これまでの旅で集まった記憶のピースが全て揃い私は全てを思い出した。
ここにいる七人は私の両親を殺し私の記憶を奪い剪定という使命を植え付けた。
この話は記憶を思い出した私の復讐の物語だ。
「どうしたのですか?」
何も知らないティルフィングが私を心配そうに覗き込む。それすら許せず太ももに向かい剣を突き立てた。
「!!!何をするのですか!?」
「うっさいわね、もう私はあんた達の仲間でもなんでもないわよ。私の両親を殺した罪、その命で償わせてあげる」
倒れ込み足を抑えているティルフィングを蹴飛ばしその顔へと唾を吐き捨てた。
「あんたは後でゆっくりと殺してあげるわ。まずはお前からよ」
状況が飲み込めず戸惑う六人に向かい剣を向けながら最初の獲物を探しそして狙いを定めた。
いち早く状況を理解し刀を向けたマサムネへと向かい接近してゆく。
「気は確かなのか……?」
「確かに決まってるでしょ。私は黒百合、その花言葉は、復讐」
鋭く速い剣技を見切りながらその首を取ろうと双剣を重ね合わせた。
「退けマサムネ!」
あと少しでその首を斬れるところでパラシュが私に向かい斧を振り下ろした。
「くっ!」
その斧を交えた双剣で防いだのだがその勢いに耐えきれず建物へと吹き飛ばされてゆく。
「だから僕は殺しておけと言ったんだ。これは君の失態だよティルフィング」
「そうですね、ごめんなさい」
「い、今傷の手当てをしますね」
ロンギヌスがしゃがみ込みその傷を見ると傷口は太ももを貫通していた。
「少し休めば治ると思います。それよりユリは」
「さっきパラシュが吹き飛ばしたとこ。まだ生きているよ」
レーヴァテインが向けている方に視線を向けるとガラリと瓦礫を押し除けながらその姿を見せた。
「そうね、あんた達は同じ武器を使い殺してあげるわ」
その姿を見て全員が驚き声を上げた。剣を二本携えその周りにはエンシェントキラーズが使っていた武器が浮遊しその周りを囲んでいる。
「あの力は、、、リル=ティルフィングの力、、、?」
「リル=ティルフィングってあの千年王国に居たティルフィングの事ですか!?」
「はい、どういう訳かユリにもその力が宿っているようです」
身体が熱い。燃えるような灼熱が私の身体を包み込んでいる。だけど私の身を焦がさず包み込むような。
「フライクーゲルっ!!」
「オッケェ!これだけ離れていればあっという間に蜂の巣にできるよ!」
矢と銃を構えた二人を冷めた目で見つめた後宙を舞う弓を手繰り寄せその手に掴んだ。
(最初はアルテミスにしよう)そう呟き矢を構え弦を引き絞る。
荒れ狂うように私に降り注ぐ矢と魔弾を瓦礫に隠れやり過ごし反撃の矢を叩き込む。
指に二本の矢を挟み初弾を放つ。
その矢はアルテミスの首を打ち抜き二発目がその額を打ち抜くとゴロリと首が千切れ転がった。
(次はフライクーゲル)
武器を弓から銃へと入れ替え手に握り魔力をこめてゆく。
「銃で私とやり合おうだなんて考えが甘いよ!」
乱射される魔弾を的確に撃ち落としながら接近してゆく。そしてフライクーゲルの足元へと魔弾を放った。
「!!」
それに舞上げられた砂埃はその視界を奪い闇雲に放たれる魔弾を掻い潜り零距離で魔弾を放つ。
ぽっかりと胸部に穴を開けられその場に立つフライクーゲルを手に持つ銃で薙ぎ払い唾を吐き捨てる。
「次は誰?死にたい奴から前へ出なさいよ」
私を見ている五人に向かいそう告げると私に向かう人が。
「よくも私の家族を、許さないから!」
怒りに身を燃やしながら向かって来るのはレーヴァテイン。それならばと剣を両手に取り迎え討つ。
「何が家族よ、人の家族を殺しておいて良くそんな事が言えるわね」
振り下ろされる大剣を双剣を交え防ぎ睨み合う。
