灰色のパーカーを着てフードを深く被り寝ているのか起きているのかすら分からない。
そこに盗賊と思われる集団が通りすがり少女を見つけ下品な笑い声を上げながら迫る。
「嬢ちゃん。俺達と良い事しようぜ」
「……………………」
盗賊の一人が話しかけるが返事をせず顔を伏せたままだった。その態度が気に食わずナタの様な物を少女へと見せながら迫る。
「聞いてんのか?聞こえてるならさっさと返事しな、まぁどんな返事をしたところで結果は一緒だがな」
再び下品に笑う盗賊達。その少女は立ち上がりフードをめくり顔を上げた。黒桃色のショートカットに整った顔、赤い瞳で盗賊を睨みつける。
「良いわよ。あたしが遊んであげる。その代わり退屈させないでよね」
思わぬ言葉に笑みを浮かべながら少女へと迫るのだがいつしか意識を失い肉塊へと変わり果て大地へと転がっていた。
「処理完了ね、さてと、いくらになるかな」
両手に握られた二本の剣に付着した血を振り飛ばし腰に付けた鞘へと納め死体を漁り金目の物をカバンへと詰め込み煙草を咥えその場を去ってゆく。
私は一人。いつも一人だった。両親の事を知らなければ育ててくれた人も知らない。相棒は腰に携えた二本の剣と何かのシンボルが描かれたオイルライターだけだ。
先程盗賊から仕入れた物を売る為に街を探す為この果てが見えない程の荒野を一人歩いていた。
そんな時あたしと同じように荒野を歩く女の姿が見えその場に屈み良く観察をしていた。茶色い髪に紺色の服を来ており腰に鞘が見える。あの頭に付けた髪飾りは値打ちがありそうだ。よし、貰うとしよう。
屈んだ状態から倒れ込み大きく咳をし相手にあたしの存在を知らせると思い通りに気づき心配そうにあたしの方へと歩み寄ってきてくれた。
「大丈夫ですかっ?」
「げほっげほっ、ごめんなさい。手を貸して貰えますか?立ち上がれなくて、、、」
「はいっ、掴まってくださいね」
あたしの言葉に疑いを持たないまま手を伸ばしてくれた。その瞬間に鞘から剣を抜き出し一閃を放つのだが後方へと飛び下がり回避されてしまった。
「っつ!何をするのですか!?」
「ん。死ぬ人に教える必要なんてないわよ」
もう片方の剣を抜き出し両手に剣を持ち接近し攻め立ててゆくのだがあたしの剣は完全に見切られ掠る事すらなかった。それでも髪飾りを奪う為に剣を奮っていた。
「ユリっ!私の話を聞いてくださいっ!!」
「なんでアスカロンが私の名前を知っているのよ!えっ?」
あたしの名前を呼ばれた事。相手の名前を呼んだ事に驚き思わず剣を振るう手を止めてしまった。この現象が相手にも起きていると理解し剣を握りしめたまま相手に問いかけてゆく。
「どう言う事なのよ。説明をしなさい」
「ええっと、私のキラーズとユリが持つバイブスが適合してこうしてお互いの事を知れたのだと思います。剣を納めてくれませんか?」
バイブス?キラーズ?聞き慣れない単語に顔をしかめながも気がつけば双剣を鞘へと納め煙草に火を付けていた。
「それで?一体どう言う事なの?」
「ユリは私のマスターになったのですよ♪あっ、マスターって呼ぶか名前で呼ばれるのどちらが良いですか?」
「ユリで良いわよ。そうだ。その良い値で売れそうな髪飾りを私によこしなさい」
「これですか?ただのリボンなので売れないと思いますよ?」
そう言って髪飾りを外してあたしに渡してくれた。よく見ると確かにただのリボンだ。高値どころか値段が付くかどうかすら危うい。
「返す。それとこの辺りに街はない?」
「街なら私が来た道を戻れば小さい街がありますよ、そこへ行きたいのですか?」
「ちょっと戦利品を売りにね。案内しなさい」
「はいっ」
あたしの前を歩くアスカロンの後ろをついて行く事に。それらしい会話もないままひたすらに歩いてゆくと小さな街が見えその街へと入ってゆく。
手頃な武器屋を見つけてそこに戦利品を売り込むとそこそこの値段となってくれた。思わぬ収入に笑顔で店を出てゆく。
「何を売ったのですか?」
「さぁ?忘れたわ。それよりアスカロンは野宿と宿どっちが良いかしら?」
「私は、、、宿の方が良いです」
