1年空いちゃいました
いかがお過ごしですか?
は……?
華琳は何を言ってるんだ……?
あれだけ隠してた事をこんなあっさりと、しかも主要メンバー勢揃いのこの場で?
「華琳様。我等は華琳様がくだらない冗談を言う方でないと分かっているつもりです。ですが、申し訳ありません。華琳様の仰ってる事の意味がまるで分かりません」
困惑した表情で言う秋蘭。
そりゃそうだ。
本人の俺ですら意味わからん事を、皆が理解出来るわけが無い。
正直華琳が俺の言ったことを信じてる事すらおかしいと今でも思ってるくらいだ。
「このバカは今より1800年先の未来から来た。原理も意味も理屈も分からないけれど、そうらしいわ。だから私の行く末を口にする事を禁止し、混乱を避ける為にも皆にも秘密にしていたわ」
「では、何故今それを……?」
「今朝、その禁を破ったからよ」
禁を破る。
宦官の血縁者も容赦なく打首にする華琳だ。
身内だからと甘やかさず、いや、むしろ身内だからこそ厳しく罰し規律を作る。
だからこそ曹操の屈強な軍が作られていくのだろう。
「口約束の決まりを守れないのなら、同じ過ちを繰り返さない為に皆の前で罰を与えるのよ」
「え!待て華琳!俺を殺すんじゃないのか……?」
「はぁ!?殺さないわよ。今朝荀彧をアンタの下に就けるって言ったのを忘れたの?」
……確かに。そう言えばそうだ。
華琳と喧嘩?した事がショック過ぎてその後の荀彧との会話すら完全に忘れていた。
「でも、それじゃあ罰って何を?」
「出てきなさい」
そう呼ばれて1人の見慣れた男が俺の前に歩いてくる。
「あれ、史渙さん?」
史渙。
最初に華琳が招集した人達の中の1人で、俺の隊の副隊長としてずっと俺を支えてくれたゴリマッチョ。
「史渙は自分から一刀の隊に入りたいと志願したのよ。何故だか分かる?」
「いや、全く。史渙さんにはいつもお世話になってて凄く感謝してるけど、なんで俺なんかを……?」
史渙さんは何も分からない俺をその屈強な見た目とは裏腹に細かく丁寧に優しく色々と教えてくれた。
そんな迷惑しか掛けてない俺に何故?
「まぁその理由は今から分かるわ。今後、一切未来の知識を使わないと、私と、ここにいる全員に誓いなさい。そして、皆もコイツがもし未来の事を語ったら私に報告をするように。次はないわ」
ここに集まっている全員が全く理解出来てないような顔で頷く。
春蘭や季衣なんかもうぽかんと口を開けたまま頭の上にクエスチョンマークが浮きまくっている。
「どう?誓うの?」
「分かった、誓う。二度と未来の歴史を華琳にしない。すまなかった」
「そう、いいわ。じゃあ史渙。始めなさい」
華琳のその声に史渙さんが俺の前まで歩いてくる。
俺の目を真っ直ぐに見据える史渙さん。
なんだ……?何が始まるんだ?
華琳は罰と言った。
俺への罰と史渙さんに何の関係があるんだ?
……いや……待て。史渙さんは望んで俺の下に就いてくれたんだよな。
何の取り柄も無く、何も出来ない俺なんかの下に。
史渙さんの妙に熱っぽい視線が、俺を射抜く。
待て。待て。待ってくれ。
嫌な予感がする。
やめてくれ。外れてくれ。
変に考えすぎたと思わせてくれ。
俺は昨日ファーストキスと童貞を失ったばかりなんだ。やめてくれ!!
「一刀殿。いや、一刀君。今だけ。今だけだ。この後には私もこの事を胸の内に秘め、君を求めたりしない。ただ1度だけだ」
史渙さんの大きくゴツゴツした、俺の憧れた男の手が俺の頬に添えられる。
俺も史渙さんのように大きく強く優しい人になりたいと思ったんだ。
そんな憧れを汚したくないんだ。
やめて……頼む……やめ……
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「早くしなさいよ男色未来人」
「その呼び方だけはやめてくれ。俺はちゃんと女の子が好きなんだ」
「キモっ!キッッッモ!!!穢らわしい男同士仲良くしてなさいよ!!!」
「酷い……」
朝のあの悪夢の後、変な空気になりつつもその場は解散となり秋蘭達は引越しの準備と市民への伝達に行き、俺と荀彧だけが呼び止められた。
そこで華琳から告げられたのは、俺の初陣だった。
各所で黄巾党の被害が増え、遂に軍を動かす大掛かりな戦争へと発展し始めた。
朝廷は皇甫嵩(こうほすう)を左中将郎、朱儁(しゅしゅん)を右中将郎に任命して討伐に向かわせたが、敵の波才に敗北し、頴川(えいせん)で苦戦を強いられてしるらしい。
そんな中、皇甫嵩達は華琳へと援軍要請をしてきた。
洛陽から厄介払いで追い出されてる最中に援軍の要請。
同時に進めるのは無理だがここで名を上げなければならない。
そこで白羽の矢が立ったのが俺達だ。
俺への罰も少しはあるらしいが、援軍に回せるのが俺達しか居なかったのと、荀彧の品定め。
ある程度片付いたら全軍で向かうからそれまで皇甫嵩達を死なせるな、負けるなとの命令。
俺の隊は今日入った荀彧と史渙さんと、後は10人程度。
正直他の隊の手伝いや町の見回り位の仕事しか出来ない下っ端隊だ。
俺達が行ったところで死体が10数体増えるだけだろう。
いくらあの荀彧が居たとしても、それに見合った将が居なければ荀彧の采配は無駄になるだろう。
『ここで負けるなら皇甫嵩達も貴方達も、それまでだったと言う事よ。私を失望させないでね?』
そう一言だけ言って部屋を出て行かれては反論も何も出来ない。
「一刀殿、全員準備が終わりました。何時でも出られますぞ」
「あ……う、うん……すぐ行きます……」
史渙さんの声がするだけで体が縮こまる。
やばい。
死地に向かうってだけで体の震えが止まらなくて吐きそうなのに、荀彧からの罵倒と史渙さんに怯えて今にも死にそうだ。
出来るだけの準備をして部屋を出ると既に整列している北郷隊。
先頭に立つ史渙さんの視線が、普通のはずなのに何故か熱を感じる。
違う。あれは副隊長として、隊長である俺の言葉を待ってるだけで、決してそういう事じゃないんだ。
そんな考えをすること自体が史渙さんに失礼なんだ!
「えっと、じゃあ……長旅になるけど頑張りましょう」
「締まらないわね……こんなのが私の上官なんて……」
すみません……
自分でも今から戦争しに行くとは到底思えないような緩い感じで、地獄ツアーへの幕が開けた。
本来前回の話でここまで入れるつもりだったのにこの後の構成とかで色々あって何故か分割になっちゃった部分です。
今後、人名地名で読みにくい物は()でふりがなを入れようと思います。
史渙って全然スポット当てられないけど、実は凄いんよ。