汝、隣人を愛せよ 作:ヌケニン
前回の夜空編との関連性は特にないです。
俺と彼女のユニバース (1)
サンサンと照りつける太陽。夏も終わったと言うのに外気温は未だに高い。
そんなある日の休日。俺、羽瀬川 小鷹はバスに揺られていた。
休日にバスに乗って何処へ行くのか? それは数日前までに遡る。
俺の通う聖クロニカ学園。その学園の隣人部という部活動に俺は所属している。所属していると言うか、所属させられていると言うか…………。まぁ、それはまた別の機会に。
その隣人部の部室で部員の1人、柏崎 星奈が言った一言が発端だ。
『そう言えば、小鷹ー。あんた、週末暇? パパが何か会いたいんだって』
星奈の父親で聖クロニカ学園の理事長を勤める柏崎
目的地「柏崎邸前」でバスを降りる。バス停の前には門と柵がありこの先には森が広がっている。
事前に伝えられていた通りに暗証番号でロックを解除すると通用門から敷地へと入った。道に沿って進んで行くとようやく屋敷が見えた。
…………いつ見てもデカイ屋敷だよな。
屋敷の正面玄関には2人の人影があった。
和服に身を包んだ男性と燕尾服を着こなした女性。
「よく来た、小鷹くん」
和服の男性、柏崎 天馬さんが俺を待っていた。
「いえ、今日はお招き頂きありがとうございます。コレをどうぞ」
「む。いつもすまないね」
俺が持参した手土産の入った紙袋を天馬さんの後ろに佇んでいた燕尾服の女性、ステラさんが受け取った。
ステラさんは柏崎家に仕える家令で名前からもわかる通り金髪碧眼の外国人だ。
「ここまで暑かっただろう、飲み物を用意してある」
天馬さんに促され俺は何度か通った事のある屋敷へと足を踏み入れた。
「あの、星奈は?」
「ああ、自室にいるはずだ。小鷹くんが来るとは伝えてあるんだがなぁ。許嫁が来たと言うのに出迎えにも来ないとは……。すまないね、小鷹くん」
「い、いえ。大丈夫ですよ」
天馬さんが言う通り、俺と星奈は許嫁らしい。と言うのも俺の親と天馬さんが勢いで昔に決めたのだとか。
ウチの親の方は全く憶えていなかったが…………。
俺は応接室の様な部屋へと招かれ、高級そうなソファーに腰をおろした。
……おちつかない。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
ステラさんがよく冷えているだろうグラスに入った飲み物を出してくれた。
「それで、最近はどうかな? 星奈は上手くやれているかね?」
俺は部室での星奈の姿を思い浮かべた。
「娘さんはエロゲーやギャルゲーにのめり込んで、妹の小鳩にハァハァ言いながら不審者の如き言動で詰め寄ったり、ジェットコースターにゲロを吐くまで乗ったり、ことあるごとに夜空──部活の部長にハエ叩きで叩かれたりしていますが、毎日楽しそうですよ!」
………………。
何て言える訳ないだろ!!
見た目は完璧なお嬢様なのに中身は残念な奴だからな。まぁ、星奈に限った話じゃないが……。
「まぁ、ボチボチですかね? 毎日楽しそうですよ」
「そうか! それはいい!」
取り敢えず納得したみたいだ。
「旦那様」
俺と天馬さんが雑談に興じていると、ステラさんが天馬さんの側に寄って何かを耳打ちする。
「…………それは、今すぐでないとダメなのか?」
「はい。至急とのことですので」
天馬さんは顎に手を当てて何かを考える。直ぐに俺へと目を向けた。
「むう。小鷹くん、すまない。急な仕事が入ってしまった。本当にすまない」
「いえ、俺のことは気になさらず」
「このまま帰るのもなんだ、星奈に会って行きなさい。ステラ、案内を」
「承知致しました。小鷹様、こちらへ」
「は、はい。理事長、今日はありがとうございました」
「また、ゆっくりと話をしようじゃないか」
天馬さんを部屋に残したまま、俺はステラさんに続いて室外へと出る。そして、人気の無い廊下を案内に従ってしばらく歩いた。
ぴっちりとしたズボンによってステラさんの整った美尻がより強調され、歩を進めるたびに左右に揺れる。魅惑的な美尻に視線が向かいかけるが、慌てて眼を逸らした。
「こちらが星奈お嬢様のお部屋になります」
以前訪れたこともあるので、見覚えのある扉の前へとやってきた。
「それでは小鷹様。わたしはこれで失礼させていただきます」
「はい。ありがとうございます」
ステラさんは恭しくお辞儀をすると去っていく。俺はノックするために拳を扉の前に持ってきた。
「小鷹様」
「ッ!?」
真後ろからステラさんが囁くように声をかけてきた。
あんた行ったはずじゃッ!?
「わたしとしたことが、こちらをお渡しするのを忘れておりました」
そう言ってステラさんは俺の手を包み込む様に握る。
手の柔らかい感触が……ッ!? 勝手にドキドキしていると何かを握りこませてきた。
こ、これはッ!?
「以前もお渡ししましたが、お使いになられなかった様で……」
俺の手の中には、その、
またかよッ!!
「若い情熱を持て余しているのは解りますが、最低限の節度は守って下さいませ」
「いや、ちょっと待って下さいッ! 俺と星奈はそんな関係じゃ────」
「それでは小鷹様、くれぐれもよろしくお願いいたします」
ステラさんは小さくお辞儀をするとくるりと踵を返した。話を聞けェ!
「若い男女が二人きり、何も起きないはずもなく……」
ボソリと不穏なことを呟くステラさん。その姿を角を曲がって見えなくなるまで見送った。
…………相変わらず、掴めない人だなぁ。
取り敢えず、手渡されたゴム的なモノをポケットにねじ込むと、今度こそ扉に軽めのノックをおこなった。
……………………。
反応はない。
今度は先程よりほんの少しだけ強くノックをする。
「星奈? 俺、小鷹だけど居るのか?」
なお、返事はない。
おかしいな。部屋に居ないのか?
「星奈? 入るぞ?」
ドアノブに手を回しガチャリと扉を開いた。
そして、扉を開いた瞬間飛び込んで光景に固まった。