「ただいまー」
「お帰りなさい。ってユリ!泥だらけじゃないですか!」
「そうなのよ。だから先にお風呂入ってくるわ」
「もぉ、、その後でご飯ですからね」
「はーい」
アスカロンに返事をしながら浴室へ。泥だらけになってしまっている作業着を着たままお風呂へと入りシャワーを浴びていた。
このSSの最終更新が三年前だったから軽く説明をすると今作のヒロインであるあたし、ユリは前作の『黒ティルと僕と』の主人公ユウとグリードの一人娘。人とキル姫の間にできた子なのでキラーズとバイブスを持つ半姫半人の女の子だ。
相棒はアスカロンD'pulgレヴィアタン。
共にラグナ大陸の首都、サフランで何でも屋を営んでいるのだが以前あたしが地上世界のビルを燃やし、その時の賠償金を払うために日々バイトに明け暮れている。まぁ、こんな感じかな?
「ふぅ、さっぱりした」
なんて説明をしている間に泥だらけの服をゆすぎ身体を洗いお風呂を出る事に。
脱衣場で身体を拭いているとなんだかいい匂いを感じ、脱衣場のドアを開けるといい匂いが鼻いっぱいに広がる。
「ご飯できてますよ」
「うん、ありがとね」
リビングへと行くとテーブルの上にはご飯が並べられている。大皿には拳一つ分はあろう大きさの唐揚げが山のように積み上げられその下には千切りのキャベツが。
その横の小皿にはマヨネーズ、塩胡椒、レモンとソースが入っている。それを見て缶ビールを二つ冷蔵庫から取り出しテーブルへと。
「「いただきます」」
テーブルを挟み挨拶をして唐揚げを一つ箸で掴み口へと運んでゆく。一口かじると衣がかりかりと砕けジューシーな肉を噛む。噛んだ瞬間に醤油ベースのタレの味がしてその後に生姜とニンニクの味がする。それを冷えたビールで喉へと流し込んでゆく。
「ん!美味しいわね」
「そう言ってもらえて良かったです♪味は染みてますか?」
「しっかり染みてるわ。調味料付けなくても美味しい」
かじった唐揚げを見ると衣は薄く身がしっかりとしていて肉汁が垂れているのが見えた。
「けっこう手間かかったんじゃない?」
「そんな事ありませんよ?お肉を袋に入れてタレと一緒に凍らせるだけですからね」
「へぇー凍らせると美味しくなるのね」
「凍らせると味が染みるんですよ♪なので絶対零度で凍らせてみました♪」
「お肉も絶対零度で凍らされるとは思ってもなかったでしょうね」
どことなく不憫な調理方法を聞いたが食欲は落ちる事なく食べかけの唐揚げを食べ次の唐揚げへと箸を伸ばす。
「それで、今日はどんなお仕事をしてたのですか?」
「今日は屋根に登って瓦を取ってたわ」
「屋根ですか?なのにあんなに泥だらけになるんですね?」
「昔の屋根は瓦の下に安定材として泥を使ってたんだって。なんか瓦を新しくするから今ある瓦と泥を取り除く作業の手伝いね」
「へぇーなんだか面白いですね♪」
「けっこうしんどいのよ。瓦一枚は軽いんだけどそれを何百枚と運ぶから徐々に疲れてくるみたいな。その後に泥を袋に入れる作業なんて地獄だったわ」
「あはは、、今暑いですし大変ですね、、」
「だけど風が吹くと気持ち良いのよね。それに高い所だから景色も良いし。地獄には変わりないけど。そっちはどうだったの?」
「私の方は普段と変わりありませんでした。近所のおじさんが来て長話をして帰って行ったぐらいです」
「そういう変な客は追い返しても良いわよ」
「それはダメですよ!もしかしたらお仕事をくれるかもしれませんし」
なんて話をしながらご飯を食べ山盛りにあった唐揚げはあたし達のお腹に収まっていた。
「はぁーお腹いっぱい。このまま寝たら確実に太りそうね」
「それなら大丈夫ですよ♪ユリはゼロカロリー理論を知っていますか?」
「ゼロカロリー理論?なによそれ」
聞いた事がない理論を聞かされ少し興味が湧いたあたしはアスカロンの話を聞く事に。
「ゼロカロリー理論は私もテレビで見て知ったのですけど」
そう前置きを置いてから話していた。
「ゼロカロリー理論はあらゆる食べ物に通用する理論なんですよ。例えば、今日の唐揚げは絶対零度で一度凍らせているのでカロリーは凍り付いて無くなっているのでゼロカロリーなんですよ♪」
「へぇーなんだかすごい理論ね」
「今まで私は大きくなるのが怖くてご飯は少なめにしていたのですがこの理論を聞いたら我慢せず食べても良いんだって♪」
なんだかそう言われてしまうとあれだけご飯を食べたのに小腹が空いたような気がする。
ちなみにアスカロンが言う大きくなるは太るの意味ではなくアスカロンの神話に由来する。サイクロプスの呪いにより持ち主は怪物になるとかそんな感じだったはず。
「そうだ、デザートもありますけど食べますか?」
「そうね。いただくわ」
食器を流し台へと持ってゆくとアスカロンは冷蔵庫のドアを開き茶碗を二つとスプーンを二つテーブルへと持ってきた。
「これはなに?」
「茶碗プリンです♪」
「おぉーなんか良いわね」
テーブルの上に置かれたのはご飯茶碗に作られたプリン。普段のプリンの三倍は大きいだろう。
「少し食べたらカラメルソースをかけて食べて下さいね♪」
「味変ってやつね。いただきます」
スプーンで一口すくって口へと運ぶとなめらかな舌触りにまったりとしたミルク感、程良い甘さが口いっぱいに広がる。
