私は次の町に向かい草原を歩いていた。そんな私の体温を奪い去る早春の風に吹かれながら。
「さっむっ」
今まで気にしなかったのだがこの格好はどうかと思う。淡い水色のスクール水着のような服装に疑問を抱き始めていた。まぁ今更なんだけどさ。
カバンから煙草を取り出しそれを咥え火を灯そうとライターのホイールを回すのだが火花が散るのみで火が付く気配が無い。
はぁっとため息を吐き煙草をしまい何も考えずに次の町へと足を進めてゆく。とりあえず煙草のストックとこのライターをどうにかしなければ。
そして私がたどり着いた街は大きくとても活気があるような町だった。町の入り口から何食わぬ顔で町へと入り人混みの中へと紛れながら煙草を売ってそうなお店を探す事に。
しばらく町を進んで行くとこじんまりとした雑貨屋を見つけその店内へと入ってゆく。
「ねぇ、私のライターが付かなくなったんだけど壊れちゃったのかな?それとえっと、25番ちょうだい」
退屈そうにレジに頬杖を付いている亭主に話しかけライターを見せると眼鏡をかけながら私の方を向きライターを手に取った。
「あーこれはオイルが切れちゃってるね。それに火打ち石も無くなりかけてるよ」
「それはどうしたら直るの?」
「うちの店に置いてあるから買ってもらえればやってあげるよ」
「ふむ」
そう言われてカバンを漁ったのだがお金を持っていない事に気が付き間抜けな声を出した。
「いま持ち合わせが無いのよ。なんとかならないかしら?」
「帰ってくれ。金を払えないならお客でもなんでも無いよ」
もっともな事を言われ納得しかけたのだがここで引き下がれば私は煙草を吸う事ができなくなるのだ。無い知恵を振り絞り何か策を考えていた。
「そうだ。ならその商品分のお金を稼ぐまでここで働かせてよ」
そう言うと亭主が少し悩んだ顔をしながら私の爪先から頭の上までを品定めをするような目線で見ていた。
「お嬢さん、働くって事はどういう事か分かってるんだよね?」
「そうね、大抵の事ならやってあげるわよ」
「そうか、なら頼もうかな」
そう言って亭主が立ち上がり笑みを浮かべた。
……………………………………………………
そんな訳で私は店の名前が書かれたタスキを掛けて店の周りを掃除していた。ほうきで落ち葉を集めそれをゴミ袋に入れるだけなのだが、そんな私が面白いのか通りすがる人達に目線を向けられていた。
そんな目線など気にする事となく私は掃除をしていたのだがついに誰かに声をかけられた。
「何をしているのですか?」
そう言われて振り返ると呆れ顔で私を見るアルテミスの姿が。
「買い物しようとしたんだけどお金が無くて働いてんのよ」
そう言うと頭を悩ませるようなポーズを取りいくらの買い物をするのかと聞かれていた。
「多分二千ゼニーあれば買えるはずよ」
「それぐらいなら私が支払っておきます。それより私達は剪定をする事を忘れたのですか?」
「ちゃんと剪定してるわよ、今回はたまたまよ」
「分かりました。その言葉を信じましょう」
……………………
………………
……………
…………
………
……
…
偽りなき清淑。清淑とは汚れが無く立派な事を指す言葉だ。汚れの無い人などこの世界に居ないと私は思う。
だけどこの町にはそんな人が居たんだ。
この話は真っ直ぐで明るい少女と消えぬ傷を負った姉妹と全てを討ち刈り取った弓と剣の話だ。
……………………………………………………………
まいどーとの声を聞きながら私は火打ち石を取り替えその後フェルトにたっぷりとオイルを染み込ませていた。そしてホイールを回すと少しの抵抗の後に小さな炎が立ち上った。それを咥えていた煙草にゆっくりと近づけてゆく。
「助かったわ。ありがとね」
「お礼を言われる様な事はしていません。それよりユリは何人剪定したのですか?」
「私は八人ね。アルテミスは?」
「私は後一人です。最後の一人を探してこの町へ来たのです。あまり来たくなかったのですが、、」
先程の雑貨屋を出て路地裏へと身を潜めていた。まずはお互いの剪定の話をしてからそんな事を話していた。
「この町に知り合いでも居るの?」
「余計な詮索はしないで下さい」
「ま、誰にでも言いたく無い事ぐらいあるわよね」
火種がフィルターに近付いた煙草を指で弾き飛ばし座っていた箱から飛び降り身体を大きく伸ばした。
「で?どうするの?片っ端から剪定していく訳?」
「はい、新しい世界に不要な花は散らせるのみです」
そう言って弓を構えていた。その姿を見て私も両手に剣を握った。それを見てゆっくりと建物の影に移動し表道を歩く人達に標準を定めてゆく。そんな時。
「アルテミスぅぅーーーー!!!」
「おねぇちゃーーーーん!!」
そんな声が聞こえ辺りを見渡すとアルテミスが二人の女の子に抱きつかれていた。
「…離して下さい。手元が狂います」
「嫌だよ!今までどこ行ってたんだよ!
