心地よい気分の状態で僕は目を覚ました。
視界にあったのは白い天井。見覚えあるな………そうだ、雛罌粟さんの部屋の天井だ。
段々と意識が覚醒してきた僕はちょっとずつ体に力を入れていった。
部屋の中にはまだ昨日の残り香が漂っていた。それはベッドにも染みついていた。なんとも言えない匂いがベッドからしてくる。
しかしもうここにいる事に驚かなくなっている自分がいるな。慣れって恐ろしい。
まだちょっと身体がダルいな。昨日出した精気が完璧に回復しているわけではないようだ。
昨日はさすがに激しくし過ぎたかな。まだそこまで経験があるわけでもないのに、無理をしてしまったのかもしれない。
久しぶりでお預けを喰らっていたとはいえ、少し反省しないとな。反映されるかは分からないけど。
でも、すごい気持ち良かったんだよなぁ。またあれくらいの事はシたいと思った。
「あ、竜胆君起きたんだ。おはよう」
すると隣からよく聞き慣れた声が聞こえてきた。
ふと隣を見てみるとそこには裸体のままの雛罌粟さんが、僕のことを覗き込んできた。
相変わらず全てを包み込んでくれるような優しい笑顔だ。見ていてすごい安心する。
艶のある黒髪はサラッとベッドにまで垂れていて、肌には昨日つけた赤い痕がまだ残っていた。たわわな胸はベッドに押し付けられて潰れている。
その姿を見た瞬間、昨日のことが一気に頭の中を駆け抜けて恥ずかしくなり僕は少し目を逸らした
「おはようございます。あの……今何時なんですか?こんなにのんびりしててもいいんですか?」
この前は朝起きたらもういなくて少しガッカリとしていた。だからこのシチュエーションは初めてだ。
けどこのシチュエーションは思ったよりも好きだな。すごい目覚めが良くなった気がする。
「まだ四時前だよ。少し早く起きちゃったみたい」
雛罌粟さんはクスッと笑って言った。あ、本当だ、まだ外が薄暗い。そうか、まだそんな時間か。
「どうします、もう起きますか?それとももう少し休みますか?」
僕は何となく雛罌粟さんに聞いてみた。
本当なら僕だけベッドを抜けて帰るというのが普通なのかもしれないけど、それは何か嫌だった。
すると雛罌粟さんは顔を急に近くして、ちゅっと僕の唇に自分の唇を触れさせた。
「あの…………君と……その……こういう事したい……とかじゃ、ダメかな?」
顔を離した雛罌粟さんは顔を赤くしてボソッと言った。それにつられて僕の顔も熱くなっていく。
「……えっと……僕は、いいですよ。雛罌粟さんが、それでいいなら」
「そっか……えへへ、ありがと」
雛罌粟さんはそう言うと僕に身体を寄せて、ギュッと抱きついてきた。僕はそれを抵抗することなく受け入れると、左手を雛罌粟さんの腰に回して、右手を雛罌粟さんの左手を握った。指をそっと絡ませる。
雛罌粟さんの柔らかくて暖かい感覚が僕の身体にじんわりと広がっていく。心地よくて、何かを解されているような感覚だった。いつ感じても落ち着くなぁ。
「でも、急にどうしたんですか?ちょっと意外でしたね」
「だって……昨日の夜何もしないで寝ちゃったじゃん。だから今したいなぁって………嫌、かな?」
たしかに、昨日はシ過ぎて手を繋いで終わってしまった。それは嫌だったのか。
「いえ、それならいっぱい楽しみましょう」
「うん」
僕達は近づいたお互いの顔をしばらく見つめていた。それから僕達はどちらからともなく唇を重ねた。
お互いゆっくりと舌を入れて口腔内を舐め回す。僕は雛罌粟さんの口腔内を味わった。
舌や歯茎をなぞったり、唾液を交換したり、啄むようにしたりと様々なキスを楽しんだ。雛罌粟さんも積極的に絡んできた。
僕はそれと同時に雛罌粟さんの身体の感触も楽しんだ。柔らかくて暖かい、それでいていい匂いがしてきてこのままずっと身を任せたいと思えるほどだった。
「んんっ……ふわぁ、れろ……んっ、くちゅ、ふむっ………はぅっ、んあっ、ぐちゅ……こくっ、はむっ」
雛罌粟さんの舌も僕の口腔内をゆっくりと蠢いていた。昨日の夜の行為に比べたら些細なことなのに、これだけでも僕はとても気持ち良かった。
激しくしているわけではないからすぐに酸欠になることもない。僕達は体勢をかえたりしながら数分間唇を重ねていた。
夏の最中に抱き合っていた僕達は少しだけ汗ばんできたが、それすらもお構いなしだ。
やがて雛罌粟さんの口腔内を全て味わうと唇を離して、そのまましばらく抱き合っていた。
トクントクンと耳心地のいいお互いの心臓の鼓動が耳に入ってくる。
滲み出た汗で雛罌粟さんの黒髪は顔に張り付いており、それがまた綺麗に見えた。思わず抱きしめる力を強くする。
「んっ、ちょっと……。分かってると思うけど、朝はシちゃダメだからね。夜みたいにされたら仕事に支障が出ちゃうから」
「もちろんですよ」
その辺はちゃんと分かってる。雛罌粟さんは仕事を大切にしてるからな。その辺は尊重したい。
