「んぅっ 」とか。
あるいは、「えうっ」とか。
日常生活においてはおよそ耳にすることはなくて。
というか、自分が実際に発するとはついぞ思っていなかったその音を、どこか現実感もなく、はんば幽体離脱して俯瞰しているような感覚すら伴いながら。
けど。
実際の自分の意識はここ最近感じたことのないほどの多幸感に包まれていて。
そうして喉奥に絡み付いた吐精を、されど吐き出すまいと一生懸命に味わって、嚥下する。
とあるゲームで名乗ったプレイヤーネームの通り、唇や舌にとどまることなく、喉奥までを深く、頭部全体を使ったディープスロート。
慣れなければ反射で嘔吐しそうになる体の反応を押さえつけて、彼の陰茎をじゅっぽじゅっぽと下品な音を立てて吸い上げる、赤髪の女が1人。
ぷハァ
「えへへ...気持ちよかったぁ?サンラクくぅん?」
「うるせぇ...黙って使われてろ」
彼以外の男性なら、即刻持ちうる手段全てを使って破滅させてやると黒い炎を燃やす所だが、生憎彼は自分の特別待遇対象だ。
このあらゆるガードを無効化したプライベートなオンラインサロンで、今日も彼と濃密な時間を過ごしている。
ただ、リアル通りの物理演算だけが反映されたそれ。
住宅展覧会に使われいたっぽい部屋のモデリングデータを改変して、ややいかがわしい雰囲気をまとったベッドルーム。
広々としたベッドの面積を拡張して、クッション性はまるで雲に浮かぶそれ。
次は下の穴を使うかぁい?それとも後ろ?
眼孔、それともヘソ?素股でもいいし、お望みなら足でもしてあげるけどぉ?
そ・れ・と・も♡
脳姦でもいいよぉ♡
感覚がフィードバックできるからこそ、彼のためならあらゆるプレイを受け入れることができる。
リアルでやれば一度きりの所業も、ここでならリセットボタン一つで加工できる。
あるいは、四肢を失うような状態すら。
UIが思考入力に対応しているから指先などいらない。
自分のアバターの改変権限も手放して彼に丸投げ。
けど、彼はとりあえずは今のところは、とある理想郷で使っていた自分のアバターから変更しようとはしていない。
全て投げ出しての退廃的な堕落。
彼から与えられる電気信号ならなんでもいい。
発生源が彼にあるなら、全てが、あらゆる刺激が、自分にとっては甘露以外の何者でもない。
そうやって煽ると、リピートだと言わんばかりに乱暴に髪の毛を掴まれたから、じゃあおかわりだねと言わんばかりに、大きく口をあけてスゥッと喉の力を抜いた。