「んぁ………ふあぁ………」
朝日が目に届き僕は起きた。目を開けると、一番初めに映ったのは僕より早く起きたのか、身体を起こして下着を着ている罔象だった。
ブラに腕を通すと、背中に手を回してホックを留める。たわわな胸が下着の中で押し潰されている。
青いレースの下着に白い肌がよく映えて、ついマジマジと見つめてしまう。
「んっ、やっぱり下着キツくなって………あ、竜胆君。起きてたなら声かけてよ」
艶のある黒髪を耳にかけて、僕の方を振り向いた罔象が挨拶する。恥ずかしそうに腕で胸と秘所を隠す。
「あぁ、ごめん。罔象のことつい見ちゃってて」
「え?も、もう、エッチなんだから。人の着替え覗かないの」
下着姿の罔象が朝日に照らされ、神々しいほどに美しい。朝から刺激が強いと思う一方で、その美しさに目が離せない。
「もしかして結構遅く起きちゃった?」
「ううん。私がちょっと早く起きちゃったから、さっきまで竜胆君の寝顔見てた」
「な、何それ………恥ずかしいな」
「あんまり気持ちよさそうに寝てたから、ついね。それに………」
罔象は僕の首に腕を回すと、軽く唇を触れ合わせた。
「んっ♡………おはようのキスもしたかったから」
「罔象………もうちょっと、このままでいい?」
「もちろん」
僕は罔象を抱き返すと、彼女の温もりを全身で味わった。お互いベッドの中で身体を絡め合う。
「竜胆君、昨日はありがとうね。何回もイッちゃって、すごい気持ちよかったよ」
「罔象の制服姿が可愛かったからな。興奮しすぎたかも」
「もう!可愛いって………去年のサンタ服もそうだけど、年甲斐もなくあぁいうの着てるのに、竜胆君はいつも褒めてくれるね」
「本当にそう思うんだから、仕方ないでしょ。罔象は色んなもの似合うね」
「それじゃあ、今は………?」
罔象は腕を緩めると、自分の姿を僕に見せた。青い下着に包まれた裸体に目が釘付けになる。
こんな艶やかな姿を見せられて、何とコメントしていいか迷ってしまう。
「そりゃあ………す、すごい綺麗」
「そっか、えへへっ♪ありがとう♡」
褒められて照れ隠しするように、少しだけ抱き締める力を強くした。
「竜胆君。君のおかげで嫌な思い出が、いい思い出に変わったよ」
「それなら、よかった」
僕も罔象を強く抱き締めると、愛しむように彼女の背中を撫でる。
「罔象、その………昔の嫌なこととか、全部言ってとは言わないけどさ。そういうの、僕が少しでも力になれるなら言ってね。これから一緒になるなら、そういうことも知っておかないと」
「一緒に、かぁ………うん、そうだね」
身を預けてきた罔象をちゃんと受け止める。
罔象のベッドの周りには脱ぎ散らかされた制服があり、ついているたくさんのシミが昨夜の交わりの激しさを物語っている。
「そろそろ起きる?」
「そうだね、いっぱいシたしシャワー浴びないと。竜胆君も一緒に浴びる?」
揶揄うように僕の腕に抱きついて、誘ってきた罔象に僕はたじろいた。罔象の身体につい目が向いてしまう。
「い、いやぁ………それだと襲いそうで、あんまり意味無さそうな気がする」
僕達はしばらく見つめ合うと、お互い吹き出して笑った。
「あははっ!そっか、残念だなぁ。せっかく朝からイチャイチャできると思ったのに」
僕の腕に頬擦りして、罔象が僕を見つめた。彼女の胸が僕の腕を挟み、向けられる熱っぽい視線に体がどうしても反応してしまう。
「………それなら、ここですればいい」
「あっ、竜胆君、んっ♡!」
罔象を抱き寄せると、彼女の耳を甘噛みし舌先で撫でた。
「はぁっ、んっ、あぁ♡竜胆君、それッ、ゾクゾクするぅ、んあっ♡!」
罔象の頰を撫でながら、彼女の耳を味わった。お互い身体に熱が帯び始める。
「まだ、時間あるよね?」
「うん。だから、もっと竜胆君と温まりたいな」
僕達は手を繋ぎ抱き合うと、自分の身体を押しつけあった。罔象の胸が押し付けられて、甘い快感に身体が痺れる。
「んぁ♡はぅ、んんっ♡コラぁ、胸に息かかってくすぐったいよ」
「甘くて、いい匂いするし………罔象が綺麗だから」
