※この作品はR-18です。

インテグラル・ノア サイドストーリーユリ物語   作:やす、

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黒ユリと潰えぬ理想

人は理想という頂きを目指すものだ。少し噛み砕くと夢に向かって頑張るかな?まぁ良い。

 

 

その理想が善悪どちらであるのかそれを判断するのは他人であり決めるのは本人だ。

 

 

この話は一人の少年の潰えぬ理想に力を貸し一つの街を潰し斬った私達の話だ。

 

 

 

 

 

 

あの町を出てから私はひたすらに歩いていた。少しでも止まればあの二人の事を思い出して泣きそうになってしまうからだ。

 

 

いいや、考えるのはやめよう。リュディ達の事だ、きっと今頃向こうで誰か捕まえて音楽をやっているだろう。

 

 

そんな事を考え私はやっと足を止めた。振り返ればあの町は建物が少し見えるだけでかなり離れた所まで歩いて来ていたようだ。そして前を向けば次の街が少し離れた所に見える。

 

 

そこですぐに街へ向かう程私は剪定に情熱を持ってはいない。こないだレーヴァテインに邪魔をされたお昼寝をしようと手頃な場所を探しそこに寝転び煙草を咥え火を灯し吐き出される煙と夜空を見ていた。

 

 

(これを吸ったら寝よう)

 

 

まだ太陽は顔を出していないから日が登るまで寝よう。そう思いながら煙草を弾き飛ばし目を瞑り睡魔にされるがままに。

 

 

もう少しで眠りに落ちる瞬間に何かの足音が聞こえた。それに意識を向けて行くとこっちへ向かって来ているようだ。

 

 

ダンっと力強く大地を踏み締めた音の後その足音は気配を消した。

 

 

「チッ!!」

 

 

寝転んだ状態から一気に起き上がり二、三歩踏み込み前方へ飛び跳ねると私が居た位置に何かが振り下ろされていた。

 

 

「良く避けれたね。潰すつもりだったのに」

 

「うっさいわね!あんたも私のお昼寝の邪魔するつもり!?」

 

「剪定をサボって昼寝なんて僕が許さないよ」

 

「私は疲れてんのよ!あんたこそ私の邪魔する暇があんなら剪定してなさいよ!」

 

 

地面に刺さった斧を引き抜き私に向けたパラシュ。それに双剣を構えて向かい合っていた。

 

 

「ふっ、そうだね。僕には君の相手をしている時間なんてないよ」

 

「ムカつくわね。そうだ、こないだの喧嘩のケリをつけるわよ」

 

「喧嘩?あぁ、僕もそのつもりだよ」

 

 

パラシュから吹き荒れる闘志と私から吹き荒れる闘志がぶつかり合い風を起こしその中心で私達は睨み合っていた。その姿は睨み合う虎と竜のようだ。

 

 

「パラシュさん!今助けるっス!」

 

 

誰かの声が聞こえたと思ったら私の背後から手が伸び腰を掴んだ。それに戸惑うと一瞬空が見えてすぐさま強烈な痛みがやってきた。

 

 

「いったぁ、、、何すんのよ、、、」

 

「ジャーマンスープレックスっス!」

 

 

そう言うと私にその技をかけた主は立ち上がっていた。そんな事よりも私は痛みで起き上がれないままだった。

 

 

「パラシュさん!俺やったっス!」

 

「あぁ、うん。とりあえず話をしようか」

 

 

とりあえずあいつはパラシュの知り合いらしい。それに気が付いた後私は意識を手放していた。

 

 

 

しばらくして私は目を覚ましおきあがっていた。そしてキョロキョロと周りを見渡すと起きた私に気が付いた2人が申し訳なさそうな顔で私を見ていた。

 

 

「色々言いたい事があるわ、だけどまず先に私に謝りなさい」

 

「ごめんっス!まさかパラシュさんの知り合いだとは思わなかったっス!」

 

「パラシュ、こいつは誰よ」

 

「彼の名前はケイ。ケイは僕の剪定対象者だよ」

 

「つまり潰えぬ理想を持っているのね、ケイはどんな理想を持っているのよ?」

 

「俺っスか?俺の理想はあの街の住民を皆殺しにする事っス!」

 

「なるほどね」

 

 

腕を組み自信満々にそう言うので納得しかけたけどもう一度聞き直す事に。

 

「もう一度聞くわ。ケイはどんな理想を持っているのよ?」

 

「だから俺の理想はあの街の人達を皆殺しにする事っス!」

 

 

念の為二回聞いたのだが二回とも同じ答えが聞けたって事は聞き間違いでは無いのだろう。住民を皆殺しにするって良い理想ね。ってそんな訳あるかっ!

