※この作品はR-18です。

インテグラル・ノア サイドストーリーユリ物語   作:やす、

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ラグーナ島で

あの後私達は予約したホテルの部屋では無く彼らの部屋に泊まっていた。結構奮発してチケットを買ったのにその部屋に泊まらない事をちょっと悔やんでいるのは内緒。

 

 

夜が明けて太陽が顔を出す頃あたしは目を覚まして煙草を片手に砂浜へとやってきていた。水平線から顔を出した始めた太陽を見ながら煙草に火を灯し至福の目覚めの煙草。

 

 

ぼーっとなにも考えずに太陽を眺めていた。そんな時沖へと続く堤防を歩いてゆく人の姿が見えその後を追いかけてゆく。

 

 

「おはよ。何してるのよ」

 

「おはよ。朝まずめだけ釣りをしようと思ってさ」

 

「朝まずめ?」

 

「んーお魚が釣れやすい時間かな」

 

 

堤防の先端へと辿り着くと荷物を下ろし準備を始めていた。その様子を見てゆく。ルアー?というものはキラキラした物が多く本当にこれで魚が釣れるのか疑問だ。

 

 

「ねぇ、あたしにもやらせてよ」

 

「うん、良いよ」

 

 

仕掛けは一つしかない様でそれを貸してもらい説明を受けた後竿を後ろに振り前へと振り弾力を利用してルアーをぶん投げた。弧を描きながら飛んでゆくルアーにしゅるしゅると伸ばされてゆく糸の音が心地よい。

 

 

「あとは底に付くのを待って底に付いたらしゃくりながら巻いてくるんだよ。魚がかかったら重くなるから思いっきり竿をあおってね」

 

「分かったわ」

 

 

しばらくしてルアーが底に付きリールを巻いて糸ふけを取ってから竿をしゃくろうとした時ひったくるような感覚が手元に伝わり思いっきり竿を煽った。

 

 

「おおぉ!?」

 

 

その瞬間から竿を弓形に曲げられ体ごと持ってかれるような力強さを味わった。リールと呼ばれる物からキリキリと音を鳴らしながら糸がひっきりなしに出てゆく。

 

 

「しっかり竿を立てて竿の弾力を効かせるんだよ。こっちに寄れたらリールを巻いて糸を巻き取るんだ」

 

「任せて!絶対に釣り上げてみせるわ!」

 

 

しっかりと踏ん張り竿のグリップを肘に当て魚の力に負けないように踏ん張る。しばらくすると諦めたのか少し離れたところで魚体が浮かび上がった。

 

 

「ネットに入れるまで油断したらダメだよ」

 

 

竿を立て糸を巻取り足元まで寄せると魚はネットへと収められ堤防の上に引き上げられていた。

 

 

「このお魚は食べれるの?」

 

「うん、お刺身でも煮付けでも食べれるし。持って帰る?」

 

「食べれるのなら食べたいわ。お持ち帰りね」

 

「了解。じゃあ帰ろっか」

 

「あんたは釣りしなくて良いの?したくて来たんでしょ?」

 

「魚は鮮度が命だし満足できたからさ」

 

 

納得できるようなできないような答えをもらい家へと帰りまな板の上に先ほどのお魚が置かれた。

 

 

「ユリは魚は捌ける?」

 

「やった事ないわ」

 

「じゃあ見ててね」

 

 

手慣れた手つきで鱗を取り内蔵を取り出すと身二つと骨に分けて皮をひいていた。

 

 

「へぇ、簡単そうね」

 

「やってみると結構難しいよ?まだ片身残ってるから皮ひいてみなよ」

 

 

そんな訳で見様見真似で皮ひきにチャレンジする事に。尻尾の方に少し切れ目を入れて皮をひきながら刃を入れてゆくのだが皮が途中で切れたり上手く行ったと思ったら皮が残っていたりと悪戦苦闘。ユウのやったやつとは雲泥の差だ。

 

 

「むぅ」

 

「皮ひきは難しいからね。でもその中に剣の極意があると思うよ」

 

「極意・・・」

 

 

柔らかな物の間を鋭い包丁を通す。二つを傷付けずに確実に的確に刃を通す。難解な事かもしれないけど刃を通す最適解な道筋がある!