「はぁっ♡ふぅ、んあっ♡嬉しい♡ねぇ、もっとイチャイチャしよぉ♡」
お互い四肢を絡め合い唇を重ねながら、気の済むまで抱き合い湧いてくる想いを囁く。
「んっ♡………竜胆君に抱き締められると、温かくて気持ちいい………♡」
僕の腕の中で下着姿の罔象が熱い吐息を漏らした。
「それにしても、竜胆君もこれから大学生かぁ。不安とか無いの?」
「別に。環境は変わるけど、そこまで不安は無いかな」
今まで通りやるべき事ややりたい事をやるだけだ。学ぶ場所が変わっただけで、大学生だからといって下手な希望も不安も無い。
「そう?私は心配だなぁ」
「え?どの辺りが?」
「だって………もし周りに綺麗な子がいるようになって、竜胆君がそっち向いちゃったらって思うと………不安、かな」
少しだけ唇を尖らせて言う罔象に、僕は思わず頰が緩んだ。
なぁんだ、そんなことで不安がってたのか。
僕は罔象を抱きしめたまま、彼女の頭を優しく撫でた。
「絶対にあり得ない、とは言えないけどさ。場所が変わったくらいでそんな事するほど、僕は気安く罔象を選んだわけじゃないよ」
「それは、分かってるよ。でも、環境が変わるんだって思うと、どうしてもね………」
「それは当たり前だけど、これまでと変わらないよ。朝お弁当取りに来て、夜は二人でコーヒー飲みながらお話しして、たまに出かける。それを積み重ねて、僕は罔象とこれからを共に過ごしたいって思ってる。昔も今も、ね?」
「竜胆君………ありがとう。愛してるよ、大好き♡」
「うん、僕も大好きだよ」
僕と罔象は最後に強く抱き合うと、微笑んで唇を重ねさせた。
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした。竜胆君はもう帰るの?」
「そうだね。昨日卒業式で邪魔された分休みたいよ」
それぞれシャワーを浴びてから朝ご飯も食べ終わった。
それから家に帰ろうとして、僕はカウンターの奥の棚に一つの小さな箱があることに気がついた。
「罔象、これ何?前までこんなのあったっけ?」
「ん?あぁ、それは………」
僕が箱を見せると、罔象は少しだけ困ったように戸惑った。ん?どうかしたか?
「えっと………ちょっとプライベートでね。こっちちょうだい」
「あ、はい」
よく分からないが箱を罔象に渡すと、僕は自分の荷物を持った。
「それじゃあ、また今夜」
「うん、またね竜胆君。大学生活、頑張って」
「ありがとう」
僕は挨拶を交わすと『Cafe Red Poppy』を出て行った。
家に帰って自分の部屋に入ると、着替えもせずにベッドに突っ伏す。
「あぁ………結局、言えなかったなぁ………」
自分でも嫌になる程弱々しい声が出た。
はぁ、あれだけ覚悟決めて行ったのに、結局言えずじまい。
僕はベッドに転がったままスクールバッグの中から封筒を取り出した。封を開けて中身を取り出す。
それは一つの鍵だった。僕の家の鍵だ。これを罔象に渡すのが、今回罔象に早めに会いに行った理由の一つでもある。
「高校卒業したら一緒に住むって、決めてたんだけどなぁ…………」
同棲のことを考え始めたのは、お正月明けくらいからだ。
罔象と婚約して、受験も終わり、Salvation Of Sinのことも一区切りつき、龗さんに結婚の許可も貰えた。
自分の中で色々なものが変わり、罔象とのこれからについて考える機会が増えたのだ。
罔象と何気ない日々を家族として共に過ごしたい。そのためにどうすればいいか。
その中で同棲という案を思いつき、すぐに行動し合鍵を作ったのが一月半ば。
しかし殺し屋の仕事が忙しくなり、罔象に思うように会えなくて………というのは言い訳。
実際のところ言う機会は何百回とあったのに、言う勇気が出なくてズルズル引きずっていた。
だってさぁ、同棲って何か結婚を強く意識してるようで、恋人の中でもすごい特別な感じするし。
子供の自分なんかの浅はかな考えでそこまで踏み込んでいいのか、という考えが浮かんでしまった。
