朝、目を覚まし隣で眠るアスカロンの姿を見てから一階へと降りてゆきお鍋でお湯を沸かし沸騰する前でにコーヒーミルで豆をガリガリと引いていた。
今日は何をしようか?せっかくの休みの日だから何か有意義な事をしたい。何処かに二人で遊びに行こうかな?
後でアスカロンに相談をしよう。そう思いながらコップにフィルターを被せ豆を入れお湯を注ぎ込み淹れたてのコーヒーと共に玄関を出て家の前の階段に座り煙草に火を灯していた。
少し寝坊をしていまい時刻は午前8時。外は天気も良く絶好のお出かけ日和である。大きく伸びをしながら外を眺めると二人組の男女がこちらへと歩いてくるのが見えた。
「おはよユリ」
「おはようございます」
「おはよ、仕事の依頼なら今日はお休みだから明日にしてよ」
私に挨拶をしたのはユウとティルフィングだった。私の父と母なのだが離れて過ごしていた期間が長くあまり実感が湧かないのだけども。
「ラグーナ島がシーズンオフだからこっちに遊びに来たんだよ。アスカロンは?」
「まだ寝てるわ。コーヒー淹れてあげるから飲んで待っててよ」
二人の客人と共に家へと戻り二人分のコーヒーを淹れ二人の前へと。
「ありがとうございます。あの、砂糖とミルクはありますか?」
「はい」
二つを渡すとコーヒーへと注ぎ込みスプーンでかき混ぜ一口飲み満足そうな表情を浮かべていた。
「そういえばユリは奏官だったよね」
「そうね、私は奏官でありキル姫でもあるわ」
「半姫半人だからね。教会で試験は受けた?」
「何よそれ?」
聞き慣れない言葉を聞き返し返事を聞くとキル姫とバイブスとキラーズを完全に繋ぐ為には教会で洗礼を受ける必要があるとのこと。
「別に今更じゃない?そんな事しなくても私とアスカロンはしっかりと繋がっているわよ」
「教会で洗礼を受ける事により複雑に繋がり合うバイブスとキラーズを完全に繋ぐ事ができます。そうすればアスカロンの強化と今まで以上に繋がり合う事ができますよ♪」
「良いわよめんどくさいし。休みの日にそんな事に時間を使いたくないわ」
「でも不完全に繋がったままだとキル姫を暴走させてしまうんだよ。現に過去それでキル姫を暴走させてしまったのを見た事があるんだ」
「マジ?」
キル姫の暴走。理性を失い目に移る物全てを破壊しその先に待つのは破滅のみ。私が原因で暴走させてしまうのならその可能性はゼロにしたい。
「分かったわよ。教会に行って洗礼を受けてこれば良いのよね?」
「うん、もう開いてるからやってくれるはずだよ」
「ん、アスカロンが起きてきたら教会に行ったって伝えておいてね」
そう言ってパジャマから普段着に着替え剣を携え教会へと出向く事に。因みに今日は白いパーカーにデニム生地のショートパンツ、スニーカーである。
家を出てしばらく歩くと目的地である教会へとたどり着きあくび混じりに中へと入ってゆき適当な受付へと向かってゆく。
「ねぇ、洗礼ってのを受けに来たんだけど」
「それなら右に進んで頂くと受付がありますよ」
そう言われお礼を言い右へと進んでゆくと奏官洗礼と書かれた受付を発見し声をかけていた。
「ねぇ、洗礼をしに来たんだけど」
「はい。試験の申し込みで良かったですか?」
「試験?」
なんだそれ?聞いてないぞ?
