色褪せぬ純潔。それは私のお母さんに記された言の葉。私と同じ純潔。
この話は正義と正義がぶつかり合いそして全てを無くした私達の話だ。
フライクーゲルに別れを告げてからしばらく歩くと焼け焦げてしまっている建物を見つけた。何処にでもある火事の跡。それを私は何故か足を止め眺めていた。
…………………
それを見ていると胸の奥に込み上げる懐かしいという気持ち。それを不思議に思いなが煙草を咥え火を灯していた。
すごく心がモヤモヤする。どうしてだろう?
気が付けば私は立ち入り禁止と書かれたロープを潜り真っ黒になっている柱に手を置いていた。
…………………
「ここに居たのですね」
優しい声が聞こえ振り返ると微笑む私のお母さんの姿が見え手についた炭を払いながらその方へと駆け寄ってゆく。
「旅はどうでしたか?」
「色んな人を見て色んな事をしたわ。後で話してあげるね」
「はい、皆が集まるまで時間があります。聞かせて下さい」
お母さんが手を伸ばし私の頭をわしゃわしゃと撫でその心地良さに目を細めた後話を始めていた。
「でね、リュディとオルフェウスとレーヴァテインとバンドやったり子供達に剣を教えたのよ。それとね」
身振り手振りで話す私を優しい目で見てくれていた。そんな時強い気配を感じその方を向いた。
「少しばかり遅くなった」
振り返ればマサムネの姿が。
「お久しぶりですマサムネ。どうでしたか?」
「問題は無いない。先程レーヴァテインとパラシュを見た。時期に姿を見せるだろう」
そう言うと腰を下ろし一息付いていた。
「皆が揃い次第作戦を実行します。それまで楽にしていて下さい」
しばらくすると他のみんなもここに集まって来ていた。
「お待たせしました」
「みんな揃うまで寝てるから」
「寝ていたら直ぐに動けないよ。起きている事を僕は薦めるね」
「ヘェーーイ♪ゲッアップ♪」
「あの、、。遅くなってごめんなさい、、、」
あの時と同じメンバーがここに集結していた。みんなを見渡してからお母さんが話を始めた。
「皆さん本当にここまで私について来てくれてありがとうございます。後はこの大聖堂を落とせば私達のインテグラル・ノア計画は成功と言えるでしょう」
「なんでみんなを集める必要があったの?各自攻め込めば良いじゃない」
「大聖堂にはエンシェントキラーズが居ます。彼女達は八人の隊を組んでいますので単体で攻めるよりもこうして固まって攻めた方が勝機があるのですよ」
「ふむ、そんなにそのエンシェントキラーズって強いんだ?」
私がそう聞くとアルテミスが説明をしてくれた。
「神々より作り出されし太古のキル姫、そう容易く討てるものではありませんよ」
「ふうーん?でもなんでそんなキル姫が大聖堂に居るのよ?」
「奴らはこの世界の秩序を保つ役目を担っている。この世界の中心を根城としているのだ」
「秩序を保つって言う割には今まで出てこなかったわよね?」
「それは先にこっちが手を打ったの。それで、いつ攻める」
「もう少ししたら攻め込みましょう」
「随分と悠長だね、君らしくないよ」
「少しこの世界が名残惜しくて」
そう言うと焼け跡へと歩いて行き焼け残った柱に手を置いていた。
「私もお祈りをしておきますね、皆の無事と新しい世界の安寧を」
「私も少しこの世界を眺めておくよ。バァイ」
「十分後にここに集まって下さいね」
その声の後解散となった。私は再び焼け跡へと向かいその光景を眺めていた。
「どうしたのですかユリ」
「ん、なんかこの場所が懐かしくてさ」
「幼い頃にここに良く遊びに来ていましたからね」
「そうなの?」
「はい、まだユリが小さい頃の話ですよ」
「私あんまり覚えてないのよね、この戦いが終わったら教えてよ」
「はい」
そう言って二人で焼け跡を眺めていた。
「時間だ」
そう言って腰を下ろしていたマサムネが立ち上がった。それに合わせてみんなが焼け跡へと集まってゆく。
「では行きましょうか、人類救済の最後の旅へ」
そう言って大聖堂の方へと歩いて行き大きな城門の前で立ち止まった。
「擬彩異族を放ち混乱させその隙を狙いましょう」
「彼女達なら人々の救助を優先させますからね、分かりました」
そんな話を聞きながらユグドラシルを見上げるとその大きさに圧巻されていた。根本から見上げるとその頂きが見えない程大きく新緑の葉を茂らせるその姿に。
「あの、、、ユリは出さないのですか?」
ロンギヌスにそう聞かれ振り返ると既に擬彩異族の群ができていた。
「今出すわ」
私の身体に渦巻く異族の力を意識し念じると無数の擬彩異族が出現した。
「お願いします」
お母さんの言葉を受け擬彩異族達が大聖堂へと攻め込んで行った。
何千近い擬彩異族に攻め込まれれば私達の出番は無いだろう。そう思いながら煙草に火を灯していた。
「くるよ」
パラシュの声に皆が武器を構えた、次の瞬間。
「pjwgntw’jgdmswgn!!!」
紅い閃光が走り擬彩異族が宙を舞った。そして宙に浮かぶ擬彩異族達に降り注ぐ無数の矢に魔弾。
