※この作品はR-18です。

インテグラル・ノア サイドストーリーユリ物語   作:やす、

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黒ユリあなざーすとーりー 新米奏官と地獄の槍

私はクレア。今私はラグナ大陸の大聖堂で奏官になる為の洗礼を受け終わったところだ。洗礼を受ける前に授業とか実技とかあったけどその話は今回は語らないかな?

 

 

もしいつ語るの?ってなったら新章を作り[クレア物語]を書くのだがそんな事にはならないだろう。

 

 

そんな事を考えていると教会で洗礼を受けた証として証明書を貰い私のバイブスと共鳴したキル姫が貰える時間となった。

 

 

「お疲れ様でした♪クレアさんと共鳴したキル姫はこの子ですよ♪」

 

 

能天気そうな係員と共に姿を見せてくれたのは長い黒髪に制服の様な服を着たどこか冷めた目をした女の子だった。

 

 

「私はフォルカス、ソロモン72柱序列50番の悪魔と同じ名を持つ者です。よろしくお願いします」

 

「ふむふむ、わたしはクレア!よろしくね♪」

 

 

笑顔で挨拶を返すのだが表情は変わらず冷めた様な顔のまま。そんな事は気にもせずにフォルカスを連れて教会を出てゆく。

 

 

「とりあえず家に帰ろっか。ちょっと歩いて帰るのには遠いけど我慢してね」

 

「はい、分かりました」

 

 

私はキル姫の事を深く知っている訳では無いからこのフォルカスの事も何も知らないんだ。ある程度の事は教会で貰った図鑑に目を通して把握はしているのだが事が図鑑通りに運ぶ事などないだろう。それならば本人に聞くまでだ。

 

 

「ねぇねぇ♪フォルカスは何歳なの?趣味は?もしかして恋人がいるとかー?」

 

「歳はマスターより上とだけ、趣味は占いを少し、恋人は居ません」

 

 

淡々と質問に答えられすぐに素っ気のない顔へと戻った。むしろ質問に答えている時も素っ気ない顔だったのだが。

 

 

その後も私がチラホラと話しかけていたのだが相槌を打つのみでフォルカスから話しかけてくる事は無かった。初対面なのにこの塩対応はどうなのだろうかと疑問を思いながらも私の家がある町まで辿り着きしばらく歩いていた。

 

 

「じゃーん♪ここが私のお家だよ♪」

 

「……………………」

 

 

何言ってんだコイツみたいな顔をしているがこの家が私のお家なのだ。まぁ、築何年だよと言いたくなるような外観に地震が、いや、風が吹いただけで倒れそうなボロ小屋を見ればそんな表情になるのも仕方ないかも知れない。

 

 

「まぁ入って入って♪」

 

 

開けるとギィィィっと木と木が擦れる音を立てる玄関を開けてフォルカスに入るよう促すと躊躇いながらも家の中へと入って行った。それを見て音を立てながら私も家の中へ。

 

 

「まぁ座っててよ、今お湯を淹れるね」

 

 

そう言って台所に行きかまどに薪を入れ火を起こしその上に水を入れた鍋を置いていた。

 

 

「あの、これは何かの冗談なのでしょうか?それとも対応が冷たかった私への当て付けですか?」

 

 

そう聞こえ振り返ると少しムッとした様なフォルカスの姿が。

 

 

「あ、いや、マジ」

 

「はぁ?」

 

「だからマジだって、冗談でも当て付けでも無い、正真正銘私のお家だよ」

 

 

そう言い切ると頭を悩ませる様な仕草をしていた。

 

 

「後お風呂は外にあるから深夜にならないと入れないよ、それとトイレは近くの雑貨屋のを使ってるから20時以降は店が閉まるから使えないから気を付けてね」

 

 

そうこの家の注意事項を告げると本格的に引いた顔で私を見ていた。

 

 

「ど、どうしてこの様な生活をしているのですか?」

 

「んー、話すと長くなるけど聞く?」

 

「そうですね、興味はあります」

 

「ん、じゃあ白湯でも飲みながら話してあげるよ」

 

 

ジュジュジュっと音を立てながらコップにお湯を注ぎそれを二つ持って客間に行き段ボールの上にそれを二つ置きその辺に座る。

 

 

「まぁ楽にしてよ」

 

「私はこのままで結構です」

 

 

その後フォルカスは立ったまま私の話を聞く事に。

 

 

「私だって元々は普通の生活をしていたんだ。だけどある事件かきっかけで私の生活は360度変わったんだ」

 

「…………」

 

 

軽くボケたのだが全くつっこまれ無かったのでそのまま話を続ける事に。

 

 

「私の両親は共働きで私はいつも家に一人だった、そのお陰で何不自由無い生活をしていたんだ、でもある日両親が死んだ」

 

 

「理由は両親が働く職場に異族が侵入し、、。って感じかな。これが私の第一の不幸。身寄りを無くした私はずっと独りぼっちになったんだ。そんな私を放って置かない人達がいたんだ」

 

 

「さっき話した通り両親が共働きだったお陰でお金はあったんだよ。それを狙い悪党達がお金を奪っていった。ある時は親戚と名乗り、ある時は教会の使者を名乗り、ある時は力ずくでお金を奪っていったんだ」

 

 

「最後には家すら取られちゃってこの有様って訳だよ。ま、馬鹿な人だと笑ってくれても良いよ。笑ってもらった方が私も気が楽だしさ」

 

 

「あっ、別にそいつらに復讐とかは考えてないよ?私が馬鹿なだけなんだし、それにお金はまた稼げば良い。今はどん底だけど私は生きる事を諦めないし絶対に這い上がってみせるんだ!」

 

 

そこまで話して白湯を一口。うん、これはもう白湯じゃなくて水だ。

 

 

「聞いておいて聞くのもアレなのですがどうしてそんな事を話してくれたのですか?」

 

「フォルカスは私の相棒だからね。一応さ」

 

「相棒だなんて、そんな」

 

「いんや、自分で言うのは何だけど私とフォルカスの相性はばっちりだと思う。これは私の勘だけどね♪」

 

 

ニヤリと笑いながらフォルカスを見ると少しだけ笑っているように見えた。

 

 

「そうだ、フォルカスは占いが好きだったよね、私達の相性を占ってみてよ」

 

「………分かりました。手を出して下さい」

 

 

そう言われて手を差し出すと手のひらの筋をジッと見て、なぞりその顔を上げた。

 

 

「この先のマスターの人生は波乱に満ちています。それと後二人キル姫を従えるでしょう」

 

「えぇ、、まだ嫌な事があるの?全く、私が何したっていうんだよ」

 

「それと」

 

「それと?」

 

「私との相性は、、良好でした」

 

 

若干嫌そうにそう教えてくれた。それに気を良くしドヤ顔でフォルカスを見ていた。

 

 

「ふふーん♪流石私だね♪じゃあ今日はご飯でも食べに行っちゃうよ!」

 

 

そう言って畳をめくりその下の板に空いた穴に手を突っ込みその奥に隠してある小銭入れを取り出していた。

 

 

「うーん、、フォルカスって好き嫌いある?」

 

「特にはありませんが」

 

「なら牛丼行こ!牛丼!」

 

「ぎゅ、牛丼ですか?」

 

「そうそう♪こんな日は牛丼だよ♪」

 

 

そんな訳で私とフォルカスで家の近くにある牛丼屋へと向かっていた。

 

 

「まぁまぁ頼みなよ」

 

 

カウンターに座るとメニュー表を渡しそれをニコニコと見ていた。そんなフォルカスはメニューを見ずに不思議そうな顔で店内を見回していた。

 

 

「なんだか不思議なお店ですね」

 

「安い、美味い、早いといえばこのお店だよ♪普段は匂いだけだけど今日は実物を食べるのだ♪」

 

 

そう言うとやや冷めた目で私をチラ見していた。うん、貧乏ネタは控えておこう。

 

 

そのあと美味しそうに牛丼を食べるフォルカスと久しぶりの牛丼を堪能し家へと帰るのであった。

 

 

「そろそろお風呂に入ろっかな、ちょっと手伝ってもらって良いかな?」

 

「構いませんが、何をすれば良いのですか?」

 

「まぁ付いてきてよ♪」

 

 