 

 

「見えたわ!料理スキル[柔硬両断!]」

 

 

皮と身を通す刃に迷いは無く一つを二つへと綺麗に切り分けた。

 

 

「ありがと。ユウのおかげであたしは一つ強くなれたわ」

 

「うん、キャラクエのノリやめよ?」

 

「え?」

 

 

そんなこんなで今日の朝ごはんはお刺身とアラ汁と炊きたてのご飯。しかも自分で釣った魚。それが不味いはずがなく心の底から美味しいと思える朝ごはんだった。

 

 

 

「このお魚ユリが釣ったんですね♪」

 

「そうよ。凄いでしょ」

 

「楽しそうで何よりです。ご飯を食べたら3人で遊びませんか?」

 

「3人って?」

 

「僕は早起きしたから寝ます。楽しんできてね」

 

 

ご飯を食べ終えあくび混じりにソファーへと座っていた。そんなユウを置いて3人で砂浜へと来ていた。

 

 

「それで何をするの?」

 

「たまにはホバージェットで遊びたくて、簡単に言うと競争です」

 

 

ティルフィングが指差す先には沖に浮かぶブイが。そこまでの距離は約一キロでブイでUターンして先に砂浜へと戻って来た人の勝ちと。

 

 

「もし私に勝てたら好きな物を買ってあげます。二人は負けても何もなくても良いですよ」

 

「自信満々ね。良いわよ、絶対に勝つから!」

 

「あの、どこからその自信が出てくるのですか?」

 

「自分の実力に自信を持っているのですよ」

 

 

羨ましい、、と呟くアスカロン。その後3人がホバーに乗り準備は万端。

 

 

GO!の合図と共に体重を前にかけ一気に加速してゆくのだがあたしとアスカロンを抜き去りトップを独走するティルフィング。

 

 

「私だって負けませんからね!」

 

 

あたしと並ぶアスカロンが前へと出た。跳ね上がる水飛沫が視界を隠すがスピードを緩める事なく追従してゆく。

 

 

程なくしてブイへと差し掛かった。前方を走る二人はスピードを落とさずフルスピードでUターンを行おうとしていた。一方あたしはスピードを緩め安全に回ろうとしていた。

 

 

「あっ」

 

 

二人がしゃがみながらコーナーを曲がっている。それも直線を進むのと同じぐらいのスピードで。

 

 

体を倒し水平線ギリギリを二人が滑るように曲がり素早く体制を直すとゴール目指して加速していた。その様子を遥か後方であたしが見守っていると大きく両手を上げたのはアスカロンだった。

 

 

「まさか負けてしまうなんて、、分かりました。約束通りに何か買って差し上げます」

 

「良いのですか?じゃあお言葉に甘えちゃおっかな♪」

 

 

そんな会話を聞きながらこの物語の主役であるあたしはこそこそと3人分のホバーを店へと戻しにゆき砂場まで体操座りで煙草に火を付けていた。

 

 

「ユリー行きますよー」

 

「はーーい」

 

 

楽しげにティルフィングの横を歩くアスカロンを後ろから見ながらそのあとをついて行く。

 

 

そんなこんなでたどり着いた場所はホテルの裏手にある商店街のような所。お土産屋だったりビーチの島に住む人の為の日用品が売っているらしく観光客が少ない時期でも人通りは多く賑わいをみせている。

 

 

「ここがビーチの島のメインストリートです。ラグナ大陸ほど品物は無いかもしれませんが」

 

 

そう言うのだが所狭しと店が立ち並び南国風の街を彩る。チラチラと目線を向けると南国に相応しそうな品物が並ぶ。

 

 

「ちょっと欲しい物探してきますね♪」

 

 

店へと向かってゆくアスカロンを見送りティルフィングの横を歩く。

 

 

「ユリも見てきたらどうです?何か欲しい物が見つかるかもしれませんよ」

 

「ん、良いわよあたしは」

 

「競争の事根に持ってますね、母親が娘に何かを買いたがってます。何を買えば良いでしょうか?」

 

「見てくるわ」

 

 

ちょっと拗ねていたあたしは魔法の言葉により機嫌を直しアスカロンを追いかけ店内へと。そうはいっても欲しいものは特にないんだけども。

 

 

「何か良いものはあった?」

 

「えっと、特になんですよね、、」

 

 

店内を見て回るのだが特に目ぼしいものは無く無理矢理何かを選ぶってのは気が引けるし、この店は諦めて他の店を回るのだが結果は同じで欲しいと思える物が見当たらない。

 

 

「「うーーん」」

 

 

雑貨もアクセサリーも服屋も見て回ったのだが無い。欲しいと思える物が無い。それはアスカロンも同じようで困惑の表情を浮かべていた。一応ラグーナ島の名誉のために言っておくが品物は山ほどあるのだ。だけど欲しい物が見当たらなかったと言っておこう。

 

 

最後にアウトドア商品が並ぶお店に入りここで無かったら諦めようとしていた。

 

 

「あっ」

 