「そうだよお姉ちゃん!なんで何も言わずにいなくなったのさ!」
二人を引き剥がそうと頭を押しているのだが二人共しっかりとアルテミスに抱き着き離れようとしなかった。
「ユリ!早くこの二人を斬り裂いて下さい!」
「嫌よ、私もその二人との関係が気になるし。話してくれたら考えてあげても良いわよ」
そう言ってニヤリと笑いアルテミスを見ると嫌そうな顔をした後諦めのため息を吐いていた。
「分かりました。分かりましたから私から離れて下さい」
「やだ!アルテミス成分を補充するの!」
「僕もお姉ちゃん不足を解消するんだ!」
「、、。好きにして下さい」
抵抗するのを諦めて抱きつく二人の好きにさせていた。そして二人を抱きしめようと手を広げていたのだがその手を降ろしてたのを私は見逃さなかった。
多分この女の子はアルテミスの元奏官。それに赤髪の子はキル姫だ。アルテミスと関わりが深かったのだろう。私はそんな過去も無いから良いんだけどもし友達とかを剪定しなければならないとなればやっぱり辛いだろう。
でも、そんな三人を羨ましく思う自分がいた。もし剪定する事が無ければこうして私も仲のいい人ができていたのかもしれない。
そんな余計な事を考えながら二本目の煙草に火を灯し先程座っていた箱の上に座り直り三人をボーッと見ていた。
「ぷはぁ♪生き返ったぁ♪」
「僕はまだ全然足りないよ!もっとギューってしてよ!」
満足そうな女の子とは違いまだ足りないのかアルテミスの胸に顔を埋め独り占めしていた。
「それで、キミはアルテミスの友達なのかな?」
「私?んー、友達かな?」
「ならさ、家においでよ♪アルテミスの友達なら歓迎しちゃうよ♪」
そう言われて困惑していた。行くのは構わないのだが、ここはアルテミスの判断を仰ごう。
「ねぇアルテミス」
そう思いアルテミスの方を見ると胸を顔に押し付けられており返事をするのは無理そうだった。判断を仰のは諦め少し話をする事に。
「あはは、アポロンはアルテミスの事大好きだからね♪私も大好きだよ♪」
そう言って再びアルテミスに抱きついていた。考えるのはやめよう。そう思い再び煙草に火を灯していた。
あの赤髪の子はアポロンというのか。まだ幼い見た目だがかなりの力を感じる。奏官持つバイブスとキル姫が持つキラーズがそれ程までに強く結びついているのか。
一人残された私は暇を潰すために以前貰った教会から配布されているパンフレットを見て一人納得していた。例え強くても二体一ならなんとかなるだろう。
「あの、そろそろ離してもらえませんか?任務を遂行できないのですが」
「任務?私の元を離れて違うマスターのところに行っちゃったの?」
「えっ、、姉ちゃん、違うマスターに着いているの?そんなの僕嫌だよぉ、、」
そう言って三度目のハグをしていた。このままだとらちがあかないので仲裁に入る事に。
「そろそろアルテミスを離してくれない?私達にはやる事があるのよ」
「キミは?アルテミスお姉ちゃんに手を出そうなら僕が許さないよ!」
「落ち着いてアポロン。この人はアルテミスの友達なんだって」
「友達?ほんとかなー?」
そう言ってアポロンが私を敵意のある目で見ていた。
「この人変だよ、人なのにキラーズを持っているしキル姫なのにバイブスを感じるよ」
「本当?それってすごい事じゃん!ねぇねぇ、どうやってそうなったの!?」
「私に聞かないでよ。私だってそんな事今知ったわ」
「アルテミスが帰ってきたら次は謎の奏官の登場か、、うん!良いじゃん良いじゃん♪」
「このままだと話が進みません。クレアの家に行きましょう」
「はーい♪」
路地裏という場所を考慮してかアルテミスがさっきの話を戻してくれた。そのまま私達はクレアの家へと案内されていた。
「ただいまー」
クレアが玄関を開けるとパタパタと足音が聞こえ黒髪の女の人が出迎えに来てくれていた。
「おかえりなさい。どうでしたか?」
「うーん、あんまり良かったとは言えないかな、、それとアルテミスが帰ってきてくれたよ♪」