それでも昨日高校を卒業して、いい機会だと思った。
いつまでも罔象の優しさに甘えたくない、『罔象と共に生きたい』と自分からアピールしなくてはいけないと。
「けど、あんな事言われたらなぁ………」
『焦らなくていいんだよ。いっぱい悩んで、色んなことを迷って、竜胆君の思うように進めばいいの。君がどんな道に進んでも、心が離れない限り、私は君の隣にいるから』
無理して背伸びして罔象に慰められて、何と情けない。
あんな事言われちゃうってことは、罔象にとって僕はまだ子供のままなんだろうか。
そんな状況で焦って招いても、罔象の優しさに甘えてしまうかもしれない。それじゃあ本末転倒だ、だから言い出せなかった。
これは僕達のこれからに関する大切な問題だ。一時の感情で気安く考えていいことじゃない。
一人前の大人になって、胸を張って罔象と共に過ごしたい。今のままじゃ………
「はぁ………もっと、大人にならないと」
「はあぁぁぁ…………言えなかったぁ」
竜胆君を見送った私は、お店の準備をしてからカウンターに突っ伏した。自分の意気地なさに嫌気がさす。
「いい機会だから、言おうと思ってたのに………」
私はカウンターの棚に置いてあった小さな箱を手に取った。朝竜胆君が気にしていた箱だ。
蓋を開けると、中には小さな鍵が入っている。このお店の鍵だ。
「竜胆君が高校卒業したら、同棲しようとしたんだけどなぁ………」
同棲という案自体は割と前から考えていたことではあった。
竜胆君と婚約してからそろそろ一年が経とうとしている。
お互いの事情もあるし急ぐことはないが、それでも私から『竜胆君と結婚したい』というアピールがしたかった。
より夫婦っぽくてそういうのに憧れていたというのもあるが、結婚して円満な家庭を築くためにも、ある程度二人での暮らしのお試し期間が必要かと思い二月辺りから用意はしていた。
けど竜胆君と会える機会が少なかったのと、言い出す勇気が出なくて結局今日まで先伸ばしにしていた。
でも竜胆君が卒業して、言うなら今しかないと思って準備をしていた。
「けどさぁ………」
『罔象、その………昔の嫌なこととか、全部言ってとは言わないけどさ。そういうの、僕が少しでも力になれるなら言ってね』
「力になってもらってばかりじゃ、ダメなんだよなぁ」
私はポツリと呟いて左手の薬指に嵌められた指輪を見た。
竜胆君が力になってくれると言ってくれたのは素直に嬉しい。でもだからといって、恋人に縋るような人にはなりたくない。
結婚するなら、竜胆君に頼ってばっかりじゃダメなんだよ。支えられるだけじゃない、私だって竜胆君を支えてあげたい。
けど今のままの私じゃ、竜胆君の強さに支えられてばかりだ。こんなんじゃ、とても胸を張って一緒にはなれない。
「私、成長しないと………」
すると奥からアラームが鳴り、私は立ち上がると脱衣所へ向かった。洗濯が終わったようなので、洗濯機の中の様子を見る
そこには昨日のエッチで着た制服がある。その他の洗濯物と一緒にベランダに出て、物干し竿にかけていく。
高校生の頃に着ていた制服。木偶さんとの事件があって、見るたびにあの時の嫌な思い出が蘇ってくる。それは一生消えることはないだろう。
けど………今はもう、それだけじゃない。
そんな嫌な思い出を押し退けるように、昨日これを着た私を可愛いと言って、激しく抱いてくれた竜胆君が思い浮かぶ。
ちゃんと洗濯したはずなのに、顔を近づければ竜胆君の匂いが残っている気がする。
その匂いが昨日のことを思い出させて、胸が高鳴りお腹の奥がキュンと疼いた。
「んっ♡………これはこれで、気安く見れなくなっちゃったかも」
太ももを擦り合わせながら制服を竿にかけると、今夜竜胆君に会ったら彼を抱き締める事を決めてカウンターに戻った。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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