「雛罌粟さん………その………身体、何ともないですか?昨日あんなに、しちゃったので」
自分でやっておいて今さらだけど、僕は腕の中にいる雛罌粟さんに問いかけた。
「ん?そうだなぁ…………昨日は君が激しくシ過ぎるから腰が抜けたり、身体が痺れたり。後は汗とか唾液とかで身体がベトベトだけど………」
「うっ……す、すみません」
僕は思わず謝った。ガッツかないつもりだったのに、結局はガッツいてしまった。何とも情け無い。
「でも、それが君なりの愛し方かなぁって思ったら、むしろ嬉しくなっちゃった」
雛罌粟さんは楽しそうに言うと、フッと笑って僕の右腕に抱きついた。彼女のむにゅんとした胸の感触が僕の右腕に伝わってくる。
僕なりの愛し方って………たしかに否定はしないし出来ないけどさ。
それにしても雛罌粟さんのスキンシップが激しくなってきてるな。意識してる……わけじゃなさそうだけど、ちょっと恥ずかしいかな。
まぁ『ちょっと』になってきてる辺り、僕も変っちゃってるんだろうけどね。これはいいのか悪いのか。
僕は雛罌粟さんの首をそっと撫でてあげた。雛罌粟さんはピクッと跳ねたが、すぐに僕の手に首を擦り付けてきた。
「ん〜〜〜〜〜〜」
その姿はとても可愛らしくて、年上な事を忘れてしまいそうだった。猫みたい。
しかししばらくすると雛罌粟さんはハッとして少し僕から距離をとった。
「あ!あの、今のは……その……寝ぼけてただけだから!その……別に甘えるつもりは……」
あー…………………………………………。
「別にもうちょっと甘えててくれてもいいですよ?」
「〜〜〜〜ッ‼︎」
僕の言葉に雛罌粟さんは恥ずかしそうに悶える。失礼かもしれないけど、可愛いと思った。
「……やっぱり君には甘えちゃうんだよなぁ。恥ずかしい」
雛罌粟さんは僕から目を逸らしながら呟いた。
「昨日も言いましたけど、僕としてはもっと甘えてくれてもいいんですよ?僕もそれが嬉しいんですから」
こうやって雛罌粟さんに甘えられて悪い気はしない。というかすごい嬉しい。
普段はお姉さんタイプの雛罌粟さんがこういう時に甘えてくれるのは、見ていてとても癒される。
それに夜は僕もガッツいてしまっているから実質プラマイゼロだ。むしろ昨日は僕がやり過ぎたまである。
「本当に?引いたりしない?」
「もちろんですよ。こういう時くらいは頼ってもらわないと、僕だけガッツいているみたいで情け無いので」
イコールではないにせよ、僕と雛罌粟さんはそうやってお互いを頼る関係だ。だからこれだって全然不思議な事じゃない。
「そう?よかった」
雛罌粟さんはそう言って再び距離を縮めてきて僕に抱きついてきた。僕は待ってましたとばかりにギュッと抱きしめる。
すると僕な雛罌粟さんの身体がうっすらと赤くなっているのが見えた。
それは昨日僕が雛罌粟さんにつけたキスマークだ。
一晩経ってるのにまだくっきりと残っている。赤いキスマークは雛罌粟さんの白い肌を艶やかに染めていた。
雛罌粟さんは僕の視線に気がついて、自分の身体を見下ろした。
「君がいっぱい痕つけちゃったから、いつもの服じゃ隠せないかも。また恥ずかしい事になったなぁ」
「今回は僕もですけどね」
これが冬なら冬服で首筋まで隠せるからいいけど、夏場はなぁ。まぁ僕のことなんて誰も見てないだろうしいいけどさ。
僕はそっと雛罌粟さんの背中についているキスマークをなぞった。
「ひゃうっ‼︎」
その瞬間雛罌粟さんは可愛らしい嬌声をあげて身体を跳ねさせた。
「気持ち、いいんですか?」
試しに僕は脇腹についているキスマークをなぞってみた。またしても雛罌粟さんの身体がピクッと跳ねた。
「んんっ!……だって……君にいっぱいつけられたの。それが何だかさっきからジンジンするの……ねぇ、もっとして?」
そう言って雛罌粟さんは僕の腕を抜けてタオルケットから出ると、裸体を僕に晒した。
スタイルの整った裸体にはおびただしい数のキスマークがついていた。
首筋はもちろん肩や腕、腹や足にもキスマークはついていて、肌を赤く染めている。
僕はその痕の一つ一つをじっくりと眺めた。
「あの、どうかしたの?」
僕にジッと見られて恥ずかしかったのか、雛罌粟さんが少し身体を隠しながら聞いてきた。
「あ、いえ、その……すごいついてるなって」
「そ、そんなの……君がつけたんだよ?」
それは分かってるんだけどさ、なんか自分がやったって実感が湧かないんだよな。
でも雛罌粟さんがこれだけの事を受け入れてくれたのは、すごい嬉しく感じた。
僕は雛罌粟さんを抱き寄せると、キスマークを繋げるかのようにそれらをなぞっていく。力を込めないように指先でツーっと。
「んっ、あっ……ふぅっ、やっ、んんっ……なぁっ、んあっ、あんっ、んんっ……」
至近距離から発せられるその甘ったるい嬌声にゾクゾクッとした僕は、そのまま立て続けにキスマークをなぞっていった。
最後まで読んていただきありがとうございました。