 

そこであたしが見つけたのは大きめのサバイバルナイフ。刃渡りは10センチを超えており背にはロープ切りが付いたグリップが素敵なナイフ。ショーケースに展示してあったのだが店員に頼んで触らしてもらった所握り心地も重みもしっかりと手に馴染む。あたしはこれにしよう。

 

 

「あたしは決まったわ。アスカロンは?」

 

「これなんてどうですかね?」

 

 

アスカロンが指差すのは折りたたみ式の椅子と机のセット、レジャーテーブルと呼ばれる物。聞くと天気の良い日にお庭でご飯を食べるのに使うようで。

 

 

「そういうのも良いわね。のんびりとした休みの日にぴったりね」

 

「はい♪帰ったら早速使ってみませんか?」

 

「そうね。明日の朝帰らない?ちょっと急かな?」

 

「私は良いですよ?じゃあ今のうちにラグーナ島を楽しみましょ♪」

 

 

早速ティルフィングを呼んでお会計をしてもらい明日の朝帰る事を伝えると少しだけ寂しそうな顔を見せたがすぐに元の顔へと戻っていた。それから家へと帰りながらなにをして過ごすかを決めてゆく。

 

 

「夕方に家には戻ってきて下さいね」

 

「なにかあるの?」

 

「良いものがあるので。それまで海で遊んでいて下さい」

 

 

ティルフィングに背中を押されて家から出されるとすぐにドアが閉められていた。

 

 

「もぉ!なんなのよ」

 

「きっとサプライズがあるんですよ♪だから海で遊びましょ」

 

 

反論を言いたげなあたしの肩を掴み砂浜を下ってゆく。昨日からアスカロンの姉レベルが上がっている気がするけど気のせいだろうか?

 

 

「それでなにして遊ぶ?」

 

「うーん、なにをしましょう?」

 

 

何度も言うのだがビーチの島はシーズンオフで閑散としており人も少なければ海の家もやっておらず遊具の貸し出しもやっていないのだ。ホバーはあるのだが朝やったからもうする気にはなれず。

 

 

「じゃあのんびりしましょうよ」

 

「そうですねっ♪」

 

 

そんな訳で砂浜に二人で腰を下ろしなにをする訳でも無く肩を寄せ合いながら海を眺めていた。視線が続く限りの水平線を見てこの世界の広さを思い知ったりたまに現れるクラーケンから放たれる炭弾を避けたりとのんびりとした時間を過ごしてゆく。

 

 

「あいつらまだいたのね。ムカつくわ」

 

「まぁまぁ。確かにちょっと嫌ですけど季節を楽しむと思えば良い気がしません?」

 

「あたしはのんびりと過ごしたいのよ。ウワップ」

 

「あらら、、」

 

 

よそ見をした瞬間に炭弾が直撃し瞬く間に全身真っ黒にされてしまっていた。顔を拭き海を見ると沖の方でハイタッチをして喜ぶクラーケンの姿が見え怒りの炎が灯る。

 

 

「ペペペッ!今すぐボコボコにしてやりたいわね、、!」

 

「まぁまぁ。あっちの木陰で休みましょ」

 

 

海水で炭を洗い落としアスカロンと共に木陰にあるビーチチェアに腰掛けのんびりと海を眺めてゆく。ここならクラーケンの炭弾も当たる事なく優雅な時を過ごせそうだ。

 

 

「のんびりって良いわね」

 

「お日様もあったかいし眠くなっちゃいますね」

 

 

太陽の日差しを葉っぱが遮りたまに吹き抜ける風が快適な温度を保つ。それにチェアに寝転がり目を瞑れば安らかな眠りについてしまいそう。

 

 

ウトウトとしていると隣からアスカロンの寝息がすーすーと聞こえる。あたしもこのまま眠ってしまいそう。そのまま眠りにつくかつかないかを彷徨っていると声をかけられその方へと目を向ける。

 

 

「準備ができましたのでお家に戻りましょう」

 

「、、んっ。アスカロン起きて」

 

「んっっ、私寝ちゃってました?」

 

「しっかりと寝てたわよ。いこ」

 

 

3人で家へと戻ってゆくと家の前に何か変なものが置いてあるのが見えた。

 

「これはなに?」

 

「R32GTRスカイラインです」

 

「いや、名前を聞いてるんじゃなくて」

 

「乗ってください。少し狭いですけど」

 

 

前の席に乗り込む二人を見て後ろのドアを開けて車内へと座ろうとすると車内に巡らされた鉄の棒に頭をぶつけた。

 

 

「なによこれ」

 