「うーん、口いっぱいに美味しさが広がっていくわ・・・」
「私が作ったんですよ♪じゃあ味変のカラメルソースかけちゃいますね♪」
見ているうちに食べかけのプリンにカラメルソースがかけられてゆく。薄黄色のプリンに濃い茶色のソースがかかり見慣れた姿へ。
スプーンにプリンとソースを半々にすくい口へと。
「ん〜〜っ良いわね。甘さと苦味の調和っていうのか。くどくない甘さに変わったっていうのか」
「美味しいですよね♪私はちょっと苦めのカラメルソースが好きなので苦いかもしれませんけど」
「いや、良い感じよ。なんていうんだろ、甘いお菓子に苦いコーヒーが合うみたいに」
「そんな感じですよね♪このプリンは作る時によく混ぜているんですよ」
「うんうん?」
「そうする事によってカロリーが空気と混ざり合い食感が良くなってゼロカロリーになるんですよ♪」
「へぇー」
そんな理論を聞きながらプリンを完食し食後の煙草タイムへ。箱とライターを持ち玄関から出ると火を付け煙を吐き出す。
昼間は汗が止まらない程暑いが夜は風が吹くと程よい気温。
最後に一吸いして煙草を灰皿へと捨てキッチンへと行き洗い物をする事に。
その次の日の朝に目を覚ますと作業着へと着替えあたしはバイトへと出掛けてゆく。
「ただいま、、、」
「お帰りなさい。なんだかすごく疲れた顔をしていますけど大丈夫ですか?」
「今日はかなり応えたわね・・お風呂行ってくる」
疲れた身体を引きずりながらお風呂へと行きシャワーを浴びる。身体をシャワーが流れてゆくが疲れは流れていかずとどまったまま。
「マジで死ぬかと思ったわ」
「今日は何をしていたんですか?」
「一日中地面掘ってたわ。なんか埋まっている配管が割れたとかで」
「うわぁ、、大変でしたね・・」
「最初は何人かで掘るって話だったんだけど人が集まらなかったみたいで。朝にスコップとつるはし渡された時は絶望したわ」
「あはは、、ちなみにどれぐらい掘ったんですか?」
「深さ1メートルで幅60センチの穴を一キロぐらい。人をキル姫だと思って無茶言ってくれるわ、ほんとに」
「そんなユリのために美味しいご飯作ってありますからね。少し待ってて下さい」
「ありがとね」
椅子に座って待っているとラーメン屋で出てきそうな器を持ってきてくれてそこには豚骨のラーメンが。トッピングに厚切りのチャーシューと半分に切られたゆで卵、メンマの姿が。
「美味しそうだわ」
「チャーハンもありますからね♪」
その後に平皿に盛られたチャーハンが届けられ手を合わせてラーメンから一口。
「ん!美味しいわ!」
「朝から豚骨を煮てスープから作ったのですよ♪流石に麺は市販品ですけど」
「朝からって豚骨ラーメンってそんなに手間がかかるのね」
「下茹でして臭み抜きをしたり時間はかかりますけど手間をかけた方が美味しくなりますからね♪」
「なるほどね。あぁ、、疲れた身体にスープが染みるわ…」
「チャーハンもこのスープから取った油で作ったので合うはずですよ」
そう言われてチャーハンを一口。その瞬間に濃厚な豚骨味が口いっぱいに広がってゆく。
「チャーハンも美味しいわ。豚骨の油ってどうやって取るのよ?」
「スープを冷やすと表面に油が浮いてくるんですよ。それを使いました」
「へぇーだからラーメンと合うのね」
「しかも、朝からずっと煮詰めているのでカロリーは熱で分解されてゼロカロリーなんですよ♪」
「なるほどね」
なんてゼロカロリー理論を聞きながらご飯を食べ終えるとアスカロンがチャーシューを皿に切って出してくれた。それをつまみに缶ビールを飲む。
「なんだかラーメン屋に居る気分になるわね」
「あはは、確かにそうですね。チャーシューもしっかり煮込んで味を付けてあるのでゼロカロリーなんですよ♪」
ほろほろに煮込まれ箸で持っただけでとろけてしまいそうなチャーシューですらゼロカロリー。ゼロカロリー理論恐るべし。
「ぷはぁっ。もう一缶のもっと。アスカロンは?」
「私も頂きますね」
チャーシューをつまみながらビールを飲む。そんなささやかな夕飯の時間を過ごしてゆく。
「じゃあ私はお風呂入ってくるので後片付けよろしくお願いしますね」
「りょうかーい」
ご飯を食べ終え食後の煙草を吸った後に流し台に置かれている食感を洗ってゆく。のは良いのだが、器に油がこびりつき洗剤を大量にかけないと油が落ちない。
油といえばカロリーの元なのだが本当にゼロカロリーなのだろうかと疑問が浮かんだがダイエットをしようとは思ってないから疑問はいつの間にか消えていた。
そんな次の日、鉛のように重たい身体を引きずりながら家へと帰ってきた。
「ただいま・・」
「お帰りなさい。だ、大丈夫ですか、、?」
「あんまり大丈夫じゃない…」
「女の子の身体からしてはいけない臭いがしてますよ…早くお風呂入ってきて下さいね」
「・・そうね」
そんなわけでお風呂へと行きシャワーを浴びる事に。
「あぁ、さっぱりした、、」
「お疲れ様でした。今日の晩御飯は最近こってり系のご飯続きだったのであっさりと蕎麦にしてみましたよ」
「ありがと・・」
椅子に座ると皿が置かれその上に大きなザルが置かれた。その中には蕎麦が山のように入っている。
