汝、隣人を愛せよ 作:ヌケニン
夕日に照らされた歩道を夜空の手を引きながら歩く。
人とすれ違うたびに、見られているようで恥ずかしさがこみ上げてくるがつないだ手を放したくはなかった。
手、柔らかいな。……俺、手汗大丈夫か? 気持ち悪くないよな?
特に行先は決まってないが、進むにつれてどんどんと人通りが少なくなっていく。
「小鷹、そこを右だ」
ずっと俯いたまま手を引かれていた夜空が口を開く。
夜空に言われた通りに路地を曲がった。いよいよ人を見かけなくなる。
夜空の奴この辺の土地勘あるんだよな?
急に夜空が手を引っ張り足を止めた。
「夜空、どうしたんだ?」
「…………」
つないだ手をギュッと強く握られる。
「夜空?」
覗う様に名を呼ぶと夜空が顔を上げてこちらを睨む。
「わたしに言わせるつもりなのかッ。お前はどれだけわたしに恥ずかしい思いをさせれば気が済むのだッ⁉」
「何言って────」
俺はようやく今どこにいるのか気が付いた。
城を模したであろうデザインと装飾。光り輝く”HOTEL”。入口の案内看板に書かれた「ご休憩」と「宿泊」の文字。
ここラブホじゃねぇかッ⁉
夜空が俺を睨んでくる理由を理解する。
自分の口から誘うのはプライドが許さないのだろう。俺をここで引き留める。それが夜空にできる精一杯のアピールだった訳だ。
「あー、いいのか?」
夜空はコクリと頷いた。
俺は夜空と人生初のラブホに入る。
ロビーには部屋の画像と番号が描かれたパネルがいくつも並んでいる。人の姿はない。
どうやって、チェックインすればいいんだ? 受付も見当たらない……。受付があったらあったで止められそうだけどな。
「夜空、チェックインの仕方わかるか?」
「わ、わかるわけ無いだろう!」
「だよなぁ」
とりあえずパネルの前へと行く。
パネルの前には部屋番号の書かれたボタンがたくさん並んでいる。
これを押せばいいのか。
適当に良さげな部屋を選んでボタンを押す。
部屋番号の書かれたレシートが出てくるだけで鍵何かは出てこない。
これでいいのか?
不安になりながらも天井から吊り下げられた案内に従ってエレベーターに乗る。
ヤバい、ドキドキしてきたッ。
「「…………」」
エレベーターの上昇する振動に揺られながら夜空の手をギュッと強く握った。それに答えるように夜空も握り返してくる。
バクバクと高鳴る心臓の音がうるさいほど聞こえてくる。
エレベーターを出ると目的の部屋はすぐに分かった。扉の上にある部屋番号がチカチカと点滅していた。
靴を脱いで中に入る。
薄暗い照明に照らされた部屋にはキングサイズベットが鎮座し、ベットの前に小さなソファーと大画面のテレビが置かれていた。あと、なぜかスロットマシンも。
ついに、来てしまった。
今からここで夜空とセッ、セック、セシボーンなことを……ッ⁉
「と、とりあえず座るか?」
「そ、そうだな! そうしよう!」
二人で小さなソファーに腰掛ける。
「「…………」」
き、きまずい。
ここまで来たが改めて意識すると死ぬほど恥ずかしい。
夜空もいつもの態度は何処へ行ったのか、小動物みたいに縮こまっている。
ここからどうすればいいんだ? キス? いや、もう一度手を握ればいいのか?
そもそも本当にシていいのかッ⁉
混乱してきた。
なんとなく夜空を見ると、彼女もこちらをチラチラと覗っていた。
さっき、夜空とキスしたんだよな……。
目が夜空の淡いピンク色をした唇にくぎ付けになる。
柔らかい感触を思い出し下半身に熱が集まってくる。
と、とにかく何か話題を!
