※この作品はR-18です。

どことなく壊れていて、どことなく甘い生活   作:MC RAT

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第202話 帰省2

「お姉ちゃんお待たせ!」

「お、お待たせ………」

「竜胆君、分。明けましておめでとう」

「おめでとう!」

「お、おめでとう………」

「ん?竜胆君どうかした?なんか疲れてる?」

 年が明けて最初の朝。夜遅くまで起きてたせいか初日の出を見過ごした僕と分は、一緒に泊まっていた東風と朝ご飯を食べて『Cafe Red Poppy』にやって来ていた。

 お店の前にはコートとマフラーを身につけた罔象が、こちらに向けて手に振っていた。

 分はモコモコのセーターを着ていて、僕は殺し屋(仕事)のスペアのトレンチコートを着ている。そして二人とも手には大きな荷物を持っている。

 というのも、これから僕達は罔象、そして分の実家に行くのだ。

 分は今までウチに泊まっていたわけだが、さすがに三ヶ日までウチにいるのはどうか、という事で罔象の帰省と一緒に帰ることにしたのだ。龗さんもそっちの方が楽しいだろう。

 それじゃあ何で僕がいるのか。理由は簡単で僕も罔象の実家に挨拶に行くためだ。

 罔象と婚約したのが去年の春、それからかれこれ半年以上も実家への報告をしていない。

 もちろん報告してこなかったのは『いきなり婚約なんて言ったら龗さんがびっくりする』という理由があった。

 しかし報告はしないにしても、新年の挨拶無しはちょっと失礼かな、と思ったのだ。

 ちょっと前のデパートの一件で泊まりはしたが、あの時は分のことでいっぱいいっぱいでとても挨拶どころじゃなかった。

 罔象は挨拶(というか僕が実家に行くこと)に渋っていたが、最終的には頷いてくれた。

 理由は『もう今さら』だからだそうだ。意味が分からん。

 そんなわけで僕と分は今日罔象の車で実家に行くわけだが………

「ま、まぁ大丈夫だよ。ちょっと朝からSAN値が半分くらい削れただけだから」

「ちょっと分、竜胆君に何したの?」

「お姉ちゃん、たぶんそれを言っちゃうと竜胆のSAN値がゼロになるからやめてあげな。聞かないのも優しさだよ。大丈夫、法に触れることはしてないから」

「そ、そう?まぁ大丈夫ならいいんだけど………」

 朝目覚めたら、というか仕事の関係でやって来た鯨波さんに起こされたと思ったら、両隣に東風と分が無防備なパジャマ姿で抱きつくようにして寝ていたのだ。

 思いっきり慌てたし、二人は中々離れてくれないし、鯨波さんには揶揄われるし。新年早々心臓に悪い目覚め方したな。

 罔象と一緒に寝るのだってようやく最近慣れた(気がする)のだ。さすがに東風と分が一緒に寝てたら慌てる。一応二人も女子なわけだし。

 何でも昨日僕が寝落ちた後、二人で話してたら寝てしまったらしい。何のために布団二セット出したのか。

 せっかく何事も起こらないと信じて二人とのお泊まりを許してくれた罔象に対して、『二人と抱き合うように寝てました』なんて言えるはず無いので、聞かないでくれて助かる。

「それじゃあ二人とも、荷物は後ろに乗せてね」

 僕達三人と各自の荷物を積んで、車は罔象の実家へと向かっていった。

 

 

 

「はい、到着っと」

「やっぱり車だと早く着くねぇ。アタシも車の免許取ろうかな。って、おーい、竜胆起きなって!」

「んっ………ん?あぁ、もう着いた?ふあぁ〜〜〜」

 例のごとく秒速で寝てしまった竜胆君を、同じ後部座席にいた分が起こした。なんか手慣れてるなぁ。一緒に暮らしてるからかな。

 大きく伸びをした竜胆君は目を擦りながら辺りを見渡す。

 正直去年のお正月の帰省で竜胆君と分が出会って、二人は仲良くなった。一応竜胆君とそれなりのお付き合いがあった私が警戒するレベルで。

 だからもうそんなことが無いように竜胆君と帰省するのはやめようと思っていたけど、分自身が竜胆君に会いに来てしまうんだ。もう止めても意味ないだろう。

 そんなこんなで車のトランクから荷物を下ろした私達は、家の扉を開けた。

「お母さーん、ただいまー!」

 軽く声を張って言うと、家の奥からお母さんが歩いてきたら

「あら、おかえりなさい!竜胆君も、久しぶりね」

「あ、お久しぶりです」

 やはりまだお母さんには少しだけ緊張するのか、頭を下げて距離を取っている。

「さぁ、ここにいても寒いだろうし、部屋に荷物置いてきな。竜胆君の部屋はいつもの所ね」

「いつもありがとうございます」

 私達は家に上がるとそれぞれの部屋に入った。荷物を置いて一息つく。

 あ!そうだ、これから竜胆君と初詣行こうかな。今朝まだ行ってなかったし。久しぶりのお出かけデートだ。

 竜胆君も特にやることはないはずだし、きっと二人きりの時間を楽しめる!

