遊園地は休日という事もあってかそれなりに混んでいるのが駐車場を見て分かった。
まぁ別に連休ってわけではないから、駐車場が満席って事は無かったけどさ。
おかげで駐車出来る所はちゃんとあったので手早く駐車すると、僕達は車を出た。
駐車場を出るともう人の叫び声が聞こえてきた。
まだアトラクションからは結構距離あると思ったのに、もう聞こえてくるのか。
「それじゃあ行こうか」
車に鍵をかけた雛罌粟さんが言ってきた。その顔は楽しみと言わんばかりに明るい表情だった。
「はい」
僕は短く答えると雛罌粟さんと一緒に駐車場を出た。
入り口で無料チケットを見せると、僕達は遊園地のマップを渡されて中に通された。
「おぉ〜、テンション上がってくるね!」
遊園地の入り口を抜けて目の前に広がっている景色を見渡しながら雛罌粟さんは楽しそうに言った。
目の前には様々なアトラクションが稼動しており、多くの人々が思い思いに遊んで楽しんでいる。
出店の近くでは遊園地のマスコット(の着ぐるみを着た人)が子供に風船を渡していた。
たしかにカラフルで色んなものが大きく動いているってのは、なんかテンション上がるな。
遊んでいる人の中にはここで買ったのか猫耳などをつけている人もいる。どこで売ってるんだろう?
そしてやっぱり親子連れが結構多いなぁ。後はカップルか。
正直すごい騒がしい所ってイメージがあったから心配していたところもあったけど、これなら大丈夫そうだ。むしろ楽しめそう。
「雛罌粟さん、まずどれから行きますか?」
僕は貰ったマップを拡げながら雛罌粟さんに尋ねた。
「そうね……まずは王道にジェットコースターとか‼︎」
「あの、初手からハードなのは勘弁してください。身がもちません」
下手すると朝食リバースの可能性も否定出来ないからな。最初はもう少し優しいヤツで。
「そう?それなら……コーヒーカップは?自分達で動かせるからジェットコースターよりかは優しいよ?」
「へぇ、じゃあそれにしますか」
なんか若干不安がないわけでもないが、ここでそれを言ったら終わりな気がする。
僕達はマップを頼りにコーヒーカップに向かった。このマップ意外と分かりやすいな。
見た感じ基本的にどのアトラクションに長い行列はできていないみたいだ。これはいいね、そこを気にするとどうしても出来るものが少なくなっちゃうからな。
「あそこ、ですかね?」
「そうだね。行こう!」
僕達がそこに行くとちょうど今の人達が終わったところのようで次は僕達の番だった。
僕達は中に入りカップに乗った。中には座るスペースがあり、カップの中心に大きなハンドルがついていた。
「これを二人で回す、みたいな感じですね」
「そうみたいね。よし、頑張っていこう!」
しばらくして明るい音楽とともにコーヒーカップが動き出した。それに合わせてハンドルを回してみる。
するとカップがぐるぐると回り始めた。なるほど、こうなるのか。
「すごーい!何コレ楽しい!」
雛罌粟さんも楽しそうにハンドルを回している。
たしかにこれは体にも程よく優しくていいかも。それならこのまま……
「うーん、もうちょっと速くしてみる?」
「え?」
突然の事に反応する間も無く雛罌粟さんはハンドルをより速く回し始めた。というか力強っ!このハンドル結構重いんだけど。
当然カップのスピードは高まりさっきより激しく回り始めた。
「ちょ、雛罌粟さんストッ……うわぁぁぁぁぁ───────‼︎」
それによりハンドルを手放してしまった僕は完全に振り回される状態となった。
そして数分後。
「いや〜楽しかったね!」
「未だに……目が回るん、ですが……」
ちょっとグロッキーとなった僕はフラつきながらもコーヒーカップを出た。なんだろう、HP三十は減った感覚がする。
「竜胆君、もうちょっと鍛えた方がいいんじゃない?」
「この際それは関係ないですよ……」
今回の教訓、何事もハンドルはちゃんと掴んでいましょう。そうしないと振り回されるよ。その結果がこれだ。
「どうする、ちょっと休む?」
「いやそこまでじゃないんで大丈夫ですけど。出来れば次は……優しいのにしましょう」
さすがに連続でこんなに刺激の強いものはちょっとね。
「それなら……メリーゴーランドとかは?」
たしかにメリーゴーランドなら問題ないような気がするな。癒しにはちょうどいいかも。
でも僕と雛罌粟さんでメリーゴーランドかぁ……。
僕はふとその様子を思い浮かべてみる。うーん……
「絵面が……」
「そんなの気にしないの!ほら行こう」
マップを見ながらズンズン歩いていく雛罌粟さんに僕はフラつきながらもついて行った。
しばらくうろついているとお目当てのメリーゴーランドに到着した。こちらもそこまで混んでなさそうだ。
「どれに乗りますか?」
「そうねぇ……あれがいいかな」
そう言って雛罌粟さんが指差す方向には馬ではなく車(そう言っていいのかは分からない)があった。
へぇ、てっきり馬に乗りたがるかと思った。意外だな。