そう言って家を出てその裏にあるお風呂場へ行くと再びフォルカスに引いた顔で見られていた。

 

 

「あの「慣れれば凄く気持ちが良いんだよ♪景色も良いし、冬はちょっと寒いけど」

 

 

二人の前にあるのは積まれたレンガの上にあるドラム缶。俗に言う五右衛門風呂だ。

 

 

「それで、私は何をすれば良いのですか?」

 

「火を焚べるから湯加減の調節をお願いするね」

 

 

そう言ってドラム缶の下に焚べた薪に火を付けて息を吹き込んでゆくと火が燃え上がり二人を照らしてゆく。

 

 

「フォルカスは入った事ある?」

 

「この様なお風呂にはありません」

 

「なら君に一番風呂を譲ってあげよう♪」

 

 

そう言いながらフォルカスを見ると動きが止まっていたがお風呂には入りたい様でやがて諦めた様に頷いていた。

 

 

「はい」っとタオルを手渡しそれを受け取るとソワソワとしていた。

 

 

「もしかして私が居ると脱ぐのが恥ずかしいとか?」

 

「マスターが居る事が恥ずかしいのではなく野外で服を脱ぐ事に抵抗があるだけです」

 

「それなら大丈夫だよ♪この家は夜だと町からは見えないからさ♪」

 

「明日お風呂の位置を変えましょう。絶対にです」

 

 

そう言うと私に背を向けシュルリとネクタイを解く音が、そのあと服を脱ぎ台に乗り爪先でお湯の温度を確かめその身を沈めていた。

 

 

「どう?」

 

「思ったより悪くありません、確かに見晴らしは良いですが言い換えればこちらも見られていると言う事ですよね?」

 

「ま、その辺も慣れという事で♪湯加減の方よろしいですかー?」

 

 

その後薪を足したり位置を変えたりと湯加減を見ながらフォルカスと話をする事に。

 

 

「私さ、その、マスターになるの初めてだから色々面倒とか迷惑かけちゃうと思うけど明日からよろしくね」

 

「大丈夫ですよ、マスターの事は必ず私がお守りします」

 

「それとさ、良かったらフォルカスの事も話してくれないかな?あ、いや、変な事じゃ無いよ?どんな戦い方をするのかとか得意な技とかそれと経験人数とさか」

 

「私は槍を扱います、一騎討を得意とし大抵の異族相手なら複数いたとしても負ける事はありえません」

 

 

最後の質問には答えてくれなかったけどまぁ良いでしょ、それから過去にどんなマスターのとこに居たとか地獄の槍と呼ばれ隊でも一人が多かったって事を話してくれた。

 

 

「そろそろ上がります、お先に失礼しました」

 

 

髪に付いた水分を絞りながらお風呂から上がったフォルカスにタオルを渡し着替えが終わってから次は私がお風呂へと入って行く。

 

 

「あぁー気持ちいいー」

 

「ふふっ、マスターはどうして奏官になろうと思ったのですか?」

 

「ん、あー、昔は異族への復讐だったけど今は私みたいな思いをする人を減らしたいってね。やっぱり家族を失うのは辛いからさ」

 

 

ちゃばっとお湯を手で扇ぐとこぼれ落ちた水が火に垂れジュウゥっと音を立てた。

 

 

「私はてっきりお金のためだと思っていました」

 

「そりゃーお金も欲しいよ、だけどお金は無くても生きていける。だけどやっぱりお金欲しい」

 

「私も全力を尽くします、早くこの家から新しい家へ引っ越しましょう」

 

「あ!今私のお家の悪口言ったな!」

 

「い、いえ!けしてその様な事は、、。」

 

「なーんて冗談だよ♪私も早く新しいお家欲しいし夜中にトイレ行きたいもん」

 

「あは、あははは、、、」

 

「よし!明日からお仕事開始だよ!気合い入れていこー!」

 

 

決意を表明しお風呂から出て服を着て家の中へと。

 

 

「まぁその辺で寝てよ♪藁ならたくさんあるからさ♪」

 

「あははは、はぁ、、。」

 

 

部屋に引き詰められた藁の上に寝転がる私を見てため息を吐いたあと諦めて寝っ転がっていた。

 

 

「おやすみ」

 

「おやすみなさい」

 

 

 

…………………………………………………………………

 

 

 

 

その次の日の朝から私達は教会に任務を貰いに行きそれをこなしていた。初めての任務は町の外れに出た異族の討伐だった。

 

 

[異族]人間を捕食しその生活を脅かす人間の唯一の天敵。その天敵と戦う唯一の手段。キル姫。

 

 

どうやって人間がキル姫を作り出しているのかは知らないけどこの技術には素直に凄いと言える。ただ一つの疑問を残して。

 

 

「この刃に散れっ!!」

 

 

私の指示の元、複数の異族を手に持つ槍でまとめて薙ぎ払うフォルカス。数では圧倒的に不利なのにしなやかに、力強く槍を振るうと異族の群れは肉塊へと変わった。

 

 

「ぐぎぎ」

 

 

戦況は劣勢と判断し逃げ出す者も居る中それを追いかけ突き刺しやがてその場に立っているのは私とフォルカスの二人となった。

 

 

「お待たせしました。お怪我はありませんか?」

 

「う、うん。かっこよかったよフォルカス。ありがとね」

 

 

顔に付いた返り血を拭い私に笑顔を向けてくれていた。あの戦っている時の狂気に満ちた笑顔では無く微笑む様な表情。

 

 

「報告に参りましょう。そうすれば報酬が貰えるはずです」

 

「そうだったね、行こうか」

 

 

キル姫、正式名称はキラープリンセス。普段は人間となんら変わりは無いが一度戦闘となるとその狂気は解放される。敵を斬り、突き。その度に笑みを浮かべ悦に浸る。その姿を見るとなんとも言えない気持ちになってしまう。

 

 

「どうかしましたか?」

 

「あっ、いや、今日の晩ご飯はどうしようかなーってさ♪」

 

 

任務の報告も終わり賃金を片手に家の方まで帰って来ていた。その間も私は上の空でその事を考えてしまっていた。

 

 

「今は構いませんか戦闘中は気を抜かないで下さい。私が前線に出てる以上マスターを守る人は居ません」

 

「うん、ごめん。汗かいちゃったしお風呂入ろっか」

 

「その前にお風呂の位置を変えますね」

 

 

そう言ってフォルカスは水の入ったドラム缶を軽々と持ち上げ家の影へと運んでいた。その光景になんとも言えない気持ちになるのだった。

 

 

「この辺りなら町からは見えないですね。あの、どうしましたか?」

 

「いやぁー♪フォルカスは力持ちだね♪私たまげちゃったよ♪」

 

「これぐらい同然の事です。レンガを組みましょう」

 

「そだね♪」

 

 

レンガを組み上げるとその上にドラム缶を置きお風呂の引っ越しは終わった。ここなら明るい時間でも肌を人目に晒す事は無いだろう。

 

 

「先に入ってよ、私が火の番するからさ」

 

「ですがお風呂に入りたいと言ったのはマスターですよ、私の事は気にしないで下さい」

 

「いいや、フォルカスが入りなよ、ほら返り血とか着いちゃったじゃん」

 

「ですが「ほらほらマスターの私がそう言ってるんだからさ♪言う事聞かないと服脱がしちゃうぞー♪」

 

 

服を脱がせようとネクタイを解こうとするとドン引きした目で私を見た後渋々服を脱ぎその身をお湯へと運んだ。

 

 

「あのさ」

 

「どうしました?」

 

「フォルカスはさ、戦いたいの?」

 

「キル姫は異族と戦う為のものですから」

 

「ならさ、異族が全滅したらもう戦わなくて良いんだね?」

 

「そう、だと思います。どうしてその様な事を?」

 

「私さ、戦うフォルカスを見て怖い、って思っちゃったんだ。おかしいよね、私の指示なのにさ。人間の為に戦ってくれてるのにさ」

 

「歳だって私と変わらないぐらいなのに、他にしたい事だってあると思うのにさ」

 

「そう言って貰えるのは嬉しいのですが私はマスターの槍です。マスターの為、人々の為戦うのが私の使命です」

 

「あはは、じゃあさ戦う理由を無くせば良いんだ」

 

