あれからあたし達は一晩ラグーナ島で過ごし朝食を食べてからラグナ大陸へと戻って来ていた。休日シリーズを書き始めた頃は暑いほどの気温だったのだがいつの間にか寒くなり気が付けば年を越してしまっていたのだが。
「一応言うわね。あけましておめでと。今年もよろしく頼むわよ」
「あけましておめでとうございます♪今年もよろしくお願いしますね♪」
そんな訳で新年の挨拶をしながら家へと帰り郵便物を回収して自宅へと入って行く。そして二人分のコーヒーを淹れて先ほど回収した郵便物に目を通してゆくのだ。
「なんか多くない?いつも二、三通なのに」
「新年を迎えたので年賀状じゃないですか?ほら、ラグナロクさん達からきてますよ」
「どれどれ?」
[明けましておめでとう。お正月休みだからってダラダラしててはダメだよ]との言葉の背後にはエンシェント達との集合写真が。
「へぇーなんか良いわね年賀状って」
「他にはモニカさんやデュカキスさん。地上世界の皆さんからもきてますよ♪あっ、ユウさん達からもきてます」
「見せて」
アスカロンから手渡された年賀状へと目を通して行く。大体明けましておめでとうと謹賀新年や迎春と書かれている。それと何故か兎の絵が。
「なんで兎の絵なの?」
「うさぎが今年の干支だからです。干支は12つあって子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥があるのですよ♪」
「なるほど。勉強になったわ」
そう言いながら年賀状を見て行くとウサギの耳を付けたアポロンとアルテミスの姿が。ノリノリなアポロンと比べ赤面しているアルテミスがいい味を出している。もちろんキラーメイルの方だ。
さらに目を通して行くと以前に会った奏官達にウィルからも来ている。それとあたしのバイト関係の方と仕事関係の人からも。
「こうしてみると年賀状一枚でも個性がでて楽しいわね。ただ謹賀新年や迎春って書いてるだけの人もいればイラストやら写真を載せてたり」
「これもお正月の楽しみの一つですね♪じゃあそろそろ年賀状を買いに行かないと」
「年賀状を?なんで?」
「届いたなら送り返すのがマナーなんですよ♪」
(うぇ)
ざっと数えた限りでも三十通程ある年賀状を送り返す事を考え嫌になったのだがマナーと言われてはやるしかない。そんな訳で年賀状を買う為に近所の雑貨屋さんへ。
「おじさんあけおめ。年賀状ってある?」
「あけましておめでとう。今年もよろしくね。年賀状ならそこにあるよ」
「ふむ」
一言で年賀状といっても無地のものからなんかおめでたい雰囲気な物や兎が描かれた物まである。それに無地のが一番安い。
「一番安いやつで良くない?」
「値段で選ばずにせっかくなので可愛いのを選びましょうよ」
「可愛いのか」
正直なところ一番安いので良いのだがまぁせっかくだしとちょっと高めのイラストが描かれている物を購入して家へと帰って行く。ちなみに年賀状には宝くじの番号が書かれているらしく番号次第では良い物がもらえるそうで。
そんな感じで机の上に年賀状を置いてあたし達は席へと座っていた。
「それで?年賀状ってどう書けば良いのよ?」
「相手の住所と郵便番号それと名前を表に書いて裏面に何か書きたい事を書くって感じですね。一般的なのは明けましておめでとうや迎春などですけど」
「ん、分かったわ」
とりあえず貰った年賀状を見て相手の住所などを書き込んでゆく。それから裏面に文字を。我が家のリビングにかりかりとボールペンが転がる音とたまにコーヒーを飲む音が響く。最初の一枚や二枚はどって事無いのだが枚数を重ねるたびにペンを持つ手が痛くなり文字が崩れてゆく。
「なんか、あたしは年賀状は貰う専門で良いわ。アスカロンは手痛くならないの?」
「明日もお休みですしのんびり書いていきましょうよ。私は事務仕事で慣れてますので大丈夫ですよ♪」
何でも屋の会計などは全てアスカロンに投げてあるのだ。それでも最初の頃はあたしもしていたのだが細かい数字を扱う事に限界を感じでアスカロンにお願いしてあるって形だ。
「アスカロンも休憩しよ」
「そうですねっ、何かおやつでも食べましょうか?」
「そうね。じゃあコーヒー淹れるわ」
ラグーナ島でお土産に貰った海老煎餅をかじりながらコーヒーを飲む事に。この煎餅を食べるときはコーヒーよりお茶の方がよいかもしれない。
「そうだ、誰かの年賀状にウサギのイラストでも描いてみませんか?やっぱり文字ばかりだと堅苦しくなってしまうので」
「ん、そうね。どんなウサギを描く?」
「チラシの裏に描いて選びましょう♪」
そんな訳でチラシの裏にウサギを描く事に。ウサギ、ウサギっと思い出しながらウサギの絵を描いてゆく。
「できたわ。アスカロンは?」ピラッ
「私もできましたっ」ピラッ
「「・・・・・」」