「それは良かったですね。今コーヒーを淹れます」
「その友達も居るから五人分お願いね♪」
「友達、ですか?」
玄関の敷居を跨ぐ私に視線を向け怪訝そうな目をした後部屋の奥へと姿を消した。
「入って入って♪あっ、その前に手洗いとうがい、お願いね♪」
そう言われて家にお邪魔する事に。廊下を抜けて洗面台で手洗いうがいをした後にリビングに案内されそのままソファーへと腰掛けていた。
「寒いわね、なんで扉が開いているのよ?」
「換気のためだよ?ほら、冬は風邪を引きやすいっていうじゃんか?それよりキミに自己紹介しないとね。私はクレア、そして
「私はユリよ。クレアはアルテミスとどういう関係なの?」
「アルテミスは私のパーティの一員だったんだよ?そしてアポロンのお姉ちゃんなのだ♪」
「ふむ」
「お待たせしました。お砂糖とミルクは各自でお願いします」
お盆からコーヒーカップを丁寧な手つきで机に移しその横にスティックシュガーとフレッシュを添えてくれた。
「ありがとねフォルカス♪とりあえず座りなよ」
「私は、、まだ台所の片付けが済んでいませんので」
そう言ってリビングを出てゆきドアを閉めた。
「んもぉ、フォルカスもアルテミスに甘えれば良いのに」
「そしたらお姉ちゃんを僕が独り占めできなくなっちゃうじゃないか。はい♪お姉ちゃんはお砂糖入れたよね?」
「…そうですね。ありがとうございます」
アルテミスのコーヒーにシュガーを入れかき回しているアポロン。そんな二人を見ながらクレアが微笑んでいた。
「あの頃と変わりませんね。クレアも、この家も」
「そりゃーね?人は直ぐには変わらないし私は変わる気もないしさ。それよりアルテミスは何をしていたのか教えて貰おっかな?」
「私は…」
そう言って出来上がったコーヒーをアルテミスに渡すアポロンを見た後クレアに視線を向けた。
「私達は剪定を行っています。この世界の為に」
・・・・
少しの沈黙の後に二人が笑い声を上げていた。
「あははは♪どうしたのアルテミス?盆栽でも始めたのかな?」
「今度僕にもやらせてよ♪僕も剪定やってみたい!」
剪定、その言葉だけを聞けばこの反応になるのは仕方ないかもしれない。
「私はふざけて言っているのではありません」
「じょーだんじょーだん♪それより、えっと、二人に手伝ってもらいたい事があるんだけど良いかな?」
笑顔から真顔に顔を戻して話を変えた。
「今この世界で不可解な事が起きているんだ。まず一つはこの世界の英雄が殺された事。そしてその事件の後から地方の町との連絡が取れなくなっている事。それと英雄夫婦の子供が行方不明な事なんだ」
「私達が大陸の中央にある大聖堂にその英雄の葬儀に行った時に与えられた任務なんだよね。英雄の一人娘の捜索と地方の町の調査をね」
「アルテミス、ユリ。何か知らないかな?些細な事でも良いからもし知っていたら私に教えて欲しいんだ」
しっかりと私達を見ながらそう言われ目配せも出来ず下手な事も言えず私はアルテミスの言葉を待っていた。
「…………。」
「目を背けるな!アルテミス!!」
机を叩きながらクレアが声を荒げた。
「知ってると思うけど私は昔から勘が良いんだよね。良い予感も悪い予感も全部当たるんだ。この事件は君達が噛んでいるんでしょ?」
「初めは嬉しかったよ。ニ年前に私達の元から姿を消したアルテミスが戻ってきてくれてさ。だけど違和感を感じていたんだ」
「その違和感は私の思い違いだって思ってたんだけどアポロンの言うキラーズとバイブスを持つユリの存在を知って、それとアルテミスの剪定の言葉で確信へ変わったんだ」
「この事件は君達の仕業だね」
先程までの優しい目ではなく敵意を向けた瞳で私達を見ていた。
「隠すつもりはありません。私達インテグラルキラーズがどの様な事をしているのかお話ししましょう。その前に家の周りに隠れている者達も呼んだらどうですか」
「バレてたんだね。良いよ、窓は開いているから声は聞こえるからさ」