 

 

「なんでその理想に行き着いたのよ?理由を教えてよ」

 

「俺の家族はあの街の奴らに殺されたっス!俺はその復讐がしたいっス!」

 

 

そう胸を張り言う彼に頭を悩ませていた。どっちにしろ私達が剪定するから同じ事なのだけどさ。

 

 

「パラシュは何か聞いてるの?」

 

「僕が聞いても同じ事しか言わなかったよ。どうせ僕らが剪定するのだから同じ理想を持つ者として彼の事を手伝おうと思ってね」

 

「いや、そうなんだけどさ。もう少し、、こう,あるわよね?」

 

 

私自身も剪定をしてきたからケイの事を止める筋合いは無いのだが復讐の為に街を滅ぼそうとしている彼を何故か止めたくなっていた。

 

 

「あんまり言いたく無い事だと思うけど聞くわ。あんたの家族はどうしてあの街の人達に殺されたのよ?」

 

「俺の父さんと母さん妹はあの街の権力者の息子に殺されたんスよ」

 

 

そう言ってケイがその街の方を指さしていた。その表情は硬い決心を決めた男の顔をしていた。

 

 

「普通なら罪を犯した者は法で裁かれるっス。だけどその息子は権力を使いその罪を闇へと葬ったっス。俺もうちの家族に非があるのならと思って調べたんスけどこっちには何も非も無く(ただ人を殺してみたかった)その好奇心を満たす為に俺の家族は殺されたんスよ」

 

 

「だから俺は決めたんス。法で裁けないのなら俺自身で裁けばいいってね。だから俺はその為に武道を始め誰にも負けない力を手に入れたっス!」

 

 

力説するケイの話をただ聞いていた。そう聞くと納得はできるのだが少し疑問が残る。

 

 

「それなら街の人達は関係ないわよね?その息子だけを殺せば良いじゃない」

 

「俺も最初はそのつもりだったっス。だけどその事を知ってもあの街の奴等はその罪を問う事なく権力に屈したんスよ。確かに声を上げてくれた人も居たっスけど届かない声なんて声を出してないと一緒ですよ」

 

 

彼がそう望み行動をするのなら止める必要もないだろう。その街をみると今まで行ったことのある街よりも大きく一人では苦労するだろう。

 

 

「パラシュはケイに力を貸すのよね?」

 

「そのつもりだよ、いくらケイが強いといったって一人では骨が折れるだろうからね」

 

「分かったわ。私も手伝わせてもらうわ」

 

「君の力なんて必要無いよ」

 

 

私がそう言うとギロリとパラシュから視線が送られた。

 

 

「私はパラシュに聞いてないわよ。ケイ、私にもあんたの理想の手伝いをさせてよ」

 

「助かるっス!仲間は多い方が良いっスからね!」

 

 

ケイがそう言うとパラシュが不機嫌そうな顔をしていた。まぁ別に良いんだけど。

 

 

「それで?あの街にはどれだけの人が居るのよ?」

 

「大体1000人ぐらいじゃないっスか?」

 

「あとはキル姫の数ね」

 

「この街には教会の支部があるはずだから複数人居るはずだよ。それと奏官もね」

 

「なら私達でキル姫を、ケイには住民をね。でもそれだけの人数相手にして大丈夫なの?」

 

「心配ないっスよ!この為に鍛えたんスから!」

 

 

そう言って上着を脱ぎその身体を見せてくれた。上着を着ていたら分からなかったけどかなり良い身体をしている。

 

 

「ふむ。それであんたの武器は何よ?」

 

「俺はこれっス!」

 

 

そう言って上着のポケットから何かを取り出し両拳にはめていた。何だこれは?

 

 

「それは何なのよ?」

 

「これはメリケンサックっスよ!パンチの威力をあげる為の物っスね。それとこの靴も爪先に鉄板が仕込んであるっス!」

 

 

そう言われてその手を見てみると殴られたら痛そうなトゲが付いている。それにケイの足を踏んでみると確かに硬い。

 

 

「さてと、準備体操でもしますか」

 

「そうだね。それが終わったら行くよ」

 

 

どこからか取り出したラジカセのスイッチを入れるとラジオ体操が始まった。そのリズムに乗って体操をしていた。なんだろ、このおじさん?の声を聞くと体操をしなければという気になれる。

 

 

「それじゃあ行こうか」

 

 

パラシュの声の後に3人が歩き出した。ケイを先頭にパラシュ、私と並びその街を目指して歩いてゆく。そして夜が明けた頃に街の入り口、関所の近くにたどり着き足を止めていた。

 

 

「見張りが居るね、どうする?」

 

「決まってるっスよ」

 

 

そう言うとケイがツカツカとその方へと歩いて行った。それをパラシュと2人で見ていると何やら会話をしている様子。しばらくして見張りが地面に倒れケイがこっちへ来いと手招きをしていた。

 

 

「ねぇ、今の見た?」

 

「あぁ、これ程の強さになる為に血が滲むような努力をしたんだろうね」

 

 

