※この作品はR-18です。

どことなく壊れていて、どことなく甘い生活   作:MC RAT

75 / 257
第74話 流出

 文化祭が終わったその翌日。

 去年だったら休日を挟んで登校して、いつも通りの授業が待っている生活だった。文化祭は土曜日までやってたからな。

 しかし今年は違う。今年はお休みとなったのだ。もちろん文化祭の振り返り休日とは別である。

 

 

 何と昨日学校からメールが届き、臨時休校となったのだ。

 

 

 詳細は書いておらず教師陣も何やら困惑しているのが窺える。教師というのも楽な仕事では無さそうだな。

 僕としては一日休みになったのはとてつもなく嬉しい事だ。これを漫喫しない手はない。朝ご飯も昼ご飯も今日は抜きだ。

 育ち盛りでも無い僕が、それくらいのご飯抜いても問題無い。むしろそうでもしないと食べすぎだ。

 まぁ雛罌粟さんのお弁当は嬉しいから貰ってるけど。

 読み溜めていたラノベを読み漁って、その日録画されたアニメを見た。それをダビングしながらゲームを進めている。

 いつもは授業のせいで参加できないイベントも参加出来て、いい事尽くめだ。

 

 

 そんな風に過ごしていれば夕方なんてあっという間だ。

 まったく、いつもは夕方が早く来いなんて思ってるけど、今日ばかりは逆だな。

 僕が夜の予定を考えながらゲームをしていると、東風から連絡が来た。

 何だ?こんな時間にアイツからとは珍しい。また勉強教えてとかじゃないだろうな。

 そんな事を思いながらスマホを見てみると『六時半に『Cafe Red Poppy』に来て』とだけ書かれていた。

 ちょうどいい。今日休みになってしまって、『Cafe Red Poppy』に行くかどうか悩んでいたんだよね。

 せっかく呼ばれたし、本来今日やるべき事は終わらせている。ぜひ行かせてもらおう。

 

 

 そんなわけで六時半になって、自転車に乗った僕は『Cafe Red Poppy』へと向かった。

 あの連絡からして東風も来るんだろうけど、何でわざわざ『Cafe Red Poppy』に呼んだんだろう?

『Cafe Red Poppy』に着くと、店の前には既に東風の自転車が置いてあった。お、もう来てるのか。

「すみませーん」

 店の中に入ると、そこには東風と雛罌粟さんが待っていた。二人は無言で僕の方を見てくる。

 東風は呆れたように、雛罌粟さんは不安そうに見てくる。

 何だ、この変な迫ってくるような雰囲気は?

「えっと………何?二人揃って」

「りん兄、とりあえずこっち来てください」

 よく分からないけど、僕は東風に言われるがままに東風の隣に座った。なんか迫力あるな。

 

 

「で、とりあえずこれ見てください」

 そう言って東風は自分のスマホを見せてきた。そこに写っていたのは一つのネットニュースだ。

 僕はとりあえずニュースのタイトルに目を通す。

 

 

『蘖高校、文化祭にて個人情報流出⁉︎』

 

 

 ほぅ。

 自分の通ってる高校の名前が出てきても、僕はそこまで驚かなかった。それでもニュースを読んでみる。

 まぁ簡単にまとめるとタイトルの通りだ。ってそりゃそうだ。

 

 

 この前文化祭があったウチの学校にて、数名の個人情報の流通が確認されたんだと。氏名とか住所とか顔写真とかな。

 何でもその情報は既にネットにばら撒かれてしまったようだ。

 SNSはもちろんのこと、学校とは関係のない会社や大学のみで使用しているパソコンなんかにも送られてきたみたい。その会社や大学はパニック状態になったようだ。それも複数の所が被害に遭っている。

 つまり犯人はそれらの会社のネットに侵入したことになる。要はクラッキングだな。

 それと同時に個人情報だけでなく、その生徒の隠し撮りした動画までばら撒かれたようだ。

 

 

 しかし日本の警察も馬鹿じゃない。どこから流れてきたのかはすぐに特定したようだ。

 それはウチの学校のパソコン室からなんだと。そこのパソコンから発信されたらしい。遠隔操作された可能性は低い。

 知っている人も多いかもしれないが、学校のパソコンのセキュリティは結構厳しい。

 ウイルス対策はもちろん、SNSなどの一部のサイトへの閲覧や投稿はロックがかかっているため不可能だ。

 犯人はそのロックをバレないように外しつつ、この犯行を行ったわけだ。

 しかもパソコン室にはパソコン部の生徒や顧問が時々出入りしていて、犯行時刻の時にはいなかったものの、その前後には頻繁に複数人が出入りがしてたらしい。

 だから犯人はその間の短い時間で犯行を行ったとされている。

 だから犯行現場を見た者はおらず、犯人の特定も不可能。

 しかも文化祭の日でたくさんの人が出入りしたから、犯人が学校内の者とは限らない。捜査の手は学校外にも及んでいる。

 そんなわけで犯人の特定は未だならず。警察が犯人特定に尽力してるとのこと。

 

 

「ほぉ、それで今日休校なわけだな」

 僕は記事を読みながら、その間に雛罌粟さんが出してくれたコーヒーを飲んだ。

 うん、美味しい。これだけでも来た甲斐があるってもんだ。

「んで、これを見せて何だ?これくらいスマホで送ってくれればいいだろ」

 何のために連絡先交換してんだよ。やり方分からないなら教えるけど?わざわざこの店に呼び出さなくても。

「もちろん、他に話すべき事があるから呼んだんですよ。雛罌粟さんとも相談して」

 ふーん、雛罌粟さんが認めてるのね。なら迷惑にはならないから安心だな。

 

