ひとまずカリムさんの話はこれでおしまいです。
翌朝。
寝台に寝そべったまま、逢瀬の残り時間への名残惜しさを感じながらも、カリムは昨晩自分の中をかき乱していた、大翔の怒張に手を添えて、擦り上げながら丁寧に舌を這わせ、亀頭に吸い付き滲み始めたカウパー液をあますことなく舐め取っていく。
「シャッハが見たりしたら、どこまで爛れているのかと、強く叱るでしょうけど」
それも面白いかも、とカリムは微笑みながら、奉仕の手を止めることは無い。自らの手から、舌から与えられる甘美な刺激に、愛し慕い、終生の相手だと決めた男が悦楽の声を必死に堪えている表情が、愛おしくて仕方なく思う。
「大好きな人に気持ち良くなってもらいたい、繋がる時だけじゃなくて、奉仕でイッてもらえると嬉しい。それだけの話なんだけどね」
無理強いされられて、大翔の性器へ口づけをしているわけでもなく、望んで行っているだけのこと。
そもそも、彼は自分からセックスの内容に対して、希望を出すことが殆ど無いのだ。求められれば全力で応え、満たそうとしてくれる。最初はその優しさに溺れ、気持ち良さを貪るばかりだったが、幾度か身体を重ね合い、すずかやアリサが懸念することが実感として伴ってくる。
自分達に応えるのに一生懸命で、彼のガス抜きや癒しになってなければ、意味がない──。正妻二人の苦悩を、カリムは正しく理解するようになっている。
「く、あっ」
すずかはすずかで、彼の乳首や耳を舌で舐めたり、口に含んでみたりと、カリムが刺激し続けている大翔の性感をより高めようとしている。耳元を舐める際に、我慢しなくていいのだと、理性を蕩かすような声で、彼の枷を外そうと囁きかけることも漏れなく行っていた。
その甲斐あって、やっと彼の唇から、声が漏れ始める。すずかとカリムは視線を交わし合い、攻め時だと意思確認を行う。
男の喘ぎ声はみっともないし、興も覚めるからと聞いたことがあるが、責める女からすれば、もっと啼いて欲しい、欲に蕩けた声を聞かせて欲しいと思う。自分達ばかり嬌声を上げるのは、割に合わないじゃないか、自分達だけ恥ずかしいじゃないか、という思いがある。
「!……!!!」
声にならない悲鳴を上げ始める男に、陰茎を可能な限り口中へと収め、強い勢いでしゃぶりつき、舌を休みなく絡ませる。収まりきらなかった部分は指でしっかりと絡め取り、擦る刺激を早く、強くしていく。
すずかの手、舌の刺激も激しさを増していく。加えて、彼の手を自分のおっぱいに沿わせて、自由に弄ばせるようにする。手に与えられる弾力や熱からも、彼の情欲を強く刺激するように。
「さて、そろそろカリムの口の中に、びゅー、びゅーっ、ってたぁくさん出してもらうからね、大翔?」
この間、アリサは大翔の膝枕をしながら、髪を梳くように撫でていたのだが、覆いかぶさるようになって、すずかが責める反対側の耳元で囁くと、大翔が全身を一度強く震わせる。
「ほら、吸っていいわよ……大翔の子供が出来てから、おっぱいがまた大きくなっちゃったの、アタシ。分かるでしょ? 以前は大翔の手に収まっていたのに、そろそろ溢れそうになるぐらい……」
すずかはグラビアアイドル顔負けの立派なモノをお持ちだが、アリサとてハーフの血筋もあり、元々美乳と呼ばれる類のレベルだ。それが妊娠を経て、母体となった彼女の身体にもさらなる変化が生まれ、アリサの発言通りになっている。
「まだ、安定期でもないけど、大翔が欲しいって感覚は変わらないし……ふふ、美味しい? 大翔が毎日しっかりアタシ達の身体をケアしてくれるから、つわりもひどくないし、セックスにしても、子宮を魔法でしっかり守ってもらってるし、ふふ、安心して楽しめるわ」
つわりにしてもそうだが、妊婦の体調は精神面の安定でも大きく左右されることが多い。身体の不調を感じても、大翔の魔力を流してもらいながら安静に努めたりと、不安に感じる時間が少なく済んでいる。
「気持ち良くことだけを考えて……アタシも、すずかも、カリムも、変わらずアンタのものなんだから……あんっ、夢中で吸って、そろそろキそうなの?」
「いいよ、ひろくん……私達三人の匂いを感じて、暖かさを感じたまま、そのままカリムさんの口に思い切り出すの……マーキングだよ、私達にひろくんの精の香りをたぁくさん、つけてね」