「それでその試験って何を試験するのよ?」
「テストを受けて頂き合格する事ができれば祭司による洗礼を受ける事ができます」
「その洗礼を受けるとどうなるのよ?」
「マスターとしての才能が開花されあなたのバイブスに適合するキル姫が渡されます」
「適合してるキル姫は居るわ。で、その試験は受けられるの?」
「はい。その前に手数料として200.000ゼニー頂きます」
(うわ、たっかっ)
かなり手痛い出費なのだがアスカロンを暴走させてしまうと思えば安い物だ。財布からお金を取り出し受付へと手渡すと金額を数えた後別室へと案内されていた。
「しばらくお待ち下さい」
そう言われて私は机と椅子だけが置いてある部屋に置き去りにされていた。仕方なく椅子へと座り次の指示を待つ事に。
そんな事よりも私はあぁいうお役所対応というのが苦手だ。淡々と業務をこなし機械のように対応する。効率を上げる為には仕方ないかもしれないのだけど。
そんな事を考えているとドアがノックされプリントを持った受付の人が入ってきた。
「これより試験を行います。15問中10問正解すれば祭司による洗礼を受ける事ができます」
「分かったわ」
プリントを受け取り机に広げ問題を読み解いてゆく事に。早く終わらせて帰ろう。そう思いながら。
【問い1。ミトゥムとシタは姉妹のキル姫であるが姉はミトゥムである。○か×か】
えっと、シタとミトゥムって地上世界で会った事があるわね。今はラグーナ島でバイトしてて。確かミトゥムがねぇちゃんって呼んでたから姉はシタね。×っと。
【問い2。トライデントとケラノウス。姉はケラノウスである。○か×か】
ケラノウスはデュカキスのとこにいるキル姫ね。トライデントは会った事無いから分からないけど結構しっかりしているケラノウスが姉っぽいわね。○っと。
【問い3。必中と書かれたDSは必ず当たる。○か×か】
DSって何よ?それはいいとして必中って書いてあるなら必ず当たるわよ。○っと。
【問い4。キル姫が所属するグループカテゴリーでロストラグナロクがある。ロストラグナロク所属のキル姫はケイオスリオン、ハルモニア、ケイオスリオンの三カ国に分けられる。○か×か】
何よそれ?知らないから○にしとこ。
【問い5。キル姫を上限突破させる為には同じ図柄のキル姫を統合させるしか方法は無い。○か×か】
ん!これは淘汰ってやつね。上限突破が何か分からないけど悩んだら○ね。
【問い6。キラーメイルは人間の男性に何を埋め込み強化されているか。次から選び答えよ。
○ 魔獣の血肉
×キラーズ】
キラーメイルは地上世界に居た奴らね。世界観的にもここは×のキラーズだわ。
【問い7。キル姫をC.Cさせるには素材と何が必要か。
○淘汰値
×やる気】
これはやる気ね。やる気と元気が有れば大概の事はできるわ。×っと。
【問い8。銃を扱うキル姫が攻撃する時に気を付けなくてはならない事はどれ。
○射程距離
×HP】
普通に考えて射程距離でしょ。当たらないと意味がないし。
【問い9。キル姫のレベルはアイテムを与える事で上げる事ができる】
ふしぎなあめでもあるのか?そんな物は見た事も聞いた事も無いので×っと。
「問い10。バリアや軽減を持つキル姫にダメージを与える為には突破効果が必要である】
何それ、でも突破効果って響きがカッコいいから○ね。
【問い11。コマンドや付属、DSによるフィールドで受けるダメージを軽減させる方法は無い】
だから何よそれは!諦めたく無いから×。
【問い12。行動不可、移動不可、攻撃できなくなるのは?
○移動不可
×行動不可】
移動不可と行動不可って同じじゃないの?似たようなもんだし×ね。
【問い13。キル姫が扱える武器は6種類である】
えっと、剣、槍、斧、弓、銃、杖。うん、六種類ね。○っと。
【問い14。霊装支配されたキル姫はされてないキル姫と何が変わっているか。
○属性
×武器種】
霊装支配?確かギアハックだっけ?○っと。
【問い15。キル姫を縛る戒律の名は。
○キルオーダー
×オーダーキラーズ】
んー、×で。以上ね。
「できたわよ。採点をお願いするわ」
「はい。お預かりします」
受付の人にプリントを渡し大きく伸びをしていた。こうやって椅子に座る事に慣れていないから疲れた。時計を見るともうすぐお昼、みんなでお昼ご飯でも食べに行こうかな。
「採点はいつ終わるのよ?早く帰りたいんだけど」
「終わりました。ユリさんは残念ながら不合格です」