その後、つゆの入ったお椀と薬味が少々置かれアスカロンも席へと着いた。
「「いただきます」」
「良いわね蕎麦。なんか自然と口の中にはいってく感じがして」
「食べやすくて良いですよね。氷水でしっかりと締めたのでコシがあって美味しいですね♪」
ずるずる、ずるずるっと蕎麦をすする音が部屋に響いていた。
「それで、今日はどんなお仕事をしてたのですか?」
「古い家屋の解体をしてたわ。崩すまでは順調に行ってたんだけどその後に運びやすい大きさに木材を切るって話になってノコギリでひたすら切ってたわ」
「うわぁ、、剣で切れば良かったじゃないですか」
「あたしの剣はキラーズに対応してないから幻出させれないし。それにそんな事したら全部あたしがやる事になるじゃない」
「それもそうですね…」
「手の中は豆だらけになるし大変だったわ。やっぱり慣れてる人は凄いわ。要領がいいっていうのか」
「職人さんは凄いですよね」
「でも若手や継ぎ手が居ないって嘆いてたわ。若い子は建設系の仕事にこないって」
「建設のお仕事ってあんまりいいイメージありませんよね、、辛いやしんどいって」
「そうだけど頑張れば稼げるしいいと思うのだけどね」
そんな事を話しながら蕎麦をずるずるっと。
「そういえばあたしの記憶にある蕎麦ってもう少し色が薄い気がするんだけど?」
「よく気が付きましたね。この蕎麦は十割蕎麦って蕎麦なんですよ」
「十割蕎麦?」
「蕎麦粉だけで作った蕎麦の事ですよ。ユリが言っている蕎麦は二八蕎麦の事だと思います」
「なるほど?その二八蕎麦はなんなのよ?」
「蕎麦粉8割小麦粉2割という意味です」
「へぇーなんかいろいろあるのね」
「ちなみに、十割蕎麦は100%蕎麦で作られているのでカロリーが入る余地が無いのでゼロカロリーなんですよ♪」
「あー確かに。十割蕎麦だしね」
なんてゼロカロリー理論を聞きながら蕎麦を食べ終わり片付けようとするとアスカロンに止められていた。
「最後に蕎麦湯を飲みましょう」
との事。蕎麦を茹でた鍋のお湯をつゆのお椀に入れて飲む。
「ん、なんか美味しいわね。つゆがいい感じに薄まって飲みやすいし」
「お湯に溶けた栄養も取れますしなにより美味しいですよね♪」
「疲れた身体に優しい味が染みるわ…」
「あははっ…なら今日は私が洗い物しておきますよ?」
「それはダメよ。ただでさえアスカロンにはこの店の事お願いしてるし。洗い物はあたしがやるわ」
「もぉ、、分かりました。ではお風呂に行ってきますね」
洗い物を流し台へと運びお風呂へと行ったアスカロンを見届けた後に煙草を吸いに外へと行き煙草を吸い終えてから洗い物をする事に。
そんな次の日、あたしは仕事を終えて家へと帰ってきていた。
「お帰りなさい」
「・・・」
「ユリ?」
「えっ?あ、ごめん。ただいま」
「どうしたのですか?ぼーっとしちゃって。熱中症ですか?」
「今日仕事でさ。お風呂出たら話すわね」
「もぉ、無理はしないって約束したじゃないですか…」
そんな言葉を聞きながら浴室へと行きシャワーを浴びてゆく。
「ふぅ、さっぱりした。聞いてよアスカロン」
「はい、それで今日は何のお仕事をしてきたのですか?」
「コンクリートを打つ為の準備をしていたわ」
「コンクリート?」
「そう、ほら、家の基礎だったり土間だったりさ。コンクリートを打つ前に強度を上げるために鉄筋を入れるんだけど」
「はいはい?」
「今日はその鉄筋を組んでたのよ。この炎天下の中鉄筋と鉄筋が交わる部分をハッカーって道具で鉄線で止めていくのよ」
「止める場所は何ヶ所ぐらいあるんですか?」
「千までは数えてたけど途中で数えるのをやめたわ」
「うわぁ、、大変でしたね…」
「何人かで作業してたんだけど誰も何も喋らずに現場にハッカーが回る音だけが響いてるのよ。身体は楽だったけど精神がやられるかと思ったわ」
「単純作業って何かをしながらの方が楽って言いますからね」
「単純作業はあたしには向いてないわね。こんなんなら穴掘ってた方がマシよ」
椅子に座りながらグチを溢しているとアスカロンがバケットに入ったパンを持ってきてくれた。
「今日焼いたパンですよ」
「おっ、ありがと」
バケットからはみ出ている長細いパン。きっとこれはフランスパンというものだろう。
「アスカロンってパン焼けるんだ?」
「焼けますよ?でも初めて焼いたので美味しいのかは分かりませんが」
「なるほどね」
とりあえずパンを手に取りそのまま口へと運び口に入れると香ばしい匂いと共に小麦粉の風味がふんわりと香る。
「美味しいわ。あっさりして食べやすいし」
「フランスパンはバターを使わないのであっさりしているのですよ♪なので味がシンプルですけど」
「確かにそうね」
「なのでこれもありますよ♪」
そう言ってキッチンから持ってきたのは小さな鍋。テーブルに置いた時に中を覗き込むとシチューが中に入っているのが見えた。
「シチューに付けて食べるのね?」
「これはシチューではなくチーズなんですよ。チーズフォンデュって聞いた事ありませんか?」
「えっと、なんかあるようなないような?」
「この鍋の中にはチーズのソースがあってこのソースを色んな食材に付けて食べるのですよ」
「なるほどね。なら早速やってみるわ」