「?」

 

「ねぇフォルカス。私決めたよ、異族を全滅させる。私がフォルカスに誓う約束!」

 

「キル姫が戦わなくて良い世界を作るんだ!そしたらさ色んな事しようよ!町で買い物をしてさお洒落して美味しいもの食べて、お酒なんか飲んでみたりさ♪」

 

「キル姫が人間の為に戦ってくれるなら私はキル姫の為に戦うよ♪」

 

「不思議な人ですねマスターは。前のマスターも、その前のマスターもそんな事を言ってくれる人は居ませんでした」

 

「えへへ、あっ!それと私の事マスターじゃ無くてクレアって呼んでよ♪」

 

「そ、それは、、コホンッマスターはマスターなので」

 

「じゃあ私はフォルカスの事フォルフォルって呼ぶよ」

 

「良いんだね?町でも教会でも人が多い所でフォルフォルー♪って呼んでやる!」

 

「それはやめて下さい、流石にそのあだ名は嫌です」

 

「じゃあクレアって呼んでね♪はい、練習だよ♪」

 

「く、くれ、く、、あ、、、。もう出ます!次はマスターが入って下さい!」

 

 

結局名前では呼んでくれなかったけど恥ずかしそうなフォルフォルの顔が可愛かったからよしとしよう。次は交代で私がお風呂へと。

 

 

「ねぇフォルフォル」

 

「そのあだ名で呼ぶのはやめて下さい」

 

「良いマスターってどんな人の事なの?」

 

「それは答えに困りますね。自論ですが人間に個性がある様にキル姫にも個性がありそれを理解し合えた奏官が良いマスターだと思います」

 

「じゃあフォルフォルはどんなマスターが良いのかな?」

 

「そうですね、私の事をあだ名で呼ばないマスターが好ましいです」

 

「うん、分かったよ♪フォルカスはフォルフォルで決定ね」

 

「私の話を聞いていましたか?」

 

「じゃあクレアって呼んでよ」

 

「…………」

 

 

何度説得しても折れることの無いクレアに根負けしたまにクレアと呼ぶという事で手を打つ事に。

 

 

「よし、じゃあご飯でも行こうか!」

 

 

クレア達が向かったのは屋台のラーメン屋だった。チャルメラの音と赤い提灯に誘われてついつい選んでしまったのだが。

 

 

「親父、ラーメン一つ」

 

「あいよ」

 

 

赤の他人の事を親父と呼んだクレアに戸惑いながら同じ物を頼むフォルカス。しばらくして二人の前にはラーメンが並び割り箸を取るとパキリと割り無言でラーメンを啜る。

 

 

「おあいそ」

 

「まいど」

 

 

そして代金を払い早々と店を去るのであった。

 

 

「あの、亭主の事を親父と呼んでいましたが」

 

「あれね、あの店のルールだよ。亭主の事は親父、女の人が居たら女将。これは鉄則だよ」

 

「…………」

 

 

よく分からない事なのだが前を歩くその背中が全てを語っていた。少しだけ笑いその背を追いかけ追い抜く。

 

 

「家まで競争しましょう」

 

「あっ!フライング!」

 

 

怒りながらフォルカスを追いかける、その姿は仲の良い姉妹のようだった。

 

 

 

 

 

それから順調に任務をこなし家を少しずつリホームし楽しくて充実した毎日を過ごしていた。

 

 

「今日も異族の討伐だよ」

 

「分かりました。任務が終わりましたら近くの川に配管を繋げます。そうすれば夜でも用を足す事ができますよ」

 

「それは楽しみだな♪」

 

 

任務が終わった後の事を話しながら歩いて行くと小高い丘を登りその頂上には一本だけ生えている大樹と異族の群れが。その数は数え切れぬほど。

 

 

「行ける?フォルフォル、なんか嫌な予感がするけど」

 

「はい、マスターは何処かに隠れていて下さい」

 

「うん、分かったよ」

 

 

近くの岩場に身を隠すとフォルカスが槍を構え単身で異族の群れへと駆けて行く。それに気が付いた異族が咆哮をあげ迎え討つ。その様子を岩の影から覗いていた。

 

 

槍を振り回し血飛沫を上げながら進軍するフォルカス。その姿は地獄の槍の異名が相応しい程。

 

 

(所詮は異族。何人居ようと私の敵では無い)

 

(フォルカスなら大丈夫だろう)

 

 

慢心が、普段通りの戦闘が二人の注意力を欠けさせた。その隙を狙う者が。

 

 

「っつ!!」

 

 

深々とフォルカスの右肩を射抜いた矢。その矢を放った異族が満足気に笑い手負いのフォルカス目掛け複数の剣が、槍が迫る。

 

 

なんとか左手で槍を持ち応戦するも利き手では槍を捌ききれず傷を付けられ悲鳴をあげていた。その姿を見て考えるよりも早く身体が動いていた。

 

 

「フォルカスっ!!!」

 

 

聞き慣れた声の後ふわりと身体が浮き自分の意思ではなく身体が動き始めた。

 

 

「マスターっ!!ここは危険です!」

 

「うるさいやい!逃げよう!!」

 

 

フォルカスを抱き抱え丘を駆け降りてゆくのだが手負いのキル姫にただの人間。異族にとって絶好の好機を逃すはずもなく二人に襲いかかる。

 

 

「私を囮にマスターだけでも!」

 

「っ!!二度とその言葉を口にするなよ!絶対にフォルカスは私が助けるんだ!」

 

 

懸命に走るも自分程の重さを抱いて早く走れる訳もなくジリジリと距離を詰められ背後に刃が迫る。

 

 

「グギギ!!」

 

 

戦闘を走る異族が剣を繰り出した瞬間。

 

 

「グギィ!!」

 

 

剣が手を離れ、否、腕が身体を離れ地に落ちた。先頭の異族の異変に気が付き足を止めるとすぐに何かが飛来してゆく。

 

 

「アポロンは前線を!私は弓を持った異族を討ちます」

 

「任せてよお姉ちゃん!」

 

 

弓を構え戦場を駆ける二人。一人は燃える様な赤髪に手足にファーを付けた少女。もう一人は紺髪に金髪のメッシュに身体に密着する様ツナギを着た女性。

 

 

異族が放つ矢を躱し反撃の射撃は眉間を貫き、槍を剣を振るう異族の間をすり抜けながら心臓を撃ち抜いてゆく。その光景にかける言葉が思い付かずその光景を見ていた。

 

 

「やほにょーん、討伐完了だね♪」

 

「その様ですね。そこの二人はお怪我はありませんか?」

 

「フォルフォルの肩に矢が!!」

 

 

その言葉で我に返りフォルカスを寝かし手当てを受ける事に。

 

 

「少し痛むと思いますが我慢して下さい」

 

 

矢をグリグリと回し傷口を広げその後矢を引き抜いた。その痛みで顔を顰めるフォルカス。

 

 

「はいお姉ちゃん」

 

 

上着を脱がせ服を捲り上げ傷口に包帯を巻いてゆく。

 

 

「これで大丈夫です。見たところ奏官とキル姫の様ですが」

 

「あ、ん、私はクレア。こっちが相棒のフォルフォルだよ。助けてくれてありがとう」

 

「私はフォルカスです。危ない所を助けていただき感謝します。どうしてこの場に?」

 

「私はアルテミスです。私達に適合するバイブスの気配を感じたのでここに来たのですが」

 

「私はアポロンだにょーん。そしたらなんと戦闘中だったんだよ」

 

「ふんふん。バイブスって他にも奏官が居るのかな?なら手伝ってくれても良かったのに」

 

 

文句を言うとアルテミスが頭を悩ませフォルカスが顔を背けた。

 

 

「クレアが私達に適合したんだよ。勘が鈍いなぁ」

 

「うん、分かってるよ。この胸の騒めきは私の持つバイブスとキラーズが繋がる前兆だからね。あの、悪いけど明日のこの時間にここに来てくれないかな?その時に君達を私の隊に迎え入れるからさ」

 

 

その言葉にアルテミスは頷きアポロンは首を傾げていた。フォルカスは……うん。

 

 

「じゃ、悪いけどお願いね♪行こっかフォルカス」

 

 

