駐車場に着いて雛罌粟さんの車に乗ると、僕達は遊園地を出た。
さっきまでの事もあり、お互い話しづらくなってしまってしまい車内は静かだ。まぁ行きも静かだったけどね。
重くはないけどこのモヤモヤした雰囲気は本当に慣れないなぁ。どうしていいのか分からなくなる。
それでもボーッと外を眺めているとさっきまでのモヤモヤがちょっとずつ晴れていった。
はぁ、夜景っていいよね。明るいのは所々だからそれに集中することが出来る。
しばらくして雛罌粟さんが口を開いた。
「ねぇ、夕食さ、その辺のお店で食べない?もう遅いし」
え?夕食?
僕は首を傾げそうになってハッとした。そうか、もうそんな時間か。忘れてたな。
「そうですね」
僕が頷くと雛罌粟さんはお店を探すために周りを見渡し始めた。
結果としてちょうどファミレスが近くにあったので、僕達はそこへと向かった。
そういえば誰かと外食ってのも本当に久しぶりだな。この最近雛罌粟さんの影響で初めてだったり久しぶりな事が多すぎる。
僕達はファミレスで手早く食事を済ませると僕達は再び車に乗った。お互いさっきの事で緊張しているのか、特に会話は無かった。
お会計は雛罌粟さんがしてくれると言ったけど、それは悪いので僕と雛罌粟さんで割り勘にした。一応お金は持ってきてるからさ。
車に乗り、いざ帰ろうと思っていると雛罌粟さんがジッとしたまま車を出発させない。
どうかしたのかと思っていると、しばらくして雛罌粟さんは口を開いた。
「あ、あのさ、竜胆君は今日この後時間ある?」
「え?うーん、それはまぁ……」
ありますよ。そう言おうとして僕は止まった。この会話前にもどこかで……
……そうだ、雛罌粟さんの家でハジメテシた時にも同じ事を聞かれていた。
そう思って隣を見ると思った通り。雛罌粟さんの顔は赤くなっていった。太腿を少し擦り合わせてモジモジしていた。
つまりは…………そういうお誘い、って事でいいのかな?
それが分かった瞬間僕は顔がジンジンと熱くなるのを感じた。
それを隠すように僕は小さく頷いた。
僕の反応を見て僕の意思を察したのか。雛罌粟さんは静かに車を出発させた。
もしかしたら外で食事を済ませたのはこのためかもしれない。帰ったらすぐに出来るように、と。
正直帰ったらと言わず今すぐここでシたいと思わなくもない。というか車にいる間何度も雛罌粟さんを押し倒そうと思った。
そんな事を胸にしまいながら僕達を乗せた車は静かに『Cafe Red Poppy』へと走っていく。
行きは速く感じた道も今はすごくゆっくりに感じる。一秒一秒時間が過ぎていくたびに再びモヤモヤが溜まっていく。
ふぅ、落ち着け。ここでソワソワしてても仕方ないんだ。今は少しでも落ち着けよう。
僕はチラッと雛罌粟さんを見た。
恥ずかしそうに顔を赤くして、それでもそれを隠すように運転を続けていた。
やがて僕達は『Cafe Red Poppy』に到着した。
僕達は車を出るとお互いに目を逸らしながら中に入った。これが初めてではないのにすごい緊張するな。
すると中に入るや否や雛罌粟さんは僕に抱きついてきた。僕もそれに合わせて彼女を強く抱きしめる。
彼女を感じられるように強くギュッと。雛罌粟さんのいい匂いが僕に漂ってくる。
お互いがお互いを欲しくてたまらないのだ。今すぐにでもシたい。
僕達は息を荒くしてお互いの身体を擦り付け合っている。戸惑っていたこの前とはえらい差だ。観覧車での事もあるんだろうけどさ。
でもお互い汗をかいているし、さすがにここでするわけにもいかない。
僕達は顔がくっつく少し手前まで顔を近づけた。雛罌粟さんの吐息がこそばゆい。
「あの……先にシャワー、使っていいよ」
僕に抱きしめられたままの雛罌粟さんがボソッと言った。さすがにシャワーは別々だよね。
「分かりました。ありがとうございます」
一度使わせてもらっているので場所は分かっている。僕は雛罌粟さんを離すとシャワールームへと向かった。
長々としていても雛罌粟さんに悪いと思ったので、僕は出来るだけ手早くシャワーを済ませてシャワールームを出た。
特に着替えは持ってきていないので、仕方なく今日の私服をまた着ることにした。その…………どうせ後で脱ぐし。
シャワールームを出てどうしようかと悩んでいると、廊下の角から雛罌粟さんがやってきた。
「あ、シャワー、空きましたよ」
「う、うん。それじゃあ私の部屋で待っててよ。君のリュックもそこに置いておいたから」
「は、はい。分かり、ました。ありがとうございます」
ぎこちない会話をすると僕は雛罌粟さんの部屋に向かった。
部屋に到着し中に入ると、ソファーの上に僕のリュックが、部屋のテーブルの上にコーヒーカップが置いてあった。
近づいて見てみるとカップの中にはコーヒーが注がれていた。
湯気がないって事はアイスコーヒーかな?僕がシャワーを浴びている間に淹れたのだろうか。
すると近くに小さな紙切れを見つけた。
そこには簡潔に『それ飲んで待ってて』と書いてあった。
