※この作品はR-18です。

インテグラル・ノア サイドストーリーユリ物語   作:やす、

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借金返済物語、9

私が扉を開けて入って行った冥界の最奥地。その先に広がる世界は私の想像を絶する世界だった。

 

 

これが冥界なの……

 

 

見渡す限りの草原、咲き乱れる花々、そしてその大地の恵みを受け生きている動物達。私がここに来た事など気にも止めず普段通りの生活をしているのだろう。

 

 

…………

 

 

それでも油断なんてできない。動物達が豹変し襲いかかって来るかもしれない。私は剣を構えいつでも攻撃できるようにしながら道を歩いていた。

 

 

そんな私の足元に一匹のネコが歩いて来た。尻尾を立て私の足に顔を擦り付けるとゴロリとお腹を見せ転がった。

 

 

よしよし

 

 

思わずしゃがみその頭に、背に、お腹に、優しく手を伸ばし柔らかな体毛と温もりを感じていた。

 

 

ニャーゴ

 

 

だけどそのネコの一鳴きで全てが変わった。先程までの草原の姿は無く荒れ果てた大地、川の様に流れる溶岩、轟音を立てながら崩れ落ちる山脈。

 

 

生を感じさせる物は無く近づく物全てを死に至らしめる様な。それでも私は歩いていた。荒れた大地に残された一本道を。

 

 

流れる汗を拭いながら歩いてゆくと再び世界が表情を変えた。

 

 

私が歩くのは海の底の様だ。フジツボが付着した遺跡や崩れ落ちた建物を見ながら歩いてゆく。

 

 

そして。

 

 

海を抜けると何も無い空間へ。自分が今前に進んでいるのか、後ろに下がっているのか、ここが空なのか地面なのか分からなくなる程に何も無い。この空間には色すらなく透明って言葉がぴったりだ。

 

 

しばらく泳ぎ、歩き、飛び、進むと人の気配を感じた。誰か居る。

 

 

こんにちわ、私

 

…こんにちわ

 

 

そこに居たのは私だった。何度も鏡で見た事がある姿。モニカ・ワーズワースだ。

 

 

私はここへ何しに来たのかな?

 

みんなのマナを取り戻しにだよ

 

こんな危ない所に一人で?

 

うん

 

なら、覚悟はできているんだよね?

 

もちろんだよ、私の愛にかけて

 

そう言うと思ってたよ、なら行きなよ、命の終わりユグドラシルの根っこへ。

 

 

そう言って私は姿を消した。そしてこの世界は私が瞬きをした瞬間に姿を変えた。

 

 

……………

 

 

沢山の光の玉が木の根に向かって並んでいた。その一つが根に触れるとそのまま根に吸い込まれて行った。これがユグドラシルに還るという現象なのだろう。なら早く探さないとみんなも還ってしまう。だけど

 

 

光の玉の数が多すぎてどれがどれだか分からなかった。こうなったら試しに一つ触れてみよう。浮遊する光の玉にそっと手を伸ばした。

 

 

んっ!!!

 

 

その瞬間に私の中に色々な事が流れ込んできた。きっとこれはこの魂の記憶。

 

 

 

…………………

……………

…………

……

 

 

 

今日のライブも絶対成功させるんだからね♪

 

おう!俺とラブリュスならどんなライブでも成功させれるさ

 

えへへ♪ステージで輝く私から目を離したらダメだよマスター♪

 

 

ラブリュスと親し気に話すマスター。その後ラブリュスのライブは大成功を収めステージにマイクを置きラブリュスはマスターの元へ。

 

 

だけどそのマスターは誰かに殺されていた、変わり果てた姿のマスターに抱き付き涙を流すラブリュス。そんなラブリュスに話しかける男が。

 

 

ラブリュスを独り占めする奴は俺が殺した。これでラブリュスはみんなの為に歌える。

 

 

そう自信あり気に話すのだがラブリュスはマスターの元を離れようとしない。それに腹を立てた男が死体を蹴り飛ばした。そしてラブリュスは暴走した。

 

 

身勝手な男の行動が二人の運命を変えた。その先に待っていたのは破壊と殺戮。暴走し自我を失ったラブリュスは全てを壊した。

 

 

キミも一緒に死ぬんだよ?

 

 

返り血を浴びたラブリュスが私に気が付きその手に持つ斧を私に振り下ろした。

 

 

 

…………夢だったの?