フォルカスの手を掴み起き上がるのを手伝い立ち上がると二人に一礼をして教会を目指し歩いてゆく。その間私達に会話は無かった。

 

 

「…………」

「…………」

 

 

家にたどり着きそこでやっと私が口を開いた。

 

 

「ごめんフォルカス」

 

「謝るのは私の方です。自分の力を過信しマスターを危険な目に合わせてしまい、、」

 

「いや、悪いのは私だよ。戦場をフォルカスだけに任せてろくに指示もできてない私が悪い。本当にごめん」

 

「いえ、悪いのは私です私がもっと強ければ、、、」

 

「だから悪いのは私だって!フォルカスは何も悪く無い!」

 

「私です!」

 

「私だよ!」

 

 

…………

……

…

 

 

どちらが悪いかを押し付け合い最後には笑いながら泣きながら抱き合っていた。

 

 

「はぁあっ、お腹空いたね」

 

「そうですね。あの」

 

「うん、あの二人の事だよね。私はあの二人を迎え入れたい。フォルカスはどう?」

 

「私も賛成です、弓使いが二人居れば遠、中距離を任せる事ができます。そうすれば戦闘を有利に進める事ができるでしょう」

 

「それは私も思ってたんだけど。これは、んっと、フォルカスじゃなくてフォルフォルに聞くよ」

 

「フォルフォル、君は二人の入隊に賛成してる?」

 

「……どういう事でしょうか」

 

「私自身、奏官の身としては二人に来て欲しいんだけどクレアとしてはちょっと寂しいかなって。だってほら、ずっと二人で暮らしてたから急に仲間が増えちゃったらフォルフォルと二人きりじゃなくなっちゃうし」

 

「そうですね、私もフォルカスとしては賛成しています。共に戦ってくれる仲間が居るという事はとても心強いですから」

 

「ですがその、フォルフォルとしてはクレアと同じで寂しい気がします」

 

「あっ、今名前で呼んでくれた♪」

 

「い、いえ!忘れて下さい!」

 

「ふふーん♪もう私の頭の中に録音しといたからね♪」

 

 

得意げに言う私を頬を赤めながら睨むフォルカスがとても可愛かった。そしてお風呂を済ませご飯を食べて私達は寝床に寝転んでいた。

 

 

「みんなこの布団気に入ってくれるかな?」

 

「初めは抵抗があると思います」

 

「そだよね、じゃあさ四人で頑張って新しい家建てちゃおっか」

 

「それで四人で世界を平和にしてみんなで美味しい物食べておしゃれして飲みに行こう!」

 

 

寝転がりながら手を伸ばし握り拳を作りながら決意を固めていた。

 

 

「そうですね」

 

「だから今は充電だよ♪」

 

 

素っ気ないフォルカスに抱き着き肩に頭を乗せ胸に手を置き足を絡めていた。

 

 

「私不安なんだ。アルテミスとアポロンに平等に接してあげれるかって。何か区別とかしちゃいそう」

 

「それは私が許しませんよ。彼女達もマスターの為に戦ってくれるのですから」

 

「うん、、、明日から何が私達を待ってるんだろうね」

 

「占いましょうか?」

 

「いいや、やめておくよ。この目で見て確かめたいんだ、私達の未来を」

 

 

そう言って暗闇の中フォルカスの顔を見ていた。するとフォルカスも同じように私の顔を見ていた。

 

 

「寝よっか」

 

「そうですね」

 

 

何も言わずに抱きしめ合い温もりを確かめながら眠りに付いていた。

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

 

 

その次の日の昨日と同じ時間に私達は丘に生えている大樹のふもとに来ていた。その木の下には昨日の二人が。入隊をこちらからもお願いすると二人共頷いて笑顔を見せてくれた。

 

 

「本日より入隊しましたアルテミスです。どうか宜しくお願いします」

 

「アルテミスお姉ちゃんの妹のアポロンさまだにょーん♪」

 

「アルテミス、アポロン。これから宜しくね。さっそくだけど二人の戦闘技術を見せて欲しいんだ。お願いできるかな?」

 

 

私の問いに頷き二人同時に弓を取り出し構えていた。

 

 

「私が得意とするのは精密な射撃です。見ていて下さい」

 

 

アルテミスが弓を構え矢をセットしギリギリと引き絞り何かに向かい放った。

 

 

「あそこに生えている右から四つ目のリンゴを射抜きました」

 

 

そう言われて目を凝らすのだがここからだとリンゴがなっているのは何となく分かるのだがリンゴに当たったかどうかは分からない。それでも自信満々に言うので歩いて見に行くと確かに四つ目のリンゴに矢が刺さっていた。

 

 

「僕はお姉ちゃん程正確には射てないけど接近しても矢を放てるんだ♪えっとフォルカスちょっと相手になってよ」

 

 

フォルカスが返事をし槍を構えると弓の弦を引っ張りながらアポロンが動いた。フォルカスも手加減はしているだろうけど繰り出される槍の間を縫うように動き回りながら接近し弓の先をフォルカスの胸へと当てた。因みに原作でのプロフィールだとアポロンが得意とするのは精密な射撃だったけどまぁ良いでしょ。

 

 

「うんうん、三人が居てくれればこれ程心強いものはないよ♪」

 

 

とりあえず時間も遅いので四人で夕ご飯を食べに行くことに。こんな日はもちろん牛丼である。今回はカウンターでは無くテーブル席へと座り四人共必要最低限の会話のみで店内を過ごしていた。

 

 

「ねぇ、何か話そうよ」

 

「アポロン」

 

「おねぇちゃん、、。」

 

無言の重圧に負けアポロンが口を開いたのだがすぐさまアルテミスに口を閉ざされていた。良いんだ、これがこの店のルールなんだ。

 

 

重たくて少し心地良い空間で食事を終え店内から出るとやっと肩の荷が降りてくれた。

 

 

「ちょっと教会に行ってくるからフォルフォル案内お願いね♪」

 

「えっ、マスター?」

 

 

フォルカスが反応するよりも早くその場を立ち去り教会へと駆けてゆく。

 

 

「自由な人ですね」

 

「あははは、はぁ。」

 

「ねぇねぇ二人はどんなお家に住んでるの?立派なお家だと良いな♪」

 

 

その質問でさらにフォルカスの悩みが増えてゆく。ため息を吐きながら家へと歩いてゆく。

 

 

 

フォルカスの心境など知らずに私は教会へと向かいまだ開いていた扉を開けて夜勤の職員と話をしていた。

 

 

「キル姫と異族のデータをコピーしろ?それは構わないけどかなりの量だぞ?」

 

「うん、お願いします」

 

 

しばらく待っていると大量の紙を持ってきてくれた。

 

 

「データを見てどうするんだい?」

 

「勉強だよ。ほら、敵を知るにはまず味方からってさ♪」

 

「まっ、気をつけて帰りなよ」

 

「ありがとね♪」

 

 

しっかりと重たくなってしまったリュックを背負い家までの道を走ってゆく。走れば1時間ほどで着くだろうと考えながら。

 

 

何故私がこんな事をしたかというと少しでも三人の力になりたいからだ。あの三人は手慣れであり戦況を読む力に長けている。それなら私もそれに追いつけるように。

 

 

隊に三人のキル姫を従えてその頭がポンコツでは話にならない。少しでもみんなに近づくためにも努力しなければ。

 

 

食事のすぐ後に走っているからか脇腹が痛む。その痛みを堪えならが草原を駆けてゆく。そんな私を狙う影が。

 

 

「キシャアァァァァ!!」

 

「うわっ!?異族!!」

 

 

フラリと現れたのは1人の異族だった。すぐにみんなを呼ぼうとしたのだが私の声は家まで届かない。すぐさま家へと向かい駆けるのだが獣の息遣いがすぐそこに迫る。

 

 

「あっ」

 

 

ガッっとつま先が何かに引っかかりその場に倒れてしまった。急いで振り返ると捕食者がすぐそこに迫っていた。

 

 

本末転倒。そんな言葉が頭の中をグルグルと周り泣きべそをかきながらズリズリと下がってゆく。

 

 

「カァァァァ!!」

 

 

私目掛けて異族が槍を突き出した。月夜に照らされ輝く矛先が私へと向かってくる。

 

 

「誰か助けて!!!!」

 

 