僕達の番が来て僕達はそれに乗る事が出来た。軽快な音楽が流れてメリーゴーランドがゆったりと回り始める。
「あの、馬じゃなくてよかったんですか?」
メリーゴーランドの回転によって変わっていく周りの景色を楽しみながら、僕は雛罌粟さんに尋ねた。
「もちろん、だって竜胆君と一緒がいいもん。それならこれしかないじゃん」
そう言って雛罌粟さんはにっこりと笑った。
「あ……そう、ですか……」
なんと反応したらいいのか分からずに僕は雛罌粟さんから顔を逸らした。ヤバい、すごい嬉しいけど顔が熱い。
よくこういう事を普通に言えるな。
そう思って雛罌粟さんを見てみると雛罌粟さんも顔を赤くしていた。恥ずかしいなら言うなよぉ、返しに困るじゃん。
でもメリーゴーランドによって体力もHPもだいぶ回復してきた。
メリーゴーランドから降りると僕達はしばらくマップを使わずに園内を歩いていた。こういうのもアリだろう。
「あ!あれ入ってみない?」
雛罌粟さんに声をかけられて何だと思い見てみると、そこは大きな古びた雰囲気の小屋を模した建物だった。雰囲気的にアドベンチャー系のアトラクションだろうな。
タイトルの隣に銃が描かれてるからシューティング系かな?面白そうだ。
「いいですね。入ってみましょう」
「よ〜し、何か楽しそう!」
僕達は意気揚々としながら中に入っていった。
中に入るとまず目に入ったのは巨大なスクリーンだった。
ジャングルの植物を模して作られたような造花などに囲まれており、その他にもスクリーンの近くにぱっと見た感じ剥製のようにも見える猿や蛇の人形があった。よくできてるな。
何人か順番待ちの人達がら並んでいる場所を見つけたので、僕達はその中に入る。
何人か集まったところで係員からの説明があった。
「あのジャングルの中には怖い幽霊が住んでいて、みんなにはそれを退治してもらいます。この銃で幽霊をやっつけましょう!」
子供でも分かるような説明を要約するとこんな感じだった。やはりシューティング系か。
どうやら係員が持っているあの銃を使うらしいな。大きめで拳銃タイプだ。
やがて僕達の番がやってきた。
スクリーンに接続されているおもちゃのような銃を握ってみて感覚を掴む。
「竜胆君はこういうの慣れてるの?」
僕の隣で銃を興味深そうに見ていた雛罌粟さんが僕に聞いてきた。
「まぁやる事自体はゲームにもよくありがちな事なので慣れてますけど、完全にこうというわけではないですからね。微妙なところです」
当然だけどうちにこんな大きいスクリーンはないし、シューティングゲームでもこんな銃の形したコントローラーはもちろん使った事がない。
というかこの銃で撃つにしても照準とかどうするんだと思ったけど、赤外線で自分がどこを狙っているのか分かるみたいだ。分かりやすくてよかった。
その辺がどう出るかだよな。とにかくやれるだけやってみよう。点数は自分のいる所の近くのスクリーンに表示されるようだ。
僕はサッと銃を構えた。
「お〜何か様になってるね」
雛罌粟さんが感心したように言ってきた。そうか?でもそれはちょっと嬉しいな。
ブザーが鳴り響くと同時にゲームが始まった。
僕はスクリーンに表示される幽霊(みたいなヤツ)を銃で撃ち抜いていった。
自分がどこを狙っているのか正確に分かるし、余計な計算をしなくていいから楽だなぁ。後マガジン交換無しだし。
僕は映し出される敵を全て撃ち抜いていた。これ思っていた以上に楽しいな。
しばらくして後ろから歓声のようなものが聞こえてくるのが分かった。何だ?
チラッと後ろを見てみると何故かみんな僕を見ている。何々、どうかしたの?
すると隣の雛罌粟さんまでもが僕をジッと見ている。
「あの、どうかしましたか?何で僕周りから見られてるんですか?」
僕は敵を倒しながら雛罌粟さんに尋ねた。
「えっと……どうやら君かなりのハイスコア出してるみたいだよ。それで注目されてるみたい」
そうなの?たしかに雛罌粟さんの点数と見比べてみると結構差があるけども。
やがて再びブザーが鳴ってゲームが終わった。
「わっ!竜胆君すごいよ!。あれ見て」
雛罌粟さんに言われて彼女の指差す方を見てみるとそれはどうやらこのゲームのランキングのようだった。スクリーンの右隣に表示されていた。
どうやらこの結果は全てランキング付けされているようでそれが表示されていた。
そしてその一位の記録がスッと変化した。あれって僕の結果じゃないか?
すると係員の人がこっちにやって来た。
「あなたは現在このアトラクションで一位の記録を出しました。景品としてこちらをどうぞ」
そう言って差し出して来たのは大きめのバッジだった。このゲームに使った銃と同じものが描かれている。
「あ、どうも」
何と言っていいのか分からずに僕はそのバッジを受け取った。
「君って、本当にすごいね」
雛罌粟さんが感心したように呟いた。まさか自分でもこうなるとは思ってなかったからなぁ。
僕は貰ったバッジを呆然と眺めた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。