すずかの囁き声には、微弱の魅了効果が込められている。大翔の防衛本能が自動的にレジストしないように、あくまで緩やかに染み込むように、高まった射精への感覚がほんの少し後押しできるように。
カリムは大翔の怒張が膨れ上がるのを察知する。血管を強く浮き立たせて、陰嚢から濃く、強い苦味がある、ぷりぷりした、喉に強く絡む、ドロドロの精液を、自分の口内へと吐き出すのだと。
『どうぞ、大翔さま。私の口まんこを思い切り穢して下さい……っ!』
念話で卑猥な言葉を投げかけ、カリムはとどめだと尿道口を強く吸い上げた。
ドクンっ。
強く脈を打ち、朝一番の容赦なく精液の放射が、カリムの口内を襲う。あまりの強い臭いに、それだけで軽く達した感覚を覚えながらも、口元だけはしっかり閉じたまま、大翔の勢いが収まるのをじっと待つ。
「ふふふ、たくさん出したみたいだね、ひろくん。素敵だよ……」
アリサの乳首から口を放し、荒い息を整えようとする大翔の耳元へすずかが追い打ちをかける。またもやブルリと身を震わせ、尿道に残った精を強く打ち出すのを、カリムはただ受け止めるだけだった。
「教会の女騎士様にこんな卑猥な言葉を言わせて、ほんと、夜の大翔は悪い男ね」
朝ですよね、とカリムはそんなズレたことを思いながらも、両手で作った受け皿に、口内に貯め込んだ精液を落としていく。そして、姿勢を保ち、決して零さぬようにしながら、もう一度大翔の陰茎を口へと含み、尿道に残る精を丁寧に吸い出していった。
絶頂直後の刺激に震える大翔を可愛いと思うのは、すずかやアリサも同じらしく、三人揃って微笑ましい顔つきをしてしまっている。
「さ、今日の体調確認よ」
「臭いは、うん、いつも通り濃いし……ん、ぷりぷり感も大丈夫だね」
カリムの手皿に髪の毛を押さえながら、鼻を近づけたすずかは、真面目な表情をしながら、臭いや指につけた味を丹念に確認している。
下着姿なのに、ソムリエみたいに真剣な顔をして、やってることは精液のテイスティングである。傍から見れば非常に滑稽な風景だが、当の本人は至って真面目なのだから、またそれが可笑しさを生む。目の前でそんなものを見せられる大翔が、やり切れないと枕に顔を埋めるのも無理はなかった。
「ん。体調は問題なし、と。しっかし、これで大翔の体調を確認するのに慣れ過ぎよね、アタシ達。他には見せられないわね、絶対。ま、見せないけど」
アリサは一舐めだけして、羞恥に悶える大翔を慰めにかかる。残りはすずかとカリムで分け合って飲み干すこととなった。
「すごっ、喉に今日も強く絡んで……んっ……」
「美味し……ふふ、身体が熱くなって、また濡れてきちゃった……」
大翔の精を飲み干した二人が艶を含んだ声を漏らし、情欲に塗れるのはある意味、予定調和。カリムが執務に戻るまでに身なりを整える時間も含めて、二人につられて火が入ってしまったアリサも合わせ、大翔は短時間で三回戦をこなす羽目になる。
短時間での精力回復のため、すずかに吸血までされた大翔は、朝からふらふらになりながら、カリムを転送ポートまで見送ることになった。
「本日も、ありがとうございました」
「一週間後の予定だけど、ま、辛いことあったら三人の誰でもいいから、連絡してちょうだい。最悪アポなしで転移してくれても何とかするわ」
「アポなしだと、アリサちゃんの家に移動してることもあるから、その場合は海鳴についた時点で念話を飛ばしてくれるといいかな。同じ世界だったら、阻害なく届くと思うし」
頷くカリムに、二人は軽く頷き返して、最後に大翔がカリムの目の前に立つ。
「……行ってらっしゃい、カリム」
「はい、行ってきます、あなた」
教会騎士の正装に身を包んだカリムは、貞淑な女性の佇まいを取り戻していた。少し前まで自分の腕の中で激しく強く乱れ、蕩けた瞳で自分を見つめていた女性と、どうにも同一人物に思えなくなってくる。
「んっ……」
そんな小さな葛藤を抱える大翔に、不意の一撃。鮮やかな金の長い髪がたなびき、唇に触れる柔らかな感触。彼の肩口を支えにしたカリムが、背伸びをして、彼の唇を奪ったのだ。
「私は、既に大翔さまのモノ。ですから、公の時には、絶対に隙など見せません。大翔さまが不安を覚えるぐらいに、上手に変身できてますでしょう?」
「うん、俺の知ってるカリムじゃ無いな、確かに」
二人で笑い合っていると、背後の転送ポートが突如起動する。現れたのは、カリムの護衛、シャッハ・ヌエラ。