「はぁ?なんでよ」
そう言われ採点されたプリントを取り見てみると5点と書かれていた。
「ちょっと!もう一回試験を受けさせなさいよ!」
「本日の試験はこれで終了致しました。次回は来週となります」
「分かったわよ」
「それと試験の教材を販売しておりますがどうしますか?」
「いくらなのよ」
「フルセットで50.000ゼニーです」
「買うわ」
イラつきながらも財布からお金を支払い教材を貰い家へと帰る事に。
「あぁ!もうムカつく!何よ試験って!!」
(落ちましたね)
(みたいだね)
(ユリ、、、)
やさぐれる私に哀れみの目線を送る三人を気にせずお昼ご飯を食べその後貰ってきた教材へと目を通していた。
「僕の頃より分厚くなってる。ちょっと見せてよ」
二冊ある教材の私が読んでいない方を手に取り椅子へと腰掛け目を通していた。
「そういえばあんたはその試験に受かってるの?」
「うん、疑うなら証明書を見せてあげるよ」
そう言ってポケットから取り出したカードを見せてくれた。ユウの顔写真と登録した日付、パートナーのキル姫の写真が貼られていた。
「本当に200年前のなのね」
「うん、だから更新の度に変な目で見られるよ」
「これが試験用紙なんですね。初めて見ました」
「なんて書いてるのですか?」
買ってきた教材に紛れていたプリントを二人が見つけ笑いを堪えながら見ていた。
「何よ。笑いたいのなら笑いなさいよ」
「じゃあ遠慮なく」
「私もっ」
断りを入れた後プリント片手に大笑いされてしまった。実に気分が悪い。
「とりあえず一発ずつ殴らせなさい」
「失礼しました。このテストはキル姫が持つスキルを理解していれば分かる問題です。実戦を行いながら教えてあげますよ」
「ふむ」
そんな訳で実技を行う為に四人で家の裏庭へと来ていた。
「まずは必中のDSからですね。この世界だとアバリスさんやお嫁さんのマサムネさんですねっ」
「必中って必ず命中するって意味よね?なんでそれが外れるのよ?」
「矛盾みたいな話だけど回避率下限ってのがあるんだよ」
「はぁ?」
「つまり回避率下限を無視した必中と書いてあるDSなら必ず攻撃が命中するという事です」
「何それ頭おかしいんじゃない?」
「回避率下限を無視した必中だとアルマスやリサナウトさんですね♪」
「もう良いわよ。次!」
「問い4ですね。千年王国はケイリオスリオン、ハルモニア、トレイセーマと後一つティルヘルムという国があるのですよ?」
「へぇ、知らなかったわ」
「前ユリが戦ったアルマス、リルティルはそのティルヘルム所属のキル姫なんだよ」
「ふむ。次!」
「キル姫を限界突破させるには同じ図柄のキル姫を統合するかフェアリーを使えば行う事ができますよ」
「何そのフェアリーって」
「これだよ。この子は虹凸のフェアリー☆4だけど」
いつのまにかユウが持っていた可愛らしい妖精みたいな生き物を覗き込んでいた。
「へぇ、可愛いのね。これを使えば限界突破ができるのね?」
「うん、その代わり☆5のキル姫には虹凸のフェアリー☆5を統合しないとダメだからね」
「めんどくさいわね。なんでも一緒よ。次!」
「キラーメイル達は魔獣の血肉を埋め込む事によって力を得ているのですよ」
「あーそんな事言ってた気がするわ。地上世界で見た時は暴走?してたけどあれはなんだったのよ?」
「魔獣の力を解放しすぎたのだと思います。獣血解放を行えば能力が上がりますがキル姫と同じように暴走してしまうのです」
「あいつらも大変なのね。次!」
「C.Cですねっ。私がC.Cを行う為には素材と淘汰値がいるのですよっ♪」
「そもそもC.Cってなんなのよ?」
「クラスチェンジっていいます。普段の私は業剣神なんですけどC.Cするとフローズンマスター、ホーリーメシア、隠密剣士になる事ができるんですよっ♪」
そう言うと蒼い氷のオーラを身にまとってくれた。ふむ。
「まぁ良いわ。次!」
「魔弾を扱うユニットはHP管理が大事なんだよ」
「魔弾って何よ」
「見ていて下さいね」
そう言うと剣先に光を集め始めたティルフィング。その光はやがて大きな球となっていた。
「これが魔弾です。使用するのには生命エネルギーを必要としているのですよ。見て下さい」
魔弾を上空へと撃ち放ち端末を取り出すと私に見せてくれた。
「ほら、HPが147減っています」
「それがどうしたのよ?」
