汝、隣人を愛せよ 作:ヌケニン
ベッドサイドでティッシュを手に取り、口や胸元についた精液や涎を拭き取る星奈。俺は足元にまでずり落ちていたズボンとボクサーパンツを脱ぎ捨てると星奈の背後ににじり寄った。
魅力的な肢体を持つこの女をめちゃくちゃに犯して、その隅々まで味わいたいという獣の本能がむくむくと大きくなる。
「うっわ。谷間にまでたれてる。あ、小鷹もティッシュ使う? ……小鷹?」
背後に近づく気配を感じとったのか、星奈はティッシュを片手に振り返る。
俺は星奈の両肩を掴む。女性らしい柔らかい肌の感触が伝わってきた。
「えっ、ちょ、小鷹? ど、どうしたのよ急に…………きゃっ!?」
星奈の胸が俺の胸板に当たる位まで近づくと、グッと力を込めて星奈をベッドに押し倒した。勢いよく倒れて星奈が痛くないよう、ゆっくりとベッドに仰向けに押し倒す。
俺も片膝をベッドに乗せ、星奈の華奢な身体を跨ぐ様に覆い被さる。
突然の事態に星奈の顔は耳まで赤く染まると同時にその瞳は不安で揺れていた。
「ちょっ、ちょっと本当にどうしたのよ?」
本能的な防御反応なのか、キュッと握った手を胸の前に持ってくる星奈。その仕草によって胸が寄って巨大な質量を誇る胸部が更に強調される。
服を剥いてたわわに実った乳房に顔を埋めたい欲求を僅かに残った理性で無理やり押さえつけながら、組み伏せた星奈を見下ろす。
その宝石のような蒼い瞳を吸い込まれるように、じっと見つめる。星奈は忙しなく視線を動かしながら、時折伺うように視線を合わせた。
睫毛、長いんだな……。そんなことを思いながら、視線は星奈の薄い唇へと流れた。薄紅色の柔らかそうな唇とキュッと結ばれた小さな口。
バクバクと心音が聞こえそうなほど五月蝿く心臓が高鳴った。
俺の視線が唇に釘付けになっているのに気づいたのか、赤くなっていた頬を更に赤く染めて星奈は目を瞑る。
……………………。
俺は首を少し傾けると、腕を曲げながら顔を星奈の顔にゆっくりと近づけていく。
「…………んっ」
柔らかく、程よい弾力のあるモノに唇が触れた。甘く小さい声が漏れ、花のような甘い香りが鼻腔から脳を犯す。
ただ唇同士が触れ合うだけの単純なキスなのに、心臓が破裂しそうなほど速く高く鳴り打ち、唇にすべての神経が集まったかのように、鮮明にその感触が伝わってくる。触れ合っていた唇が離れる。どれだけの時間キスをしていたのだろうか? 10秒か1分か、はたまた数秒にも満たない一瞬の出来事だったかもしれない。
吐息がかかるほど近くに星奈の整った顔がある。閉じられていた瞼がゆっくりと開き、その美しい瞳と視線が絡み合う。まるで世界に二人きりの様な、そんな錯覚に陥るほど周囲の事が頭に入ってこなかった。
星奈の潤んだ瞳から涙が溢れる。涙は重力に従い、一筋の線を引いて流れ落ちた。
その瞬間頭に冷水をぶかっけられたような錯覚と同時に思考がクリアになっていく。
俺は、何をした? 星奈を組み伏せ、キスし、泣かせた。サーっと頭から血の気が引いていく。
星奈を未だに組み伏せたままなことに気が付くと弾かれた様に身体を起こした。
「ご、ごめんっ! 急にキスなんかして、本当にごめん!!」
「あっ。ち、違うの小鷹! これは嫌だったとかじゃないの!!」
俺が星奈から離れるように距離をとろうとすると、彼女は慌てた様子で身体を起こし、引き留めるように袖を掴んできた。
「嬉しかった……。嬉しかったの、あたし。小鷹にキスされて……」
え…………?