お互いが描いたウサギを見せ合うのだがお互い絶望的に絵心が無くそこに描かれているのはウサギの様なもの。もといウサギだと認識するのに少し時間がかかってしまうもの。
「やめときましょう。恥を晒すだけだわ」
「そうですね、、頭の中には可愛いウサギが思い描けるのに、、」
「そうだ。アルテミス達みたいにウサギの格好をして印刷するのはどうかしら?」
「それ良いですね♪早速買いに行きましょう!」
そんな訳であたし達は近所の服屋へと行きウサギの衣装を買いに来たのだが。
「「………………」」
ウサギの衣装といえば真っ白な服にうさ耳が付いたパーカーみたいな感覚でいたのだがそのお店に置いてあったウサギの衣装はレオタードにアミタイツにうさ耳のカチューシャのしか無かった。これの何処がウサギなのかと問い詰めたい気持ちを抑えながら他のも探してみる事に。
「「………………」」
そして見つけたのが逆バニーと呼ばれる衣装だ。何が逆なのかと真剣に考えた結果純正バニーは脚が露出して上半身が隠れているが逆バニーは脚を隠し上半身を露出するという事に気が付いた。なんか、こう。無駄知識が一つ増えた喜びよりも何ともいえない気持ちの方が大きくその通り何とも言えなくなっていた。
「えっと、ユリはどっちが良いですか?」
「え?何が?」
「素のバニーか逆バニーです」
「両方とも嫌なんだけど」
「せっかくのウサギ年なのでこれで写真撮りましょうよ♪」
「いや、どうしてそうなった」
その後あたしの抵抗も虚しくアスカロンが二つの衣装を購入しご機嫌なアスカロンと共にお家へと帰る事に。
「ねぇ」
「はいっ、なんでしょう?」
「本当にこの格好で写真撮るつもり?」
そんな訳で帰宅するなり早々とアスカロンに服を脱がされあっという間に素バニーの格好をさせられていた。そんなアスカロンもいつの間にか逆バニーの格好をしているのだが。
「嫌よ嫌!拒否!」
鏡に写るのは網タイツを履いてレオタードを着たあたし。それにぴょこんとカチューシャに付けられたうさ耳が。二人っきりでこの格好をするのなら構わないのだが流石に誰かにこの姿を見せるのは嫌だ。反論を叫びアスカロンをみるとジロリとした視線が。
「そういえば昔ユリのせいで下着姿を知らない男の人達に見せましたよね?」
「・・・そんな事あったかしら?」
「48ページの事なんですけど。覚えていませんか?私すっごく恥ずかしかったんですよ」
「分かったわわよ、、、」
過去の行いは自分へと帰ってくる。因果応報という言葉を身をもって体験した瞬間だった。
二人で映る姿鏡には正反対のバニーの格好をした二人が。その姿をご機嫌なアスカロンが写真に収めてゆく。それをプリンターへとデータを移しこの姿の年賀状が出てきたのだ。
「初めてプリンターを使うので上手くできているか不安でしたけど大丈夫みたいですね♪」
「・・・」
その年賀状の宛名をみるとあたしの両親となっていた。他の人ならまだ百歩譲って許せるかもしれないがこんな姿を両親に見られたくは無い。
「ちょっとry「早速ポストに投函してきますね♪」
いつの間にか普段着へと着替えたアスカロンが書いた年賀状をまとめて家から出て行った。慌てて後を追おうとしたのだがこの格好で外を出歩く事ができずただ見送る事しかできずにいた。
あの年賀状が両親へと届く事を考えた瞬間から耐え切れないほどの羞恥が押し寄せ顔が熱くなりバンバンと机を叩く。そうだ。こんな事をしている場合じゃない。アスカロンを止めなければ。
服を着替えるの時間が惜しくこの上からパーカーを羽織り外へと飛び出してゆく。
(-------終わった)
教会近くまで走って行ったあたしが目にしたのはポストに投函し帰ろうとするアスカロンの姿だった。振り返ったその顔は満面の笑みを浮かべとても楽しそう。その姿を見てあたしは膝から崩れ落ちていた。
後少ししたらあの年賀状が両親の元へと届き目を通すだろう。そうすればきっと笑い者になるかあたしの服装に困惑を浮かべるだろう。もう両親に合わせる顔がない。絶望に打ちひしがれながら地面に座り煙草に火を灯してゆく。
(はぁ、、)
この感情をどうしてやろうか?アスカロンに浮かぶ沸々としたやり返す心をどうしようか考えていた。そんな時立ち並ぶお店の奥にあるいかがわしいお店を見つけた。
見るからに怪しい雰囲気のお店だが好奇心が湧いたあたしはその店の前へと行き店構えを見ていた。
『大人のおもちゃ、精力剤』と書かれた看板は怪しい雰囲気ではなく怪しいと断言させてくれた。でもそんな店内へと足を踏み入れて行く。
(へぇ)
店内に入りまず目に飛び込んできたのは本棚に所狭しと並べられた本。それもただの本ではなく表紙が男女や女の人、男と男だったり女と女だったり。もちろん裸か裸に近い服装で。