フランスパンをちぎりチーズを少し付けてから口へと運ぶ。するとチーズの濃厚な旨味と共に小麦の香りがする。
「美味しいわ。なんかおしゃれな食べ方だし良いわね」
「美味しいですよね♪チーズと白ワインで作ったソースなんですよ♪」
「へぇー材料までおしゃれね」
「本来ならチーズはカロリーが高いんですけど白ワインを入れて煮込んでいるのでワインのアルコールと共にカロリーも蒸発してしまいゼロカロリーになるんですよ」
「ふむふむ」
「それにパンは生地を一度醗酵させるのですよ。その時酵母が小麦のカロリーを使って醗酵するのでゼロカロリーになります。もしカロリーが残っていてもオーブンで焼くので残ったカロリーは燃えてしまいゼロカロリーになるんですよ♪」
「カロリーって栄養だしなんか説得力あるわね」
そんな話をしながらバケットにあったパンはなくなりソースもなくなり手を合わせる事に。
「美味しかったわ。後やっとくわよ」
「ではお願いしますね」
食後の煙草を吸った後に食器を洗う事に。
そんな次の日、疲れ果てふらふらとしながら家へと帰ってきた。
「ただいま…」
「おかえりなさい。今日は一段と疲れてますね・・」
「ほんとに疲れたわ…お風呂行ってくるね」
「はいっ。その間にご飯準備しておきますからね」
「ありがと」
そう言ってお風呂へと行きシャワーを浴び身体を洗いリビングへと。
「ふぅ、シャワーを浴びると疲れが取れる気がするわ」
「早くご飯食べて寝ましょうね」
テーブルの上にはカレーライスがありルーの上にはカツが乗っかっている。
「良いわね。カツカレー?」
「そうですよ。あと、トッピングにチーズもありますからね」
そう言って冷蔵庫から出してくれたお皿にはフレーク状のチーズが。
「「いただきます」」
スプーンでカツを押しパリパリと衣を砕きながら身を一口に切りカレーと共に口へと運ぶ。
「あっつ。でも美味しいわ」
「熱い時のカレーって美味しいですよね♪お野菜もたくさん入っているので美味しいはずです」
「ほんとだ。夏野菜のカレーね」
「しかもお野菜の水分で作った無水カレーなんですよ♪」
「へぇー。カレーって水無しで作れるんだ」
「このカレーの水分は全部お野菜から出た水分なんですよ。水を入れていないので味が濃厚になるみたいです」
「料理も面白いわね。ん、おいし」
「それで、今日はなんのお仕事をしていたのですか?」
「今日は荷揚げ屋のバイトに行ってきたわ」
「荷揚げ屋ですか?」
「そう。家を建てるのに使うボートって材料があるんだけどそれの搬入をしてたのよ」
「ボート?」
「えっと、石膏でできた板ね。それを三百枚上げてきたわ」
「うわぁ、、ちなみに重さってどれぐらいなんですか?」
「一枚14キロって聞いたわ。それを二枚持って家の中に運ぶのよ」
「それだとなんだか楽そうに思えますね」
「地獄だったわよ。一階と二階に運んだんだけど階段を上がらないと行けない分二階に運ぶのが辛かったわ」
「そうですよね…」
「けっこう脆いからどこかに当てるとすぐ割れちゃうし持ちずらいしで大変だったわ」
「うわぁ、、」
「こうやって建築の仕事に携わると家を建てる苦労が分かるわ。そりゃ値段も高いわよ」
「やっぱりやってみないと分からない事ってありますからね」
「いい勉強よ。それで、このカレーはどういう理論でゼロカロリーなの?」
「はいっ♪このカレーは無水で作ってあるってさっき言いましたよね?」
「無水カレーって言ってたわね」
「無水カレーはしっかり煮込んで作るのでカロリーは熱で分解されゼロカロリーなんですよ。もちろんカツも170度の油で揚げてあるのでカロリーは分解されゼロカロリーなんです!」
「なるほどね。ならチーズはどうなのよ?」
「チーズは製造する時に牛乳とレモン汁と煮込んでつくるのですよ」
「うんうん?」
「その時にチーズの元と水分が分離するのですがカロリーは水分の方に行くのでチーズはゼロカロリーなんですよ♪」
「なるほどね」
それを聞いた後にチーズを一掴みしてカレーにかけて食べる事に。カレーの熱でチーズがとろけ口へと運ぶとまろやかな美味しさが口いっぱいに広がってゆく。
「良いわねチーズカツカレー。美味しいわ」
「まだ沢山あるのでおかわりも良いですからねっ」
「ならもう少しだけ食べよっかな」
立ち上がりコンロの方へと行きおかわりのカレーとご飯をついでいた。
次の日、あたしは疲れた身体を引きずり家へと帰ってきていた。
「た、ただいま…」
「お帰りなさい。って大丈夫ですか…?」
「あんまり大丈夫じゃないかも、、」
靴を脱ぐために玄関に座ったのだが立ち上がるのに少しの時間をかけ、ようやく立ち上がるとお風呂場へと向かってゆく。
やっとの思いで辿り着いた浴室でシャワーを浴びるがもう何もかもがめんどくさくシャワーだけで済ませようと悪魔が囁くが石鹸で身体を洗いリビングへと。
「マジで疲れた…」
「お疲れ様でした。今日は何をしていたのですか?」
「こないだコンクリート打ちの準備したって言ってたじゃん?」
「言ってましたね」
「今日その現場行ったんだけどコンクリートを練るって言われてくわみたいなのを持たされたのよ」
「はいはい?」