「ん、なら探すわよ。前を歩きなさい」
初対面の人は信じない。常に私の前にアスカロンに居てもらいながら街を散策すると潰れかけた宿を見つけることができた。こんな宿だが野宿よりはマシと判断し受付を済ませ部屋へと案内されていた。
「外見より良いお部屋ですね♪」
「そうね。そんな事よりキラーズとバイブスって何よ?」
「キラーズは私達キル姫に宿っている物です。バイブスは人間、つまりマスターの素質を持つ人が宿す物です。キラーズとバイブスは複雑なパズルの様な形をしているのですが私とユリのバイブスとキラーズが適合し共鳴したのですっ」
「ふむ」
詳しく説明してくれたのだがなんのことやら。でもアスカロンと居ると悪くない気持ちとなる。これが繋がりを持つということなのだろうか?部屋を見渡すとテーブルの上に置かれた灰皿を見つけ壁を背に座り煙草に火を付けていた。
「で?なんでアスカロンは荒野にいたのよ?何か目的が合ったの?」
「誰かに言われたんですよ。荒野に居る女の子を頼むって」
「はぁ?誰によ、なんでそいつはあたしの事を知っているのよ」
「分かりません。私も半信半疑だったのですけど、結果としてユリと出会う事ができたので良いとしませんか?」
「あたしの邪魔をしなければなんだって良いわよ」
「次は私が質問しても良いですか?」
そう言ってアスカロンが口を開いた時ドアがノックされ夕食が運ばれてきた。係の人に笑顔でアスカロンが対応し気がつけば机の上には美味しそうなご飯が並べられていた。
「話は後ね。冷める前に頂くわよ」
「はいっ」
おかずに汁物にご飯。それらを箸で少しだけつまみ口へと運び味を確かめてゆく。良く噛み違和感を探すのだが見つからず本格的にご飯を食べ始めてゆく。
「変な食べ方をしますね」
「癖なのよ。昔ご飯に毒を混ぜられた事があって」
「一体どんな生活をしていたのですか?」
「別に人に言える様な事はしてないわよ。ん、おいし」
久しぶりの温かな食事を楽しみ食後の煙草に火を付け部屋を見渡すと温泉と書かれたプリントを見つけた。せっかくなので温泉へと向かう事に。脱衣場で服を脱ぎ洗濯機へと放り込みアスカロンが服を脱ぐのを待っていた。
「先に行ってても良いですよ?」
「嫌よ。早くしなさい」
再びアスカロンに前を歩かせ浴室へと。浴室へ繋がるドアを開けた瞬間に立ち込める湿気を含んだ空気を感じながら二人横並びとなり身体を洗っていた。
「ユリの身体傷だらけですね」
「そう?普通じゃない?」
「普通の人は背中にそんな傷なんて付けていませんよ」
そう言われて鏡を背にし振り返ると肩から腰にかけて斜めに走る傷跡が。
「まぁ良いわ。ほら、湯船に行くわよ」
「まだ頭しか洗ってないじゃないですかっ、ちゃんと洗わないと次のお客さんに迷惑になっちゃいますよ」
「むぅ」
渋々身体を洗い湯船へと浸かる。普段は川や雨で身体を洗っているから暖かく足を伸ばしゆったりと浸かれる温泉に癒しを感じていた。
「じゃあ私の質問に答えて下さいねっ。ユリの両親はどこに居るのです?」
「知らない」
「今までどのように生きていたのです?」
「適当に」
「これからどうするのです?」
「気のままに生きていくわ。嫌だったらいつでも離れて良いわよ」
「もぉぅ、そんな事言わないで下さいよっ」
その後喋りかけてくるアスカロンに相槌を打ち逆上せる前にお風呂を上がり浴衣を羽織り部屋へと戻ってきていた。
「ふぁああっ、寝るわよ」
「まだ9時ですよ?」
「いつも暗くなったら寝てるのよ。アスカロン布団で寝なさい」
そう言ってドアに一番近い壁に座り膝を立て頭を付けていた。
「そうやって眠るつもりですか?」
「いつもこうしてたから」
「風邪ひいちゃいます、お布団で寝て下さい」
「嫌よ、寝てる時に襲われたらどうするのよ」
「私がユリの事を守ります。だからお布団で寝て下さい」
そう言われてチラリとアスカロンへ目線を向けると真剣な眼差しであたしを見ていた。
「分かったわ、少しだけ信じてあげる」
ゆっくりと立ち上がり2組ひかれている布団へと潜り込み目を閉じていた。
「おやすみなさいユリ」
「ん、」