しっかりと見ていたはずなのにケイが見張りに何をしたのか全く分からなかった。それでも見張りが倒れたという事は何かをしたのだろう。門へと歩いて行きその見張りをみると眉間が撃ち抜かれ陥没しているのが分かった。

 

 

「問題は次ね、一軒一軒のぞいて行くわけ?」

 

 

門から街を見ると多くの住宅が立ち並んでおりまだ朝の早い時間なので住民達は家の中にいるのだろう。少し人は見えるけど散歩だったりとその数はまばらだ。

 

 

「ちゃんと考えてあるっスよ。パラシュさんお願いするっス!」

 

「任せてよ」

 

 

パラシュが斧を構えそれでどうするのかを見ているとパラシュが一番近くにあった民家に歩いて行き斧を叩き込むと轟音を立てながら家が瓦礫に変わった。

 

 

「流石っスパラシュさん!俺もそれぐらいできるようになりたいっス!!」

 

「君も努力を怠らなければこれぐらいできるようになるよ」

 

 

パラシュに尊敬の眼差しを送るケイに少しパラシュが照れていた。そんな事よりもこの脳筋は何をしているのかさっぱり理解が出来なかった。

 

 

「何?準備運動ならさっきしたわよね?」

 

「君には今のが準備運動に見えたのかい?それなら君は知性を付けるべきだよ」

 

 

はぁ?っと反論しようとした時に街の住民達が我先と言わんばかりに家から飛び出していた。そこにケイが「異族が出たぞーーーっ!!!」と叫び声をかけると民衆はパニックを起こしていた。

 

 

これが狙いだったのか。わざと家屋を壊しそれを異族の仕業に見せかけパニックを煽れば考える事を捨てただ逃げるに徹するだろう。そこを叩くという事か。

 

 

人々を押し除け自分が助かるために逃げようとする人の群れにパラシュが斧を投げ込むと当たりは血の海へと変わり果てその海をケイが駆けて行き逃げ惑う人達に拳を振るい蹴りを打ち込んでいた。その光景を見ていると私の持つ二本の剣の黒い方の鞘がカタカタと震えている事に気が付いた。

 

 

試しにその剣だけを抜き構えると私は導かれるように歩いて行きためらい無く人を斬り裂いた。別に人を斬るのが楽しいって事は無いのに楽しいと思ってしまう自分が何処かにいた。

 

 

私達の進軍は順調に進んでいた。人を斬り裂き人を叩き潰し人を殴り殺し。側から見たら悪者は私達だろう。だけど剪定という名の正義を振りかざし世界の為という大義名分を掲げ骸の山を築きながら突き進んでいた。そんな時逃げ惑う人達を押し除けこっちへ向かってくる人が見えた。

 

 

「奏官様!あそこに異族がっ!!」

 

「ここは俺達に任せろ、ルーン!」

 

「すっごく良い匂い♪あたいも異族側に回りたいぐらいだよ♪」

 

 

何処からか強い気配を感じパラシュの合図と共に私達は足を止めその方を見ていた。そこに居たのは金髪をリボンで結い槍を携えた目付きの悪い女。この気配はこの女から漂っているた。人間じゃない、キル姫か。

 

 

その奏官様と呼ばれている人の命令を受け獲物を狙うように鋭い目線で血に塗れた私達を睨んでいた。

 

 

「君がこのキル姫の奏官か!?異族は何処にいる!?」

 

 

血と肉塊を気にすることなくケイに近づくとそう問いかけていた。

 

 

「そういう時はまず俺達の心配が先っスよね?」

 

 

ケイが動いた瞬間にゴキリと何かが折れる様な音が聞こえその奏官の首が背中に付いていた。その後二、三歩歩き地面に崩れ落ちた。

 

 

「あたいのマスターになんてことすんだよ!おらぁ!!」

 

 

そう槍を構え私達に向かってきたのだが先程までの強い気配は消え呆気なくパラシュの斧により二つに分かれ崩れ落ちた。

 

 

「何でこいつは急に弱くなったのよ?」

 

「あの奏官とのバイブスとキラーズの繋がりが消えたからだよ。強く繋がれば繋がるほどキル姫は強くなるからね」

 

「へぇ、便利そうで不便なのね。っていう事は奏官を先に潰せば楽になるのね」

 

「そんな話よりもさっきの住民が逃げたっスよ!」

 

 

奏官とルーンと一緒に来ていた人が一目散に逃げ出していた。それがどうしたという話なのだが。

 

 

「追うよ」

 

 

そう言ってパラシュが歩き出しその後をケイがついて行く。二人共良くもまぁこんなに情熱を燃やせるものだ。私はお腹空いたし寝不足だしもう直ぐにでもゴロリと寝転がりたかった。

 

 

「ユリさんも早く来るっスよ!」

 

「はーい」

 

 

