※この作品はR-18です。

インテグラル・ノア サイドストーリーユリ物語   作:やす、

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地上世界を満喫しよう その3

朝目を覚まし辺りをきょろきょろと見渡す。昨晩あれ程に飲んだはずなのに不思議と体の気だるさは無くすっきりとした気分。それよりここは何処だ?

 

 

ぼんやりと見渡していると昨日来ていたバーの床だという事に気がついた。そして隣にはアスカロンがいてクリスも居る。二人をおこなさないように立ち上がり灰皿の元へとゆくと椅子に座ったまま眠る店員の姿が見えた。

 

 

煙草に火を灯し店内へ充満してゆく煙をボーッと見ているとまどろみの後店員が目を覚ましていた。

 

 

「寝ちまっていたか。おはよう」

 

「おはよ。良い酒使ってるのね」

 

「俺が吟味した酒だ、当然だよ。どれ朝食を作ってやろうか」

 

 

冷蔵庫から食材を取り出しまな板の上に置き切り分けてゆく。店内に響く包丁の音が心地良く響きだんだんと料理のいい匂いが。それに釣られて二人も目を覚ましていた。

 

 

「おはよ」

 

「おはよーございます、、、っ」

 

「うーん、ここは、、?」

 

 

寝ぼけている二人を見た後再びキッチンに視線を戻すと慣れた手つきでお皿へと盛り付けてゆく姿が。

 

 

「ほら食いな。っと、これはサービスだよ」

 

 

そう言ってカウンターに並べられた食器を下げてゆく。ご飯にお味噌汁に焼き魚。和風な良い朝ごはんだ。

 

 

「「「いただきまーす」」」

 

 

少し濃いめのお味噌汁が五臓六腑に染み渡り塩が効いた焼き魚がご飯に合う合う。そして食後には濃いお茶を貰い飲み干せばすっきりとした気分に。

 

 

「クリスは今から俺とお前の家に行くぞ」

 

「えっ、なんでだよ」

 

「返すのが遅くなっちまった事とお前に酒を飲ませた事を親父さんに謝らなければならないのでね。嫌とは言わせないぞ」

 

 

嫌そうな顔をしたけど帽子から覗く視線を見て諦めたようで。軽く身支度をして二人と分かれる事に。

 

 

「またね二人共」

 

「うん、またね」

 

 

歩いてゆく二人を見送った後あたし達も何処へ行くかを決める事に。

 

 

「アスカロンは何処か行きたいところある?」

 

「そーですねっ、フォルカスにはちょっと会いたいですけど」

 

「んじゃ探しに行こっか。そのあとラグーナ島に行かない?」

 

「良いですよ♪もしかして会いたくなったんですか?」

 

「ん、そんなところよ。それよりフォルカスって何処に居るのよ?」

 

「えぇーっと、あっちから気配を感じますねっ」

 

「何その目玉おやじ」

 

 

アスカロンが指差すのは彼方にそびえ立つユグドラシルの方を指していた。帰り道だし丁度いい。

 

 

「じゃ、行こっか」

 

 

てくてくと中心街を歩き昨日バイクを停めた駐車場へ。

 

 

(5000ゼニーです)

 

(うわっ、たっか)

 

 

何をするのにもお金はかかるものなのだがバイクを停めるのにもお金はかかるようで。渋々お金を支払いいざ出発である。

 

 

「あたしも駐車場経営でもしようかしら」

 

「でも天上世界でバイクとか見たことありませんよね?」

 

 

ごもっともな事を言われながらエンジンをかけ目指すはユグドラシルだ。

 

 

そんなこんなで3時間ほど走った時にアスカロンに肩を叩かれスピードを落としてゆく。

 

 

「どうしたの?」

 

「あれってオルフェウスじゃないですか?」

 

 

言われた方を見ると道路の近くにある石に腰掛けて俯いている人の姿が。俯いているから顔は分からないけどあのオレンジ色の髪色は間違いなくオルフェウスだろう。エンジンを切り惰性でその人の元へと。

 

 

「やっぱりオルフェウスね。どうしたのよ」

 

「んあ、ちーっす」

 

「元気がありませんけど何かあったのですか?」

 

 

あたし達を見上げた後再び地面に顔を落とし深いため息を吐き出していた。

 

 

「あんたから元気を取ったらなんも残らないわよ。何があったか話しなさいよ」

 

「私達でよければ力になりますので話してもらえませんか?」

 

「実は…」

 

 

話を聴くと現在神令達とバンドを組んでいるのだが良い曲が浮かばなくて困っているようで。

 

 

「あたしがやりたいって言ってみんなが付き合ってくれてるんだからあたしが良い曲考えなきゃって。でも全然浮かばなくて、、、気が付いたらここで座ってて…」

 

「スランプみたいですねっ何か気分転換してみてたらどうですか?」

 

「って思ったんだけどなーにもする気も起きないし。気がついたら頭の中で歌詞が浮かんでそれを書こうと思ったら消えちゃって。あぁもう!あたしどーしちゃったんだろ」

 