星奈の言葉の意味が理解できず身体が硬直する。俺を見つめる星奈の真剣な顔が段々と赤く染まっていく。
これって、もしかして……。いや、まさかそんなわけ…………。
「こ、小鷹」
「ッ!?」
熱が集まって赤く染まった顔の星奈が真っすぐ俺を見据える。眼を逸らすことは許されない、そんな気がした。
「あたし、小鷹のことが好きだから」
明確に、ハッキリと、彼女の想いが告げられた。
ドクンドクンと心臓が高鳴り、鏡を見なくても自分の顔が熟れたリンゴの様に真っ赤になっているのがわかった。
ボッ! と蒸気が出るんじゃないかと言うほど星奈の顔が赤くなった。俺も気恥ずかしくなって、右上に目をやりながらポリポリと人差し指で頬を掻く。
嬉しさや恥ずかしさといった感情が渦巻き、星奈の顔を見ることができない。
星奈が潤んだ瞳で伺うように俺を見る。
「………………小鷹は、あたしのこと、どう想ってるの?」
「俺は、俺だって……!」
いつからかはわからない。何気ない日々を過ごす中で俺は星奈に惹かれていった。星奈から向けられる好意にも薄々気が付いていた。でも、友達もいない俺なんかを好きになる筈ない、と誤魔化して聞こえないフリをしてきた。
俺の眼を真っすぐ見る星奈。誤魔化しも、聞こえないフリもできない。それに…………。
こんな金髪巨乳美少女に告白されて断れるわけないだろっ!!
「俺も! 俺も星奈のことがッ……す、好き……だから、俺と付き合ってくだひゃい!!」
や、ヤバい! 心臓が破裂しそう、顔も火が出るんじゃないかってくらい熱い。
吃りながら、声が裏返りながらも俺は想いを星奈に告げた。星奈の反応を見るのが怖くて眼を固く瞑る。
星奈は何も答えない。不意に掴まれていた袖をグッと引っ張られた。前に倒れそうになるのをあわてて踏ん張る。急に体勢が崩れたこともあり瞑っていた眼を明けた。
金糸の波が眼前に広がる。何かが触れる感触と同時に軽い衝撃が唇に襲いかかった。
「ィッ!?」
「っ~~!?」
互いに顔を反らし唇に手を当てる。ここで俺はようやく星奈にキスをされたことに気づいた。まなじりに涙を少し浮かべた星奈と目が合う。
星奈は俺にキスをすることで答えようとしたのだろう。結局歯をぶつけて終わったが、彼女らしいやり口に嬉しさと笑いが込み上げてくる。
「な、なによ。ちょっと失敗したからって笑うことないじゃない」
「ご、ごめん。……くくっ」
「小鷹!」
小さく怒る星奈。その全てが愛おしく感じてくる。
自然と星奈の頬を手が伸びた。一瞬、ビクッと身震いしたが星奈は俺の手を受け入れる。柔らかい頬を撫でながら、整った顎先へと手が滑っていく。
「あっ…………」
くいっと顎先を軽く持ち上げる。星奈の瑞々しい桜色の唇に自分の唇をゆっくりと重ねた。
「んっ」
唇が触れあうだけの簡単なキス。たったそれだけの事なのに幸福感がどんどんと沸き起こってくる。
「ん、ふっ、んん」
啄む様に何度も何度もキスを繰り返す。キスをする度にもっとしたいという想いが強くなって行く。もっと、もっと、と。
星奈も同じ気持ちだったのだろうか、唇だけが触れる状態から、自然と口が開き舌が絡み合っていく。
「ちゅる、んちゅ、あっ、ちゅ」
互いの唾液が混ざり合い、交換される。口の端から溢れ落ちる。
絡み合った舌が溶けて一つになったようなそんな錯覚に陥りながら、息をするのも忘れて深いキスをし続けた。