歩いている。
こういう時に当たり前のように手を繋いでくれたりとか………を竜胆君に期待するのはダメかな。
けど、やっぱり………
私は手を伸ばすと、竜胆君の手を掴んだ。後ろに引いて彼の腕に抱きつく。竜胆君の腕が私の胸に挟まれた。
「ッ⁉︎ み、罔象⁉︎」
いきなりのことに竜胆君は顔を真っ赤にして驚いている。こういうところは変わらないなぁ。
「いい?」
「え、あ……でも、人いるよ?」
「べ、別に………竜胆君のことしか、見てないし………」
私は熱くなってきた顔を見られないように顔を伏せた。
そう、別に恋人なんだし………手を繋いだり、抱きついたりは普通で………うん、普通。
「それに、君にも………私だけ、見てて欲しいし………」
竜胆君の目が少しだけ見開かれた。
うわぁ、我ながら何言っちゃってるんだろう!もう少し伝え方無かったかなと速攻で後悔する。
すると竜胆君は指を絡めて、私を自分の側に引き寄せた。私と竜胆君の身体が重なるように触れ合った。
「人が多いからね。はぐれないようにしないと」
竜胆君は顔を合わせようとしないが、真っ赤になってる耳の先を見て、どういう表情かは予想出来た。
「ッ!………うん」
そのまま私は抱きついたまま、竜胆君と海の家に向かった。
こんな格好で抱きつくような事を………恥ずかしいけど、恋人っぽくてめちゃくちゃ嬉しい!
「罔象何か食べたいものある?」
「そうだなぁ………せっかくだし、ここならではのもの食べたいよね」
「それなら無難に焼きそばとか………」
そんな事を話しながら食べるものを決めていると、竜胆君がふと顔を上げる。
「あれ?そういえば財布って持ってきた?」
「え?あ!置いてきちゃったっけ」
身体拭いてそのまま来たからなぁ。バッグの中だった。
「罔象はここで待ってて食べるもの決めててよ。僕自分の取ってくる」
そう言うと竜胆君は少しだけ名残惜しそうに手を離して、シートのところまで戻っていった。そんなに走ることも無いのに。
さてと、それじゃあ私は食べる物決めとくか。そう思った時
「ねぇねぇ、そこのお姉さん。よかったら俺らと遊ばない?」
真横でそんな声がした。少しだけ目線をそっちに向けると男の人が二人、私の方を向いていた。
見た目は正直、チャラそう。私と同じくらいの歳かな。染めた髪をツーブロックにして、軽薄そうな表情を浮かべている。
…………まぁ、別の人を誘ってるのかな。
素早く判断して目を逸らした。竜胆君と二人きりの海、他の人に目を向けてるなんてもったいないし。
「ちょっとぉ、何で無視するの、お姉さん?」
あぁ………私の事っぽい。何でこうなるかなぁ。
「す、すみません。私、彼氏と来てるので………」
なんてタイミングの悪い。ついさっきまで一緒にいたというのに、よりによっていなくなった数分でこんなことに。
「えぇ〜そうなの?でもさ、君みたいな娘置いていくなんて最低じゃん。そんな彼氏置いといてさ、俺らと遊ぼうよ〜」
竜胆君のことを悪く言われてカチンときたが、ここで叫べば周りの人の迷惑になる。
彼らの目は私の胸や脚に向けられている。竜胆君になら嬉しいけど、他人だと怖気が走る。
「あの、本当にやめてください」
「いいじゃん。ちょっとだけだからさぁ」
この人達すごいしつこい。この人達がガタイがいいからか、周りは助けてくれない。肩に触ろうとしてくるし、何とかしないと。
「罔象、お待たせ」
その時向こうから竜胆君がやって来た。竜胆君は私と話している男達を見ると
「おぇっ!」
竜胆君。気持ちは何となく分かるし、状況察したからこその反応なんだと思うけど、たとえ小声でもそういうのはやめようね。失礼よ。
竜胆君はまるでゴキブリでも見つけたかのような目をしている。竜胆君には悪いけど、ここは任せるとしよう。
「あぁ?お前何だよ?」
「あ、どうも。この人の友、いや、知り合、いや、えっと………連れですが」
そこでパッと彼氏って言葉が出てこない辺り竜胆君らしいなぁ。そしてすごい礼儀正しい。
「ハッ、何だよそれ!俺らはこのお姉さんと遊びたいの。ガキはどっか行けよ」
「へぇ」
それを聞いて竜胆君がめんどくさそうに私の方を向いた。ドラマとかだとこういう時、バッと助けてくれたり………
「だそうだけど、罔象はこの人達について行く?」
どんな時でもちゃんと私の意見を聞いてくれる竜胆君は、本当さすがだと思う。でもこんな時くらいは自分勝手になってもいいんだよ。
「嫌に決まってるじゃん………竜胆君といたいの」
「了解………という事なので、申し訳ありませんが帰ってください」
「は?知らねぇし。俺らの勝手だろ。ガキが大人に生意気な事言ってんじゃねぇぞ」
「あぁ、はいはい。大の大人がフラれてすごいですね。現実受け入れてさっさと帰ってください」
ちょ、本当のことだけどその言い方はマズいって!