 

身振り手振りでそう言った後両手で顔を覆い俯いてしまっていた。

 

 

(相当深刻みたいですね)ヒソヒソ

 

(そうみたいね、、「そうだ。オルフェウス」

 

「なに?」

 

「そんな時は風になるのよ」

 

「風?」

 

「そう、風よ。嫌な事や悩んでる事は風になれば忘れるってあたしの友達が言ってたわ」

 

 

そう言ってバイクへと跨りキーを捻りエンジンをかけ後ろをポンポンと手で叩いた。しばらくすると立ち上がり背後へと跨ってくれた。

 

 

「しっかりと掴まってなさいよ」

 

 

あたしのお腹に手を回した後返事が聞こえ久しぶりに全開走行を行う事に。

 

一つ呼吸をした後にクラッチを握りギアを蹴り込むと動力がギアへと繋がり僅かに前進した。

 

次の瞬間にクラッチを離し半クラを解除しスロットルを回すと後輪を鳴らしながら一気に加速してゆく。

 

 

回転数を指す針がレッドゾーンまで跳ね上がりそれと同時にスピードを指す針も右へと駆け上がる。さらにクラッチを切りギアを上げ甲高いエンジン音と共に強烈なGと風圧を感じてゆく。

 

 

「うわっ!?ちょい早すぎ!!」

 

 

オルフェウスの悲鳴を排気音がかき消し何も聞こえないままもうすぐ300に辿り着こうとしているスピードを楽しんでいた。

 

 

……………………………………………………

 

 

「どうだった?」

 

「なんかスッキリしたかも?ユリピーあざまっ♪」

 

 

しばらくして元いた場所へと戻ってくると先ほどの悩んだ顔は笑顔へと変わっていた。

 

 

「でも現実は何も変わってないんだけどね」

 

「それ、、言っちゃう…?」

 

「「あっ」」

 

 

あたしの余計な一言により再び元気を無くしてしまった。

 

 

「もぅ、こんな時は美味しいご飯でも食べませんか?お腹が一杯になれば良い曲も思い付くかも知れませんよ?」

 

 

アスカロンの提案により近くの街へと移動しご飯を食べる事に。

 

 

「そういえば他のコマンド達にはなんて伝えてあるのよ?急に居なくなってみんな心配してるわよ」

 

「みんなには散歩に行ってくるって」

 

「それでオルフェウスはいつからあそこに座ってたのです?」

 

「えっと、三日ぐらい?」

 

「それはもう散歩でも何でもないわよ」

 

 

普段明るい人がメンタルをやられるととことんヘコむと聞いた事があるけどオルフェウスはまさにそのようで。あたし達と話している時もどこか上の空だ。

 

 

「オルフェウスは音楽が嫌いになってしまったのですか?」

 

「そんな事はないんだけど、、音楽はあたしのすべてだしあたしそのものだからさ。だから音楽に向き合えないあたし自身が許せないんだよ」

 

「クリエイティブな事をする人にとってスランプは天敵ですからね。一度音楽から離れてみるのはどうですか?」

 

「それも考えたんだけどいつどこでも何をしてても音楽の事を気が付いたら考えてるし、。」

 

「じゃあご飯を食べたら一曲聞かせてよ」

 

「えっ?良いけど、。」

 

「じゃあ決まりね。ほら、早くメニューを決めなさいよ」

 

 

オルフェウスに向かいメニューを渡すと素直に受け取りページを開きメニューを指でなぞっていた。

 

 

 

………………………………………………

 

 

しばらくしてあたし達の前には同じホットケーキセットが。オルフェウスの前にはスパゲティにピザにオムライスにピラフが。

 

 

「頼みすぎじゃない?シユウでも居るの?」

 

「そういえばずっと引きこもって作詞してて何にも食べてない事思い出してさ。いただきまーす」

 

 

そう言ってフォークとスプーンを右手左手に持ち器用にご飯を食べてゆく。その様子をホットケーキを食べる事を忘れて見ていた。

 

 

(シユウより食べるの早いんじゃないですか?)

 

(そうかもしれないわね…)

 

「あっ!」

 

「どうしたんですか?」

 

「今閃いたっしょ!良い詞が書けちゃうよ!」

 

 

スプーンとフォークを置いたと思ったらカバンからノートを取り出しカリカリと書き込んでゆく。ご飯食べてからにしたら?と聞くとそんな事してたら忘れちゃうっしょ。との事。

 

 

「よーし!できた!今季最大で最高の一曲!お礼に二人に一番に聞かせてあげるね♪」

 

 

そう言って立ち上がり外へと出てゆこうとしていた。

 

 

「ちょっと。ご飯食べてからにしなさいよ」

 

「ん、あーそだったね、ごめごめ♪」

 

 

満面の笑みで座り直すとご飯をかきこんでゆく。

 

 

(スランプの原因ってただの空腹だったんじゃない?)