…初めからクレアは私達をここに誘い込むつもりだったのか。良く気配を感じれば家の外から複数の気配を感じる。
「お姉ちゃん、、、」
「落ち着いて。うん、話してもらおうかな」
そう呟きながらクレアの服を握るアポロンの頭を撫でていた。
「私達、インテグラルキラーズは先程伝えた通りに剪定を行っています。それはこの世界が滅んでしまうからです。それは何故か」
「人類がユグドラシルに蓄えられたマナを使いキル姫を作りすぎたためユグドラシルが世界を支える事ができなくなってしまったのです」
「それに気が付いた私達1stキラーズはある作戦を考えそして実行を始めました。それが【擬彩されし不可逆世界】です」
「空を見てもらえれば分かると思いますがユグドラシルと対になるようにユグドラシルが浮かんでいます。それが私達が作り出した方舟なのです」
「その方舟に乗れる者は私達が剪定した次の世界に相応しい者達だけです」
そこまで言ってアルテミスが私達を見渡し口を開いた。
「剪定から外れた者達は私達が刈り取りマナへと還します。そうする事で方舟が旅立つ為のマナを蓄えるのです」
「分かりましたか?私達は世界を救う為に剪定を行っているのです。例えどんな言葉を、どんな手段を使ったとしても私達は止まりません。方舟の船出を見送るまでは」
「クレア、あなたは私の最後の剪定者です。どうか次の世界でも人々を導いて下さい。私達にそうしてくれたように」
…………………
「ふざけないで!!世界が滅ぶ?剪定?訳が分からないよ!」
「ふざけてなどいません。私はこの世界の話をしただけです」
立ち上がりゆっくりとクレアの元へと近づいてゆき手を伸ばしていた。
「いや、、、やめて、、、」
その手がクレアの頭に触れようとした瞬間にドアを蹴り破りその手に向かい槍が伸ばされた。
「私のマスターから離れなさい。この裏切り者が」
机に足を置きアルテミスに鋭い眼光で睨みつけるフォルカスが。
「この狭い室内なら私の弓を封じられる。と、考えたようですね。ですがそれは槍も同じだとは思いませんか?」
「吐かせ、この槍に散るといい」
「確かに突く事はできても振り回す事はできないわね」
私の目の前にある柄を掴みゆっくりと立ち上がってゆく。
「離せ!」
「うっさいわね。どうするの?アルテミス」
「あまり騒ぎを起こすつもりはなかったのですが仕方ないですね。これより剪定を開始します」
トゲトゲを纏ったアルテミスを見てから私もトゲトゲの力を解放していた。
「そんな、、。この力は異族の力だよね…?そんな事あり得ないよ!!」
「この力は散っていった同胞達の力です。私達は擬彩と呼んでいますが」
「くっ、、!みんなお願い!!」
クレアがそう叫ぶと窓を割り外からキル姫達が私達を取り囲んでいた。その後ろに目をやると奏官らしき人達の姿も見える。
「お前達は囲まれている!大人しく投降しろ!」
「どうするのよこの状況!思いっきり囲まれてるわよ!」
「心配しないで下さい。すぐに終わりますよ」
アルテミスがそう言うと何やら叫び声が聞こえ始めた。
「gtkmg&mijprwme@j!!!」
窓の外を見ると頭に紅い花を咲かせた人の形をした何かがうごめいていた。そしてそれは人に、キル姫に攻撃を仕掛け始めた。
「ここは擬彩異族に任せましょう。クレア、あの場所で待っています」
「そこで勝負を付けようって事なの」
「はい、ここだと私もアポロンも最大限の力を出す事はできません。それにフォルカスも槍を自在に操る事はできませんから」
「これは私からの提案です。どうか私の元へ辿り着いて下さい」
クレアに背を向け外へと歩いてゆく。それを見て私も掴んでいた槍を離しその後を追ってゆく。
「フォルカスだっけ?後で私が散らしてあげるわ」
そう捨て台詞を吐きながら。
「gupndjgpwmwpjm!!!」
アルテミスが呼び出した擬彩異族が引き起こした争いの間を抜けてゆく。叫び声、悲鳴、怒声を聞きながら。