寝転がれそうな所を探そうとしていたらケイに呼ばれてしまった。諦めて煙草に火を灯し渋々そっちに向かい歩いて行く。

 

 

「ここからは二手に分かれようか。このまままとまっていたら逃げられてしまうよ」

 

「そうしますか、二手って事は俺は誰に付けば良いっスか?」

 

「そうだね、君はユリと動いて貰おうか」

 

「私は構わないわ。それでどこで落ち合えば良いのかしら?」

 

「ならあそこでどうですか?」

 

 

そう言ってケイが指差す先を見るとこの街で一番大きそうな家が見えていた。

 

 

「あの家は?」

 

「あの権力者の家っスよ」

 

「ふむ」

 

「なら殲滅でき次第あの家に集合だね。手を抜く事は許さないよ」

 

 

そう言って私を睨んだパラシュ。私ってそんなにサボるように思われているのだろうか?

 

 

「分かってるわよ。あんたこそサボるんじゃないわよ」

 

「僕がサボるように見えるかい?まぁ良い、行くよ」

 

 

私達に背を向け歩き出したパラシュ。それを合図に私達も歩き出した。

 

 

「さっさの剪定してその息子の元に行くわよ」

 

「そうっスね!早く俺の拳をあいつにぶち込んでやりたいっス!!」

 

 

両親を殺された恨みってそんなに強いのだろうか?私はお母さんは生きているしお父さんは私が産まれてすぐに事故にあったと聞いているからそのケイが持つ怒りの感情が理解できないでいた。でも、もし誰かにお母さんを殺されたらその気持ちが理解する事ができきっと私もケイのように復讐に燃えるのだろう。

 

 

そして私達も今どこかの家族を剪定している。もし生き残りを残せば復讐の矛先を私達に向けるだろう。その芽は摘み取らなければ。

 

 

その後悲鳴を、叫び声を、断末魔を聞きながら私達は進んでいた。何度も言うけど剪定には慣れているのだが子供連れを剪定するのが一番心を痛ませる。それはケイも同じようでためらい仕留め損なえば心を擦り減らす。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

だけど私達に戻る道など残されていない。もう進む道しかないのだ。

 

 

そんな時一本の矢が私達に向かい放たれた。

 

 

「ちっ!ケイ!私の背後にいなさい!」

 

 

そう叫びながらケイを背後へ置き辺りを見渡すのだが矢を放った主が見当たらない。だがここは住宅地、身を隠す所なんていくらでもある。

 

 

「あそこに隠れるわよ!」

 

 

一番近くの家の玄関を開けその中へと避難する事に。

 

 

「窓に近寄るんじゃないわよ」

 

「了解っス!

 

 

ケイを奥に追いやり窓から少しだけ顔を出し外の様子をうかがうのだが敵の姿は見えない。私達が身を隠せるように向こうも身を隠しているのだろう。そうであるならば土地勘がある向こうの方が有利だ。

 

 

少しだけため息をつき窓を睨んでいると部屋のどこかから良い匂いが。目線を部屋の中に移すと机の上に朝食が並んでいるのが見えた。朝食の準備が終わった頃ぐらいに私達が攻め込んだのだろう。

 

 

「ちょっと外見てなさい」

 

「良いっスけどどうしたんスか?」

 

「お腹すいたのよ」

 

 

見張りを頼み入れ替わりで椅子に座り遅めの朝食を食べる事に。まだ温かいスープを飲みパンを頬張る。うん、元気出た。

 

 

「あんたも食べるなら変わるわよ」

 

「俺はパラシュさんにご飯食べさせてもらったんで大丈夫っスよ。見張っとくんでゆっくりして下さいっス」

 

「へぇ、意外と面倒見が良いのね」

 

「出会った時いきなり斧を向けられて印象は最悪だったスけどこの話をしたら親身に聞いてくれたんスよ。それから稽古をつけてくれたり面倒を見てもらってたんス」

 

 

その話を聞きながら最後のパンを口に運びスープを飲み干した。私はパラシュは嫌な奴って印象しかないのだけど少しだけ印象が変わった。

 

 

「ならあんたの為にもパラシュの為にもこの状況をなんとかしないとね」

 

 

グッと口元をぬぐい煙草を咥え火を灯し立ち上がった。今の状況をまとめると弓を使う何かに狙われ私達は民家に逃げ込んでいる。窓は見渡す限り四つ程あり後は玄関か。せめてもう一発矢を放ってくれればその角度で大体の居場所が分かるのだけども、、、。

 

 

ケイと場所を変わり窓から外を覗くのだが特に変化もみれない。

 

 

「ん、この家二階もあるっスよ」

 

 

そう言われてケイの方に行くと奥の方に階段があるのが見えた。もしかしたらと思い階段を登り二階を確かめる事に。

 

 

一段一段階段を登ってゆくと廊下が見えさらに足を進め顔を上げると日差しを取り込むための大きな窓が。

 

