※この作品はR-18です。

インテグラル・ノア サイドストーリーユリ物語   作:やす、

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地上世界を満喫しよう

あれからあたしはほぼ全ての時間を仕事に費やしていた。奏官証明書を取るのにかかった出費を取り返すのと早く借金を返したかったからだ。

 

 

唯一の休みだった日曜も仕事をし少し空いた時間すら仕事をしていた。そうなると疎かになってしまうのが睡眠時間と食事時間だ。一週間まともに睡眠も食事も取らず働き続けた結果。

 

 

「色々と言いたい事があるわ。だけど一言でまとめさせてもらうね。このバカッ!」

 

「私にちゃんと休んでるって嘘を吐いてたんですねっ!もぉぉっ!」

 

「ごめんなさい、、、」

 

 

運送のバイトでカレットの街に来た時ぶっ倒れたらしく目を覚ました時にはベッドに寝かされ点滴を受けていた。聞くと三日程眠ったままだったようで、ふらふらと身体を起こすと怒り心頭なアクスレピオスと心配そうなアスカロンの姿が。

 

 

「いくらキル姫が頑丈って言ったって限度があるんだからね。これに懲りたらちゃんと睡眠と食事をしっかりとって休む時は休む!」

 

「はい、、」

 

「しばらくバイトはやめてお店の仕事をしましょう」

 

「そうね」

 

「それとしばらく絶対安静だから働くの禁止。うちのマスターにユリちゃんのバイト先にしばらく休むって伝えてもらったから」

 

「はぇ?」

 

 

あたしのバイトはデュカキスの知り合いから貰っているものだったので体調が戻るまでお休みすると伝えられたようだ。

 

 

「アスカロンはしっかりユリちゃんを見張っててね。すぐバカな事するから」

 

「そうですねっ、ユリ、私もお店を休むのでしばらく二人でのんびりしましょう」

 

 

そう言われて借金の事を考えていた。まだかなりの金額が残っているし早く返して自由になりたい。私は働かなければならないのだ。

 

 

「もう大丈夫よ。これだけ休めば体調も万全だし」

 

「さっき言わなかった?ユリちゃんのバイト先にはお休みするって伝えてあるって」

 

「…はいっ」

 

 

そんな訳で一週間お休みにする事に。アクスレピオスにお礼を言って家へと帰って来ていた。

 

 

「ユリにお話があります」

 

 

帰って来た早々にアスカロンにそう言われて椅子に座り話を聞く事に。

 

 

「あんまり無茶な事しないでくださいよっ、早く自由になりたいのは分かりますけど。次無茶な事していたら私怒りますからね」

 

「うん。ごめんね」

 

「ちゃんと約束守って下さいよ?」

 

 

そう言ってあたしの頭を撫でてくれた。

 

 

「この一週間何します?」

 

「そうね、、、」

 

 

ずっと働いていたから急な連休にやる事が迷子なのだ。家の掃除、片付けはアスカロンがしっかりとやっていてくれるのでやる事もないし。

 

 

「何処かに遊びに行きましょうよ。地上世界なんてどうかしら?」

 

「そうですねっ。そうと決まれば早速行きましょう」

 

 

そんな訳で荷物をカバンへと詰め込み地上世界へ弾丸旅行に行く事に。

 

 

「よーっし!いろんなこと忘れて楽しむわよ!」

 

「おぉーー!」

 

 

荷物で膨らんだカバンを持ちユグドラシルへと行き地上世界へと繋がっているドアを開きワープホールへと飛び込んでゆく。

 

 

はい。今あたし達はユグドラシルを抜けて地上世界へとやってきました。見て下さいこのユグドラシルを中心に広がる広大な大地を。少し目を凝らせば彼方に大都市を見る事ができるわ。

 

 

「独り言ですか?」

 

「ん、まぁそんなところよ。とりあえず何処に行く?」

 

「そうですねっ、ヴァングさんのとこでも行きますか?」

 

「そうね。そうだ、良いものがあるわよ」

 

 

アスカロンと共にこないだバイクを停めた場所まで歩いてゆき駐輪場からバイクを引っ張り出していた。

 

 

「後ろに乗ってよ」

 

「えっ、ユリの運転ですか?」

 