 という事で私は素早く出かける準備をすると、竜胆君のいる部屋の扉を叩いた。

 しかし何も返事が返ってこない。

 おや、もうリビングにいるのかな?竜胆君の事だし部屋にいると思ったけど。

 一階に降りてリビングを覗いてみるが、そこにも竜胆君はいなかった。

 見当たらないので、キッチンにいるお母さんに声をかける。

「ねぇお母さん、竜胆君どこにいるか知らない?どこにもいないんだけど」

 キッチンに顔を覗かせると、お母さんは顔を顰めて言った。

「あぁ………竜胆君なら、『デート行ってくる』って分に引っ張られて初詣に連れて行かれたわよ」

「え………?」

 近くにある土間を見てみると、竜胆君のだけではなく分の靴も無くなっている。

 嘘、でしょ………せっかくデートしようと思ったのに………

「昔から行動力のある子だけど、あの子容赦ないわねぇ…………まぁ何事も本気になれるのが、分のいいところなんだけどね」

 崩れ落ちる私を見て、お母さんはなんとも言えない表情を浮かべている。

 どうやらお母さんは分の気持ちには気がついているらしい。

 そりゃ『油断してると横から奪う』とは言ってたけど………こんな露骨にされるとは。

 竜胆君の話なら分は一度フラれているのに、そこまでしてアタックしようとするとは。それだけ分も本気なんだ。

「ちょっと、気緩んでたかな………」

 

 

 

「ちょ、ちょっと分!そんな引っ張るなって!」

「何言ってんの。初詣で神社は混むんだから、早めに行かないと長い間外で待つ事になるわよ。アンタもそれは嫌でしょ?」

 罔象の実家に着いた僕は、休む間もなく分に連れ出されてしまった。初詣に付き合えとのこと。

 罔象にも何も言わずに来ちゃったけどよかったのかなぁ?一緒に来た方がいい気がするけど。

「だから、なんでその初詣に僕が付き合うんだよ!一人で行けばいいでしょ!というか、罔象置いてきてよかったの?どうせなら一緒に………」

「いやいや、今お昼時だから。お姉ちゃんはお母さんとご飯の手伝いがあるから来れないんじゃない?」

「………なるほど」

 たしかに言われてみればそうだ。それなら仕方ないかぁ。

「そういうこと、ほら行くわよ」

「はぁ、仕方ないなぁ………」

 まぁあそこにいても暇なだけだ。神社で甘酒でも貰って温まるか。

「東海林神社………結構大きな所だね」

「ん?あぁ、アンタ去年は途中で帰ってきたから、来るのは初めてか」

 神社に着いた僕達は長い列に並び、無事参拝し終えた。

「さてと、それじゃあお母さん達も待ってることだし、さっさと帰るか」

「その前に甘酒貰おうよ。寒すぎる」

「え?いいけど」

 僕達は近くのテントに行くとそれなりに人が集まっていて、ガヤガヤと甘酒を貰っている。

「これなら大丈夫なの、酔わないからね……… その状態じゃ飲み食い出来ないでしょ?……… ダメだよ、お前出しちゃマズいんだから。大体、ミリーは人の食べ物食べられないでしょ?……… でもダメ、悪魔はそっちだろ」

 なんか隣の高校生くらいの人が独り言ブツブツ言ってるが、気にしないでおくか。

 僕達も甘酒を貰ってクイッと煽る。

「う〜ん、甘ぁ〜」

「ふぅ〜、温まるなぁ」

 これだけでもここに来た甲斐があるってもんだ。

「それじゃあ帰るか」

「うん」

 お昼も近いし罔象と龗さんが家で待ってるだろう。早く帰るとしよう。

 神社を出ようとすると、分が僕の手を握っていた。思わずビクッとしてしまう。

「ッ!………な、何?」

「ん?こうすれば手温かいでしょ?」

「い、いや、そうだけど、こういうのは………」

「何めんどくさいこと言ってんのよ。ほら帰るわよ」

 僕の手を握った分は、僕の腕に抱きついて指を絡める。寒い中で分の体温がより強調される。

「ちょ、おい!これ以上はダメだよ!」

「え〜ダメ?」

「ダメだよ。僕、彼女いるんだし。こんなことは………」

「キスはしたのに?」

「分が無理矢理したんでしょ!結構気にしてるんだからね!」

「だってアタシだってアンタとイチャイチャしたいもん。何ならまたしようか?」

 ちょ、ち、近い………!

 グイッと顔を近づけて微笑む分に、僕の心臓がバクバク鳴り響く。

 こう見ると、やっぱり分って綺麗だなぁ………って、違う違う!

