※この作品はR-18です。

吸血姫に飼われています(R-18)   作:ですてに

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お情け程度のR要素。


高校三年生・秋

 (あれ……味が。変というか、苦味がきついのに、なんだか薄い?)

 

 大切な朝の日課を果たしたと思ったものの、ひょっとしたらこれは良くない傾向かもしれないと、すずかは感じ取っていた。味は彼の身体状態を、隠すことなく教えてくれる。その違いが分かるぐらいに、彼女がこの日課を続けてきたという証拠でもあった。

 

「どうしたの、すずか……?」

 

 日常に組み込まれている朝練の兼ね合いもあって、アリサも目を覚ましていた。すずかは自分の迂闊さを反省する。吸い出した後も、愛しの彼が未だまどろみの中にいる時点で異変に気づくべきだったのだと。さらに思い起こせば、精を放つのには十分な硬度だったものの、強く反り返るほどの逞しさは感じられなかったような気がした。

 

「んっ……」

 

 彼女にも確認してもらおうと、すずかは深く口づけて空気に触れないように気を付けながら、お互いの舌を絡めて、味を確認していた液体の一部を受け渡していく。

 互いの吐息にちょっぴり熱がこもるまで、舌をむさぼりあってしまったのは、彼の一部を二人で味わいながら、世界で二番目に大切な……同性では一番の相手同士だから。

 大切な人と触れあう感覚はどうにも抗いにくいから仕方がないことなのだと、すずかは自己完結している。感じる幸福感に躊躇う必要は無いと。

 

「ふぅ……いつもよりさらっとしてるのに、苦味だけ強いなんて。変よね」

 

 だから、アリサも起き抜けに長いキスを交わし合ったことには特に何も言わず、すずかの意図を汲み取っている。漏れる吐息に二人とも色艶が混じるのはどうしようもないが、二人が指摘し合うことも無い。

 こくん、とアリサの喉が上下に動くのを確認しつつ、すずかも当たり前のように口の中の残りを唾液と混ぜて飲み干していく。今日の粘度だったら唾液と混ぜる必要もあんまり無かったかなと、後から感じるのだがそれも彼女にとっては些事なことだった。舌や喉に絡もうが絡まないが、飲み干すのがすずかにとっての『当たり前』であるから。

 

「喉に殆ど引っかからなかったし、硬さもいつもの状態じゃなかった。私もまだまだひろくんを見る目が浅いって分かっちゃった……すぐに察知できないなんて。とにかく、今日はおやすみだね」

 

「いや、その前に顔色を見……あー、まぁ、いっか」

 

 体調変化に対するすずかの判断材料に対する感覚に突っ込みを入れたい所だったが、大翔の体調不良の対応が優先されることと判断したアリサは、あえて口にするのを止める。

 

 確かにここ最近、本当に大翔は忙しかった。アリサの執念と努力の成果が結実し、重婚制度が成立確実となったことから、正式に大翔はすずかとアリサの婚約者となり、各方面へのお披露目や、両家の経営手法等、色んな人に師事しながら徹底的に叩き込まれているからだ。

 こうして、彼が家の寝室で休む回数も減っていて、学校が終わり次第飛行機に飛び乗って、実践という名の勉強を終えてそのまま地方でお泊り、なんてことも多い。プレシア達の協力や、彼自身の開発努力等々により、すずか達は転移装置の小型化・携帯化を成功させて、三人は常に持ち歩くようにしていたから、出先で集まって一緒に眠るようなパターンも増えている。

 毎日床を一緒にする、というのは、仲良しの秘訣の一つだとすずかやアリサは認識しているため、二人ともその辺りはとことん妥協しないし、調整の苦労を厭わない。

 

「すぐに予定表確認しないとまずいわ。後日に回せるやつとか、あるいは私達が代行出来るものとか」

 

 大翔と出会ってから10年あまりが経つ。その間の技術の進歩というのも目覚ましく、スマートフォンが完全に普及し、予定の細かな管理は、持ち運びに便利なタブレット派と従来の手帳派に分かれるようになりつつあった。無論、両方を使いこなすという猛者もいる。