ローテーブルに置かれたリモコンが視界に映る。
「テ、テレビ見ないか!」
「い、いいぞ! うん、そうしよう」
お互いにぎこちなくなりながらテレビをつけた。
「オォォン♡ イエ~ス! イェ~ス!!」
テレビの大画面に絡み合う男女の裸体が映し出された。
ベットの上で横になった男に女がまたがり、わざとらしい喘ぎ声をあげながら激しく腰を前後にグラインドさせていた。
「なッ!?」「にゃッ!?」
いきなりの出来事に驚いた夜空が俺にしがみつく。
「うわあああ!?」
慌ててテレビを消す。
ラブホのテレビって
「こ、小鷹ぁ」
怯えたような弱弱しい声色で、左腕にしがみついた夜空が瞳を潤ませながら見上げてくる。
…………可愛い。可愛すぎやしないか? この娘。
見つめ合い、視線が絡み合う。
夜空の瞳には不安と期待、そして情欲の色が見えた。
右手で夜空の頬に軽く触れる。
ピクっと小さく反応するが振り払われることはなかった。
夜空が目を閉じる。
二人の唇の距離がゆっくりと近づきゼロになる。
「んっ」
唇が触れ合うようなキスをする。
夜空の口から甘い吐息が漏れる。
もう我慢できそうにない。
「んっ。ふぁっ」
何度も何度もキスを繰り返す。
キスを繰り返すたびに夜空の体が密着してくる。
腕の中に夜空がすっぽりと収まり柔らかい感触が全身に伝わってくる。
「ん、んんっ」
啄むようなキスを繰り返えしていると、ちろりと上下の唇の間に舌が触れる。
子猫がミルクの舐めるように夜空が舌を出す。
俺の理性を殺しにきている……。
夜空が舌を出すのに合わせて自分の舌を絡めあわせた。驚いたように夜空の舌が戻っていくがそれを追うように夜空の口内に舌を入れる。
「ん!? んふぁっ! ちゅっ」
驚きながらも夜空は俺の舌を受け入れた。
唇が触れ合う軽いキスから舌が絡み合うディープなキスに変わる。
お互いの舌と唾液が混じり合い、息をするのも忘れて貪るようなキスをする。
「んあっ、ふっ。ちゅ。ちゅる、あっ」
舌を歯茎を舐めるように夜空の口内を蹂躙する。
いつまでもキスをしていたかったが、息苦しくなり、頭が酸素を求める。
名残惜しくも口を離すと二人の唾液が糸を引く。
夜空は蕩けた眼でこちらをぼんやりと見つめ半開きの口から唾液垂れる。初めて見る幼馴染みの女の顔に股間が更に熱を帯びて痛いほどいきり勃つ。
夜空は惚けた表情のまま指で自分の唇を撫でた。
プツリと何かが切れる音が小さくもハッキリと聞こえた。
「え……ッ? 小鷹?」
俺はソファーから立ち上がると夜空の手を引いて立たせる。
戸惑う夜空を抱き寄せながらも左腕を膝下に回して夜空を持ち上げた。
いわゆるお姫様抱っこというやつだ。
「ッ~~~~!?」
夜空は湯気が出るほど顔赤くしながら、落ちないように首に手を回す。
お姫様抱っこのまま俺はベッドへと向かった。優しく夜空をベッドへ横たえ、彼女に股がるように四つん這いで覆い被さる。
「こ、こここ小鷹!? 本当に────んふっ!?」
何かを言おうとした夜空の口をキスで塞ぐ。
もう、止まれない。
夜空が抵抗するように胸板に手を置くが力は全く入っていない。それどころか、合わせるように舌を絡ませてくる。
「夜空」
唇を離し夜空の瞳を見つめながら名前を呼ぶ。
「俺、我慢できそうにない」
「…………ッ!?」
「嫌なら、言ってくれ」
無理矢理して夜空を傷付けることになったら俺は自分を赦せないだろう。だから────。
「んっ」
スッと顔を挟むように両手で顔を固定される。
夜空の答は触れるようなキスだった。
「夜空ッ! 夜空ッ!!」
ギュッと強く夜空を抱きしめながらその首筋にキスを落とす。夜空も俺の背中に腕を回す。
「あっ! んっ!!」
柔肌にキスをする度に吐息混じりの色っぽい声が漏れる。
唇を合わせ、舌を挿し込み、互いの唾液を混ぜ合わせて交換する。
「んんっ、ちゅる、ちゅぱ、あむ、ちゅ、んあっ」
涙を浮かべながらも淫らに蕩けた表情で夜空から舌を挿し込んでくる。
キスをしながら夜空のジャージのジッパーに手をかけ、ゆっくりとおろしていく。
唇を離すと銀の糸が別れを惜しむかの様に伸びる。体を少し起こすと前開きになったジャージの下に着こまれていた夜空らしいシンプルな白いシャツが露わになる。首筋から除く鎖骨にはほんのりと汗が滲んでいた。
鎖骨に唇を落とし吸い付きちゅっとわざとらしく音をたてる。
「ひゃっ、はずっ、こだかぁ」
切なげに身をよじる夜空の弱点を探すように鎖骨から首筋へと丁寧に口付けを落としていく。
「小鷹っ、まっ、ひやぁああっ!」
唇が耳に触れたとき夜空の肢体がビクリと跳ねた。
耳が弱いんだな。
そこからは執拗に耳を攻めた。耳たぶを唇で挟んだりと舐るたびに夜空が体をよじる。
「ダメっ、んんっっ! そこばっ、だめぇっ。ッ⁉ ちゅ、じゅる」
荒く甘い息を吐く夜空に不意打ち気味に熱い口付けをする。
「ちゅ、んっ。……はぁ、はぁ」
キスを止めると夜空は上唇と下唇の間に糸を引きながら蕩けた眼差しで俺だけを見つめる。
俺の視線は夜空の荒い呼吸とともに上下するシャツを押し上げる二つの丘にくぎ付けになっていた。