両手を突き出し身体を守りながら叫び目をギュッと瞑っていた。

 

 

「あれ?」

 

 

いつまで経っても槍は私を貫かず不思議に思いながら前を向くと夜空を向く矛先が見え1人の男の人の姿が。

 

 

目にも止まらないスピードで何かを振るうと異族が豆腐を切るようにバラバラになり崩れていった。

 

 

「大丈夫だった?」

 

「う、うん。ありがとう」

 

 

その人は私の手を掴み立ち上がらせてくれると煙草を咥えて火を付けていた。

 

 

「こんな夜に一人で出歩くのは危ないよ。君は奏官?」

 

「うん、ちょっと教会に用があったから、あの、助けてくれてありがとうございました」

 

「ちゃんとキル姫と一緒に居ないとダメだよ。家まで送ってってあげるね」

 

「う、うん」

 

 

その人と話しながら家までの道を歩いてゆく。聞くとこの人も奏官で今は従えているキル姫と喧嘩して家を追い出されたと言っていた。

 

 

「仲が良いんですね」

 

「まーね?早く家に帰りたいよ」

 

「どうして喧嘩したの?」

 

「ティルが楽しみにしてたケーキを食べちゃったんだよ。そしたら鬼の様に怒っちゃってさ」

 

 

話していて思い出したのか何とも言えない表情をした後下を向いていた。

 

 

「奏官になってどれぐらいですか?」

 

「んっと、三年かな?君は?」

 

「私はまだ二ヶ月程、、今日私の隊に二人キル姫が入ってくれてそれで私も頑張ろうって」

 

「それで教会に行ったんだね。良い奏官だと思うよ」

 

「だと良いですけどね」

 

「キル姫のために何かを出来る人は良い奏官だよ。そうやって強い絆で結ばれれば結ばれる程キル姫も奏官も強くなれる」

 

「お兄さんもそうなのですか?」

 

「だと思うけどね?」

 

 

もう少しで私の家に着くという所で翼をはためかせる音と強い風が吹き荒れ空を見上げると巨大な竜の姿が。

 

 

「心配になって探しに出たのですがどうやら死に場所を探している様ですね」

 

「待って!これには深い訳が!!」

 

「言い訳は死んでから言って下さい」

 

 

竜に驚いているとその上から女の人が降りてきて物凄い剣幕で男の人を捲し立てていた。これ以上関わるのはやめよう。そう覚悟を決めてそーっと家へと帰ってゆく。

 

 

「みんなただいま♪」

 

 

家に帰り挨拶をすると不満気なアルテミスとアポロン。それに申し訳なさそうな顔のフォルカスかいた。

 

 

「まぁまぁ、君達の言いたい事は言わなくてもすごーーく分かるよ。今はちょっとアレだけど将来的には新しい家を建てたいと思ってます。はい」

 

 

この言葉で悟った様で藁の上に寝転がってくれた。それを見届けてから私も寝転がる事に。

 

 

外からたまに聞こえる悲鳴を聞きながら眠りにつくのであった。

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

次の日から私は一日に三件の任務を受けていた。それで一人ずつ任務に出てゆくのだ。

 

 

朝一番はフォルカスと、それが終わればアポロンと、最後にアルテミスとだ。出番が来るまでは各自家の事をしてもらい役割を分担していた。

 

 

フォルカスとの任務は慣れているのだがアポロン、アルテミスとは初めてでありまずは二人きりの時間を作り私の事を知ってもらう、二人の事を知る時間を作りたかった。

 

 

「よろしくねアポロン」

 

「うん、よろしくマスター♪」

 

 

フォルカスとの任務を終えて次はアポロンとの任務に出かけてゆく。もちろん異族の討伐である。

 

 

「ポロンはどんな奏官とだと動きやすいかな?」

 

 

異族の目撃現場まで歩きながらそんな質問をすると目を丸くして私を見ていた。

 

 

「どうしたの?」

 

「あ、いや、急に変な名前で呼ぶからびっくりしただけだよ」

 

「ふむ。じゃあアポロンはどんな奏官とだと動きやすい?」

 

「そうだね、自由にさせてくれれば適当に葬っておくかな」

 

「うんうん、りょーかいだよ♪」

 

「えっ自由にさせてくれるの?」

 

「うん♪それがアポロンが一番戦いやすいんでしょ?それなら私はその通りにするし。戦うのは私じゃないからさ」

 

「へぇー変わったマスターだね。前いた所は規則にルールにってうるさくて息苦しかったんだ」

 

「でも私とワンツーマンの時はだよ?四人で任務に出る時はその時の状況に合わせてもらうからね」

 

「にょーん♪さっそくアポロンさまに葬られたい相手を見つけたよ!」

 

 

駆けてゆくアポロンを見ると遥か先にユラユラと動く異族の姿が見えた。私と違い話しながらでも周りを良く見ていた。

 

 

慌ててアポロンの後を追いかけてゆきどの様に戦うのかをしっかりと見させてもらう事に。

 

 

素早く動き回り異族の群れを撹乱しながら接近し矢を打ち込み状況を読みヒットアンドアウェイで戦闘を優位に進めていた。そして何やら叫び声も。

 

 

[ーーーーー!!ーーー!!ーー!]

 

 

その言葉を書く事すら躊躇ってしまう様な暴言を吐いていた。えっあんなに見た目は可愛らしいのにそんな事言っちゃう?

 

 

「うーーん、あんなに離れてたら射てないよぉ」

 

 

近くに居た異族を壊滅させた後少し離れた所にいる遠距離武器を持った異族を恨めしそうに見ていた。

 

 

「あの距離だと矢が当たらないの?」

 

「そうだね、お姉ちゃんなら射てるんだけど僕には無理かも」

 

 

遠距離武器を持った異族との距離はおおよそ100メートル程かな?お互いがどちらかが近付くのを待っているという状況だ。痺れを切らせて近づけば射たれる。

 

 

「アポロンはどの距離なら正確に射抜ける?」

 

「あれの半分ぐらいならいけるよ!」

 

「分かった。じゃあ私がなんとかするからバッチリやっといてね♪」

 

 

不思議そうな顔をするアポロンの肩を叩いた後異族に向かい走り出した。

 

 

「えぇーー!?」

 

 

驚くアポロンの声とキル姫では無く私が走ってきた事に異族が動揺するもすぐさま弓を構え私へと向かい矢を放ってゆく。もちろん私もこんな所で死ぬつもりなんてない。

 

 

矢が当たらぬ様に斜めに走り異族との距離をとってゆく。異族も私に意識を向け列を成しながら私へと矢を放ち攻めてくる。

 

 

「グギッ!!」

 

「へへーん!狙われてるのはそっちだみょーん!」

 

 

私に気を取られた異族が1人、また1人とアポロンに撃ち抜かれてゆく。私の真意に気がついた時にはもう遅いのだ。

 

 

「イェイ♪」

 

 

アポロンに向けて指でVを作り笑顔を見せるとアポロンが駆け寄って来てくれた。

 

 

「君は、すごいや!僕もアルテミスお姉ちゃんも大丈夫か不安だったけど君は立派なマスターだよ!」

 

「そんなに褒められちゃうとハグしちゃうよ♪」

 

 

アポロンをギュッと抱きしめ体温と手足に付けたファーの柔らかさを堪能していた。

 

 

「君の事なら素直にマスターって呼べるよ♪」

 

「へへっありがとね♪」

 

 

無邪気なアポロンと共にお家に戻り次はアルテミスと任務へと向かう。

 

 

「よろしくねアルテミス」

 

「こちらこそよろしくお願いします。今回の任務ですが手配書には目を通してありますか?それと異族の種類、数なども把握しておきたいのですが」

 

「あはは、その辺は何も聞いて無かったよ、、」

 

「それは困りますね、次からは任務を受けた時にはある程度把握する様に心がけて下さい」

 

「…はい」

 

 

もっともな事を言われその事に答えられなかった自分が嫌になる。当たり前の事だが任務として出ている限りある程度の事は把握できるのだから出陣前にそれを確認するのは当たり前の事だ。

 

 

「貸してください」

 

「うん」

 

 

手に持っていた地図をアルテミスに渡すとそれを地面に広げ位置と異族の出現場所との距離を指でなぞりながら細かく説明をしてくれていた。私はそれを聞く事しかできないのだが。