 元々、機械系は大好きなすずかはタブレットとスマートフォンを併用しており、この辺りは、現在ミッドチルダに住むなのはとも話が合うところだった。アリサはお気に入りの手帳にびっしり行動予定を書き込んでいるから、この辺りの感覚は違うのだが。

 ちなみに、大翔の一日の行動予定は、彼女達二人も共有化している。お泊りになるのか、夕食は一緒に出来る可能性が高いのか、あるいは絶対に無理なのか、その辺りを考えて動くためにも非常に重要なものだからだ。

 

「……月宮家の可憐さんとの会食は、三人でとなっているから、外せないよね」

 

「今回の法案成立にも力を貸してもらっているから……難しいと思うわ」

 

 自分達のシンパになってくれたお嬢様の筆頭ともいうべき、一つ年下の月宮可憐という少女。アリサ達も礼は尽くさねばならない相手であるし、月村家よりも長い歴史を持つ名家に連なるお嬢様だ。今後も良好な関係を保たねばならない相手である。

 

「まぁ、あの子自身は、すずかが冷たく『今日会う気が無くなった』と言えば、枕を濡らしながら喜んでしまいそうだけど」

 

 男性への苦手意識から同性愛嗜好が強くなり、信用して被支配欲を曝け出せる、家としても同格に近い『月村すずか』は、相手にとって大変に貴重な存在らしい。異性が信用ならない裏返しでもあるが、すずか同様に名家の令嬢と言うのは、強欲や支配欲剥き出しの輩も多数寄ってくる面倒な立場のため、価値観が偏りやすくなる一面もあるようだ。

 

「私は、可憐さんの女王様にはなってあげられないんだけどな」

 

 そんな余裕などない、というのがすずかの本音だ。彼女のやる気の原動力は大翔を軸にしたものだから、慰み程度に遊ぶならばまだしも、本気で取り組んでなどいられないと考えている。

 

「……妙なのよね。そもそも、あの子はすずかにお熱であって、なんで会食に大翔とあたしまで誘ってきたのか。口上自体はいくらでも取り繕えるけど、どうにも意図が見えないわ」

 

「かといって、下手に断れる相手でもないもんね」

 

「そういうこと」

 

「ところで、大翔はまだ目を覚まさないの」

 

「ちょっと、心理面に干渉させてもらってるよ。まどろみの中にそのまま誘導した感じかな」

 

 魔法体系を知ることで、すずかは一族の力をより深く使役できるようになっていた。相乗効果により、精神面に作用する魔法においても、完全に得意分野としている。ただ、その実力を示す機会は非常に限定的で、実際、すずかがその能力を使うのも、大翔やアリサへの良質な睡眠の提供やストレスの緩和等が専らだった。

 

「……寝つきが悪い時には私もお世話になっているものね。絶対に利くセラピーを受けるようなものだもの」

 

 そのすずか自身というと、大翔にくっついて温もりを感じつつ眠るだけで、多幸感に包まれるというのだから、なんというか分かりやすいものである。

 

「ふふふ。私みたいに振り切れちゃうのもどうかと思うから、アリサちゃんはそれでいいんだよ」

 

 大翔を優先する思考だけでなく、体質的にも変えてしまおう、彼と生きること自体が自分の喜びになるようにと、自らの心だけでなく、一族特有の衝動が大翔の身体でしか満たされないところまで変革を進めてしまったすずかは、自身が『異質』と自覚していた。大翔をもし失うことがあれば、自分が瞬く間に壊れていくということも十分に分かっている。

 それで構わないし、それを望んだのがすずかだが、アリサもそうなって欲しいとは決して思っていない。アリサはアリサのまま、大翔を愛して欲しいという、すずかの願いである。

 

「とにかく、連絡するよ。中止というわけにはいかないだろうから、できれば延期かな」

 

「分かった。会食場所や護衛役との細かい調整はあたしがするから、最初の連絡だけ宜しく頼むわ。あたしがメインで動くようにするから、すずかは出来る限り大翔の傍についてあげて。アリシア達も呼んでおけば、一時的にすずかも動けるようになるでしょうし」