 

(あはは、、そうかもしれませんね、、)

 

 

そんなこんなでご飯を食べ終わりあたし達はオルフェウスに連れられて街の広場へと来ていた。そこでオルフェウスが箱の上に座りギターを構えあたし達を見ていた。

 

 

「じゃあ一曲演っちゃうよ♪」

 

 

大きく息を吸い込んだ後ギターを掻き鳴らし歌を歌ってゆく。さわやかなギターの音に乗ったオルフェウスの声が秋空に響き二人してその曲に聞き入ってゆく。

 

 

「ご清聴マジあざした♪」

 

 

最後にギターを一掻きし深々と頭を下げるその仕草に盛大な拍手を送ってゆく。

 

 

「スランプ脱出って訳ね。良かったじゃない」

 

「ほんと一時はどーなるかと思ってたけど、、二人にはマジ感謝だね♪」

 

「これでオルフェウスも皆さんのところに帰れますね♪」

 

「あっ、そだ。勝手にでてっちゃってちょいバツ悪いから付いてきて欲しいんだけど」

 

「ふむ」

 

 

そんな訳でオルフェウスの案内の元コマンド達が居る街へと。聞くとユグドラシルのふもとの方らしく帰り道だし丁度いい。ここに来た時同様にバイクに3人乗りをしながら次の街へと。

 

 

「この家だよあたし達が住んでるの」

 

「へぇーいい家住んでるのね」

 

 

オルフェウスに案内され街を少し歩くと豪邸と言って良い程の大きさの二階建てのお家が。塀から中を覗くと庭には一面に芝生が生え揃いお洒落なウッドデッキがありその上にはチェアが人数分置かれているのが見える。

 

 

「羨ましいですねっ」

 

「あたし達もリホームでもしよっか。それでいつまで戸惑ってんのよ」

 

「あ、いや、あはは」

 

 

自分達の家なのになかなか入ろうとしないオルフェウスを急かすと苦笑いを浮かべていた。ここは空気を読まないあたしの出番だ。門の横にあるインターホンのボタンを押し込んでいた。

 

 

ピンポーーン

 

 

「はい」

 

「その声はフォルカスね、オルフェウスを連れてきたわよ」

 

 

その後ドタドタと足音が聞こえた後に玄関が開きフォルカスを先頭にコマンド達が玄関から飛び出してきていた。

 

 

「おかえりオルフェウスちゃん」

 

「今日帰って来なかったらミョルは出てゆくところだったわ」

 

「あのあの、、おかえりなさい」

 

「ボクの言った通り帰って来ただろキラーン」

 

「おかえりオルフェウス!オルフェウスが居ない間にみんなで超・爆良い歌を考えたんだ!なぁみんな!」

 

「それはまだ内緒って言いましたよね?コホン。とにかくおかえりなさいオルフェウス」

 

「み、みんなぁ、、、急に居なくなってマジごめん!っとただいまっしょ♪」

 

 

コマンド達に囲まれてわちゃわちゃしているオルフェウスを見た後顔を合わせ頷きこっそりとその場から立ち去る事に。その際にあたし達に目線を向けたイチイバルにジェスチャーを送っておいたから大丈夫だろう。

 

 

「一旦家に帰ろっか」

 

「そうですねっ、荷物も準備しないといけませんし」

 

 

しばらくバイクで走り前の駐車場へと停めユグドラシルの樹を潜り抜けてあたし達は家へと帰って来ていた。

 

 

「それより先に食べましょうよ。お腹すいたわ」

 

「じゃあ食べてから準備手伝って下さいね?」

 

「分かってるわよ。いただきまーす」

 

「いただきます」

 

 

帰り道に寄った雑貨屋さんの惣菜をパクリ。うん、美味しい。

 

 

「楽しみですねラグーナ島♪」

 

「そうね。でも両親に会いに行くって考えて行くとなんか緊張するわ」

 

「あの二人の事を普段はどう思っているのです?」

 

「親っていうより友達ね。一緒に暮らしてたのは三歳までらしいし」

 

「それでもユリを見ていると二人の面影があるのでやっぱりユリは二人の子ですよ♪」

 

「それってどこのことよ?」

 

「髪色はティルフィングさんのピンクにユウさんの黒を足した桃黒色で瞳の色は赤。ちょっと奥二重なのはユウさんからですねっ」

 

「なのかな。明日よく二人を見てみるわ」

 

 

ごちそうさまと呟きゴミを袋にまとめ明日の準備を行ってゆく。その後煙草を吸いお風呂に入り久しぶりの我が家のベッドへ。

 

 

「明日は何時に起きます?」

 

「そうね、起きた時にしましょう。休みぐらい時間に縛られずにさ」

 

「分かりましたっ。ユリ」

 

「何よ」

 

「隣に来てください」

 

 

そう言われてアスカロンの隣に寝転がると優しく抱きしめてくれた。その体温と心地良さにいつの間にか眠りへと落ちてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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