 

あっ。と思った瞬間に窓を貫き何かが部屋に打ち込まれた。

 

 

「伏せて!!」

 

 

叫びながら身を屈め斜めに窓を睨むと道を挟んだ所にある家の屋根に金色の髪の毛が見えた。こっちに矢を打ち込んだ犯人だろう。

 

 

「あそこに居るわね」

 

「屋根の上だと手の出しようがないっスね」

 

 

さてどうする。ここにパラシュが居れば家を潰し地上に引きずり込む事ができるが私の剣では不可能だろう。それに迂闊に飛び出せば射抜かれかねない。それか相手の気を引き屋根の上に登る事ができれば、、、。

 

 

「危ないっス!!」

 

「うわっ!」

 

 

考え事をしていたらケイに身体を引っ張られ私がいた所を矢が通過し壁に突き刺さった。

 

 

「何ボーッとしてんスか!!」

 

「ごめん、助かったわ」

 

 

両頬を叩き気持ちを引き締め煙草に火を灯す。二発目の矢で明かり取りの窓のガラスは完全に砕け散り辺りにガラスの破片が散らばっていた。

 

 

「ケイ。あんたに頼みがあるわ」

 

「なんスか?」

 

「私の剣を預かってて欲しいのと私が合図したらこの矢を向こう目掛けて投げて欲しいの」

 

 

壁に突き刺さっている矢を引っこ抜き渡し腰のベルトを外し押し付けた。

 

 

「えっ?って重っ!?」

 

「分かったわね」

 

 

返事も待たずに一階に降りゆっくりと玄関を開き上を見上げると屋根が邪魔で死角になっていた。それを見て玄関から真っ直ぐ下がった。

 

 

「ケイ!頼んだわよ!」

 

「行くっスよ!」

 

 

その言葉の後に走り出し反対側の家の壁へ向かい飛びつきすぐさま体制を直し今居た家の壁に向かいジャンプ。同じ事を繰り返し見事反対の家の屋根に飛び乗り前を向くと私達に矢を射った人が。

 

 

「あんたね、私達に矢を射った人は」

 

「へぇ、なかなかやるじゃん♪だけど武器も無しで私に勝てると思わないでよね!」

 

 

ケラケラと笑った後に矢を引き絞り私に狙いを定めていた。そいつの言う通り私は丸腰だ。だけど私には手も足もある。

 

 

「それで?あんたにはその矢と弓しか武器がないわよね、そんなんで私に勝てると思わないでよね」

 

 

そう言った後に一気にそいつ目掛けて駆け出してゆく、一歩一歩慣れない屋根の上を。相手は中々の手慣れの様で私が近づこうと怯まずに狙いを定めていた。銃と違い矢を装着する事を考えれば相手の射てる矢は一発のみ。それさえ躱せば私の勝ちだ。

 

 

あと少しでそいつに届く距離で私は飛びあがろうと体を少し屈め足に力を込めた。

 

 

「いただきっ♪」

 

 

その言葉と頭上を掠める矢を感じながら私はそいつの足へと向かい飛び付いた。

 

 

「なっ!?フェイント!?」

 

「残念だったわね、このまま一緒に落ちてもらうわよ!」

 

 

しっかりとそいつの両足を掴みながら屋根の傾斜を転がり落ちてゆく。そのまま空中で体制を入れ替えそいつの上半身を下にしながら。

 

 

ゴギリっと鈍い音を立てそいつの身体がつの字に曲りしばらく痙攣した後動かなくなった。

 

 

「オティヌス!?オティヌスっーーー!!!」

 

 

何処からか1人の男が亡骸へ走り寄り抱きしめていた。きっとこのキル姫のマスターなのだろう。可哀想なので手出しはせず見ている事に。

 

 

「よくも、よくも、、、オティヌスを……っ!!!」

 

 

しばらくすると目を真っ赤に泣き腫らし恨みを込めた瞳で私を睨み付けその恨みを晴らすべく右手を振り上げた。

 

 

「そう」

 

 

それを見切り懐に潜り込みそのまま顎を撃ち抜いた。可哀想だから一緒に置いておいてあげよう。その奏官をオティヌスの横に寝かせ煙草に火を灯し煙を吐き出した。

 

 

「ユリさんも良いパンチするっスね!格闘技もするんスか?」

 

「格闘技なんてやった事ないわよ。なんとなくあんたの真似してみただけよ」

 

 

煙草を吸い終わり次に進もうとしたときにオティヌスの弓が目に付いた。矢立を見るとまだ矢が残っていた、もらっておくか。

 

 

弓を肩にかけ矢立を腰に携え私達はこの場を後にする事に。もう少し歩けば待ち合わせ場所だ。

 

 

「そう言えばユリさんってパラシュさんとなんかあったんス?」

 

「別に何もないけど、どうしたのよ?」

 