「それから1日中コンクリート練ってたわ。砂とセメントと砕石を船に入れてから練りしてそれから水を注いで練るのよ」
「なんだかお菓子作りみたいですね」
「そう思ってると地獄みるわよ。砕石があるから練りずらいし練っていくとコンクリートが粘ってくわにひっつくのよ。水を入れすぎると強度が下がるとか言われてやり直しになるし水が少ないと硬くて練れないしで最悪だったわ」
「うわぁ、、」
「あたしは仕事もらってる立場だからあんまり言いたくないけどマジでもう行きたくない」
「あはは、、お疲れ様でした。そんなユリのために美味しいご飯を用意してありますからね」
そう言ってアスカロンが持ってきたのは薄い箱。それが三枚ほどありテーブルに置くと箱を開けていた。
「あ、ピザね」
「そうなんです♪今日は久しぶりにお仕事に行ってきたので手を抜いてしまいましたけど」
「ぜんぜん良いわ。いつもご飯作ってくれてるし」
「そう言ってもらえて嬉しいです♪では冷める前にいただきましょうね」
「「いただきます」」
カットされているピザを口へと運ぶとしっとりとした生地を感じその後にチーズとトマトの味が口いっぱいに広がり熱いチーズが離した生地に向かい伸びてゆく。
「久しぶりにピザ食べるけどやっぱり美味しいわね」
「美味しいですよね♪そして、ピザといえばやっぱり飲み物はコーラですよね♪」
そんなわけで出てきたのはMサイズのコーラ。しょっぱいピザに甘いコーラがあうあう。
「良いわね、ほんとに。あぁ、、身体が満たされていくわ…」
「あはは、、」
「それで今日は何してたのよ?」
「前言ってたおじさんが来て草むしりをしてくれないかってお仕事をくれたので行ったら大きなお庭の草むしりで」
「この時期の草むしりって嫌なのよね。草むらは蒸し暑いし変な虫は出てくるし」
「なので全部剣で刈り取って仕上げに地面を凍らせて根っこも枯らしておきました♪久しぶりに魔力を使ったので疲れちゃって」
「こういう時属性持ちは良いわよね」
ちなみにあたしは闇属性らしい。正直なところ闇属性の闇が日常生活で役にたつ事はないしむしろ闇属性の力を実感した事は一度もない。そしてこのあたしが闇属性という設定が活かされる事はないだろう。
「良いわねアスカロンは実用的な属性で」
「あははっでも闇属性ってなんだかカッコいいじゃないですか」
「あたしの中に宿る漆黒の闇が踊り高ぶるわ」
なんて左目を抑えながら厨二病ちっくな事を言ったのだがアスカロンは反応する事なくピザを食べていた。
「それで、明日は何する?」
「明日は…あっ、明日はお休みの日なんですね」
「そうなのよ。やっとあたしの1週間が終わったわ」
「なら明日はゆっくりしましょうね」
「そうね。そういえばこのピザはアスカロンが作ったものじゃないからカロリーがあるんじゃない?」
空になったピザのパッケージの裏を見ると栄養素が書かれた欄が見える。そこには千を超えるカロリーがあると書かれているのだが。
「それなら大丈夫ですよ♪私はピザは頼みましたけどカロリーは頼んでいません。なのでカロリーはお店に置き去りにされているのでこのピザはゼロカロリーなんですよ♪」
「へぇーカロリーって置き去りにできるのね」
「ゼロカロリー理論を使えば理論上は可能なんですよ」
「まっ、美味しいからなんでもいいけどね」
そんな話をしながらもピザを食べていたのだけど結構量が多く一箱残ってしまった。それは明日の朝ごはんにしようという事になりアスカロンはお風呂へと向かって行った。
その間にあたしは煙草を持ち玄関前へと行き煙草に火を付けていた。
「んん〜っ、あー疲れた」
咥え煙草で軽くストレッチをすると腕と腰の筋肉が痛むが一晩ゆっくり寝れば治るだろうと吸い終わった煙草を灰皿へと投げ入れ家へと戻ってゆく。
そんな次の日の朝にあたしはカーテン越しに差し込む日差しで目を覚ましそのまま身体を起こしていた。
隣を見るとアスカロンはまだ寝ていて、その場で大きく身体を伸ばした後あたしはベッドから降り一階へと行きあくびをしながらやかんに水を注ぎコンロへと置いた。
コンロに火を付けお湯を沸かしている間にコーヒー豆をミルへと放り込みハンドルを回し豆を挽いてゆき出来上がった粉をカップの上に置いたフィルターに入れお湯を注ぎ込む。
「良い香り」
お湯の蒸気と共に立ち込めるコーヒーの香りを嗅ぎながらカップを持ち家の外へと出ると煙草に火を付けコーヒーを飲みながら目覚めの一服。
今日は何をしようかと考えるのだが何も思い浮かばず吸い終わった煙草を灰皿へと放り込み残りのコーヒーを飲み家へと戻ってゆく。
「アスカロン?」
リビングに行くとまだアスカロンは起きておらずやる事もないので寝室へと行きもう一眠りする事に。
「起きてくださいユリ」
「ん、、おはよ」
「おはようございます♪起きて朝ごはん食べませんか?」
「そうね…」
二度寝から目を覚ましたがまだ眠気は残る。それでもベッドから降りて一階のリビングへと。
「今ピザを温めますからね」
「ありがと」
眠た眠たしながら時計を見ると時刻は午前九時を回ったところ。椅子に座りながら大きなあくびをしていると湯気を立てるピザが目の前に。
「「いただきます」」
「朝からピザってなんか良いわね」