それでも表情を崩さずに凛としたまま歩いてゆくアルテミス。そして私達は町を抜けて大きな木が一本だけ生えている広場へとやってきていた。
「この場所は?」
「私達がクレアと初めて出会った場所です」
そう言いながらその木を見上げていた。冬の寒さにも負けず青々と葉を生い茂らせるその木を。
ふーんっと呟きながらその木を見ると幹に文字が彫られているのに気が付きそれを読んでいた。
[クレア、アルテミス、アポロン、フォルカス。世界を平和にする為に戦う事をここに誓う××××年3月9日]
それを見てはぁっとため息が溢れた。なんだろ、胸の奥から込み上げる何かが心を圧迫する。
「少し昔話をしましょうか。聞いてくれますか?」
「ん。良いわよ」
煙草に火を灯しその場に座り話を聞く事に。
「私達とクレアが出会った時まだクレアは駆け出しの奏官でした。がむしゃらで真っ直ぐに異族の被害を抑える為に日夜を問わずこの世界を駆け回っていました」
「なんでそんなに頑張ってたのよ」
「クレアは両親を異族に殺されたのです」
「じゃあ復讐って事?」
「いえ、彼女は同じような思いをする人を減らすために異族を討伐していました。大事な人を失う人がいなくなるようにと」
「最初は無茶な事ばかりするクレアに手を焼かされたのですが気が付けば私達はそんなクレアに惹かれていました。そして共に世界を守りたいと思っていました」
そう言ってアルテミスはどこか遠くを眺めていた。
「どうしてそんな話を私にしたのよ」
「過去への決別です。インテグラルキラーズになった時に過去は置いてきたつもりでしたが彼女を見て懐かしさと共に少しだけ思い出してしまいました」
遠くを見たままのアルテミスに質問をする事に。
「そういえば私は人間とキル姫の子「来ました。お喋りはここまでです」
そう言われてその目線を辿るとボロボロになりながらもこちらへと歩いてくる三人の姿が。
「お待たせ。遅くなっちゃったよ」
「あなたはいつも遅れてばっかりですね」
「今回は寝坊じゃ無いんだ。許してよ」
……………………………………
「アポロン、フォルカス。私のお願いだ。アルテミスを殺して」
「で、でも、、、」
「…………」
「もうアルテミスは異族になっちゃったんだよ。さっきの見たでしょ?異族を呼び出して町の人を攻撃させて、、。もうあれはアルテミスじゃ無いんだ!」
「アポロンがアルテミスの事大好きなのは知ってるよ。でも私もアルテミスの事大好きなんだ!分かってよ、、、」
「マスター。私一人でも大丈夫です。お任せ下さい」
「いや、ダメだよ。アルテミスの矢の正確さを知ってるでしょ?アポロンの力が必要なんだ」
「ですが!早く二人を倒さなければ町の被害が増えるだけです!私一人でも行かせて下さい!!」
そんな三人の足元へ向かいアルテミスが矢を放った。
「次は外しません。迷いがある者から撃ち抜きます」
「アポロン!!」
「うぅぅぅ、、、、っ!分かったよ!僕戦うよ!」
両目をゴシゴシと腕で擦り矢を構え視線を向けた。
「ユリはフォルカスをお願いします。私はアポロンを」
「分かったわ。援護よろしく」
私が駆け出してゆきその後ろでアルテミスが弓を構えフォルカスが駆け出しその後ろでアポロンが弓を構えていた。
「アポロンはフォルカスの援護!相手は剣使いだよ!フォルカスの槍なら行ける!」
剣と槍を叩き合わせ睨み合う私達の横を通りながらそう指示をしていた。その姿に思わず声を上げた。
「なんであんたが前線に居るのよ!」
「キル姫ばっかりに戦わせる訳にはいかないでしょ。それに、あっ、やっぱりこれは内緒」
「私を相手にしてお喋りとは随分と余裕ですね」
上から振るわれた槍を剣を交わらせ防いでいたのだがそれを引き抜き大振りに振り回す。
「そんな生温い槍で私を突けると思わないでよね」
矛先が通り過ぎた瞬間に踏み込み剣を振るおうとした私を尻手の一突が捉えた。
「ぐえっ、ごほっごほっ」
「もらった!」
喉元を突かれ咳き込む私に迫る一振りを後ろへ転がり回避しそのまま手を伸ばし立ち上がった。