「魔弾を作り出すHPが無ければ魔弾を使う事はできません。戦う為には支給品や杖ユニット、ギアでHPを回復させる必要があります」
「へぇ、次!」
「キル姫のレベルはクエストに連れて行ってあげないと上がらないよ。直ぐにあげたいならメタルガーデンがオススメだね」
「へぇ、次!」
「突破効果も有効だけどスキル解除や封印も有効だよ」
「だからなんなのよそれは」
「私はDSで[業氷の海皇]があります。これは各属性からの攻撃を一撃だけ無効にする事ができるのですよ♪ユウさん私に攻撃してもらっても良いですか?」
「分かったよ」
そう言って剣を構えずに突っ立ったアスカロンに向かいユウが剣を構え腰を落とした。
「行くよ。黒式、、、一紅閃っ!!」
腰を落とした状態から一気に加速しアスカロンに向かい一閃を繰り出した。
「ほら、見てください♪」
確かに剣撃は当たったのに傷ひとつ付いておらず笑顔のアスカロンが立っていた。
「次は私に攻撃させて下さい」
「ティルフィングさんのDSは連撃なのでやめてくださいっ」
「色々あるのね。次!」
「フィールドで受けるダメージを減らす方法だね。アスカロン次元跳躍はできる?」
「はいっ!誰にすれば良いですか?」
「私で良いわよ」
「分かりましたっ!行きます、次元跳躍っ!」
私に向かい飛び上がるとそのまま何処かに消えてしまった。
「えっと、アスカロンは何処に行ったのよ?」
「フィールド外ですね」
「何処よそれ」
しばらくするととんでもない衝撃と共にアスカロンが戻ってきた。
「とどめですっ!ブラッディクロスっ!」
「ぐあっ!?」
よく分からないまま攻撃を受けて私は倒れていた。
「さすがだねアスカロン」
「いえ、まだまだ修行の身ですっ」
「」
「ユリが息をしてません!早く回復薬を!」
「ええっ!?ユリっ!大丈夫ですか!?」
………………………………………………………
「とりあえず正座しなさい。話はそこからよ」
「ごめんなさい、、、つい、、、」
「ついじゃないわよついじゃ。危うくマナに還るところだったわ」
回復薬を飲まされなんとか回復した私。今のがコマンドスキルでダメージを与えるという事らしい。
「それで?あの攻撃はどうやったら防げるのよ?」
「銀獅子シリーズのスキルを使うかこちらもコマンドスキル、暴走ラブリュスの付属スキルで対応可能です」
「そんなの手元に無いんだけど。次!」
「行動不可、移動不可ですね。ユリ、そこに立っていて下さい」
「ん、立ってるだけで良いのね?」
「はい。いきます、黒式・幻影朧っ!」
「痛いっ!痛いってば!!」
ティルフィングに連撃を叩き込まれ再び地面に横たわる事になった私。何か悪い事でもしたのだろうか?
「これが行動不可です。どうですか?」
「…………」
「聞く前に回復薬飲ませてあげよ?」
「それもそうですね。はい、飲めますか?」
差し出された回復薬を倒れたまま飲みなんとか起き上がれるまでになっていた。
「で?」
「行動する事はできなくなっていると思います」
そう言われて歩こうとしたのだが手足に力が入らず動く事も攻撃する事もできなかった。
「これが行動不可です。移動不可だと攻撃、スキルは使用する事ができます」
「分かったわ。それよりも回復薬があるからってガチで攻撃するのやめてくれない?」
「身を持って体験した方が分かると思いまして」
「まぁ、言いたい事は分かるわ。次」
「キル姫の武器種だね。剣、槍、斧、弓、銃、杖、盾、装備品があるよ」
「盾は分かるけど装備品でどうやって攻撃をするのよ?」
謎を口にするとティルフィングがカバンからネックレスを取り出し装着していた。
「今私は装備品のアニバサリーペンダントを付けました」
「普通にネックレスを付けただけじゃないの」
「ですが聖剣ティルフィングを持つ事ができなくなっています」
確かに聖剣ティルフィングではなく普通の剣を握っている。
「その剣で攻撃するの?」
「そうですよ?」
「それ剣じゃん。ネックレスで攻撃して無いじゃん」
「まぁ気にすんなよ」
「そうですよ、ユリは気にしすぎですっ」
「えっ?私がおかしいの?違うわよね?」
「次ですね。霊装支配されたキル姫は属性が変わってますね。それとギアハックされた物によっては性格も変わっています」
「ふむ?そう言えばアスカロンはギアハックされてたわよね?」
「はいっ、私はレヴィアタンをD.plugされてますね。そのおかげで嫉妬の氷を司る事ができてます」
「アスカロンの素の属性は光だったよね」
