シューティングゲームのアトラクションの小屋を出た僕達しばらく園内をブラブラと歩き回り、良さげなアトラクションを見つけるとそれに乗って楽しんだ。
そんなこんなで今は
「キャァァァァ────────ッッッ‼︎」
雛罌粟さんが最初に乗りたがっていたジェットコースターに乗っていた。ちなみに今の絶叫は雛罌粟さんのね。
初めて乗ったわけだけども、結構HP持っていかれるな。そして思ったよりも全然速い。
映像とかで見るともうちょっと遅く見えてたんだけどな。
メリーゴーランド、シューティングゲームと続いてちゃんと削れたHPは回復させたはずなんだけどそれを他のアトラクションが光速で削り取ってくる。
こうして見てみると遊園地って結構絶叫系のアトラクション多いんだなぁ。乗ったアトラクション大体絶叫系だったよ。
別に怖いから嫌って事ではないんだけど、単純に体力の問題かな。結構クルね。
ジェットコースターのエネルギー計算をする事で何とか耐えたものの、結構疲れる。
「あ〜楽しかった。竜胆君は大丈夫?」
「はぁ、なんか耐性ついたみたいなんで今のところは……」
いくつか絶叫系のアトラクションに乗るうちに慣れてきてしまった。おかげで最初みたいに酔いかける事はない。なんで雛罌粟さんは平気なんだ?
「そっか、それにしてももうお昼だね」
「え?……あー本当ですね」
僕は腕時計を見ながら頷いた。もう十二時をとっくに越している。気がつかなかった。遊んでいる時ってついつい時計見るの忘れちゃうんだよね。
「お昼ごはんにしましょう。どこかで買いますか?」
たしかその辺に出ている出店でお昼ごはんになりそうなものを売っている所があったはずだ。そこで買おう。
「あ、ちょっと待って」
僕が買う店を探そうとすると雛罌粟さんがそれを止めた。
「どうかしましたか?」
「あのね、その……今日はお弁当作ってきたからその辺で食べない?」
そう言うと雛罌粟さんはバッグからお弁当箱を覗かせた。
マジか、いつも作ってくれてるのにこんな時でも作ってきてくれたんだ。すごいなぁ。
「分かりました。それじゃあ……あそこにしますか」
僕が指差した方には本来出店で買ったものを食べるための椅子やテーブルがたくさん置いてあった。
まだ結構空いてるし、あそこなら大丈夫だろ。
僕達はその中の一つのテーブルを取り、椅子に座った。
「はい、どうぞ」
雛罌粟さんはテーブルにバッグを置くと中からお弁当箱を取り出した て蓋を開けた。
いつも貰っているものとは違い、今日はおにぎりが入っていた。外出だからかな。
おかずは小さなオムレツやキュウリの浅漬け、豚の生姜焼きなどたくさんだった。
毎回思ってるんだけどよくここまでバリエーションあるよな。雛罌粟さんのお弁当でおかすがカブったことって本当に少ない。
「いつも作ってるからどうしようか悩んだんだけどね。勝手に作ってきちゃったけどよかった?」
「全然いいですよ。むしろありがとうございます」
「そっか、よかった」
雛罌粟さんは嬉しそうに笑った。
雛罌粟さんにお弁当を作ってもらうようになってから、学校のお昼休みがちょっと楽しみになっていた。もちろんこのお弁当のためである。
元々学校の楽しみなんてお昼休みの読書くらいだったけど、今は前より楽しみになっている。
「いただきます」
「召し上がれ」
僕は手を合わせると雛罌粟さんからお箸を貰い早速お弁当を食べ始めた。
まずは……やっぱり完全に初めて見るおにぎりかな。六つあるから僕と雛罌粟さんで三つずつか。
僕はそう決めるとおにぎりを手に取った。三角に握られたごはんが黒い海苔に巻かれている。
「えっと……これ中身なんですか?」
「それはね……お楽しみ」
なるほど、そう来たか。
まぁさすがに自分も食べるんだから食べられないものを入れてるわけはないだろうし、そこまで警戒する事もないだろう。
僕は手に取ったおにぎりを一口食べてみた。具が大きいのかもう具まで辿り着いたようだ。
ふっくらとしたごはんはちょうどいい塩加減で海苔によく合っている。
そして具は……魚、かな?となると定番は鮭だけど、これは違うな。これって……
「ブリの照り焼き、ですか?」
「正解!結構いいでしょ?」
「はい、とても」
脂がのったブリ本体もさることながら、あまじょっぱい照り焼きのタレがごはんに絡んでとても美味しい。あっという間に食べてしまった。
「ブリの照り焼きはよく作るんですか?」
「私も作るってのもあるけど、お母さんがね。昔朝ご飯によく作ってくれたから」
そうだったのか。
雛罌粟さんも僕が取ったおにぎりの隣のものを取って食べた。
中身は同じか。となると隣同士で同じ具なわけだ。
僕は取ったおにぎりの隣にあったオムレツを食べた。これもいいねぇ、チーズがいい味出してる。
それじゃあ次のおにぎりを食べてみますか。なんかこういう事初めてだから新鮮でいいな。次の具は何かな?