「まぁ良いわ、死ね」
宙を舞う二本の剣がレーヴァテインの背中に深く刺さりうめき声と共に鍔迫り合う力が抜けてゆく。その瞬間に大剣を跳ね上げ交差させた剣でその首を刈り落とした。
「怖いなら逃げても構わないわよ、どこまでも追いかけて必ず殺すから」
血を噴き上げるレーヴァテインだったものを蹴飛ばし残りの奴等を睨む。
「一人が駄目なら」
「パラシュ!拙者も行くぞ!」
私に迫るのはパラシュとマサムネ。斧と刀か、それならばと大斧を握り片手に剣を持ち私の中で目覚めた力を意識してゆく。
「姿を消しただとっ!?」
「さっきまでそこに居た!近くに居るはずだ!」
突如姿を消した私に焦る二人。まずはマサムネからだ。
キョロキョロと辺りを見渡すマサムネの背後へ忍び寄り心臓目掛け剣を突き出す。
ゴリゴリと骨を削りながら進む刀身が心臓を貫きさらに押し込むと胸から剣先が顔を出した。
そのまま横に斬り払い蹴飛ばすとその頭目掛け斧を振り下ろした。
ぐちゃりと潰れたマサムネの腕を取りパラシュに向かい投げ飛ばした。
血が目に入り視界を奪われ斧を振り回す。それを見ながら飛び上がり頭上から斧を振り下ろし縦に捌いた。
その光景に耐え切れず悲鳴を上げながら後退りするロンギヌスの足へ向かい矢を放つ。
バランスを崩し倒れ込んだロンギヌスへ向かい槍を携えながら歩いてゆく。
接近した私に気が付いたのか恐る恐る振り返ったその顔目掛け槍を突き刺した。
口から貫通した槍を抑えバタバタと手足を動かした後動かなくなった。
「待たせたわね、やっとあんたを殺せるわ」
痛みを堪えながら立ち上がり剣を構えるティルフィングの元へと歩いてゆく。
「今更命乞いはしません、だけど一つだけ約束をして下さい」
「何よ」
「この剣を使いユグドラシルを切断しあのインテグラル・ノアを出船させて下さい」
「嫌よ。あんた達が私の両親の命乞いを聞かなかったのを知っているわ。だから私も拒否よ」
「お願いします!でなければ今までに散っていった者達は無駄となります!」
「それがどうしたっていうのよ、私の両親が居ない世界に私は未練なんて無いわ。あんな偽物の世界なんて朽ち果てれば良いわ」
「それはユリが剪定していった人達も死ぬという事です。それでも良いのですか!?」
「ちっ」
剪定された者達には罪は無い。それにあの世界にはみんなが居る。
「そうね、それだけはやってあげる」
「約束ですよ」
「分かったわ。じゃあ残酷に残忍に容赦無く殺してあげるね」
手に持つ槍から私が使っていた双剣へと持ち替えティルフィングを睨もうとした時には剣を使い自ら首を斬り落としていた。
「!!」
鮮血を噴き上げながら私を見た顔は満足気で笑みを浮かべていた。
「ふざけんじゃ無いわよ!!私のこの怒りはどこに向ければ良いのよ!!ねぇ!!う、うぅぅぅぅぅぅ、、、、」
怒りと悔しさと後悔と、さまざまな感情が湧き起こり地面へと拳をぶつけながら大粒の涙を流していた。
しばらくして落ち着いた私は煙草に火を灯し最後にした約束を思い出しティルフィングが使っていた剣を手に取りユグドラシルを睨んでいた。
…………初めて持ったはずなのにしっかりと私の手に馴染む。まるで私の為にあるような剣。これならこの大樹を切断できるだろう。
初めて持つ剣なのに自信が湧いて来る。そして私は導かれる様にユグドラシルへ向かい走り出した。
幹を駆け抜けて中腹で飛び上がりその剣を構え魂を込めた一閃をユグドラシルへ向けて放ち重力に逆らわず落下してゆく。
そして見上げると中腹より上が消え去り反転されし不可逆世界がその姿を見せゆっくりと舞い上がっていった。
これで私の役目は終わり。そう思った時に込み上げるものを咳き込み吐き出した。
(これは血?)