「けっ、やるじゃない」
「次は穿つ」
「見えてるよ!そこだねっ!!」
フォルカスが槍を向けたその隙間から矢が飛来し私を掠め飛んでいった。
「ちっ!」
急いでフォルカスの身体を盾にするように位置を変えた。それにしても凄いコンビネーションだ。
ギリギリと睨み合いながらふと疑問が浮かんだ。何故アルテミスは矢を射ってこないのか。目線を後ろに向けるとその答えがあった。
「今の良かったよフォルカス!アポロン!もう一押し!」
私の背後にクレアが居るのだ。クレアはアルテミスの剪定対象者。私もアルテミスも手を出す事はできない。それを利用して盾となっているのだ。こうすれば私達以外を無差別に攻撃する擬彩異族も出す事はできない。
「良いわね、あんたのマスターは。私好きだわ」
「?」
「私はそれなりに奏官とキル姫を見てきたけどこんなにも信頼し合ってるのは一組しか見た事ないわ。クレア達で二人目ね」
「汚れた考えしかできないと思っていましたがまともな事も考えられるようですね」
「だが、地獄へ堕ちなさいっ!」
後ろへ下がったフォルカスが顔にかかった髪を払い槍を回し始め姿を消した。
「っつ!?」
不可視の槍が私を斬り払いその方を見た瞬間に背後を斬られ振り返れば再び背後を斬られやがて私は地に伏した。
「くっ、このっ!!」
「まだ息があるとはしぶといですね。次で終わりにします」
フォルカスが槍を振り上げるのを目で追い逃げようと身体を動かそうとするが痛みで力が入らない。どうやらここまでか。
「死ねっ!!」
槍が振り下ろされる瞬間に私の中の何かがカチリと噛み合う音がした。
「血を流しすぎたわね。でもちょっとスッキリしたわ」
何かが噛み合った瞬間から力が溢れてくる。それに妙に思考がはっきりしてる。
フォルカスが振り下ろした槍を片手剣で受け止めながらそんな事を考えていた。
「その力はなんだ!?」
「知らないわよ。だけど強くなったのは間違いないわね」
じわじわと押し合いついに私は槍を払い除けた。
「これより剪定を行うわ。その魂は私が散らせてあげる」
二つの剣をフォルカスに向けそう宣言した。
「ならば私はこの槍でマスターに降り掛かる災いを斬り払うまでです。覚悟して下さい」
槍を私に向けそう宣言された。
「上等よ。私の真打をくれてやるわ」
槍を構えるフォルカスを見ながら二本の剣を鞘へと納め身を屈ませながら駆け出すと同時に柄を掴んだ。
「第一擬彩剣技。一彩閃!」
剣を鞘から抜き出す素破抜きがフォルカスの槍を跳ね上げた。それでも私は止まらない。
「第二擬彩剣技。二彩閃っ!!」
もう一本の剣を抜き出し交差させながらガラ空きのお腹へ向けて挟み込む二閃を繰り出した。
「礼を言うわ。私はまだまだ強くなれるって気付かせてくれて」
ずるりと上半身と下半身がズレたフォルカスの首を斬り飛ばした。
「フォルカスっ!!!フォルカスぅゔゔゔ!!!!」
「やっと退きましたね」
アルテミスが放った矢がスパンッと風を切りながら飛んでゆき。
「あぐっ、おねえちゃ、、、ん」
その矢はアポロンの額へと突き刺さりそれを見たクレアが膝から崩れ落ちた。
「アポロンまで、、、」
「私達の勝ちです。大人しく剪定されて下さい」
「……………………」
泣くわけでもなく喚くわけでも無く放心状態のクレアにゆっくりとアルテミスが近いてゆく。
「さようならマスター。どうかお元気で」
手を当てられ光へと変わりゆくクレアにアルテミスが声をかけるも上の空だった。その光はそのまま空へと昇りやがて消えた。
それを見送った後に煙草に火を灯し空を見上げていた。
「町の人達はどうするのよ?」
「擬彩異族が片付けたようです。ユリはこのまま次の街へと進んで下さい」
「ん、アルテミスはどうするの?」
「私は亡骸に花を添えてから行きますので」
「分かったわ。次はユグドラシルで会いましょう」
二人の遺体を丁寧に扱うアルテミスを見ながら煙を吐き出し私は次の街へと向かい進み始めた。