「そうだけど嫌なの?」

 

「嫌って事は無いのですが、、、」

 

「なら問題ないわね。行くわよ」

 

 

ポケットからキーを取り出し差し込みエンジンをかける。その瞬間から排気管から吐き出される排気音にうっとりしながら座席へとまたがる。

 

 

「ほら、早く」

 

 

渋々背後にアスカロンがまたがったのを確認してからクラッチを切りギアを入れ走らせてゆく。あたしも久々なのでスピードは控えめに。

 

 

「ちゃんと安全運転して下さいねっ」

 

「分かってるわ、飛ばせって言うなら飛ばすわよ」

 

「このスピードでいいです!」

 

 

まぁそんな感じでヴァングの家近くへと辿り着いていた。その近くでエンジンを切り惰性で家まで進んでゆく。

 

 

「ヴァング居るんでしょ。出てきなさいよ」

 

「そんな取り立てみたいな言い方はやめましょうよ」

 

 

ドアをノックししばらくするとダルそうな顔のヴァングが姿を見せてくれた。

 

 

「あぁ?お前らか」

 

「暇だから遊びに来たわよ。ついでに今日泊まらせてよ」

 

「人の顔見て一番に言う事か?それ。まぁ良いけどよ」

 

「これつまらないものですけど良かったら食べて下さいねっ」

 

「おっサンキュー。まぁ入れよ」

 

 

そんな訳で久しぶりのヴァング邸へとお邪魔する事に。

 

 

「相変わらず綺麗にしてるのね」

 

「まぁな。性格ってやつだ」

 

 

それならそんな髪色にならないわよ。っと言いたいのを抑えながら部屋の片隅に荷物を置かせてもらいソファーへと座り込んでいた。

 

 

「キラーメイル達は?」

 

「マサムネなら上の部屋に居るぞ。他の奴らは知らん」

 

「マサオさんは何をしているのですか?」

 

「大学に行く為に勉強してるぞ、あいつは医者になりたいらしいからな」

 

「立派ね、あんたは何してんのよ?」

 

「俺はこの世界の観光大使やってるぞ」

 

「本当ですか!?それならオススメの場所とか教えてくださいよっ」

 

 

キラキラと目を輝かせるアスカロン。あたしもこの地上世界の事は気になるし興味はある。

 

 

「しゃーねーな、本来ならガイド料取るんだが特別に教えてやろう」

 

 

そう言って机の引き出しから用紙を取り出すとあたし達に見せてくれた。読んでみるとこの世界の観光名所がつらつらと書き記されていた。

 

 

「へぇ、凄いじゃないの。ヴァングがまとめたの?」

 

「当たり前だ。これぐらい把握しとかないと地上世界を統一する事なんてできないからな」

 

 

高らかに笑うヴァングをそっちのけあたし達は用紙を夢中になり読んでいた。

 

 

「ここ行きません?」

 

「そうね。それならクリスにも会いに行きたいわ」

 

「えっと、誰でしたっけ?」

 

「あのあれが蘇らせた、、、マムって人と一緒に」

 

「あぁー」

 

 

博士の名前は思い出せないけどまぁ良いでしょ。明日の目的地も決まり後は今をどう楽しむかだ。

 

 

「そういえばカミトは?シユウの姿もないし」

 

「あいつは保育士の仕事があるからそろそろ帰ってくるんじゃねーか?シユウはカミトの付き添いだ」

 

「グリモワールは何してんのよ?」

 

「あいつなら研究所か部屋にこもってなんかの本読んでるぞ」

 

「へぇ、誰だっけシャーペンみたいな名前の人」

 

「僕の事を呼んだかい。このセルフ過労死娘」

 

 

噂をすれば影である。因みに名前はシャーペンでなくジーペンね。多分。

 

 

「その呼び名はやめなさい。それとなんでその事を知ってるのよ」

 

「この二つの世界の事で僕が知らない事は何もないのさ」

 

 

髪をいじりながらドヤ顔で言われイラッとした気持ちを抑えながら世間話をする事に。聞くとヴァングと二人で観光大使をしているようで。因みに二人の口調についてだが久しぶり過ぎるので再現が甘いかもしれないけど目を瞑って欲しいわ。