ここ最近毎日のように飲んでいる僕としては、ちょうど飲みたいと思っていたところだったので嬉しかった。
夜にここに来ると毎回出してくれるけど、こういう時にも出してくれるのは嬉しいな。
僕は遠慮がちにソファーに座るとコーヒーを一口飲んだ。
はぁ、落ち着くなぁ。緊張していた気持ちがちょっとだけ解けた気がした。
僕は一息つくと再びコーヒーに口をつけた。
コーヒーを飲み終わると僕は今日の事を思い返していた。
初めて遊園地に行って色んな事をして遊んだ。
お弁当も美味しかったし、雛罌粟さんの新しい一面も見れたし、今日は本当に楽しかった。
誰かと一緒にいて楽しいと思えるのはここ最近分かってきた感情だけど、単に一緒にいるだけではなく、色んな事をしてみるのが大切なのかもと思った。長く一緒にいるつもりなら尚更だ。
そんな事を考えていると部屋のドアがガチャッと開いた。雛罌粟さんが戻ってきたようだ。
僕はふとドアの方を振り向いて────
──────思わず固まってしまった。
目の前の雛罌粟さんはバスタオル一枚を体に纏っているだけの姿だった。他は一切身につけていない。
「お、お待たせ……」
「………い、いえ」
僕は雛罌粟さんから目が離せなかった。そして自分でも気づかない内に見惚れてしまった。
バスタオルで大事な部分は隠してあるものの、それでも綺麗は体のスタイルは隠せていない。バスタオルから体のラインがくっきりと浮かんでいる。
豊満な胸がバスタオルから覗いており、お化け屋敷での感触が思い出される。
白い肌は上気していて、シャワーのためかしっとりとしているように見えた。
長い黒髪は既に解かれていて、ストレートに流してある。こちらもシャワーのせいかより艶やかになったと思う。
顔は赤く、恥ずかしそうに俯かせている。そのそそられるような顔は反則だ。
ただでさえお預け食らってる僕にとって、その姿は天敵だよ。
「そ、そんなにジッと見ないでよ。恥ずかしいよ」
「あ、ご、ごめんなさい。その………すごく綺麗だったので」
雛罌粟さんが恥ずかしそうに胸元を手で隠して、僕はハッとした。もしかして結構見つめてちゃったか。そしてつい本音を言ってしまった。
「綺麗って……………別に、前も見たじゃん……」
たしかに台風の日に一緒にお風呂に入って、その時に雛罌粟さんのバスタオル姿は見ている。
でもあの時とは状況が違うからなぁ。つい如何わしい目で見てしまう。
それに──────
「その、いつ見ても綺麗なんで」
恥ずかしがっている雛罌粟さんを見て、何と返せばいいのか分からずに本音で答えた。
「そ、そう。ありがとう……」
照れている雛罌粟さんを見て、僕はソファーから立ち上がった。僕もそろそろ限界だ。
雛罌粟さんもゆっくりとこちらへと歩いてくる。そして僕も雛罌粟さんに近づいていく。
そして僕はそっと雛罌粟さんを抱きしめた。柔らかい肌の感触や暖かさ、フワッとしたいい匂いが一斉に僕の理性を削ってくる。
今すぐにでも押し倒したくなったけどグッと堪える。ガッツき過ぎてしょんぼりしたのはついさっきの事だ。
「あの……暑苦しくないですか?」
「うん、むしろ気持ちいい、かな」
そうか。夏だからあんまりベタベタするのは嫌かなと思ったけど、よかった。
僕もこうやって雛罌粟さんをギュッとするのは気持ちよくて好きなんだよね。されるのは恥ずかしいけど。
僕はしっとりと濡れた雛罌粟さんの髪を手櫛ですいた。手から伝わってくる感覚が心地よい。
「ほぅ……君に撫でられるとすごく安心するな。ちょっと大人としては情けないけど」
そうなのかな?何となくやってみたかったからやったけど、喜んでくれて良かった。
すると雛罌粟さんは僕に体を預けてきた。全てを僕に委ねると言わんばかりだ。
「竜胆君………そろそろ、ね?」
「………はい」
僕は雛罌粟さんを離すとベッドに向かった。
ベッドに着くと僕はそっと雛罌粟さんを押し倒した。艶やかな髪がベッドに広がった。
その姿を見てに思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
「あの……明かりは……」
「えっと………出来ればこのままでシたいなって。ダメ、ですかね?」
この前は恥ずかしくて部屋を暗くしたけど、今日はこのままシたい。ちゃんと雛罌粟さんを見たいのだ。
「そっか…………うん、いいよ。ちょっと恥ずかしいけど……私も君にちゃんと見てほしいし」
雛罌粟さんは顔を赤くしたまま頷いてくれた。
僕はゆっくりと雛罌粟さんに覆いかぶさると再び彼女を抱きしめた。
僕はそっと唇を重ねる。あえて舌を絡ませることのないソフトなものにした。
理性が限界だからこそ、僕はこの時間をゆったりと楽しみたかったのだ。
それから一旦唇を離して息継ぎをすると、僕はまた唇を重ねた。今度はねっとりと舌を絡ませる。
こうして僕達の長い夜が始まる。
最後まで読んでいただきありがとうございました。