 

 

「フィールドは草原ですね、これなら異族が地形変化に隠れるという事もできません。身を隠す事ができないのなら私が確実に射抜きます」

 

 

「成る程、勉強になります」

 

「分かっているとは思いますが異族との戦いは遊びではないのですよ」

 

 

地図を折り畳み私に渡しながらそう言ってくれた。それを受け取り再び歩き出す。

 

 

「もう少しで異族の出現ポイントだね」

 

「そうですね、気を引き締めていきましょう」

 

 

ふっと背を屈めたアルテミスに習い身を屈めフィールドを見渡すとパタパタと獲物を探す様に空を舞う異族の姿がチラホラと見えその下には異族の大群が。

 

 

「ねぇねぇ、アルテミスはあの異族も打ち落とせるの?」

 

「もちろんです。これから先は瞬きをする時間すら惜しんで下さい」

 

 

矢立てから数本矢を取り出し指の間に挟みながら一本だけを弦に乗せ引き絞り放った。

 

 

パシュンっと弦が矢を弾き飛ばし間をあけずに二本、三本と続け様に矢を放ってゆく。その様子は適当に射っているようにしか見えないのだが矢が放たれた方を見ると蚊取り線香に燻された蚊の様に落ちてゆく異族の姿が見えた。その様子に歓喜の声を上げる。

 

 

「えっ!?めちゃすご!!」

 

「大声を出してはいけません!!」

 

 

空から落ちてきた異族で天敵の存在を知った異族。それに私が大声を出し居る場所を悟られた様だ。複数の異族が武器を持ち私達へと向かって来ていた。

 

 

それを射抜いてゆくのだが矢の装填が間に合わず打ち残された異族の接近を許してしまう。

 

 

「マスターお逃げ下さい」

 

 

すぐこそまで迫った異族に矢を放ちながらそう言ってくれた。

 

 

「いや、これは私の失態だ。責任は取るよ」

 

 

援護よろしく!っとアルテミスの肩を叩き駆け出して行くと異族の群れはアルテミスを見切り私へと向かって来ていた。

 

 

グギギ!と異族の鳴き声を背に感じながら走って行くと地面の窪みに足を取られその場に倒れ込んだ。

 

 

「ひぃぃぃぃ!!!」

 

 

振り返る間もなく私の背に生暖かい物が覆いかぶさり身を捩りもがくのだが私の力では抜け出す事はできず悲鳴を上げる事しかできなかった。

 

 

「はぁ、もう異族は殲滅させましたよ」

 

 

その声と共に私に覆いかぶさる物が退けられやっと私は自由を取り戻し起き上がり私に覆いかぶさっていたものを見て再び悲鳴を上げていた。

 

 

「安心して下さい、既に死んでいます」

 

「そういう問題じゃなーーい!!うへぇ、、嫌な匂いがする、、」

 

 

身体中に異族の血がべったりと付き生臭い臭いが漂い鼻を曲げさせる。その様子を見てアルテミスが笑った。

 

 

「さっきはごめん、私の迂闊な行動でアルテミスを危ない目に合わせちゃったね」

 

「そうですね、マスターがあの様な事をしなければ迅速に異族を討伐する事ができました。それと自身を囮にする様な行為はやめて下さい」

 

「だってそうすれば、、。」

 

「私達キル姫にとって一番守るべきものはマスターなのですよ。それを自覚して下さい」

 

「うん、、ごめん」

 

 

真正面から正論をぶつけられへこみならがお家へと帰って行く。

 

 

「ねぇねぇアルテミス」

 

「どうしましたか?」

 

「今日のおさらいをさせてよ。少しでもみんなのためになりたいんだ」

 

「分かりました。ですがこれは家に帰り皆としましょう」

 

「りょーかい!」

 

 

私は家に着くなりみんなを呼び集め段ボールの上に地図を広げて今日のおさらいをしていた。

 

 

「うんと、まずは何から始めれば良いかな?」

 

「まずはフィールドの把握から始めましょう。本日は草原でしたが異族は出現場所を選びません。森に異族が出たと想定して作戦を練って下さい」

 

 

そう言われて森林をイメージしながら策を練る事に。

 

 

「森って事は木が沢山生えているんだよね?ならフォルカスに前線をお願いしてサポートをアルテミスに。アポロンに私の側に居てもらおっかな?」

 

「はい、フォルカスどう思いましたか?」

 

「…そうですね、私を前線に出すのは少し不安を感じます。何故か分かりますか?」

 

「マスター、何故フォルカスが不安を感じるか分かりますか?」

 

「うーーん、、、分からないや」

 

「私の槍だと木々に囲まれた状態では思うように扱う事ができないからです。木を切り倒しながら交戦する事も可能ですが得策ではありません」

 

「うんうん、確かに言われてみればそうだね、ならアポロンに前線、アルテミスに後方支援、フォルカスに私の側に居てもらうよ」

 

「僕の弓はお姉ちゃんのより小さいから小回りも効くしそれが正解だね♪」

 

「うーむ」

 

 

フィールドの状態と各種武器の長所短所を理解してそれから異族の種類持つ武器を考えれば良いのか?

 

 

「これは私からの提案ですが1人ずつと任務に出るよりみんなで行きその場で適任者を探した方が良いと思います」

 

「私もフォルカスの意見に賛成です。各高い戦闘力を秘めていますが不利な場面では窮地に陥る可能性も捨てきれません。安全を考慮すればまとまって動くべきだと」

 

「そうだね、うん。明日からはみんなで任務に出よっか」

 

 

知らず知らずにみんなを危険に晒していたみたい。そう思えば思うほど笑顔が作れず視線が床へと向いてゆく。

 

 

「じゃあ今日はお風呂入って寝よっか。明日は七時頃に起きるからお願いね♪」

 

 

なんとか絞り出した号令でお風呂を済ませ寝床に着く。

 

 

 

……………………よし。

 

 

 

みんなが寝静まったあと寝床を抜け出し隣の部屋に行き昨日もらった資料を広げて一つづつ目を通してゆく。まだ私は何も知らない。だったら少しでも知識を取り入れたかった。私は戦闘はできない、ならば全力のサポートでみんなの助けになりたかった。

 

 

ふむふむ?異族がどの様に生まれ何故人間を捕食するのか分かっておらずその生態は謎である。高い知能と獲物を逃がさない執着心、恐怖を感じる事は無く単体で町を襲う事も。

 

 

うーん?他の資料も漁ってみるか……………………。

 

 

目を擦り次の資料を引き寄せ他の項目を見ながら大きなあくびを一つ付き納得するまで資料を読み漁ってから寝床へと向かい寝転がった。

 

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

「マスター起きて下さい、七時を過ぎてますよ」

 

「えっ?」

 

 

誰かに肩を揺すられ目を覚まし時計を見ると起床時間を過ぎていた。慌てながら準備をしてゆくとため息を吐くフォルカスの姿が。

 

 

「あの後すぐに寝なかったのですか?目にクマができていますよ」

 

「動物が飼いたくてさ、今は目の下のクマで我慢してるんだ♪」

 

 

呆れ顔のフォルカスを見ながら服に付いた藁を叩き落とし仕事着に着替え2人が待つ玄関の前へ。

 

 

「マスター遅ーーい」

 

「昨日七時と言って居ましたよね?自分で言った事ぐらい覚えていて下さい」

 

「はーい、ごめんちゃい。さっ、行こっか」

 

 

まだ何か言いたげなアルテミスの背を押しながら教会へと向かい任務を貰いに行く。

 

 

「今日も任務受けるんだね、頑張るね」

 

「そりゃーね、それより任務の内容教えてよ」

 

 

受付の人から渡された手配書にしっかりと目を通し異族の出現場所と地図を照らし合わせフィールドを確認しある程度の段取りを脳内で組み立ててゆく。

 

 

「ん、ありがと。行ってくるね♪」

 

 

そう言い残し待っていてくれている三人の元へ行き説明をしてゆく。

 

 

「今日の任務は異族討伐だよ。異族の種類は戦型種でその数は50匹程。場所はクレナイの荒野だから地形変化があると思うから前線をアルテミスにお願いしてアポロンはアルテミスが打ち残しの処理、フォルカスには私の側に居るのとアポロンが捌ききれない異族の処理をお願いしよっかな♪」