「この伸びるチーズにすごく背徳感がありますけどカロリーはお店に置いてあるので大丈夫ですよ♪」
「いや、背徳感なんてないわよ」
そんな事を話しながら昨晩の残りのピザはしっかりとあたし達のお腹に収まった。
「それで今日何する?」
「そうですね、、あっ、お買い物には行きたいです」
「じゃ、買い物に行くわよ」
「でも今はちょっとお腹が苦しくて動きたくないのでもう少し後にしませんか?」
そんなわけでコーヒーを2杯淹れてしばらくのんびりしてお昼をちょっと過ぎた頃に街へと買い物に出掛けていた。
「それで、何買うの?」
「食料品と日用品を少し。ユリは何か欲しいものありますか?」
「あたしは…特にないけど工具はちょっとみたいわね」
「では先に見に行きましょうか」
そんなわけで街にある工具屋へと行き店内をうろうろと。
「工具って沢山種類があるのですね」
「そうよ。用途に合わせた工具だから種類が沢山あるのよね」
「そういえばユリは自分の道具を持っているのですか?」
「持ってないわ。使う物は全部借りてるし」
「自分のを揃えれば良いじゃないですか」
「でも結構高いのよ。借りれるしまぁ良いかなって」
「それはダメですよ。せっかくですし自分の買いましょうよ」
「そうね。せっかく来たんだし」
僅かに残るファンタジー要素がなくならないようにあたしが道具を選ぶシーンはカットされるのだけど。
「まいどありー」
「ありがとアスカロン」
「いえいえ。どうします?一度家に置いてきますか?」
「重たいしそうするわ。アスカロンはどうする?」
「私は…商店街を見てますね」
「分かったわ。なる早で戻るから」
そう言って買った物を家に置きに帰る事に。そうは言ってもそんなに距離は無く往復で十分ほど。
家へとたどり着くと玄関を開け家の中に買った物を置きまたあたしは商店街へと戻ってゆく。
しかし休日の商店街は人が多くしばらく歩きながら探したのだがアスカロンの姿は見当たらない。
「ふぁ〜あぁっ」
それからあくび混じりに街を歩いていると人混みに混ざる見慣れた後髪を見つけ近寄ってゆく。
「アスカロン」
「あっユリ」
「お待たせ。何買いに行く?」
「食料品は買ったので少し街を歩きたいです」
「了解。持つわよ」
アスカロンが持っていた買い物袋を一つ持ち街を歩いてゆく。
「んっ」
「どうしました?」
「あそこに銭湯があるわ」
「銭湯ですか?あっ、ほんとだ」
商店街の少し裏手の方で見つけた銭湯。銭湯と断定した理由として銭湯といえばの湯気のマークが描かれたのれんがあったから。
「最近シャワーだったし今夜いかない?」
「そうですねっ♪ならご飯も街で食べませんか?」
「そうしよっか。その前に」
見つけた銭湯へと近づきそっと扉に手をかけ扉を開き中を覗き込むと古ぼけた店内が見えたがまだ経営はしてそう。
「何をしているのですか?」
「なんか潰れてそうだったから確認よ。まだやってそうね」
「あはは、、じゃあ家に食材置きに行きましょうか」
そんな訳でまた家へと戻り食材を冷蔵庫へとしまいお風呂のセットを持って再び街へと。
「ごめんくださーい」
店内へと入ると先ほど見た通り古ぼけた店内でおばあちゃんが番頭をしており扇風機で涼む人が何人か居た。
「二人分お願い」
「千ゼニーだよ」
お金を渡し脱衣場へと。
「なんか良い雰囲気ね」
「そうですねっ。なんだか昔に戻ったみたいです」
「お風呂が汚かったらもう来る事はないけど」
「あはは、、」
木で作られた棚に脱いだ服を置きタオルを一枚持って浴室へ続く扉を開けた。
「おぉー良いわね」
「そうですねっ♪」
入った浴室は一面に青いタイルが貼られ壁際には水道と椅子と桶が並ぶ。俗に言う昔ながらの銭湯。
扉の左側にあった掛け湯をしていざ入浴。
「あっつ!!」
勢い良く入れた右足は瞬く間に噛みつかれたような痛みが走り思わず入れた右足を引っこ抜く。
「アスカロン。出番よ」
「ダメですよそんな事。ゆっくり慣らしながら入れば大丈夫ですからっ」
そう言ってアスカロンはゆっくりと爪先から湯に入っていき最後には肩まで浸かっていた。
「ほら、ユリも」
そう言われあたしもゆっくりと湯に浸かってゆく。噛み付くような温度の湯に慣れながら入りようやく肩まで湯に浸かる。
「んんっ〜たまには大きなお風呂も良いわね」
「そうですねっ。なんだが日々の疲れがお湯に溶けていく気がします」
「ほんとそれね。んんんーーっ」
湯船の中で大きく手足を伸ばし天井を見上げる。二人で千ゼニーでこれだけの幸福感が得られるとは銭湯恐るべしだ。
「そろそろ身体も温まりましたし水風呂にいきませんか?」
「水風呂?」
「はいっ。ユリは『整う』って知りませんか?」
「いや、知らないけど。整うって何よ?」
「整うというのは熱いお風呂で身体を温めた後に水風呂に入り冷やす事によりデトックス効果を得た状態の事を言うんですよ」
「デトックス?何その横文字」
「詳しい方は私もあまり知らないのですが。とにかく水風呂へ行きましょう」
「分かったわよ」
そんな訳でお湯から出るとその隣にある水風呂へ。試しに爪先を水風呂に入れると痺れるような冷たさが爪先から全身へと伝わってゆく。
「本気で言ってるの?あたし嫌なんだけど」