「ロールバーです。乗ったらシートベルトを閉めて下さいね。それとおしゃべりはあまりしない方が良いです」

 

 

はぁ?っと思っているとエンジンがかかり突き抜けるような音が響き車体がピリピリと揺れる。心を躍らせるサウンドなのだが何か不安で、それはアスカロンも同じようで不安そうな顔をあたしに見せてくれた。

 

 

「ドアの上に手すりがあるから掴んでおいた方が良いよ」

 

 

そう言われて見つけた手すりを掴むと車が動き出した。先ほどよりも大きな排気音とキュラキュラとタイヤが鳴く音をたてながら。

 

 

「おおおぉ!?」

 

 

それからが凄かった。シートに体が押しつけられるような感覚を味わった後内臓が押し上げられるような感覚が襲う。その後体が左右に振られてゆく。

 

 

パーンッ!

 

 

「今なんかパーンっていった!!」

 

「アフターファイヤーの音なので大丈夫です」

 

「なによそれーーー!!」

 

 

そんなこんなでティルフィングの運転によりあたし達はビーチの島とジャングルの島の間にある小高い山の展望台へと来ていた。のは良いのだが荒い運転をされ気分が悪い。

 

 

「どうしました?降りないのですか?」

 

「ちょっと、待ってて下さい、、」

 

 

疲労困憊な3人とは逆に元気なティルフィングが一人先に展望台へと歩んでゆく。しばらくしてから車内より這い出しその後に続く。

 

 

「ねぇ、帰りもティルフィングの運転なの?ユウ運転してよ」

 

「僕は運転できないから諦めてよ」

 

「・・・ってかあれはなんなのよ?前は無かったわよね?」

 

「こないだ地上世界に行った時ティルが見つけて買ったんだよ。その時運転免許をとったんだけど僕には無理でした」

 

「あんたそういう試験に弱いわよね」

 

「そうなんだよ、、」

 

「あっ、見てください!」

 

 

アスカロンに言われて前を見ると太陽が水平線へと落ちてゆくのが見え赤い日差しに島が照らされているのが見える。

 

 

なんて言えば良いんだろう?広大な自然の力強さと人間には勝つ事のできない雄大な自然の強さと美しさに襲われる様な景色を展望台の手すりに持たれて眺めていた。

 

 

やがて太陽は海へと沈み太陽を追いかけるように月が姿を見せ夜空を数え切る事が出来ないほどの星が瞬き夜空を彩る。星の移り変わる様は圧巻の一言。

 

 

「そろそろ帰りましょうか」

 

 

キーを指でクルクルと回すティルフィングの言葉に意識が現実へと戻ってしまった。

 

 

「もっと優しく運転できないの?酔うんだけど」

 

「大丈夫です。ダウンヒルはアップヒルと比べてテクニカルな運転が要されますので」

 

「なに言ってんの」

 

「乗ってください」

 

 

笑顔のティルフィングに車内へと詰め込まれ全員が乗ってからエンジンがかけられた。

 

 

「ちょっと音楽かけますね」

 

 

フロントを操作するとアップテンポな曲が流れ始め車内の緊張感が高まる。せめて無事に帰れる様にとぎゅっと手すりをつかんだ。

 

 

「ティル、安全運転でお願いね、、、?」

 

「はい、必ず無事に家に辿り着きます」

 

 

ティルフィングがクラッチを踏み込みギアを入れた瞬間から地獄が始まった。四人を乗せた車が動き出したのだ。

 

 

回転数、速度計が右へと駆け上がり五月蝿いぐらいの排気音と共に夜の峠道を下ってゆく。

 

 

(右から左へと言葉が流れるー♪)

 

ギャギャリギャリギャリーーーッ!!

 

(退屈そうな顔で画面見つめる君ー♪)

 

キィィィィィィーーーン!シュルルルユッ!

 

(君のこと誰よりも分かってるー♪)

 

パーーンッ!

 

(だからー♪)

 

パーンッ!

 

(私に任せてー♪)

 

キュラララララ!

 

(怖がらないで二人で踊りましょうー♪)[カモーン!]

 

 

「ルカルカ★ナイトフィーバー♪弾けるリズムに合わせてー♪」

 

 

上機嫌で歌いながら運転するのは構わないのだがドリフト走行や急な加速減速を繰り返され気分が悪くなってきた人達の事を考えて貰いたい。そんな事をぼんやりと考えていると峠を走り切り無事に家へと辿り着く事ができていた。

 

 

 

「無事に家に辿り着きましたよ。ってどうしたのですか?」

 

「・・・・はぁ」

 

 

あたし達が車内から出るのは家に着いてから30分後の事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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