「うぅ……ビックリしたよぉ」
とんでもなく長く感じたお化け屋敷を終えて僕達は外に出ていた。
そして気がつけば外は日が暮れ始めている。
思った以上にお化け屋敷で時間を食ったな。そりゃあの進行速度じゃ時間もかかる。
雛罌粟さんはまだ怯えていて僕から離れようとしない。そんなに苦手なら入らなきゃよかったのに。
というわけでさすがに僕に抱きつくような事はしていないけど、雛罌粟さんは僕の腕にしがみついている。
だから当然僕の腕は雛罌粟さんの胸の中に埋まったままだ。正直すごい恥ずかしい。
というか雛罌粟さんが僕の至近距離にいるからワンピースから胸元がチラチラと見えている。明るいところに出て初めて分かった。
「あの、雛罌粟さん。そろそろ離れませんか?その……色々と恥ずかしいので……」
さすがにずっとこのままというわけにもいかないので、僕は雛罌粟さんに言った。
僕のモノも早めに収めないといけないけど、このままじゃ大きくなる一方だ。
「え?……あ!ごめんね、暑かったよね」
雛罌粟さんはようやく僕にしがみついていた事に気がついてパッと僕から離れた。
柔らかい感触が無くなってしまい不覚にも少し残念と感じてしまった自分が情けない。
雛罌粟さんも恥ずかしいと思ったのか顔を赤くさせている。
「それじゃあ、次こそ観覧車行きますか?」
「うん。行こう」
若干気まずくなりながらも僕達は観覧車へと向かった。
遊園地の外からも見えた観覧車はやはりとても大きくて、近くで見ると迫力があった。
僕達が着くとちょうど乗れるタイミングだったようで、僕達は同じゴンドラに乗った。
僕達を乗せた観覧車が動き始めた。ゴンドラがゆっくりと地上を離れていく。
ゴンドラの中はとても広いと言えるような場所ではなく、大人五人以上は入らなさそうだ。
そんな中僕達はお互いに向き合って座っていた。さっきまでの事もありお互い何を話せばいいのから分からなくなっている。
しばらく沈黙が流れた後、雛罌粟さんが口を開いてこの状況を打破した。
「えっとさ……竜胆君は今日遊園地誘ったの迷惑じゃなかった?」
「ん?急にどうしたんですか?」
いきなりの質問に僕は戸惑ってしまい聞き返した。
「だってよく考えたら君いつもお店だと耳栓してるでしょ?だから騒がしいの苦手かなって。それなら遊園地はもしかして嫌だったかなって思ったんだけど」
あぁそういう事か。というか雛罌粟さん何か勘違いしてるな。
「そもそも僕騒がしい所が嫌いってわけじゃないですよ」
「え?でも君いつも耳栓を……」
「あれは学校で読書してる時の癖がそのまま出てるだけですよ。僕が嫌いなのはその場に見合わない騒がしさのあるところです」
それこそ『Cafe Red Poppy』を騒がしいなんて思ったことは一度もない。というか僕そこまで気難しい人間に見えてるのか?
それでも僕が学校で耳栓をしているのは、学校の騒がしさがうるさすぎるからだ。
これが幼稚園や小学校ならまだ耳栓をする事も無かった。でも今僕が通っているのは高校で、いるのは高校生だ。
高校生にもなったなら少しは落ち着きのある行動をして欲しい。というかそういうものだと思っていた。あれなら幼稚園の騒がしさとさほど変わらない。
感覚的にはその場に合っていないBGMを大音量で流されている感じだ。それは嫌でしょ?