「素っていうかなんていうかですけど」
「そういえば私の属性はなんなのよ?」
「闇で良くない?」
「闇で決定ですね」
「そんな軽いノリで人の属性決めないでよ!」
「次はキル姫を縛る戒律だね。キルオーダーって言うんだよ」
「なんかそんな事聞いた事ある気がするわ」
「ラグナロク教会が定めたキル姫に対する掟ですね。これを破ると厳しく粛清されます」
「へぇ、ひとまずこれで復習は終わりね。後は教材を読んでなんとかするわ」
「ユリなら大丈夫ですよっ♪」
「アスカロンのためにも頑張るわ」
その後一週間私は勉強に明け暮れていた。バイト先にも教材を持ち込み時間を見つけてはページをめくり目を通していた。
勉強は苦手意識があったのだけど意外と悪くなく目を通す度に知識を蓄える気になってゆくのが楽しかった。
「ユリが本を読んでいるだなんて明日は槍が降るな」
「私が勉強しているのを珍しいように言わないでよ」
「悪かった悪かった。お菓子たべるか?」
「食べるー♪」
……………………………………………………………
「まだ寝ないのですか?」
「ん、もー少ししたら寝るわよ」
「あんまり根を詰めても良くありませんよ」
「もうすぐ寝るから大丈夫よ。先上がっててよ」
「私もユリが勉強するのを見てますね」
そんな感じで迎えたテスト当日。一週間前より確実にパワーアップした頭脳でテストへと挑んでいた。
「これよりテストを始めます」
「望むところよ」
カリカリとプリントへ記入してゆく音が部屋に響いてゆく。こないだと違い問題の意図が読み取れ難なく問題を解いてゆける。楽しい、まるで今まで勝てなかった奴を圧倒的に倒せるような気持ち良さだ。
「できたわよ。採点をお願いするわ」
「はい、お預かりします」
これでダメだったらどうしようか?そんな不安は一切感じない程渾身のできだった。帰ったら飲もう。もう私は帰宅後の予定を立て始めていた。
「ユリさん合格です」
「まっ、当然よね。それでその祭司とやらを早く連れてきなさいよ」
「分かりました。しばらくお待ち下さい」
しばらく待っているとドアがノックされ誰かが入ってきた。その方へと目をやると見覚えのある人の姿が。
「あんた、何してんのよ」
「あなたが合格したと聞いて祭司を代わってもらったのです。合格おめでとうございます、ユリ」
そう言って優しく私に微笑んでくれたのはユグドラシルだった。それだけなのに姿勢を正し真面目に対応をしなければという気になってしまう。
「まだ以前の事のお礼を言っていませんでしたね。あなたのおかげでこの世界は平穏を取り戻し再び歩み出す事が出来ました。ありがとう」
そう言われて深々と頭を下げられてしまった。非常に反応に困るのだが。
「あれは私がしたいと思った事をしただけよ。別にお礼を言われるような事でもないし」
「まぁ、慎ましいのね。それとあなたがどんな道を歩んで来たのか興味があるわ、私に聞かせて」
目線を泳がせ近くにある椅子を見つけるとそこに座り私にも座るように促し根掘り葉掘りと質問攻めに合ってしまった。この世界の中心となる人と思うと断るわけにもいかず長々と話をしてしまっていた。
「って訳なのよ。それよりお祈りはいつしてくれるの?」
「もう終わっていますよ。今度ユリの家に遊びに行くわね。もっとお話を聞かせて」
結局日が暮れるまでお話をしてお祈りらしい事もされないまま私に奏官証明書が渡されていた。私の写真とパートナーであるアスカロンが印刷されたカードを見るとにやけてしまう。
「以上で終わりです」
「ん、お疲れ様」
無愛想な受付に挨拶をして家へと帰ってゆく。
「ただいま。じゃーーん、見てみて」
満面の笑みで証明書をアスカロンへと見せるとまるで自分の事のように喜んでくれていた。この姿を見れただけでも頑張った甲斐があったと心から思えてしまう。
「やりましたねユリ♪確かに前よりもユリとの繋がりを感じます♪」
「頑張ったんだからね。今夜は祝杯をあげるわよ!」
「はいっ♪」
明日が仕事だという事をすっかり忘れて二人っきりの夜を楽しんでいた。
おまけ
「うぅ、、頭いったなぁ、、。」
「おーい、ブラケット」
「はーい」
私が上空へと投げたブラケットは親方の手元へと行かず真上に上げられていた。
「おい!上!」
「えっ?痛ったぁぁぁぁぁぁいい!!」
上空へと舞い上がったブラケットは私の頭へと直撃し盛大に悲鳴を上げ二日酔いと物理的な痛みの二種類に苦しまされる事となった。