「なんかパラシュさんがユリさんの話をすると少しだけ悔しそうなんスよね」

 

「勝手に私の話をして悔しくなるのはやめてもらいたいわね」

 

 

パラシュと昔何かあったっけ?そう思い記憶を辿るのだが特に何も思い出せず諦める事に。それよりも弓の試し撃ちがしてみたい。

 

 

「パラシュさんは何処に居るんスかね」

 

「そういえば何も感じないわね。あんな斧振り回してれば音ぐらい聞こえそうなのに」

 

 

強いキル姫が居たとしてもパラシュに勝てるとは思えないしあのパラシュがサボるとも考えられない。

 

 

「まぁパラシュならそのうち来るわよ」

 

「そうっスよね」

 

 

しばらく待っていると大斧を担いだ人がこちらに向かい歩いて来た。それに向かいケイが手を振っていた。

 

 

「心配したんスよパラシュさん!」

 

「僕が遅れをとるなんてね、まぁ良い。準備はできているよね?」

 

「いつでも行けるわよ、あんたこそ休まなくて大丈夫なの?」

 

「そんな柔じゃないよ、行こうか」

 

「はいっス!」

 

 

ケイを先頭にその屋敷へと入ってゆく。そのケイの横を私が、その後ろにパラシュを置きながらの進軍。

 

 

「君は双剣を使うんじゃないのかい?」

 

「そうなんだけど拾ったから使ってみたいのよね」

 

「君は剣使いだから弓は使えないはずだよ」

 

「やってみてダメだったら捨ててるわよ」

 

 

二本の剣を携えたまま弓を構えながら歩いていた。弓なんて使った事はないんだけど何となく上手く使える予感がしていた。

 

 

「ユリさん!あそこに兵士が居るっすよ」

 

「ん、いい的ね」

 

 

ケイが見つけた兵士に向かい矢を弓にセットして弦を引き絞りながら標準を定めていた。

 

 

「やめておきなよ。仕留め損なえば面倒を起こすだけだ」

 

「うっさいわね、黙ってみてなさいよ」

 

 

相手を見据え引き絞ると私の感覚が今だと叫んだ。それに逆らわず指を離すと弾き出された矢が真っ直ぐにそいつに向かい飛んで行き壁に突き刺さった。

 

 

「やっぱり当たってないじゃないか。早くその弓を捨てるんだ」

 

「いや、、パラシュさん、あれを見てくださいっス」

 

 

ケイが指差す方を見るとゆっくりと兵士が倒れていった。さらに近づき見てみると額に矢が貫通した穴が空いていた。

 

 

「初めてにしては上出来ね。先に進むわよ」

 

 

壁に突き刺さった矢を引き抜き見てみると矢尻が曲りとても使えるような状態だったので捨てる事に。先に進もうと足を進めると悔しそうに歯軋りをするような音が。もちろん聞こえないふりだ。

 

 

「それで?ケイの目的の人はどこに居るのよ?」

 

「この屋敷に居るのは間違いないっス!多分一番奥の部屋じゃないですか?」

 

「さっさとそこに行くわよ」

 

「はいっス!」

 

「…………」

 

 

元気そうなケイに比べ元気のないパラシュ。何かあったのだろうか?

 

 

「なんでそんなに元気ないのよ、もしかして疲れたの?」

 

「別にそんな事ないさ、僕が理想半端で立ち止まる訳がないよ」

 

 

振り返り嫌味を言うも涼しい顔で返された。まぁ良いんだけどさ。

 

 

その後屋敷を進んで行きついに最奥の部屋の扉へと私達はたどり着いた。

 

 

「開けるっスよ」

 

「私が開けるわ。二人は下がってなさいよ」

 

 

扉に手をかけたケイを退けゆっくりと扉を開くと大きな部屋が西日に照らされていた。その部屋の奥に椅子に腰掛ける男の姿が見えた。

 

 

「エルドぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

「あっ!このバカ!!」

 

 

その男の姿を見た瞬間に私の間をすり抜けケイが男目掛け走ってゆく。その姿を見てもエルドと呼ばれた男は足を組み肘掛けに頬杖をつき余裕そうな姿。

 

 

「家族の恨み、ここで晴らすっス!!!」

 

 

椅子の前で止まりその勢いを右手に宿し踏み込み渾身のパンチを繰り出そうとしていた。

 

 

「やれ、ダーイン」

 

 

その言葉の後にボトリと何かが床に落ちた音が聞こえその後絶叫が部屋に響き渡った。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!俺の腕がぁぁぁっっっ!!??」

 

「私のマスターに何の恨みがあるのかは知らないが手を出す事はこの私が許しはしない」

 

 

突如ケイの前に立ち塞がり腕を斬り落とした主はゆっくりと私達の方にその視線を向けた。

 

 

「悪いが君たちのマスターはここで終いだ。悪く、思わないでくれよ」

 