だから高校生の予想以上の騒がしさに耐えきれずに耳栓をしているのだ。四方八方から耳障りな音が聞こえるのは嫌だからな。
まぁ他にも理由はあるけど、それを言うのはちょっとね。
後は読書の世界に入り浸るためで、それが『Cafe Red Poppy』でも出てるってだけの話だ。
「だからむしろこういう遊園地での騒がしさは好きですよ。遊園地で騒がしいのは当たり前ですからね。その証拠に今日は耳栓つけてないじゃないですか」
たとえ雛罌粟さんとのお出かけでも騒がしかったら僕は迷わず耳栓をつけていた。
それをしなかったのは、遊園地でこの騒がしさが当たり前だと思ったからだ。
「だから全然迷惑じゃないですし、むしろ今日の遊園地とても楽しかったですよ。外でここまで遊んだのは初めてです」
それに言わないけど、いつも見れない雛罌粟さんの姿を見られたのも楽しかった理由の一つだ。
いつもはあのお店の中で落ち着いてコーヒーを出している雛罌粟さんがあそこまではしゃぐ姿を見たのは初めてだった。
結構アウトドアなんだなと、新しい一面が見れて面白かった。
「そっか、それなら良かった」
雛罌粟さんはそう言ってにっこりと笑った。
僕はその笑顔に思わず見惚れてしまった。やっぱり綺麗な人だなぁ……。
遊園地が楽しかったってのも本音だけど、やっぱり一番の楽しかった理由は雛罌粟さんと来れた事かもしれない。
今日一日雛罌粟さんと一緒にいられて、たまにならこういうお出かけも悪くないと思った。
そう思っていると座っていた雛罌粟さんがスッと立ち上がった。
「ねぇ竜胆君、隣座ってもいい?」
「え?でもここ二人で座ると結構狭いですよ?」
僕が詰めれば座れない事も無いけどかなり狭いと思う。この暑い中でそれは嫌だろ。
「いいのいいの。それじゃあ失礼して」
そう言うと雛罌粟さんは僕の右隣に座った。僕達の距離がグッと近くなる。
隣から感じる体温とフワッと感じる良い匂いから雛罌粟さんが隣にいるのが分かる。なんかドキドキしてきた。
「外の景色、綺麗だね」
雛罌粟さんが外を眺めながら呟いた。
「そう、ですね。すごい綺麗です」
僕も外を眺めて呟いた。
外にはまだ人がたくさんいて空の夕日に照らされている。そしてその夕日は綺麗に紅く輝いていた。
ゴンドラが結構高い位置にまで来ているのだろう。夕日がいつもよりずっと近く感じる。
ここで本当の太陽とは数キロメートルしか近づいていないと言うのは野暮な話か。
すると突然僕の右手が何か暖かいものにギュッと包まれたのが分かった。
気になり見てみると雛罌粟さんの左手が僕の右手を握っていたのだ。
僕はふと雛罌粟さんの顔を見てみた。
すると彼女は少し顔を赤くして俯かせていた。耳まで真っ赤だ。夕日に照らされているからより赤く見える。
「雛罌粟さん……どうかしましたか?」
「そ、その……ちょっとだけでいいからさ、こうしてたいなぁって」
僕の質問に雛罌粟さんは赤くなったまま答えた。
「君とはまだこういう関係じゃないわけだけど、せっかく……その……す、好きな人と一緒にいるんだもん。今からちょっとずつ距離を縮めていきたいな」
しっかりと好きと言われてしまい僕は顔が熱くなるのを感じた。今日多いなぁ。
「僕も……そうです。まだちょっと苦手なところはありますけど、少しずつ距離を縮めていきたいです」
これ以上の事を既にやっている仲なのに全然こういうのに慣れない。
でもこういう空気もなかなか悪くないと思い始めている自分がいる。
ちょっとずつでいいから二人きりの空気を作っていきたい。そう思えるのだ。
そこで僕達はお互い目が合った。
それからはもう目を逸せなくなってしまった。僕はジッと雛罌粟さんを見つめ、雛罌粟さんも僕を見てくれた。
お互いの顔がそっと近づいていくのが何となく分かった。僕の視界にはもう雛罌粟さんしか映っていない。
そして僕達はどちらからともなく唇を重ねた。ハジメテの時以来のキスだった。
「ちゅ……んむっ」
特に明確な前振りがあったわけではない。でも僕にはこうするのが自然だとすら思えた。
ソフトにただ重ねていたのは少しの間だけで、僕達はすぐにお互いの口腔内に舌を入れ始めた。
口腔内を舌でそっとなぞったり舌を絡ませたりして、お互いの唾液を交換していく。
狭いゴンドラの中にピチャピチャと唾液の水音だけが響き渡る。
すると雛罌粟さんの左手が僕の右手をそっと離れた。そのまま僕の体をなぞるように這っていき、僕の背中に回される。
それに合わせて僕も腕を雛罌粟さんの背中に回した。それにより僕と雛罌粟さんは抱き合うような体勢になった。
「んっ……くちゅ、れろ……ふぅ……んっ、ちゅぱ、れろ……んんっ、ぐちゅ……れろっ、くちゅ、んんっ!」
僕達の舌の動きはだんだんと激しくなっていく。雛罌粟さんの体が時々ピクッと震える。
一度相手を求めてしまえば簡単には止まれない。相手を求める気持ちがどんどん湧き出てくる。それは止められないし止めるつもりもない。
もっと、もっと彼女が欲しい。そして求めて欲しい。お互いがお互いに溺れそうになっている。
体は完全に密着させていてお互いの体温が直に伝わってくる。夏だというのに僕達はそれすらも求めていた。
お化け屋敷では恥ずかしかっただけだった彼女の柔らかさも、今は僕から求めている。
「ふぅん、んんっ!……くちゅ、ちゅぱ、んっ……れろっ、んあっ!んんっ、ぐちゅ……れろっ、ふむっ!」
舌を激しく蠢かせながら僕はそっと雛罌粟さんの体を撫でた。雛罌粟さんの吐息に嬌声が多く混じり始める。それにそそられて、僕はさらに動きを激しくした。
雛罌粟さんも僕の体を撫でてくれていて、とても気持ちいい。いつまでもこのままでいたいと思うほどに。
僕達はいつの間にかお互いに身を預けて、相手を貪るようになっていた。
そして時間も場所も忘れて僕達はひたすらお互いを求めあった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。