 

 

「誰も気にしない事だと思いますよ?」

 

「まぁ一応ね」

 

 

そんなこんなで世間話を楽しんでいた。久しぶりに会ったから会話に花が咲きつらつらとどーでもいい事を話込んでゆく。

 

 

「騒がしいと思ったらお前ら来てたのか」

 

「久しぶりねマサオ」

 

「お久しぶりですマサオさんっ」

 

「そう呼ばれるのも久しぶりだよ」

 

 

どうやらあたし達の声がうるさくて様子を見に来たようだ。大きく伸びをしながら階段を降りあたし達の元へ。

 

 

「それで今日はどうしたんだ?また厄介事を持ってきたんじゃないだろうな?」

 

「人を疫病神みたいに言わないで欲しいわ。一週間休むからここに遊びに来たのよ」

 

 

へぇっと呟きながら時計を見るとあたし達へと声をかけてくれた。

 

 

「お前達も祭りに来るか?」

 

「祭り?」

 

 

マサムネの話を聞いてゆくと中心街でなんかのお祭りを催すらしく屋台も出るようでそこで夕ご飯を食べるみたいだ。

 

 

「へぇ、ってそんなのがあるなら早く言いなさいよ!」

 

「結果として知れたんだから良いじゃねーか」

 

「そうだぞ、このお短気早とちり娘」

 

(ムカつく・・・)

 

「まぁまぁっ、そのお祭りは何時からやるのです?」

 

「あーっと、18時からだ」

 

 

そう言われて腕時計を見ると現在の時刻は18時半だ。

 

 

「ってもう始まってるじゃないの!急ぐわよ!」

 

「あー待て待て、良いものがあるぞ」

 

 

ニヤリと笑うヴァングから渡された畳まれた服。それをアスカロンと眺めたあと困惑した顔でヴァングを見上げる。

 

 

「何よこれ?」

 

「祭りといえば浴衣だろ?祭りのPRにお前らの写真を使うからしっかり着付けてこいよ」

 

 

そう言われて浴衣を持ったまま空部屋へと押し込まれ着替えることに。

 

 

「アスカロンって浴衣着れる?」

 

「私は着た事ありませんねっ、どうしましょう?」

 

「適当に着れば良いわよね」

 

 

服を脱ぎ下着の上から浴衣を羽織り腰の辺りで帯で結び姿鏡でチェック。

 

 

「変なところある?」

 

「大丈夫そうですよ?私はどうですか?」

 

 

ゆっくりとくるりと回るアスカロン。紺色を主体とし淡い薔薇の刺繍の浴衣がとても似合っている。

 

 

「可愛いわよ。行きましょうか」

 

 

最後にもう一度鏡で見てから部屋を出てゆく。

 

 

「お待たせ。ってあんた達も着替えたのね」

 

「あたりめーだろ。行くぞ」

 

 

あたし達の前を歩く3人の後ろについて行くことに。甚平姿の3人なのだがやはり黒髪が一番甚平に似合う気がする。

 

 

「歩きにくいわね」

 

「でも涼しげで良いですよね♪」

 

 

浴衣に合わせて履き物は下駄を履いているのだが慣れない履き物に違和感を感じてしまう。だけど歩く度にカランカランっとなる音を聞くと悪くないのだ。

 

 

しばらく歩いてゆくと遠くから太鼓の音が聞こえさらに歩くとざわざわと人の騒ぐ声が。

 

 

「ついたぞ。後で写真撮りに行くから変な事してんなよ」

 

 

「「おぉーー」」

 

 

人が溢れたお祭りの会場を見てアスカロンと歓声を上げていた。所狭しと立ち並ぶ屋台が木から木へと結ばれている白熱球に照らされ雰囲気を醸し出す。さらに祭りの中心部にはやぐらが組まれその上に太鼓が置かれておりそれを叩く女の人の姿が。

 

 

「あれってスラーンドよね?」

 

「そうですねっ、太鼓を叩く姿がカッコいいです♪」

 

 

上半身にサラシを巻き付け元気よく太鼓を叩き鳴らす。その姿がさまになっている。

 

 

「それよりもご飯よ。早く屋台を回りましょうよ」

 