 

「りん兄…………何でこんな事したんですか?」

 

 

「…………何のことだ?」

(とぼ)けないでください。これやったのりん兄ですよね?」

 顔を引き攣らせながら東風が迫ってくる。近い近い。

「お前なぁ『犯人は未だ特定されておらず』って書いてあるだろ?ニュースの記事は最後まで読め。馬鹿がバレるぞ」

 すると東風は僕の両肩をガシッと掴んできた。そのまま僕の体を激しく揺さぶってくる。

「こんな事しそうで出来るのがあなたくらいだからですよ‼︎」

「やめろ!コーヒーが飲めない」

 うるさいうるさい、耳元で叫ぶなよ。今耳栓してないんだからさ。

 コイツ、ここ数年で声デカくなったな。そこは昔の方が良かった。

「でも分からないぞ〜。もしかしたら文化祭の客の中に凄腕のハッカーがいたのかも………」

「いたとしてもこんなピンポイントで生徒の情報を流すわけないですよ!」

 というのも情報を流された生徒は、全て東風をいじめていた、もしくはそれに関係している生徒だった。

 ソイツらの個人情報や進路とかが大量に流れたわけだな。ちなみにコイツらの親の情報も含めてだ。

 しかもそれに付随して流された動画というのは、コイツらがこれまでやってきた悪行を撮った動画だ。

 東風へのイジメだけではない。他の生徒への執拗なナンパ、カツアゲや暴行。中には万引きや援交、身体を使った詐欺とかレイプなんかもあったんだと。校則どころか法律違反だ。

 もちろん被害者だけは黒塗りされていて、被害者の個人での特定は難しくしてある。

 それと、それらの情報などが流れた会社というのは、この流された生徒の進路先の会社や大学だ。いくつか専門学校もあったな。

 

 

「まぁよくあるこった、気にしない気にしない」

「よくある事でも無いし、気にもします!」

 うるさいなぁ、一々騒ぐなよ。もう夜中なんだし、雛罌粟さんに迷惑だろ。

 僕は東風の手を払うとコーヒーを一口飲んだ。東風も出されたんだから飲めばいいのに。せっかく暖かいのに冷めるよ?

「り、竜胆君………本当に、君が、これやったの?こんな………犯罪みたいなこと…………」

「みたいじゃなくて犯罪ですけどね。まぁぶっちゃけると僕がやりましたよ」

 すると雛罌粟さんは口を開けたままポカンとしている。なんか面白いな。こんな雛罌粟さん初めて見た。

「な、なんかの冗談、だよね?」

「いえ。ほら文化祭で一旦別れましたよね?あの後パソコン室に失礼してちょちょっと、ね」

 そんなビックリすることか?

 こんな大々的にされてるけど、やってる事はただの侵入とクラッキングなんだ。こんな事世界じゃ日常茶飯に起きてるって。

 

 

 しかし雛罌粟さんは口を開けたまま言葉を失ってる。おーい、大丈夫?目線がどっか行ってるけど。

「何で‼︎何で竜胆君はそんなに落ち着いてるの⁉︎竜胆君、犯罪者になっちゃったんだよ⁉︎バレたらとんでもないことになるんだよ⁉︎呑気にコーヒー飲んでる場合じゃないでしょ⁉︎」

「いや、雛罌粟さん。りん兄に関しては、そこはどうでもいいんです。今さらですから」

「え⁉︎」

 東風の言葉に雛罌粟さんはまた言葉を失なう。今日の雛罌粟さんはリアクションが大きいな。外にいる人の迷惑にならなきゃいいけど。

 

 

「はぁ………よりによって文化祭なんて人がたくさん来る中でこんな事を………そのせいで捜査の手は一般の人にまで及ぶし、どうするですか?学校の評判は落ちるし、パニックになってますよ?」

「今頃学校の前はマスコミだらけだったりして」

「他人事みたいに言わないでください!あなたが一番の当事者なんですよ‼︎」

 知らんよそんなの。興味ない。

 まぁもっとも、いくつかのマスコミ会社にもその情報は流したから、今頃有効活用して世間に発信してくれてるはずだ。

 さぁ今世間を騒がせているマスゴミの皆さん、特ダネは渡したぞ。今こそ活躍してくれ。

 それにあの状況じゃ、むしろ一般の人がやったと考えるのが普通だな。

 わざわざ人の出入りが多い文化祭の日を狙ったわけだし。まぁそれを考えてやったんだけどさ。

「これでアイツらの進路は終わったかな。ついでに世間的にも殺されると思うけど」

 進路先に自分達の悪行が流されたのだ。そんな人を入れてくれるところなんて無いだろ。

 それにコイツらのやってるSNSのアカウントも流したし、間違いなく荒らされるな。

 顔写真も流したから、これから一生太陽を見た生活は無理だろ。まぁ出来たとしても何年後になるやら。

 ついでに親の情報も流したからな。親子の縁を切られるか、子供と社会地獄の道連れにされるか。

 子供の悪行を知ってるかどうかによって変わってくるな。

 中には子供の悪行を知ってて匿ってた親もいたみたいだよ。ちなみにその情報も流した。

 これまで人をいじめていたヤツらが、今度は社会からいじめられるわけだ。

 僕は別にそれに関して何か思うところはない。元々無関係の人間達だったし。

 まったく、少し人から優位に立っただけで偉そうにしてるからこうなるのだ。

 

 

 中途半端な悪人ほど利用しやすいものはない。なるなら徹底的にならないと。これ今回の教訓ね。

 




 最後まで読んでいただきありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。