「ああ、良かった! 騎士カリム! 至急お戻りください!」
「どうしたのです、シャッハ」
「教皇様とグラシア枢密卿が、急に訪ねて来られるとのことで、騎士カリムとの面会を求めておられます!」
「あら、教皇様とお父様が? ……分かりました。貴女は迎えの準備を」
「お、落ち着いておられるのですね」
「お父様が思ったよりも焦りを覚えられ、教皇様を強引に動かしたのでしょうね。……大翔さま、申し訳ありません。今日という一日を、私に下さい」
急報どころか、カリムの周辺事態を彼女の望むように動かせるチャンスが飛び込んできたことを受けて、カリムは短い言葉ながら、大翔へ懇願する。受ける大翔も迷いなど無く、カリムの私人として道を切り開く機会を逃すはずもない。
「一時間だけ、稼いでくれ。こちらの各関係者に連絡する。……すずか、アリサ」
「任せなさい。それに、アタシ達も行くから、まとめて調整してしまうわ」
「カリムさん、ナハトを先に連れて行って。私達とリンクしてるから、その子が状況を逐一知らせてくれるよ」
気づけば足元までナハトがやってきていた。カリムが屈んで、その漆黒の毛並みを撫でると、膝上にそのままナハトが飛び乗っていく。
「えっ!? 空知さん達のつ、使い魔も一緒に……?」
カリムが初めて大翔と出会ったきっかけは、管理局主催の大型行事及び交流会への出席を断りきれず、交流会における虫除け役の異性の護衛担当として、大翔に担当してもらったことに遡る。
その際にあったカリムへの襲撃を通し、シャッハもこの小さき黒狼の力も正体も知っているため、急に慌てた態度に変わるのもやむなしである。
「……ナハト、守ってくれるかしら?」
グルル、と唸り声を一つ上げ、抱え上げたナハトが返事をする。落ち着いたら、さっさとカリムとナハトも使い魔の本契約を結ぼうとアリサが呟き、シャッハが勘弁してくれと悲鳴を上げている。
「シャッハも大翔さま達にはミッドやベルカの常識が通じないこと、早く飲み込めればいいのだけど」
器用に首を振るナハトに、確かにシャッハの性格では難しいかもと思いつつ、カリムは転送ポートへと歩を進める。
今日一日は熾烈を極め、困難を極めるであろうが、カリムは負けるつもりなど少しもない。どうしようもなければ、強行突破するだけと覚悟は決まっている。使い捨ての強制転移のイヤリングだけでなく、持ち運びタイプの転送ポート──待機状態だと、ただのブレスレットにしか見えない優れモノ、を持っているし、仮に無理やり幽閉されても、あっさり脱出できる算段もつく。
「出来れば、話し合いでお父様や教皇様が納得して頂ければいいのですが……」
多少、拗れるのは止むを得ませんね。カリムの呟きは、ナハトだけが聞いていた。
この後は父上フルボッコ。(精神的に)
なお、今後の展開は以下のとおり。
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教皇様が来たのは、カリムへの襲撃をこちら側の被害一切なしで、
撃退(という名の殲滅)してくれた大翔一行への、
名誉騎士勲章を渡すため。(カリム経由で渡しておいてね、のつもりだった)
交渉(脅迫)の結果、カリムが教会での求心力を高めている現状、
破門するわけにもいかない判断となり、
父上が血涙を流す中、教皇主導で大翔をカリムの婚約者として黙認。
勲章は受け取りを強制。形だけでも騎士の地位を担保。
重婚自体はベルカでも違法ではなく、カリムも含めて大翔達は承知しているため、
話を公表して、カリムの結婚自体を教会の求心力を高めるのに利用するか、処女受胎(マリア化)とするかは今後の話となった、というオチ。
実際にドクターたち(JS事件)が暴れ出している時期でもあり、
とりあえずすずか達の出産の後、改めて話し合いということになっている。
ナハトの存在がとりあえずヤバ過ぎるし、管理局にも出来る限り知られたくないので、
教皇様はこの後、ブレーン達と色々相談することに。
教皇側に、大翔を夫になるのであれば、カリム自身も教会から離れるつもりはないと確約したことも影響しているらしい。
カリムは大翔の子供を産み、育てられれば、それでいいと考えているし、
そうなれば拠点は海鳴に変えて、教会への通勤は転送ポートをフル活用するつもりだった。
すずかとアリサも一緒に育てようと既に乗り気だったりする。