「これも整うためなんですよ。勇気を出して入ってみましょうよ」
逃げられないように手を掴まれそのまま水風呂へ膝まで浸かると温まった身体が急激に冷やされ胸がぎゅっと絞まるような感覚。
「本当にこんなんで整うの?」
「みたいですよ。では、身体ごと入りましょうか」
「うぇ」
握られた手を下へと下げられ腰からお腹まで浸かり最後には肩まで水風呂へと。一気に体温が下がり呼吸がひゅっと止まりそうになる。
「まだ?もう出たいんだけど」
「もう少し待って下さいね」
半信半疑ってか嫌々水風呂に浸かっていると低水温に慣れてきたのか寒気が収まった気がする。
「そろそろですね。出ましょうか」
アスカロンの言葉を聞きさっと水風呂から脱出。そしてアスカロンに連れられ浴室内に置かれていたチェアへと寝転がっていた。
「それでこれで本当に整うの?」
「みたいです。整うというのは興奮と冷静の間の事なんですよ」
「うんうん?」
「お風呂で温まった身体を急に冷やす事により気分をリフレッシュさせる。これが整うという事みたいです」
「疑問系なのね。でもなんか気分いいわ〜」
整うとはなんなのか分からないままだけどとりあえず気分は良いのでよしとしよう。
それからしばらくチェアに寝転がりながらのんびりして最後に身体を洗い浴室から出る事に。
「ぷはぁ〜〜っ!五臓六腑に沁みるわ」
「そうですねっ♪これも銭湯の醍醐味ですね♪」
風呂上がりにコーヒー牛乳を飲む。瓶の蓋を開けるのに少し戸惑ったけど乾いた身体に染み渡ってゆくコーヒー牛乳はとんでもなく美味しい。
「夕ご飯どうする?」
「帰りに街で食べに行きませんか?」
「そうね。後ちょっとしたら食べに行こっか」
まだ火照りが残る身体を扇風機で冷やしてから太陽が沈みかけている街へと行き食べたい物を探して街を歩いてゆく。
「ここにしませんか?」
「そうしよっか」
結局ファミレスになりお互いが食べたい物を注文して料理の到着を待つ。
「明日はどこにお仕事に行くのですか?」
「明日からしばらくラグナ教会で仕事よ」
「ラグナ教会ですか?」
「そそ。なんか教会の塗装の塗り替えをするみたいで足場から塗装まで手伝う事になってるの」
「なら近くて良いですね。時間があったら働いてるユリの姿を見に行きますね♪」
「それはちょっと恥ずかしいわね、、」
そんな話をしていると料理が届き手を合わせていただく事に。
「それで、この料理にゼロカロリー理論は通用するの?」
ファミレスで頼んだ料理にはカロリーがあるはず。疑問を聞くとアスカロンは得意気な顔をした。
「私たちはさっき銭湯で整ったじゃないですか」
「そうね?」
「整った身体にはどんな料理のカロリーも受け止める事ができるのですよ。なので今は何を食べてもゼロカロリーなんです!」
もやは暴論に近い気がするのだがそういうのならそうなのだろう。何度も言うようだがあたしはカロリーとか気にしていないからなんでも良いのだけど。
そんな訳で次の日。あたしはラグナ教会へと行き足場の組み立てを手伝い夏の暑さと作業に汗を流していた。
足場の組み立てに1週間がかかり塗装の塗り替えに一ヶ月。そして足場の解体に1週間をかけようやくラグナ教会での仕事が終わろうとしていた。
「久しぶりだねユリちゃん」
「ラグナ!久しぶり」
お昼の休憩中にラグナロクと会いお弁当を食べながら少しおしゃべり。
「ユリちゃんたちって明日時間あるかな?ワスレナ地方に魔獣が現れたから討伐を依頼したいんだけどさ」
「明日は…」
そう言われ手帳で予定を確認するとあたしの明日の予定は無い。アスカロンに連絡すると店の予定も無いようで。
「その依頼受けるわ。詳しい情報を教えて」
ラグナロクに詳しい情報を教えてもらいその場は解散となった。その後昼休みが終わり残りの作業を終え家へと帰ってゆく。
「ただいま。討伐依頼受けたからよろしくね」
「はいっ!それで任務の内容はどのような感じなのですか?」
「ワスレナに現れた魔獣、バイコーンの討伐ね。数は10匹でフィールドは平地。あたし達なら問題ないわ」
「そうですねっ。討伐なんてひさびさです」
「昔より異族の数も減ったし魔獣もあんまり居ないみたいだしね。討伐が1番お金になるからありがたいわ」
「あははっ、、」
ちなみにだがバイコーン1匹で二万ゼニーだ。アスカロンに半分渡しても十分な金額になる。
「とりあえず朝に家を出て教会で馬を借りてそのままクレナイに向う。それで討伐して帰ってくる感じね」
「了解です!なら明日の夜ご飯はお外で食べて帰りましょうか」
「そうしよっか。お風呂行ってくるね」
「はーい」
そんな訳でお風呂から出るとアスカロンがご飯をテーブルに並べていた。
「今日も美味しそうね」
「今日はカツ丼にしてみましたよ♪あっ、魔獣に勝つとは関係がありませんからねっ」
「魔獣ぐらいなら楽勝よ。でも油断するつもりはないけれど」
手を合わせてまずはカツを口へと運ぶ。まだ汁が染みていないカツはカリっとしていて良い感じの歯応え。
「美味しいわ。カツもいい感じ」
「しっかり下味を付けてあるので美味しいですよね♪ちょっと胡椒を強めにしてあるんですよ♪」
「確かに胡椒の味がするけどいい感じだわ」
少しの時間が経つとカツは汁を吸いしんなりとしてそのカツにたまごを乗せて口へと。