 

 

三人に私なりの段取りを話すとアポロンが驚きフォルカスは鳩が豆鉄砲を食ったような顔を。アルテミスは満足気に頷いていた。

 

 

「なんだよー私何か変な事言った?」

 

「昨日まで任務の内容すら話さずに戦地に赴いていたマスターが急にその様な事を言った事に驚いているのです」

 

「うん、僕も。なんとかなるとか言うと思ってたのに」

 

「失礼だなぁ、今日も気合い入れて行くよー♪」

 

 

地図を頼りに戦地へと歩いてゆく。その間も周囲とみんなの様子を伺うのも忘れずに。

 

 

「おやつ買うの忘れてたね、買いに戻る?」

 

「…………」

 

 

軽くボケるのだが何事もなかったかの様に隊は進んで行きやがて戦地付近までやってくる事ができた。見渡す限り続く荒野だがやはり地面が隆起していたり穴が開いていたりと身を隠す場所が多く気を抜く事は出来なさそうだ。

 

 

「あの丘に登り見渡してみましょう。足場が高ければ矢の射程距離も伸びるので先手を打つ事もできます」

 

「りょーかい、みんなで行こっか。フォルカスはアルテミスの前を歩いてね。アポロンは私の側に居てね。まだ出現場所まで距離があるけどみんな気を抜かないでね」

 

「分かりました」

 

「了解だみょーん」

 

 

位置を入れ替え丘を登って行くと頂上から異族の鳴き声が聞こえ数匹の異族が飛び出して来た。

 

 

「フォルカス!!」

 

 

私が名を叫ぶ前にフォルカスは動いていた。先頭の異族を薙ぎ払い後続の異族に向かい槍を突き出し首をちぎり取りフラつく身体を蹴飛ばしていた。

 

 

その間をすり抜け私達へと迫る下半身が馬の様な異族。雄叫びを上げながら迫るのだが2人の弓使いにより亡骸へと変えられていた。

 

 

「ありがとね。この異族は手配書に書いてなかったのに」

 

 

頭と胸を貫かれ痙攣を起こしている騎乗型種を見ながら違和感を感じていた。手配書に漏れが合った?それとも増援があったのか?疑問が疑問をよぶ。

 

 

「一度丘の上から見てみよっか。状況次第では撤退も視野に入れておくね」

 

 

三人を見ながら言うと頷いてくれた。それを見てからゆっくりと気配を消しながら丘を登り頂上から下を見下ろす。その光景に息を飲んだ。

 

 

辺り一面に広がる異族の群。軽く見てみるとその数は数えるのを躊躇ってしまうほど。

 

 

「すごいや!こんな数の異族見たこと無いよ!」

 

 

少し楽しそうなアポロンがパタパタを手を動かしそれをアルテミスが嗜めていた。

 

 

「先ほどの異族は別の群だったのでしょう。どうしますか?」

 

「こりゃ撤退だね。みんなに何かあってからじゃ遅いから戻って援軍を呼ぶか他の隊に任せよう」

 

 

そう告げてゆっくりと丘を下ろうとした時に誰かが盛大にくしゃみをした。

 

 

「あっ」

 

 

その瞬間に異族の群れ全員が私達に目線を向け目が合ってしまった。もう逃げる事はできない。覚悟を決めて号令を出す。

 

 

「アルテミスとアポロンは全力で矢を放って!フォルカスはもっと近付くまで待機!」

 

 

指示を出しまだ遠くの異族達を観察してゆく。幸いにも遠距離武器を持った異族は居らず高い位置を陣取っている私達が優位に戦闘を進める事ができていた。

 

 

「敵が多すぎるよぉ!!」

 

 

アポロンが叫びながら矢を放ってゆく。二人共懸命に矢を射ってくれているのだが異族の数が多すぎて間に合っておらず徐々に距離を詰められてゆく。

 

 

「! アルテミス、アポロン!異族達を引きつける事はできる!?」

 

「可能です、何か策があるのですね?」

 

「もちろん!上手くいく保証は無いけどやってくれる?」

 

「分かったみょーん!お姉ちゃん、マスターを信じてみようよ!」

 

「そうですね、マスターの指示に従います」

 

「私が合図したらお願い、フォルカスも頼んだよ」

 

 

そう言って弦を限界まで引き絞った状態で待機してくれていた。そこに異族の群れが列を成し丘を駆け上がってくる。

 

 

「ギャギャギャ!!!」

 

 

喧しく喚き立てる異族。まだだ、まだ引き付けろ。

 

 

私達の目の前に迫った瞬間に号令を叫ぶ。

 

 

 

「今だ!!いっけぇぇ!!」

 

 

私の号令通りに先頭を走る異族が打ち抜かれた。その異族をフォルカスが押し込んだ。

 

 

「グギィィィ!!」

 

 

先頭の異族が後ろへ倒れその異族が後ろの異族を巻き込みさらにその異族が、、、。私の目論見通りに異族の群れは将棋倒となり崩れていった。

 

 

「よっしゃぁ!倒れた異族はフォルカスに任せて二人は遠くの異族をお願い!」

 

 

作戦が上手くいった事を喜ぶ間も無く次の指示を飛ばす。その指示通りに行きやがてその場に立っているのは私達四人となった。

 

 

「あはは、みんなありがとね」

 

 

疲労困憊なみんなに声をかけ私もその場に座り込んでいた。張り詰めた緊張の糸が切れたおかげで立ち上がるのが億劫になってしまった。

 

 

「今日帰ったらパーっと焼肉でも行こうよ♪」

 

「それなら予約をしておかないといけませんね」

 

「流石に疲れたので明日にしませんか?」

 

「もう僕はお肉の気分だよ!焼肉♪焼肉♪」

 

「その前に休憩しよっか」

 

 

座り込む私を見てみんなも石の上に座ったりと身体を休めていた。あと少ししたら帰ろうと思っていた時に地鳴りの様な音が何処かから響いてきた。

 

 

「ーーーーーーーーッ!!」

 

 

「もうお腹の虫が鳴いてる人が居るぞー?だーれだ?」

 

 

三人を見渡すのだが皆楽観的な表情はしておらず一点を見つめていた。私もその方に視線を向けると何かがこちらに向かって来ているのが見える。

 

 

「あ、あれはもしかして、、、」

 

 

昨日図鑑で見た記憶と迫る者を照らし合わせて考えたのだがあれは上位異族、使徒ミノタウロス、、、?

 

 

その巨体が近づいてくるにつれて私の疑問は確信へと変わってゆく。右手、左手が二本ずつ生え牛の様な顔に赤く不気味に光る目玉。間違いないあれはミノタウロスだ。

 

 

私が観察している間にもそいつは私達に接近しその姿を見せた。左手に握られた巨大な剣に右手に持つ大きな鳥籠が生理的に受け付けず嫌な気持ちにさせる。

 

 

「みんないける?っていくしかないよね。フォルカスは前線をお願い!アポロンとアルテミスは後方支援を!!自分の身は自分で守るから戦いに集中してね!」

 

 

ミノタウロスの雄叫びにも負けないぐらい声を張り上げ号令を飛ばしその場から少し離れミノタウロスを観察して行く事に。

 

 

フォルカスが槍を前方に突き出し身を守りながらそいつに向かい駆け出して行く。それを迎え討つために横一閃が繰り出された。

 

 

「かかりましたね」

 

 

一閃を矛先で受けその威力を利用して自身を回転させるとその勢いで槍を腕目掛けて振り落とした。

 

 

「そ、そんな」

 

 

フォルカスが振るった槍は腕に直撃したのだが少し槍の跡がついただけで血すら出でいなった。その光景に驚き戸惑うフォルカスを右手に持つ鳥籠で薙ぎ払った。

 

 

「〜ー〜〜〜〜っ!!」

 

 

名を叫びたいのをグゥと堪え次の案を練りアポロンに告げる。

 

 

「あいつの股ぐらをくぐり付けて振り返った瞬間に目を撃ち抜くんだ!できるかな?」

 

「うん、任せてよ!必ず打ち抜いてあげるね!」

 

 