本のコーナーを一回りしてから店内のさらに奥へと進んで行く。
(・・・)
さらに奥で目にしたのはアダルトグッツだった。世間で言うジョーク商品。それらはリモコンとコードで繋がれた卵形の物だったりイボイボが付いた棒状の物だったりと。一見では何に使うのか検討も付かない。それでもそれらの商品から目が離さず見入ってしまう。
その奥にショーケースに展示された棒状の物を見つけ見てみると動作が確認できるようで何となく手前に設けられたスイッチを押してみる事に。
(ウィィィンウィィィンウィィィン)
(・・・・)
スイッチを押すとそれは動いた。棒状の先端がウネウネと動きピストン運動と連動しており手前にある突起がピロピロと動いている。一体これは何なのか。そしてモーター音をあげながら動くコレから目が離さなくなっている自分は何なのかと。
(あっ)
そしてあたしは一瞬考えてしまった。もしコレをあたしのあそこに入れる物だとしたら、コレを入れてしまったらどんな快感が訪れるのかと。一度思い付いてしまった妄想は止む事を知らずにどんどんと膨らんでゆき最後には下半身に感じる湿り気で我へと返った。
(そうね)
流石にあんな物を中に入れる勇気は無いしそんな商品も無いだろうと考えをまとめ店の一番奥へと進んでゆく。そこにはおもちゃこそないが薬のような物が置いてある。その薬を見る限り男性が服用する物みたいだ。
オットピンや凄立ちやら漲る力など様々な商品を見て行くと女性用と書かれたコーナーが。その中の一つを手に取りパッケージを読んでゆく。
『料理や飲み物に一滴垂らせば熱を帯びニ滴垂らせば服を脱ぎ三滴垂らせば獣へと』そう書かれたパッケージに興味を持っていた。そうだ、これをアスカロンに飲ませてやろう。
そう決めてそれを持ちレジへと向かう。
「あーりゃとーござしたー」
やる気の無い店員の声を聞きながら帰り道を急ぐ。その途中に勢いで買ってしまったけどこんな得体の知れない物をアスカロンに飲ませて良いのかと疑問が湧き立ち止まった。あたし自身過去に食べ物や飲み物に毒を混ぜられた事がありあたしがやろうとしている事はそれと同じだ。そんな下衆な事をアスカロンにするわけにはいかない。
ちょっと高かったけどこれは捨てよう。そう思い道にあるゴミ箱に向かったのだがまたあたしは足を止めた。
「まぁそうね、せっかくだし」
せっかく買ったんだし高かったし(税込九千ゼニー)アスカロンに飲ませる前に自分で飲んでみようと箱から中身を取り出していた。
中から出てきたのは茶色い瓶。その蓋を開けると瓶の口が小さくなっており小出ししやすくなっている。それの一滴を指に取りまずは匂いを嗅ぐ。
うん、匂いはしない。次は指を舐め口の中へ。
うん、味も無しだ。そのまま唾液と混ぜてゴクリと飲み込み腕時計を見ながら効き目が出てくるまでの時間を測る事に。
(・・・やっばっ)
時計の秒針が半分も回らないぐらいで体が芯から火照り始め頭の中をピンクな妄想が駆け巡り始めとんでもなくエッチな気分となっていた。それでもこんな公衆の場でと自分に言い聞かせ気合いと根性で家の近くまで帰ってきていた。
ヤバい、何がヤバいのか分からないほどにヤバい。今すぐにでもエッチがしたい。体の火照りをどうにかして欲しい。今もし誰かに触られたらそれだけで卑猥な声をあげてしまいそう。
そうだ、こんな時は身体を冷やそう。そう思い家の裏庭へと周り人目に付かない事を確認してからパーカーを脱ぎ花壇のブロックへと腰を下ろした。
(はぁ、、)
日中はまだ気温があるのだが今は日が落ち気温も下がっておりパーカーを脱ぐと一気に体温が奪われる。そして下着越しに座るブロックが冷たくて気持ち良い。その場で深呼吸を繰り返し煙草に火を灯しやっと理性を元に戻す事に成功した。
とりあえず一言で言うのならこの薬はヤヴァイ。腕時計を見る限り効き目があるのは三十分程度だがその間に過ちを犯してしまう可能性は十分にある。それでも効き目さえ切れてしまえば理性を取り戻せるし毒では無い事はあたしが生きている事で証明できた。最後に煙草を一口吸って立ち上がり家へと帰ってゆく。その時あたしが座っていたブロックに大きな滲みができているのを見つけて苦笑い。
「お帰りなさい。何処に行っていたのですか?」
「ちょっとね。良い匂いね、今夜はカレー?」
「はいっ明日の分も作ろうと思ってカレーにしてみました♪」
「ん、ありがとね」
何も知らないアスカロンを見ながら夕ご飯のカレーを食べてお風呂に入り二階にある寝室へ。この薬は明日にしよう。そう思いながらアスカロンの腕を枕にして寄り添ってゆく。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
明日の事を考えながらニヤニヤしていたのだがいつの間にか眠りへと落ちて行く。