「ん〜〜美味しい」
「そう言ってもらえて嬉しいですよ♪」
「幸せだわ、、それで、このカツ丼はどういう理屈でゼロカロリーなの?」
「このカツは高温の油で揚げてあるので熱でカロリーは消滅しています。そしてこのご飯です」
「ご飯?お米の事ね」
「はいっ。このお米は炊く時に炊飯器の中で踊っているんですよ」
「米が踊る?ちょっと何言ってるか分からないわ」
「踊り炊きって聞いた事ありませんか?炊く時に下からの熱でお米が踊るようになるって」
「あぁー?聞いた事あるようなないような、、。つまり米を炊く時に踊ってるからゼロカロリーって事?」
「そうです!お米に含まれるカロリーはお米が踊る事によって消費され炊き上がる頃にはゼロカロリーになっているのです♪」
「踊るって疲れるっていうもんね」
そんなゼロカロリー理論を聞きながらカツ丼を食べ終え食後の煙草へ。そして戻ってきてから食器を洗ってゆく。
「ふぅ、さっぱりした♪」
「おかえり。明日だけど任務地が遠いから早めに家でよっか。えっと、七時にはここを出たいわね」
「了解ですっ。今のうちに準備だけしておきますね」
「あたしもしておくわ」
そう言って二人でクローゼットへと行き戦闘服の準備を。それとあたしは二本の剣を持ってリビングへと。
「この服着るのも久しぶりよね」
「そうですね。ユリはいつも作業着だし私もお店のジャージですし」
「最後にこれ着たのいつか忘れたわね。剣も埃が付いちゃってるわ」
あたしの戦闘服はあたしの母グリードの服と変わらない。違いを上げるとすれば両腕にアームカバーをつける事ぐらいか。
そして使う剣は父と母からもらった零奏剣七元と黒奏剣骸斬。鞘についてしまっている埃を落としリビングへと置いておく。
「じゃあそろそろ寝よっか」
「そうですねっ」
準備を済ませ寝る事に。
次の日、六時半ごろに目を覚ましたあたしはベッドから降りキッチンへと行き二人分のコーヒーを淹れていた。コーヒーを淹れ終わると2階へと行こうとするとアスカロンがリビングへときていた。
「おはよ。ミルクと砂糖入れるよね?」
「おはようございます。はい、お願いしますね」
コーヒーにミルクと砂糖を入れかき混ぜてからアスカロンの前へ。二人でコーヒーを飲みながら少しののんびりとした時間を過ごす。
「そろそろ着替えよっか」
「はいっ!」
コーヒーを飲み終わった頃にパジャマを脱ぎ久しぶりに戦闘服へ袖を通してゆく。白いタイツを履き黒のワンピースを着て両腕にアームカバーを付け、ベルトに剣のフォルダーを取り付ければ着替え完了。
「ふぅ、この服着ると気分が変わるわね。アスカロンはまだ?」
「私は…ちょ、ちょっと待ってて下さいねっ!」
「外で煙草吸ってるから着替えたら来てね」
「はいっ…」
外へ出て腰に付けたポーチから煙草を取り出し蒸す。ひさびさの討伐に気分は昂る。これはキル姫としての本能なのか。それとも、母の血なのか。
そんな事を考えながら煙草を一本吸い終わったのだがアスカロンはまだ玄関を開けて出てこない。
腕時計で時間を見るともうすぐ七時になろうとしているのに。
「アスカロンー?何してるのよ」
痺れを切らし家の中へと入りリビングへと向かいアスカロンの姿を見た。それはまだ黒いタイツを履いただけの姿。
「アスカロン」
「ゆ、ユリっ・・す、スカートがはいりませんっ!」
「はぁ?」
泣きそうな声で言われ疑問は更に深まる。
「どういうこと?」
「スカートのファスナーが締まりませんしシャツも小さくて着れないんですよぉ、、」
アスカロン・D'plug・レヴィアタンの戦闘服は黒いタイツに紺色のスカート、白シャツに紺の上着なのだが。
確かにスカートはファスナーが半分しか上がってなくシャツは両腕が袖に引っかかり通ってない。良く見ると全身が前よりむちっとしている気がする。
「それって太ったって事よね」
「それはあり得ませんっ!だってゼロカロリー理論は守ってましたしユリだって私と同じご飯を食べていたじゃないですか!」
「それはそうだけど。じゃあ服が小さくなったって事?」
「しばらく着てなかったから縮んでしまったかもしれません・・・」
「うーん…じゃあお店のジャージしかないわね・・・」
「そうですねっ…」
「ってかゼロカロリー理論とか言ってる番組はいつ見たのよ」
「それは・・確か今の時間ぐらいにやっていたはずなのですが…」
そう言ってアスカロンがテレビをつけると小太りの男二人が漫才をしているのが映った。
「あっ、この人達です」
「どれどれ?」
見ているとドーナツは形がゼロを表しているからゼロカロリーとかピロシキは高温の油で揚げてあるからゼロカロリーとか言っていた。
「いや、アスカロン。この人達はネタで言っているだけよ」
「えっ?」
「だから、漫才のネタでゼロカロリーって言ってるだけだから」
「じゃあゼロカロリー理論は…?」
「ただのネタね」
「そんなぁ〜〜〜っ!」
その場にへたり込んだアスカロンにお店のジャージを渡した。
「行くわよ」
「はいっ…」
「それと明日からダイエットね」
「そうですねっ…もうゼロカロリー理論なんて信じません…」
涙目で叫びながら漫才を映すテレビの電源を落としていた。