返事をすると矢を引き絞ったまま駆け出しそのスピードをぐんぐんと上げて行く。そのままミノタウロスの股ぐらを抜け反転し標準を定めて行く。

 

 

「そこだっ!!」

 

 

股ぐらをくぐり抜けそれを追い振り返った瞬間に引き絞った矢を赤い目に目掛けて放った。流石に目に矢を放たれればかなりのダメージになるだろう。

 

 

「ヴォォォォォォォォ!!!」

 

 

「えぇぇぇぇぇっ!?」

 

 

アポロンの放った矢は確実に目を捉えたのだがそれを気にする様子も無くアポロンを太い腕で殴り飛ばした。

 

 

「アルテミスぅぅ、、」情けない声を出しながらアルテミスの方を見ると冷静な眼差しでミノタウロスを見据えていた。この状況でも諦めず最善の手を探し勝利する事を諦めていない。

 

 

「うん、そうだね。アルテミス何か策はありそう?」

 

「あいつの口内に矢を射る事ができれば勝ち目があるかも知れません。体内なら外皮程硬く無いはずです」

 

 

それなら雄叫びを上げた瞬間を狙うのが一番だろう。あいつに雄叫びを上げさせる方法を考えなくては。

 

 

考えて考えて、ミノタウロスについて書いてあった資料を頭の中で読んでゆく。

 

 

「そうだ!アルテミス!あいつはあの鳥籠に人を入れて持って帰るんだ!その目的が達成された時きっと雄叫びを上げる!」

 

「ですがそれはマスターの身を危険に晒します!その作戦は無謀です!!」

 

「じゃあ他に何があるんだよ!言ってみろよ!」

 

 

声を荒げギロリとアルテミスを睨む。そんな私に負けずギロリと睨み返す。

 

 

「なーんてね。無謀なんかじゃ無いよ、私はみんなを信じてるからさ♪」

 

「マスターっ!!」

 

 

アルテミスが伸ばした手を振り切りミノタウロスへ向かい駆けて行きその足元で足を止めた。

 

 

「やいミノタウロス!私はピチピチの17歳の女の子だ!きっと食べ頃だよ!!」

 

 

私を見下ろしその手で私を掴み顔元へと運び品定めする様な目で私を見たあと鼻息荒く私を鳥籠へと放り込み雄叫びを上げた。

 

 

 

「アルテミスーー!!!!」

 

 

丘の頂上で弓を構えるアルテミス。ギリギリと限界まで弦を引き絞りやがて、、、

 

 

「貫けぇぇ!!!」

 

 

アルテミスが全身全霊を込めた矢がミノタウロスの口へと吸い込まれていき勝利を確信した。

 

 

「ヴォォォォォォォォッ!!」

 

 

だが何事もなかったかの様に私が入った鳥籠を持ち何処かへと歩き始めた。とんでもない絶望、このまま私は巣に連れて帰られ食べられてしまうのだろうか?

 

 

「やっぱ嘘!私実は還暦を迎えるんだ!食べても美味しくないよぉぉぉぉぉー!!」

 

 

大声で泣き喚くのだが気にする様子もなく歩いて行く。そんな時鳥籠から三人の姿が。

 

 

「一点を狙いましょう、私に続きアポロン、フォルカスお願いできますか」

 

「任せてよ!」

 

「必ずあいつを倒してマスターを取り戻します!」

 

 

アルテミスが矢を引き絞る。それを合図にアポロン、フォルカスが走る。

 

 

「任せたわよ!」

 

 

アルテミスが矢を放ちその矢は背中へと飛んでゆく。

 

 

「僕の全力、いくよーー!!最後は任せたよ!」

 

 

その跡へ寸分狂わずアポロンの矢が飛来してゆく、そしてフォルカスが槍を構え疾走。

 

 

「この刃で穿つ!!」

 

 

グッと大地を踏み締め飛び上がり槍を構え傷跡目掛け突き刺した。

 

 

「ヴォォォォォ!!!!」

 

 

 

深々と槍がミノタウロスに突き刺さり悲鳴の様な声を上げながら暴れ回りやがてその身を大地へと横たわらせた。

 

 

「マスター!!」

 

「いたたたた、えへへ♪みんなありがとね♪」

 

 

鳥籠から抜け出し駆け寄ってきてくれたみんなに抱きついていた。

 

 

「もう大丈夫です、よく頑張りましたね」

 

「やっぱりマスターは凄いや♪」

 

「あまり無茶はして欲しくありませんが、、今回はマスターの作戦が上手くいきましたね」

 

「でしょでしょ?イェイ♪」

 

 

みんなに向かい笑顔を向けた瞬間に何処かから雄叫びが聞こえ身をこわばらせた。

 

 

「もしかしてまだ居るの、、、?」

 

 

私の嫌な予感は当たり遥か遠くにミノタウロスの姿が見える。それも一匹では無く複数の姿が。みんなを見ても疲労困憊でとても戦える様な状況では無い。

 

 

「まだ敵は遠いよ、今のうちに逃げよう!」

 

 

みんなもその案に乗っかり来た道を全速力で逃げて行くのだがだんだんと距離を縮められ振り返ればその姿が見えるまでに。

 

 

「あはは、覚悟、決めよっか」

 

 

ついに追い付かれみんなと心中する覚悟を決めた時上空からどこかで聞いた事がある鳴き声と声が聞こえてきた。

 

 

「ティル!あそこ!」

 

 

その声の後にミノタウロスの前に立ち塞がる様に竜が舞い降りその背から男の人と女の人が姿を見せた。

 

 

「よく頑張りましたね、みんな竜に乗って上空へと避難していて下さい」

 

 

女の人がそう言うと竜が背を屈め乗れといってくれた。その背に四人が乗ると咆哮を上げ舞い上がってゆく。

 

 

「あの異族は強いよ!二人じゃ無理だよ!!」

 

 

私の声に男の人が手をあげて答えた後二人がミノタウロスへと向かってゆく。

 

 

 

その様子を四人共がただ見惚れていた。二人の連携に、その強さに。複数居るミノタウロスをいとも簡単に討伐して行く。私達の苦労はなんだったのか疑問に思ってしまう程。

 

 

「処理、完了」

 

 

たった数分でミノタウロスを倒すと笛の音が聞こえ竜が地上へと降りてゆく。

 

 

「みんなお疲れ様。教会の手配書に掲載ミスがあってさ、その連絡を貰ってから来たから遅くなっちゃったよ」

 

 

煙草に火をつけながら剣に付着した血を振り払っていた。

 

 

「ありがとうございます、、。」

 

「最悪の事を考えていましたが間に合って良かったです。新人奏官と聞いていたので」

 

「あれ?前に会った子だよね?」

 

「はい、また助けて貰えました」

 

「また間に合って良かったよ。みんなもお疲れ様」

 

「マリアにはこの様な事が無い様しっかりと言っておきますね」

 

「じゃあ帰ろっか、またね」

 

 

竜に乗り込んだ二人を呼び止めその名を聞いていた。

 

 

「僕はユウ、パートナーはティルフィングだよ」

 

 

そう言い残し二人は空へと羽ばたいていった。それを見送って私達は歩き始めあの大樹が生えている所まで来ていた。

 

 

「ねぇみんな」

 

 

私の声に俯いていた三人が顔を上げてくれた。

 

 

「私達も頑張ろっか、私ももっと勉強して今よりも良い指示が出せるマスターになる。だからみんなも今よりも強くなろうよ」

 

 

私の声にみんなが頷いてくれた。

 

 

「じゃあさこの誓いをこの木に彫ろうよ」

 

 

大樹の幹に手を置きそこにフォルカスに文字を彫ってもらう事に。

 

 

 

[クレア、アポロン、アルテミス、フォルカス。世界を平和にする事をここに誓う××××年三月九日]

 

 

 

「よーし、明日からも頑張ろっか。でも明日はお休みにして身体を休めよう」

 

「きっと報酬も沢山入るから焼肉行こ焼肉♪」

 

 

呆れ顔のみんなの手を引き町へと駆けてゆく。まだ私の奏官生活は始まったばかりだ。この先に何が待ち受けていてもみんなとならきっと乗り越えられる。

 

 

これは私の勘だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




つらつらと書いてたら長くなってしまいました(´・ω・`)
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