 

うずくまり腕を抑えるケイに剣を振り上げながらそう言っていた。それを止めようにもここからの距離だと駆け抜けたとしても間に合わないだろう。

 

 

「くっ!ユリ!その矢であいつを射抜け!」

 

「そうね!任せなさいよ!」

 

 

パラシュの声に反応し弓を構え矢をセットし引き絞る。それを合図にパラシュが駆けてゆく。

 

 

「…………」

 

 

手が震える。これを外せばケイの命は無い。ケイの目的を、理想を目の前にして死なせてしまう。ここまでの頑張りを無にしてしまう。

 

 

「ーーーーーー」

 

 

のしかかるプレッシャー。だけど。

 

 

ギリリと弦を引き絞り真っ直ぐに相手を見据え標準を定める。そして『ここだ』と思った瞬間に指を離した。

 

 

「なにっ!?」

 

「やった!」

 

 

私の放った矢は真っ直ぐに剣へと向かい振り下ろす軌道を変えた。驚く女に向かいパラシュが走る。

 

 

「その男に手出しはさせないよ。ダーインスレイヴ!!」

 

 

パラシュが叫びながら振り下ろした斧をヒラリと躱し余裕そうな表情でパラシュを見下した。

 

 

「お主は、、、ふっ、どうやら詰めが甘かったようだな」

 

「あの程度で僕を止めたと思っていたのなら見当違いだ。ここで決着を付けさせてもらうよ」

 

「どうやらお主の事をみくびっていたようだ。良かろう、次こそ癒えない傷を与えてやろう」

 

 

どうやらあの女はダーインスレイヴと言うようだ。見た限り剣を使うキル姫のようだ。そしてパラシュと何かあったのか?ここからだと遠くて会話の内容がよく分からないけど。

 

 

そんな事よりもケイを救出しなければ。二人の戦いに巻き込まれたら危ない。

 

 

そう思い私が駆け出そうとした時に前方の二人が戦いを始めた。力強く斧を振るうパラシュに対し優雅に剣を振るうダーインスレイヴ。戦い方は真逆だが良い勝負をしている、それを避け遠回りをしてケイの元へ。

 

 

「しっかりしなさいよ!ほら!」

 

 

肩から斬り落とされた断面からおびただしい程の血を流し血の海に横たわるケイを揺すると少し反応があった。急いでケイの上着を脱がし傷口を固く結び締め背負い部屋の入り口まで連れてゆき寝かせてあげた。

 

 

「ゆりさん、、、あいつは、、、、」

 

「私達は手を出してないわ。あいつをぶん殴るんでしょ?それまで死ぬんじゃ無いわよ!」

 

 

ゆっくりと頷いたのを見てから深呼吸を一つして争う二人を見た。

 

 

 

(…………)

 

 

パラシュが押されている。まだ戦い初めて時間は経っていないのだがその動きは弱々しくいつものパラシュでは無かった。

 

 

「ん!」

 

 

パラシュの背中に血が付いているのが見えた。今の戦いで流れた血にしては赤黒過ぎる、もしかしたら分かれて行動していた時にやられたものかも知れない。それならばパラシュの動きが弱々しいのも合点がいく。

 

 

それでも果敢に攻めるパラシュ、その攻撃を受け流し反撃を仕掛けるダーインスレイヴ。そうだ!あいつのマスターを殺せばダーインスレイヴの力を弱められるはずだ!

 

 

そう思い弓を引き絞るのだが動き回る二人がいるため射抜くのは無理だ。

 

 

「くっ、、、あの時傷さえ負わなければ、、、」

 

「どうやらここまでのようだな。安心しろ、苦しませはしない」

 

 

ついにパラシュが持つ斧が弾き飛ばされた。それにとどめを刺すためにダーインスレイヴが迫っていた。

 

 

「退きなさいパラシュ!あんたの相手は私がしてあげるわ!」

 

 

パラシュを蹴飛ばしダーインスレイヴの前へ。双剣を構えトゲトゲを解放し睨み付けていた。

 

 

「あんたの相手はこの私、ユリがしてあげるわ。覚悟しなさい!」

 

「ほぉ、弓使いだと思い手は出さなかったがまさか剣も扱うとはな。面白い、かかってくるが良い」

 

 

鋭く目を光らせながら剣を構えたその姿に王者の風格を感じる。かなりの手慣れなのだろう。

 

 

「僕はまだ戦える、邪魔をするな」

 

「邪魔なんてしてないわよ、あんたはケイを見てなさい」

 

「でも、、、!」

 

「手負い同士仲良くしてなさいよ!」

 

 

そう言い残し余裕の表情を浮かべるダーインスレイヴに向かい斬り込んでゆく。それでもまだ余裕のある表情をしていた。

 

 

「双剣を扱うキル姫か、、、お手並みを拝見させてもらうよ」

 

 