 

「……呼ばないと、だめ?」

 

 返事は明らかに不満の色を含んでいるが、アリサはやれやれと首を軽く横に振る。終生のライバルにチャンスを与えるような感じが嫌だと感じるのだろうな、と。

 大翔以外の事柄においては周りとの調和が第一にするすずかが、彼が絡むとどこか幼い子供のような駄々を捏ねることもある。そんなすずかを可愛いと思うアリサであるが、今回は甘やかせてあげるわけにもいかなかった。

 

「そんな拗ねた顔しないの。すずかやあたし以外に大翔を安心して託せて、今動ける人となると、アリシアやフェイトぐらいでしょうに。すずかがどうしても出ないとどうにもならない局面は出てくるんだから。あたしじゃ話を聞いてもらえない類の人もいるじゃない」

 

 格が低い家の娘だからと、窓口の折衝役の時点で門前払いということもある。その度にアリサは悔しい思いを押し殺し、すずかは内心憤るのだが……さらに風当たりの強い『自分達の伴侶候補』という立場、一番非難を浴びせかけやすい立ち位置に大翔を送り込んでいる自分達を思い返せば、少なくとも耐えることが出来る。

 三人の将来をつかむために、大翔を矢面に立たせている自分達が、非難や中傷に耐えれなくてどうするのだ……と。

 

「なら、フェイトちゃんだけでも……」

 

「家事能力がお察しだから駄目。護衛としてはいいけどね」

 

「はぁい……」

 

 ノエルやファリン達とて、予定変更となれば、月村家側の調停役として駆り出されることもある。忙殺される可能性が出てくる以上、身の回りの世話が出来て急に動ける、信がおける友人となれば、そう選択肢は無いのであった。

 

 

 

*****

 

 

 

 「というわけで、週末を利用して、予定も無理やりオフにしてやってきたわよ温泉郷!」

 

「し、しかも、露天風呂付庭付きの離れを確保したので、完全に三人だけの空間ですっ」

 

「両家の力を無駄に使って、食事時間はこちらの自由! 本館の食事処で食べるもよし、こちらに持ってきてもらうもよし! こちらから呼ばない限り、仲居さんはやってこないわ!」

 

「あ、あとは、人除けの結界を張れる携帯式装置も持参しているので、初秋のこの季節、ヌ、ヌーディストで過ごしても、も、問題ありませんっ……うぅ、やっぱり恥ずかしいよ、アリサちゃん」

 

「何を恥ずかしがっているのよ、すずか。こういうのは勢いが大事なのよ、ねぇ大翔?」

 

「お、おぅ」

 

 毎年の恒例行事で海鳴郊外にある、月村・バニングス・高町・テスサロッサ家で訪れている温泉郷に、大翔の体調が回復した週末に突然やってきた三人組。普段はこういう特別室に泊まることも無く、あえて大きめの部屋で皆でわいわいと休暇を楽しむのだが、元々、評判の高い老舗旅館であり、こういう離れの設備等もしっかりと整っていた。

 

(……アリサのテンションがえらく高いなぁ)

 

 目の前で芝居がかった台詞と振りをしながら、はしゃぐ二人を見て、大翔はそんなことを思う。すずかも恥じらいを感じつつも、完全に嫌という感覚でも無いと見えるから、はしゃいでいると見るのは間違いではなさそうだ。

 

「第一回婚前旅行というところね! 強行軍の二泊三日だけど、これはこれで悪くないでしょ?」

 

「まさか学校を休んでまで、業務を前倒しで片付けることになるとは思っていなかった」

 

「今日の授業の代筆はアリシアとフェイトに頼んだから大丈夫よ。明日になったら費用面はこっちで見るから合流してもいいって餌を巻いたけど、ふっふっふ……来れないようにしてあるのよねー」

 

「よっ、あ、アリサちゃん、策士!」

 

 頬を染めながら、事前に打合せをしていたのか、声を張り上げるすずか。これはこれで非常に貴重な表情なので、大翔は携帯電話のカメラで自然とその情景を収めてしまっていた。