それだけでは無い。風を切る音と共に剣と槍が振り回されその度に擬彩異族が悲鳴を上げる。
やがて悲鳴は止みそこに立っているのは私達と白き衣装を着た八人の姫達。
「あなた達の仕業、、、ね。どうしてこんな事をするのか、理由を聞かせて」
ギロリと私達を睨む銀髪の女性。この感じ只者じゃない。
「やはり擬彩異族達では役不足でしたか、直接対決は避けたかったのですが」
「その声はティルフィングね、姿が変わっているから気が付かなかった。それにファーストキラーズまで、、、」
その女が私達を見てゆき私にその目を止めた。
「…………ユリちゃん?」
きょとんとした顔で私の名を呼んでいた。
「そうだけど、なんで私の名を知っているのよ」
「この感じ、間違いありません!あのユリちゃんです!」
金髪の槍使いが叫ぶと向こうが狼狽えた。
「どうして、どうしてユリがそこに居るのですか!?」
斧使いが叫ぶ、その問いにお母さんが答えていた。
「私が娘と行動を共にする事の何がおかしいのですか?」
「惚けないで!!っつ!まさか、あなた達だったのね、、、!」
「これ以上の会話は不要です。その命刈り取らせて頂きます」
タンっと音がした次の瞬間には銀髪の女とお母さんが剣を交えていた。
「ティルフィングに続いて下さい。フライクーゲルは私と共に援護を!」
「イヤァ♪イーーッツ、ショーターィム♪」
その言葉にマサムネ、レーヴァテイン、パラシュ、ロンギヌスと後に続く。私もその後を追い走り出した。
「くっ!来ます!スイハとフライシュッツは援護をお願いします!ネスは隠れながら回復魔法を!」
この戦いはまさに戦争だった。刀と剣を合わせる音、槍と槍がぶつかり合う音、斧と斧が立てる轟音、矢が風を切り魔弾が炸裂し閃光を放つ。
「ユリ!聞いて下さい!あなたは私達と戦うべきではありません!」
「うっさいわね、ならその槍を捨て大人しくその命を散らせなさい!
繰り出された槍を強引に押し上げ胴に向かい一閃を繰り出した。
「ちっ!!」
その瞬間に足元に矢が刺さりそれを見て後方へと飛び跳ねてゆく。
「スイハ!」
「はい、分かっています」
ギリギリと引き絞り矢尻を私に向けた弓使い。それを睨み付けた。
パシュンと放たれた矢は私の後方から放たれた矢により相殺され二本の矢が私の前に落ちた。
「今です!」
「分かってるわよ!」
アルテミスの言葉に返事をしながらスイハと呼ばれた女の方へと走り出した。
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「どうしてわたしたちと戦うのだ!」
「世界を救う為です!」
槍と槍をぶつけ合いながら二人が叫ぶ。その目に互いを見据えながら。
「それは正義なのか」
「はい、これが私達の正義です」
「うむ、ちょうじょう!なら勝った方がより強い正義という事だ!」
矛先を叩き合わせ火花を散らし答えが無い正義を示し合う。
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「どうしてクレス達と戦うの?」
「それが世界を救うただ一つの道だからだっ!」
踏み込み放つ一閃を防ぎながらダモクレスが問いかける。
「ならなんでみんなで協力しないの?そしたら世界が救えるかもしれないよ!」
「抜かせ!」
鋭い剣技がダモクレスを攻め立ててゆく。
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「どうして私達に戦いを挑むのですか!」
「君達が僕達の理想の邪魔だからだよ!」
打ち下ろした斧と掬い上げる斧がぶつかり合い衝撃が辺りに散らばる。
「ならパラシュ達の理想を教えて下さい!もしかしたら私達が力になれるかも知れません!」
「そうだね、僕達の理想は君達を散らせる事だよ!」
斧を力ずくでねじ伏せると身体を捻りながら斧を繰り出した。
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「どうしてお姉さんと戦うの?もうやめようよ」
「この世界をレスキューするためさ。その為ならどんな相手とも戦うよ!」
打ち出した魔弾と魔弾がぶつかり合い爆発音が響き渡る。
「ならお姉さんも容赦しないよ」
「望むところさ、カモン、フライシュッツ!」
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仲間を援護しながら火花を散らす二つの影。両者の手に握られた矢を引き絞る。
「弓の名手スイハ、あなたは必ずこの手で射抜きます」
「やれるものならやってみて下さい。その前に射抜きます」
互いに向け合った矢を同時に放った。
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「何故二人を殺したの!?」
「この世界の為です。それともう一つ」