「だ、ダメだって!僕罔象と婚約してるの!さっさと帰るよ!」

「はいはい、お義兄ちゃん♡」

 揶揄ってくる分に、もうツッコむ気も起きない。このまま引きずられるしかないか。

 そんなことがありながら、僕達は帰っていった。ずっと分は離れてくれなかったが、おかげで体は温まった。

「ただいま〜!」

「戻りました」

「あ、二人ともおかえりなさい」

 家に入ると龗さんが顔を覗かせて出迎えてくれた。その後ろから罔象がやって来る。

「罔象、誘わなくてごめんね」

「大丈夫だよ。分が無理矢理引っ張っていったんでしょ?ごめんね、いつも」

「ある程度慣れたからいいよ。甘酒も飲めたし」

「それならいいんだけど。そろそろご飯できるから、手洗っておいで」

「うん」

 僕と分は手を洗ってみんなで食卓についた。おぉ、うどんか。

「「「「いただきます」」」」

 僕達四人はお昼ご飯を食べて、それからは各々ゆっくりとした。

「これと、これで………よし!どうかな?」

「ん?いいんじゃないの。というか、もう僕が勉強教えなくてもいいでしょ?」

「ちょっと分からないところあるんだってば。英語はあんまし得意じゃないし」

 僕は分とリビングのこたつに入って彼女の勉強を見ていた。今分がやっているのは大学からの課題だ。

「というか、アンタは課題いいの?」

「分より早く合格したから、課題も早く来たの。終わっちゃないけど、ぼちぼちやってるよ」

 そんな事を話していると、コートを着た龗さんがリビングを通った。

「あれ、お母さん出かけてくるの?」

「え、まぁちょっとね。夕方には帰ってくるから」

「は〜い、いってらっしゃい」

 僕達はこたつに入ったまま龗を見送った。何か戸惑っている様子だったが、何かあったのかな?

「さてと、それじゃあ勉強の続きするか!」

「えぇ、もういいじゃん」

「何言ってんのよ。まだまだこれから………」

「コラ分。あんまり竜胆君を巻き込まないの」

 するとキッチンからトップスとジーパンに着替えていた罔象がやってきた。カップの乗ったお盆を持っている。

「はい、竜胆君コーヒーどうぞ。分もね」

「お、やったぁ」「ありがとう罔象」

 罔象の淹れてくれたコーヒーを受け取ると、ズズッと一口飲んだ。

「はぁ………温まる」

「昨日ウチに来れなかったからね、飲んで欲しかったんだ」

「やっぱりお姉ちゃんの淹れてくれるコーヒー美味しいね」

 分もコーヒーを飲みながら、ほぅっと息を吐く。

「区切りいいし、分も休んだらどう?」

「それもそっかぁ。それじゃあ、ちょっとお休み〜」

 分はくたぁっとこたつの上に突っ伏すと、それからしばらくして寝息を立て始めた。

「スー………スー………」

「分寝ちゃったね。この寒い時期にこたつは大敵だったかな」

「罔象もこたつ入れば?寒いでしょ?」

「うん、それじゃあ………」

 罔象はお盆をこたつの上に置くと、罔象は僕の後ろに座ってこたつに入る。僕が罔象の脚の間に入る形となった。

「み、罔象⁉︎別にそこじゃなくても………」

「私も温まりたいからさ。こうすれば君と一緒に温まれるでしょ?」

「え?それはそうだけど………」

「それに、こうすれば竜胆君の一番近くにいれるからね。ほら、ぎゅ〜〜〜っ!」

 罔象が後ろから僕を抱きしめた。たしかに温かいが、背中に柔らかい感触が押しつけられて心臓が跳ね上がる。

「竜胆君の心臓、すごいドキドキ鳴ってる」

「当たり前でしょ、罔象とくっついてるんだから」

 好きな人とくっついてドキドキしない人はいないだろう。少なくとも僕はいつもそうだ。

「竜胆君、暑苦しくない?」

「全然。むしろ外にいたから、今はこれくらいがちょうどいいかな」

「よかった。それなら、もっと二人で温め合おう」

 罔象がこたつの中で僕の手を握ってきた。心地よい温もりが僕を包み込む。

「み、罔象、こういう事するなら、上に行こうよ。隣に分がいるんだし………」

 そう言って振り向くと、罔象が頬を膨らませてジト目で睨んでくる。

「………分とは手を繋いで堂々と帰ってきたのに」

「あ………」

 たしかに分と手を繋いでそのまま帰ってきちゃったからな。そりゃ怒るよなぁ………

「いや、その、それは………ごめん」

「別に、君が積極的にしたとは思ってないよ。でも………いくら家族でも、竜胆君が女の子とイチャイチャしてるのは、嫌だな」

 ですよね………さすがにちょっと流されすぎたかな。

「仲が良いのはいい事だけどさ、やっぱりこういう事するのは、私が一番多いといいな」

「そうだね………了解」

 お互いが身体を押しつけて温もりを分け合う。心がじんわりと温まる。

 

 

「それじゃあ、ぬくぬくイチャイチャしよっか。竜胆君♡」

 

 

 罔象は微笑んで僕の頬にキスをした。




 最後まで読んでいただきありがとうございました。
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