 

「あ、あーっ! ひっ、ひろくんっ、撮っちゃダメーっ!」

 

「せっかく可愛い表情してたんだから、撮りたくなるじゃないか」

 

 携帯をさっさとポケットに仕舞い、制止に飛び込んできたすずかを受け止める。腕で抱き寄せつつ、頭にぽんぽんと軽く手を触れてからその髪をそっと撫で始めると、すぐに『はふぅ……』と息を漏らし大人しくなっていく可愛いフィアンセをあやしながら、大翔はアリサの策について問いかけた。

 

「いい一枚が撮れたよ。で、どんな手回しをしたのさ」

 

「その手練れが悪い男にしか見えないわよ。ま、あたしは大したことをしたわけじゃないわ。プレシアさんに少しばかりアリシアを束縛するように頼んで、フェイトにはなのはの一時帰還の対応を任せるように誘導したわ。今頃、フェイトになのはが明日急に数時間だけど海鳴に帰ってくるとメールが入るはずよ」

 

 束縛といっても、アリシアに似合うような服や小物等を数十点見繕い、プレシアに送っただけのことだ。普段、お世話になってるお礼です。組合せも色々考えてみて下さいね、とメッセージを添えて。

 なのはがミッドチルダから一時帰還するのも、大翔と忍の共同開発である試作品の砲撃強化型カートリッジ等や使い捨ての防御結界展開スフィア等を取りに来なさい、とアリサが連絡したためだ。なのはからの依頼で、開発を続けている製品の一つである。納品物については、ドイツから恭也と共に一時帰国中の忍が管理しており、フェイトはなのはの話し相手といったところであった。

 

「プレシアさんがアリシアや紗月を離さないのが目に見えるな……フェイトは来ようと思えば何とかなりそうな気もするなぁ」

 

「友達思いのあの子がなのはを蔑ろにすることは出来ないでしょう。だから、想い人に対したって攻めきれないのよ、未だに。ま、性格を利用するあたしが言えることじゃないけど」

 

「フェイトの好きな人か……アリサは聞いてるって前から言ってるんだよな」

 

「もう数年越しの片思いよ。どれだけ拗らせるつもりなんだか」

 

 若干幸せ空間に呆けかけていたすずかも、大翔とアリサのやり取りを聞いて、内心で唸ってしまう。

 すずか自身としては、フェイトが大翔を想っているのも知っているし、もし大翔も望むなら輪に入るのも許容できるかな、とは考えていた。フェイトはもちろん魅力的な女性と知ってはいるが、大翔やすずか達にとっては、同じ学年であっても妹的な存在であり、まずその意識が先に立つ。大翔に至ってはその意識が強いからか、フェイトの感情が異性に向けるものであると、未だに勘付く様子が無い。

 

(フェイトちゃん、甘えはするんだけど……良くも悪くも可愛い妹枠での行動に収まってるもんね……)

 

 まったくもって脅威に感じないのである。仮に明日、フェイトが恋心を優先させて、この温泉宿の離れまでやってきたとしても、それはそれで、と思うすずかである。

 

(仮にやってきたとして……うーん、私達の乱交に二の足がすくむだけかも)

 

 こんな場所を予約し、人除けの結界を張るということは、そういうことだ。アリシアが来た場合は、また別の対応が必要となるけれども、フェイト一人であれば、そう身構える必要も無い。

 

「え? すずか、突然どうしたんだ」

 

「せ、せっかくの温泉ですから、まずは入浴致しましょう。脱衣のお手伝いをさせて頂きますね、ご、『ご主人様』」

 

 まずは、彼の脱衣をお手伝いするところから始めよう。アリサの提案で、「旦那様傍仕えのメイド」を演じ始めたすずかは彼のシャツのボタンに手をかけて、一つ一つ丁寧に外していくのだった……。




本編も温泉直前だし、平行して書くのもいいかなということと、
野戦!野戦!という神の声も頂いたもn(ry

はい、間隔が空きすぎて申し訳ございません。
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