「もぉぅ、、」

 

 

スラーンドを眺めているアスカロンの手を引き人で溢れる屋台通りへと。早速美味しそうな物を見つけて店員へと声をかけてゆく。

 

 

「おじさん、えっと。アスカロンも食べる?」

 

「そうですね。私もいただきますっ」

 

「じゃあたこ焼き二皿ちょうだい」

 

「汝よ、たこ焼きはソースか、醤油か選ばれよ」

 

「えっと、あたしはソースで」

 

「私は醤油にします」

 

「ならば答えよ。青海苔は、鰹節はかけるのか」

 

「両方かけて」

 

「私のは鰹節だけでお願いしますね」

 

「うむ。ならば最後の問いだ。マヨネーズはいかがなされる」

 

「かけて」

 

「私もお願いします」

 

「汝等の願い、聞き届けた!」

 

 

そしたしばらく待っていると筋骨隆々とした店員からたこ焼きが二つ渡された。

 

 

「なんかすごい店員だったわね」

 

「そうですねっ、冷めないうちに食べましょ」

 

 

辺りを見渡し座れそうなベンチを見つけてそこに座りたこ焼きをいただく事に。

 

 

木の板皿に乗せられた八つのたこ焼きにソースがかけられておりその上に豪快に青海苔と鰹節が。極め付けは線状にかけられたマヨネーズだ。

 

 

一緒に貰った竹串でたこ焼きを一つ刺し口へと運んでゆく。

 

 

「あっつ」

 

「れもおいひぃてしゅねっ」

 

 

はふはふとたこ焼きを頬張り耐え難い熱さと香ばしく焼き上げられた外皮ととろりととろける中身を堪能していた。

 

 

「次に行くわよ」

 

 

次に見つけたのは氷水の中に入れられた缶ビールを売っている屋台だった。もちろんそこに行く事に。

 

 

「ぷはぁぁぁっ、さいこーね」

 

「冷たくて美味しいですね♪」

 

 

キンッキンに冷えたビールを飲みながら屋台通りを歩いてゆく。もうこれだけでこの世界にきたかいがあったと思えるほどの幸福感。

 

 

それから焼きそばにイカ焼きにカキ氷に食べたい物を好きなだけ買って食べ歩いていた。

 

 

「次はどうする?」

 

「ちょっと遊びません?あれなんてどうですか?」

 

 

アスカロンが指差す屋台へと向かってゆく。

 

 

「やぁいらっしゃい」

 

「ん、アルテミスじゃないの」

 

「久しぶりだね、ユリにアスカロン。良かったらやっていきなよ」

 

 

椅子に腰掛けるアルテミスが指差す方には棚がありその上には所狭しと商品が並ぶ。

 

 

「で?どうすれば良いのよ?」

 

「そこにある空気銃で好きな景品を落とせば君達の勝ちさ」

 

 

使い方を教えてもらい早速空気銃の先端にコルクを詰め狙いを定めてゆく事に。

 

 

「何か欲しい物はある?あたしがとってあげるわよ」

 

「なら真ん中の虹のイノセントをお願いしますねっ」

 

 

そう言われてイノセントとやらに標準を定め引き金を引くとぽすんと情けない音と共にコルクが飛んでゆきイノセントに当たった。

 

 

「あははっ、狙いは良いけどそんなのじゃ僕の景品は落とせないよ」

 

「見てなさいよ」

 

 

ムキになりイノセントに向かいコルクを打つのだがビクともせず玉は残り一つとなった。

 

 

「むぅ。アスカロン、ビール」

 

「はいっ」

 

 

アスカロンから受け取った缶ビールを持ち一口飲むと缶に付いた水滴で手がじっとりと濡れる。

 

 

「ん。ねぇ、アポロンはどこに行ったのよ?」

 

「さぁ?弟に会いたいのかい?」

 

「そうね。せっかく来たんだから顔ぐらい見ておきたいわ」

 

「伝えておくよ。それよりまだ打たないのか」

 

「今作戦を考えているのよ」

 

 

頃合いを見てコルクを空気銃へと詰め込み景品の上部へ向け狙いを定めてゆく。

 

 

「!!」

 

 