そう思った瞬間に再び込み上げ大量の血を吐き散らかす。きっとこれはあの力の代償なのだろう。
ふらつきながら私はゆっくりと歩き始めた。
意識を朦朧とさせながら辿り着いたのはあの火事の跡。ロープをくぐり焼け残った柱に背を預け座り込んだ。
(この場合にお父さんとお母さんと住んでいたんだ。ならここで死のう)
私に忍び寄る死に逆らわずに目を閉じようとした時に何かの気配を感じ目を開けた。
「ぬひひひひひ。ねぇ、ギャラルと友達になってよ」
目を開けると私の前に少女が立っておりそんな事を言われていた。
「あんた、、良くこんな私を見てそんな事が言えたわね」
「ギャラルはどんな姿をしていても気にしないよ」
何度も吐血し服をべったりと血で汚した私を見ながらもそのギャラルとやらは笑顔では話しかけていた。
「安心して下さいね、私達に敵意はありません。あなたを救いに来たのですよ」
優しい声が聞こえその方を見ると微笑む女の姿が二人。
「私はグレイプニル。よろしくお願いします」
「妾の名はフリズスキャールヴ。長いのなら好きに呼ぶと良い」
「何よ一体、、、」
死ぬ寸前の気怠い身体をその三人に向けていた。
「時期にこの世界に訪れる終焉を見届けに参ったのじゃ。だが、この世界に生きている者はお前しかいない」
「せっかく運命の鎖から解き放とうと思っていたのですが、、、」
色々考えた結果私の口から出た言葉は(そうなんだ)だった。
「ねぇ、ギャラルと遊ぼうよ、何して遊ぶ?」
笑いながら私を見るその手にラッパが握られている事に気が付き思った事を伝える。
「そうね、じゃあ歌を歌ってあげるからそのラッパを吹いてよ」
「ぬひひひひ♪分かったよ♪」
そう言ってラッパを咥えたのを見てレンとリンに教えて貰った歌を口ずさむ。
「その手をー空にかさーね風を感じたら心を重ね、あえる。なみーだもーこえもきーっと、風にのって、気持ちは君とずっと永遠になれるよ」
(数え切れない程の人を殺した、数え切れない程のキル姫を殺した。例え正義の為、この世界の為といっても犯した罪に変わりはない。もし、もう一度生まれ変わり私となれるのなら次はこの世界を私の命を掛けて救おう)
私の歌声が止んでもギャラルが吹き鳴らすラッパの音は響き渡っていた。その音を聞きながら私の意識は電気を消す様にフッと消えた。
柱に身を預けていたその身体は異族化が解かれ幼い少女へと姿を変えていた。
「あれ?あの子は?」
「きっと救われましたよ。ギャラルホルンのラッパの音で」
「ぬひひひひ♪そうだといいな」
「この娘の人生は波乱に満ちておった。どうか安らかに眠ると良い」
「あの浮かんでいるユグドラシルはどうしますか?」
「時期に終焉に巻き込まれ消えるだろう。どれ、お前達も付き合わんか」
葡萄酒を三つのグラスに注ぎそれぞれに渡した。
「終焉に向かうこの世界に乾杯」
「乾杯」
「ぬひひ、乾杯♪」
三つのグラスがぶつかり合い音を鳴らすとこの世界は消え去った。