剣を交わらせながら口角を上げた。
「あなた達をここに足止めする為です」
その答えに全てを理解し声を荒げた。
「ふざけないで!そんな理由であの人達を!!!」
怒りに身を任せ強引に剣を崩し一閃を繰り出した。
「私の家族に手を出すのなら容赦はしないよ」
剣を受け止めたその主を見ると真紅の眼差しを向けていた。
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槍を押し除け剣技を叩き込んでゆくのだが傷を付けても傷を付けてもすぐにその槍使いは傷を治癒させてゆく。
「へぇ、あんたも色んな武器がつかえるのね」
「私が使うのはこの槍だけです」
「ん、良い事を聞いたわ」
そう言うのならどこかに杖を使うキル姫が居るはずだ。それを叩けば回復は不可となる。
槍を防ぎながらその主を目で探していた。
………見つけた。門の後ろにいる帽子を被った奴だ。あいつを始末すれば、、、。
「はっ!そんな事させませんっ!!」
それを察した槍使いの猛攻が迫る。
「そうね、なら、回復できないぐらいに斬り刻んでやるだけよ!」
繰り出される槍に向かい双剣を叩き合わせてゆく。
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「なら聞くわ、何故ユリちゃんを生かしておいたの」
「ユリはグリードの血を引きティルフィングのキラーズと強欲の大罪を宿しています。殺すよりも仲間として利用した方が得策だと判断したからです。それに彼女は幼く、何も知らない」
「あなた達を殺してでもユリちゃんは私達が保護するわ。これ以上あの子に罪を犯させる訳にはいかない!」
「………その甘さが命取りになるのですよ。彼女の記憶はピンチされ真っ白です、それに私達の使命を接木されています。もうユリは私達の使命しか考える事はできません」
二人の剣を捌きながらその姿を探すとミネルヴァと争う姿が見えた。
「確かにあなた達は私達より強いでしょう。ですがそれはラグナロクの持つバイブスとの共鳴があるからこその強さ」
「何が言いたいの」
「あなたさえ殺してしまえば後は容易いという事です」
ラグナロクが繰り出した剣技を避けず身を斬らせ大袈裟な叫び声を上げた。
「お母さんっ!!」
その叫びを聞いた娘が一直線にこちらに迫る。
「これでユリと戦わざるを得なくなりましたね」
「どこまで考えが腐れば気が済むのよ………!!」
「レーヴァはミネルヴァをお願いします。ラグナロクは私とユリで」
「分かった」
レーヴァテインと入れ替わりでティルフィングの横にはユリが。怒りに満ちた表情でラグナロクを見据える。
「私のお母さんに手を出すのなら容赦はしないわ」
「ユリちゃんっ!!」
「初めてですね、こうしてユリと共闘するのは」
「そうだね、私の強さ、見せてあげるわ!」
擬彩の触手がユリの身体を覆い被せた。その姿にラグナロクが後退る。
「全開で行かせてもらうわ。第一擬彩剣技、、、一彩閃っ!」
側に居たはずの娘が姿を消しラグナロクへと迫る。
再び姿を見せた時には金属音を打ち鳴らしながらラグナロクと鍔迫り合っていた。
「ユリちゃん思い出して!あなたは操られているのよ!!」
「久々にお母さんに会えて私は上機嫌なのよ、早く死んでね」
鍔迫り合いながらもう一本の剣を突き出しラグナロクのお腹を抉る。
「お願い!私よ、ラグナロクよ!!」
長い銀髪に真紅の瞳。この人を私は知っている。レーヴァテインじゃなくてこのラグナロクという人を、、、。
「・・・・ラグナ?」
「そうよ!思い出してくれたの」
そう言いかけた時にラグナのお腹から剣が生えてきた。その背後にはティルフィングの姿が。
「うっ、、がはっ、、」
ズルリと剣を引き抜かれるとその場に倒れ込んだ。
「ありがとうございます。後は残りのエンシェント達を片付ければ終わりですよ」
立ち尽くす私にはその声は聞こえなかった。
「少し休んでいて下さい。残りは私達が」
そう言ってティルフィングが駆けていった。
ラグナロクのバイブスとの共鳴を失った彼女達が異族の力を取り込んだ彼女達に勝てるはずはなくやがてこの戦場から音が消えた。
「イエーッス!アイアム、ウィナー♪」
「これで僕達の理想を実現する事ができるね」
不愉快な声が聞こえてくる。
「久々に本気出したから寝てて良い?」
「後少しで永久に眠る事ができますよ」
五月蝿い。
「ここからだと擬彩されし不可逆世界を見る事はできないのですね」
「ユグドラシルと対になっていますからね、木を隠すなら森の中ですよ」
「これから何をすると言うのだ?」
「はい、私の持つ聖剣ティルフィングでユグドラシルを切断します。そうすれば錨を失い擬彩されし不可逆世界は船出をします」
そうだ。殺そう。
「ユリ、ありがとうございました。終焉が訪れる前にこの計画を成功させる事ができました」
「…………そうね、これより伐採を始めるわ」