「おい!ふざけんじゃねぇぞ!」
男達が竜胆君を突き飛ばした。竜胆君は怒ってはいないが、めんどくさそうな表情のまま立っている。
「ほら、お姉さん行こうよ〜」
男達の手が私の肩に触れた。悪意しかない行動に嫌悪感が湧き出る。
「ちょっと、やめてくだ………!」
叫んで止めようもした瞬間、私は言葉が出なくなった。竜胆君から伝わる異常なまでの寒気が、身体を駆け抜けたからだ。
それは隠された、でも私には分かる明確な殺意だった。自分が何されても怒らない竜胆君が放つ、重苦しい隠れた殺気。
普段なら絶対に見せないほどに冷たい目をした竜胆君が、男達へと近づく。男達はそれに気がつくことなくヘラヘラと笑っている。
竜胆君はゆっくりと肩を回した。それは前に木偶さんの一件で見た、彼が人を殺す時の動きだ。
このままだと別の意味で問題が起きる。何とかしないと………でも止める方法は………
あ!そうだ!でもこれは………いや、そんな事言ってられない!
私は男達の手を払い除けると竜胆君に抱きついた。そのまま彼と唇を重ねる。
「ッ⁉︎」
竜胆君は驚き殺気が引っ込んだが、今度は顔が熱くなっていく。周りの人達からの声も大きくなった。
私は唇を離すと、男達の方を向く。
「私達今新婚旅行中なので。失礼します!」
早口で捲し立てると、竜胆君の手を握ってその場を離れた。恥ずかしさから竜胆君は抵抗できなくなっている。
それからしばらくして、私達は人気のない岩場に着いた。
「はぁ、はぁ………何とか離れられた、かな。竜胆君、大丈夫?」
「んなわけないでしょ‼︎み、罔象………いきなり何するの!あんな、人がいるところで!」
「だって、あぁしないと竜胆君が何するか分からなかったし……何か良くない気がしたし」
「別にそんな物騒なことするつもりはなかったよ。ちょっと心臓突いて止めたら、ライフセーバーに預けて終わらせるつもりだったよ」
「充分物騒だよ!もう………」
やっぱりあの場から離れて正解だったかぁ。
「そんな事より罔象だよ!大丈夫?」
「別に大して酷い事されてないよ。ちょっと触られただけで………!」
そう言った瞬間、竜胆君が私を抱き締めた。私は竜胆君の体温が染み込んできて、全身が温かくなった。
ちょ、あのッ………そんな、いきなり抱き締めて………ッ!あ、温かいぃ………溶けるぅ♡
「大したことあるよ!………ごめん、嫌な思いさせて………」
「竜胆君………」
竜胆君が抱き締める力を強くした。心臓が鷲掴みにされたように締めつけられて、心音が激しく鳴り響く。
「ほ、本当に大丈夫だから………というか、君の方こそ大丈夫?突き飛ばされて、どこか怪我してない?」
あんなに強く突き飛ばされたんだし、怪我したんじゃないの?
「これくらい大丈夫だよ。仕事での痛みに比べたら全然」
私達は見つめ合って笑うと、そのまま強く抱き合った。
暑い中なのに、この温かさが心地よい。段々と緊張していた心がほぐれて落ち着いてきた。
「それにしても………竜胆君っていつもは奥手だけど、いざって時はすごい大胆になるよね」
私はふと呟いた。すると竜胆君の身体がピシッと固まる。そしてカァッと顔が赤くなる。
「ご、ごめん!今すぐ離れる!」
竜胆君が慌てて離れようとしたので、私は強く抱きついてそれを止める。
「み、罔象?」
「もうちょっと、このままがいいな」
「え?いや、でも………」
竜胆君は何か言いたそうに口籠った。その目は私に向きながらも泳いでいる。どうかしたの?
その時、私はお腹の辺りに何か硬いものが当たっているのに気がついた。
ふと目線を落として当たっているものを見た。
私に押し付けられていたのは竜胆君の下半身だった。竜胆君のモノが大きくなって内側から彼の水着を押し上げている。
「あ………竜胆君」
「そ、その………ごめん!罔象とくっついてたら、つい………」
竜胆君が恥ずかしそうに顔を伏せる。とてもさっきまで殺気を漂わせていた人とは思えない。
大きくなっている竜胆君のモノを見て、私のお腹の奥がキュンと疼いた。
それはどんどん強くなり、全身を熱くさせる。息が荒くなり、胸の先がムズムズする。
「竜胆君、このままじゃ帰れないよね………」
「ッ⁉︎」
私は自分の胸を押しつけて、竜胆君のモノを水着の上から優しく撫でた。竜胆君が気持ち良さそうに目を細める。
ダメだなぁ………もう………我慢、出来ない………♡
「人もいないし………ここでちゃんと、元に戻してあげる♡」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
評価、感想等ありましたら、ぜひよろしくお願いします。