僕は手に取ると食べてみた。
あれ?具が……無い?いや、ごはんと海苔以外の味はするんだよな。何だこれ?
うーん…………あ!
「これもしかしてチーズですか?」
「うん、二回連続正解か。すごいね」
これ粉チーズだ。それで最初具がはっきりと分からなかったんだ。
「というかおにぎりのバリエーションもすごいですね。あまり見かけない具だと思いますよ」
「そう?昔はよく作ってたんだけどな」
どうやら雛罌粟さんの中ではこれが普通らしい。
僕はその隣にあった豚の生姜焼きを食べた。数回お弁当に入れてもらったけどやっぱり美味しいな。生姜がちゃんと効いてるんだよね。
ん?待てよ…………。
ブリの照り焼きのおにぎりの隣にオムレツ、粉チーズのおにぎりの隣に豚の生姜焼き…………。
あ〜なるほどね。ちょっと読めてきたよ。
「最後のおにぎり、具は赤ですか?」
僕が何となく聞いてみると雛罌粟さんは少しポカンとした後にクスッと笑った。
「………へぇ、やっぱり気付くんだ。相変わらずそういう推理力はすごいね」
これを推理力といえるのかどうかは分からないけど、割と分かりやすかった。
要はこれおにぎりの具と隣にあるおかずが反対色なのだ。
茶色のブリの照り焼きのおかずは黄色いオムレツ。次はその逆で黄色いチーズに茶色の豚の生姜焼き。
そうなると最後はキュウリの浅漬けの緑。そうなるとおにぎりの具は反対色の赤だ。
ちょっとした遊び心が感じられて楽しいな。
「ちょっと分かるかどうか試してみたけど、分かってもてっきり食べ終わってから気付くかと思ったな」
たしかにこれはよく見てないと分からないかもな。僕も何となく気がついただけだし。
さてと、問題はその赤い具が何か、なんだよね。
ここまでオーソドックスなものは一つもないと言っていい。そうなるとこれも意外なものなのだろうか。
まぁ食べてみれば分かるか。
僕は最後のおにぎりを取って食べてみた。
お、これもしかしてごはんに塩使ってない?そんで具は…………
「あ、これ梅干しですね……………………………ってしょっぱっ‼︎」
僕は思わず口をすぼめた。
食べられない事はないんだけど、何だこれ⁉︎とんでもなくしょっぱいんだけど!絶対これ市販品じゃないだろ!
何なら若干ジャリジャリした塩の塊みたいなものまで感じるんだけど。
「やっぱりかぁ。それウチの実家で作ってるヤツなんだけどね。最近送られてきたの。ウチ梅の木があるから」
実家で梅干し作ってるんだ。というか今時作る人っているんだな。
「ご実家の梅干しこんなにしょっぱいんですか?……もしかして分量間違えたとかですか?」
それならこのしょっぱさも納得なんだけど。しかし雛罌粟さんは首を振った。
「いや、規定通りだよ。でもそれって結構前のなんだよね」
前のもの?それで味が濃くなったのか?
「ちなみにその梅干しがこれね」
すると雛罌粟さんがスマホを取り出して一枚の写真を見せてきた。
これは……………失礼だけどカビでも生えてるのかな?
何か赤い梅干しの表面に白いものが出来てるんだけど………あ、これもしかして。
「この表面のって塩ですか?」
「そうなの。梅干しって長い間放っておくとこうなるのよね。それですごいしょっぱいの」
なるほど、そういう事かよ。さっきのジャリジャリしたのはやっぱりその塩ってわけだ。
「これでも付いてた塩はそれなりに落としたし、これだけごはんに塩使わなかったんだけどね。竜胆君でもダメかぁ」
そう言いながら雛罌粟さんもおにぎりを食べてしょっぱそうに口をすぼめた。
あの、雛罌粟さん?そこまで分かってるなら僕で試さないでよ。いや、美味しいっちゃ美味しいんだけどさ。
「昔お母さんがお弁当におにぎりを入れる時に大体これが具に入ってたんだけど、何か微妙な気持ちになるでしょ?」
「そうですね……」
そうなんだよなぁ。一番オーソドックスなもののはずなのに一番ハズレな気がするからなんだか微妙な気持ちになる。
それでもすごく美味しいし、やっぱり雛罌粟さん料理上手だな。
僕達はあっという間にお弁当を食べ終わった。ふぅ、食べた食べた。
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」
僕は椅子から立ち上がる。雛罌粟さんもお弁当箱をバッグに入れると立ち上がった。
「よーし、午後も楽しんでいこう!」
やっぱりそうなるよなぁ。そろそろ休んでもいいんじゃないか?
……でもまぁ
「そうですね」
こんな一日も悪くない悪くない。
最後まで読んでいただきありがとうございました。