踏み込み前進しながら斬り込んでいるのだが軽やかなステップで全てを回避されていた。その動きは無駄が無く洗練されている。

 

 

「どうした、お主が手に持つ剣はただ振るうだけか」

 

「むぅぅぅ!!」

 

 

何度斬り込んでも結果は同じだった。雑賀と戦った時のように全てを見切られている。

 

 

「あんたもミカンでも飛ばしてる訳?」

 

「ミカン?ふっ、何を言うと思えば。それより次は私が攻めてやろう。剣とは、こう振るうのだ!」

 

 

その言葉の後にダーインスレイヴが斬り込んできた。その動きは一切無駄が無く的確に隙を狙い攻めてくる。

 

 

つ、強い、、、反撃の隙すら無く身を守るのが精一杯だった。どれだけの年月を戦いに費やせばこの強さになれるのだろうか?

 

 

「どうした、攻めてこないのか?いや、私の剣捌きについて来れないだけか」

 

「くっ、、」

 

 

ダーインスレイヴの言う通り全く歯が立たないでいた。マスターとの共鳴もあるだろうが今まで戦って来た奴らの中でも別格の強さを誇っている。どうしたものか。

 

 

「悪いがまだパラシュを排除せねばならんのでね、一気に決めさせてもらう!」

 

 

どうやら考える暇は無いようだ。次の攻撃を避けるために意識を尖らせ防御体制を整えた。

 

 

「消えない傷を与えてやろう」

 

 

その言葉の後にダーインスレイヴの姿が消え空気が揺らめいた。それに向かい双剣をクロスさせ守りに入る。

 

 

キンッ、キンッっと乾いた金属音が二回聞こえ私の持つ剣が二本宙を舞った。あまりの威力にしっかりと握っていたのに弾かれてしまった。

 

 

「終わりだ」

 

 

丸腰となった私にトドメの斬撃が与えられた。

 

 

「残念だったわね!私にはこの尻尾があるのよ!!」

 

 

悪あがきで身体を回し尻尾を使い反撃に出たのが功をそうした。思っていたよりこの尻尾は硬く斬撃を防ぐ事ができた。

 

 

「ほぉ、実に多彩な技の持ち主だ、感心したよ。だがお主はその尻尾しか戦う術を持っておらぬだろう」

 

「そうかしら?私には手も足もあるわよ、すぐにあんたの顔面に拳を叩き込んであげるわ」

 

 

ブンブンと振り回される尻尾に拳を握りしめてダーインスレイヴと対峙していた。さて、第二ラウンドといこうか。

 

 

その前に私の尻尾について書いておくわ。このトゲトゲの力を解放すると出てきて普段は揺れているが勢いよく身体を振るとその方向に振られる。長さは私の身長ぐらいで結構硬い。

 

 

ダーインスレイヴが繰り出す剣技を避けながら反撃の隙を伺っていた。剣がなくなった分身体が軽くなり先程よりもフットワークが格段に良くなっている。だが相手の方がリーチが優位だし間合いに容易く入れる相手ではない。

 

 

お互いに必死の攻防が続き私は壁際へと追い込まれていた。

 

 

「壁を背にしてしまえばその尻尾も振れまい、私の勝ちの様だな」

 

 

ダーインスレイヴが剣を振り上げていた。このままだとこの物語はここでお終いだ。最善の策を探すため頭をフル回転させた時だった。窓から夕焼けが差し込みそれはダーインスレイヴの視界を奪った。

 

 

その一瞬の隙を突き顎に向かい拳を叩き込み怯んだ隙に身体を捻り鞭のように勢いを付けた尻尾で切り裂いた。

 

 

「運が私に味方したわね。さよならよ」

 

 

ダーインスレイヴが持っていた剣を使い首を断ち切った。

 

 

「さぁ、次はあんたの番よ!」

 

 

椅子に座るそいつに指を刺すと既にケイが拳を叩き込んでいた。何度も、何度も家族を殺された恨みを晴らすように。

 

 

「パラシュさん、ユリさんありがとうございました!これで俺の家族の恨みは晴らしたっス!」

 

「なら剪定させてもらうよ。君の理想を追う力は新しい世界でもきっと役に立つはずさ」

 

 

パラシュがケイの頭に手を置くとケイの身体が光となり空へと登っていった。それを二人で見送った後パラシュが私の方を向いた。

 

 

「僕は君が嫌いだ。努力もしていないのに力を手にする君の事が」

 

「好きに言いなさいよ。次会った時にまた喧嘩しましょ」

 

 

そう言ってパラシュに背を向け屋敷を出ていった。そして煙草に火を灯し空を見上げるとリュディ達とライブをしたステージが反転する不可逆世界へと飛んでいるのが見えた。

 

 

あれが影となり移動して行って部屋に光が差し込んだのね。と一人納得をしながら次の街へ向かい歩みを進めてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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