ぽんっと小気味良い音を立て発射されたコルクは見事イノセントを打ち倒し下のネットへと落ちていった。その光景に慌てたアルテミスが立ち上がる。

 

 

「嘘だ、どうしてこれが落ちたんだ、、、」

 

「簡単な話よ。コルクに水滴を吸わせて重さを増やしたのよ、重さを増やせば威力は上がるわ」

 

 

得意気なあたしと違い悔しそうに景品のイノセントを渡してくれた。

 

 

「次は水で濡らす事を禁止にしておくよ」

 

「ならその時はまた策を考えるわ。またね」

 

 

アスカロンにイノセントを渡して再びふらふらと歩いてゆくと輪投げをやっている屋台を見つけてそこへと歩いてゆく。

 

 

「次は私がやりますねっ、すいませーん」

 

「んだよ。って客か」

 

「輪投げがやりたいのですけど」

 

「金」

 

「はいっ」

 

「そこの輪っか適当に投げといて」

 

 

アスカロンに輪っかを5個渡すとダルそうに椅子に腰掛けた。素顔は深く被ったフードのせいで分からないがイラッとしたのは確かだ。

 

 

(アスカロン。早く終わらせて他のお店に行きましょ)

 

(そうですねっ)

 

 

そうは言ってもせっかくお金を払ったし楽しみたいという気持ちから狙いたい商品を定め輪っかを投げてゆく。

 

 

「えいっ!」

 

「マジ才能ねぇ」

 

 

輪っかは狙い通りには投げれているのだが棒に入らず店員から冷やかしの声が飛ぶ。それにイライラとし始めていた。

 

 

「絶対に景品を取ってみせますっ!!」

 

「アスカロン落ち着きなさい。あんな奴の策に嵌められてはダメよ」

 

 

イラつけば冷静な判断は出来なくなりミスを誘発する。そして焦り勝機を逃す。一旦深く呼吸をし気分を入れ替えアスカロンが輪っかを手に取った。

 

 

「無駄無駄、はよ帰れよ」

 

 

悪態を吐く店員をギロリと睨み文句を言おうとした瞬間にあたしの頭に手を置かれ後ろへと押されていた。

 

 

「ちょっと」

 

「私に落ち着けって言ったのはユリですよ。見ていて下さいねっ」

 

 

目を閉じ軽く深く呼吸をすると目を見開き一点へ視線を注ぐ。その瞬間に夏の熱気にまみれる空間がひんやりと感じた。

 

 

「そこっ!」

 

 

アスカロンが投げた輪っかは滑るように空中を移動し棒に差し込まれていた。

 

 

「私の勝ちですねっ。景品は頂きます」

 

「わったよ。持ってけよ」

 

 

最後まで態度の悪い店員から景品を貰い再び人混みへと紛れてゆく。

 

 

「さっき冷気を使ったわね?」

 

「はいっ♪空気中の水分を凍らせて滑り台の様に輪っかを滑らせてみました♪気が付かれないか不安でしたけど上手くいきましたよ♪」

 

 

何そのチート。そんな事を思いながら会場を歩きもう一本ずつ缶ビールを買って目新しい屋台を探してゆく。

 

 

「なんだがこうしていると休日って気がするわね」

 

「そうですねっずっと働いてましたからね」

 

「あたしだってゆっくりしたいわよ。借金さえ無くなればもうバイトもやめるし、そしたらまた二人でお店しましょ」

 

「絶対ですよ?それと無茶な働き方をするのはもうダメですからね」

 

「はーい」

 

「あっ、その返事は私の言う事を聞く気がありませんね!?」

 

「大丈夫よ。もう無茶な事はしないわ。はい、指切り」

 

 

左手に缶を持ちながらアスカロンへ右手の小指を立てる。すると少しだけ顔をむっとさせながら右手を差し出し小指同士を結び合わせてくれた。

 

 

「とにかく、この一週間は遊んで遊んで遊び尽くすわよ♪」

 

「無茶な遊び方はダメですからねっ」

 

 

カランコロンと下駄を鳴らしながら走るあたしの背後をアスカロンが追いかけてくる。二つの下駄から奏でられる音が心地良く心へと響いてゆく。

 

 

 

 

 

 

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