 

 

斧が私の頭を砕く寸前に私は意識を取り戻していた。その手の先には何事も無かったかのようにふわふわと宙を舞い元の所に戻ってゆく光の玉が。

 

 

考えろ私、あの幻覚の通りならこの光の玉の近くにあるのはその時に殺された人達の魂だ。それならもっと後ろの方に行けばまだ死んで間もない魂があるはずだ。

 

 

剣を支えに立ち上がり魂の列を逆走してゆくと見つけた。

 

 

あった。白く輝く光の玉だ。きっとこれはエクスカリバーくんの魂。そう思い右手を伸ばした。そして指先が触れた瞬間にその時の記憶、想いが流れ込んできた。

 

 

暴走の力を解放したアロンダイトくんとロンゴミアントくんと対峙した時エクスカリバーくんは震えていた。圧倒的な力の差に。それでも私の望みを叶える為震える身体を隠し勇敢に立ち向かった。だけど、結果は、、、。それでも最後の瞬間まで自分の事よりも私の望みを叶えられなかった自分を責めていた。

 

 

ごめんねエクスカリバーくん、、、情けない私でごめんね、、、

 

 

光の玉を両手で包み込みゆっくりと抱きしめると私の中へと入って行った。

 

 

…………次だ、次の魂は紅く輝くこの光の玉だ。そっと両手で包み込んだ。

 

 

お腹に突き刺さった槍を引き抜こうと力を込めるルーンくん、それでも急所を突かれたようで徐々に力が抜けてゆく、だけどそれでもルーンくんは諦めなかった。私との約束を守る為に吹き出す血も痛みも恐れず立ち向かおうとしてくれた。

 

 

ありがとうルーンくん、こんな私の為に、、、

 

 

頬を伝う涙なんて気にもせずゆっくりと光の玉を抱きしめると私の中へ。

 

 

…………次は蒼く光る魂だ、きっとこれはアスカロンくんの魂。

 

 

ユリくんの指示で二人を助けようと呪文を唱えていた時だった。心臓に突き刺さった一本の矢。それでアスカロンくんは死んだ事にも気付かずに息絶えた。

 

 

ごめんねアスカロンくん、、、そしてありがとう。

 

 

フラッシュバックする記憶に精神が焼かれ意識が飛びそうになる。だけど私は手を伸ばした。黒く、翠に輝くこの魂に。

 

 

…………そう言う事だったのか。なら他の魂もそうなのだろう。

 

 

黒く白く光る魂に触れても、黒く蒼く光る魂に触れても、黒く黄金に光る魂に触れても結果は一緒だった。この四人は過去に暴走した事がありそれが何らかの原因で暴走状態が解かれた。その時の事が教会に記されていた様だ。それにザインが目を付け何らかの方法で再び暴走させた。

 

 

やっぱり原因があると思っていたけど犯人はザインだったなんて、この事が公になるのを防ぐ為に生き返らせる行為はキルオーダーに反するなんて言ったのだろう。

 

 

あいつは私が殺す。どれだけの人が止めても必ず息の根を止めてやる。ドス黒い感情が心を支配してゆく。だけどそんな私の心よりももっと黒く邪悪な魂を見つけた。これはユリくんのだろう。

 

 

意を決してその魂へと手を伸ばした。

 

 

私との約束が守れなかった事。私のキル姫が殺されてしまった事。それにアスカロンくんの死。誰も守れなかった、約束一つ守れなかった。その悔しさ、怒り、そして強敵と戦える喜びが混ざり合い深い憎しみに変化していた。

 

 

全てを恨み自分すら恨んだその魂は私の手をすり抜けた。

 

 

待って、、、行かないでよ!!

 

 

手をすり抜けた魂を追いかけ掴み私の胸に押し当てるとゆっくりと身体の中へ入っていった。

 

 

うっ!!

 

 

その瞬間から動悸が止まらず冷や汗が吹き出した。魂が拒絶している、生き返る事を。

 

 

大丈夫だよ、誰もユリくんを責めたりしないよ

 

 

そう優しく言うとドクンと心臓が飛び跳ねた。違う、ユリくんが掛けて欲しいのはこんな言葉じゃない。

 

 

早くみんなの所に帰ろう、みんな待っててくれてるよ

 

 

その言葉の後に心臓が乱暴に脈を叩き上昇する脈拍に意識を持ってかれそうになるのを根性で繋ぎ合わせた。この言葉じゃ無い。

 

 

 

……………ねぇ、約束一つ守れなかったぐらいで逃げるの?卑怯だよ

 

 

そう言うと私から逃げ出そうと暴れ出した。それを必死に抑え込むとやがて大人しくなった。

 

 

いい子

 

 

胸を1撫でしてため息を一つ。もうこの空間には用はない、二人の元へ帰ろう。そう思いユグドラシルに背を向けて歩き出した。

 

 

その魂を返しなさい

 

 

凛とした落ち着きのある声が聞こえ振り返った。そこに居たのは以前地上世界で見たラグナロクだった。

 

 

もう一度言うわ、その魂を返しなさい

 

嫌だよ

 

そう、ならこの蒼き剣に沈むと良い

 

 

銀髪から覗く瞳が真っ直ぐに私を捉え剣を構えた。私も立ち向かう為に剣を構えた。

 

 

戦う意思があるのね、なら、容赦はしない

 

 

その言葉を言った瞬間に私が握る剣は宙に舞った。そして首に当てられる鋭利な刃物。

 

 

所詮はただの人間ね、このまま首を切り落としてあげよっか

 

それでも良いよ、だけどお願いがあるんだ

 

何?

 

このマナを向こうの世界に届けて欲しいんだ、それさえ約束してくれるなら私の命なんてくれてやるよ

 

それは認められない

 

そう、なら、抗うよ

 

 

首に当てられた剣を握りゆっくりと押し返してゆく。鋭い痛みが走り血が垂れてゆくがこんな事みんなが受けた痛みに比べたら。

 

 

やはり人間は愚かね、私がこのまま剣を引けばその手がどうなるか分からないの?

 

分かってるよ、だけどそれでも私は…!

 

分かった、なら剣は使わない。

 

え?

 

 

そう言うと剣が光となり消えた。そしてその先には拳を構えるラグナロクが。

 

 

己の意思をその拳で示して、そして掴み取りなさい

 

分かった

 

 

ギュッと脇を締めて拳を構えた。勝てる相手じゃないのは分かっている、だけどそんな事で諦める訳にはいかない。

 

 

ガハッッッ!?

 

 

一瞬で距離を詰められ私の鳩尾に拳が叩き込まれた。身体がフワリと浮き上がりその場に蹲った。

 

 

所詮人間はキル姫が居ないと何もできない弱者か、、、魂を返すのなら命だけは助けてあげる

 

あ"たしのいのぢなんでくれてやるよ"だけどっっ!!みんなの魂は渡さないっっ!!!

 

 

咳き込みながら立ち上がり痛みで震える身体で拳を構え直した。足が震え視界も定まらないけどそれでも。

 

 

そう

 

 

ラグナロクの拳が私の顎を捉えた。意識を持ってかれ左足が浮き上がった、だけど。

 

 

ぬおぉぉりやぁぁ!!

 

 

浮いた足を踏み出し体重をかけた右手を振り抜いた。それはラグナロクの顔面を捉えた。

 

 

良い拳ね、モニカの覚悟伝わったよ

 

どうして私の名前を知ってるの!?

 

イージスに頼まれたの、死んだキル姫を生き返らせる禁忌を犯すその覚悟があるか見極めてってね

 

そうだったんだ、、、でもここはキル姫は入れないんじゃないの?

 

うん、だからカオスリーパーに手紙を届けて貰ったわ

 

 

そう言ってラグナロクは優しく微笑み私の頭を撫でてくれた。

 

 

モニカの様な奏官が居るなら世界は安泰ね

 

そんな事ないよ、世界には私欲で生きる人が沢山居るよ

 

ならモニカが導きなさい、皆が笑顔で生きられる世界に

 

 

そう言ってラグナロクは小指を私に向けた。

 

 

はい、指切り

 

うん!

 

 

小指を強く絡めて世界の果てで約束をした。笑顔で溢れた世界を作るって約束を。

 

 

行きなさい、出口は向こうよ

 

うん、あの

 

何?

 

ありがとう

 

お礼を言われる様な事はしてないわ

 

 

その声の後にはもうラグナロクの姿は無かった。帰ろう。ラグナロクが示してくれた方へと歩き出した。

 

 

 

 

 

……………………………………………………………

 

 

 

 

ただいまみんな!!

 

おかえり、どうだった?

 

みんなの魂を集める事ができたよ!

 

うん、ありがとね、じゃあ帰ろっか

 

うん!イージスくんありがとね

 

私は何もしていない、道を切り拓いたのはモニカだ

 

それでこの魂をどうしたら良いのかな?

 

そのまま持っていれば良い、元の世界に帰れば蘇生させる事ができる

 

分かったよ!

 

急ごっか

 

うん!イージスくんまたね!それとカオスリーパーも!!

 

 

ユウくんに手を引かれながら何度も振り返り二人に手を振った。

 

 

向こうの世界はどうだった?

 

凄く不思議な世界だったよ、それと一人のキル姫に会ったよ

 

へぇ、誰に会ったの?

 

ラグナロクだよ、ほら、前地上世界で見た

 

そうなんだ、ならみんなもあそこに居るのか

 

どうしたの?

 

いや、考え事だよ、それより乗ってよ

 

 

そう言うと走るのをやめてしゃがみ背を私に向けた。その背に乗る事に。

 

 

しっかり掴まっててね

 

 

私が返事をする前にユウくんは駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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