目を覚まし壁にかかっている時計を寝ぼけ眼で見ると午前10時前だった。不覚だ。普段なら日の出と共に目を覚ますのだが布団で眠る心地良さについ深く眠りに付いてしまい未だに眠気が取れず二度寝をしたい誘惑と戦いながらぼんやりとしていた。
「おはようございます♪良く眠っていたので起こさずにしてました」
「ん、、、ん。」
「寝起き悪いのですねっ、はいっ」
寝ぼけながら渡されたコップを受け取り一口飲み確かめてからお茶を飲み干しおかわりを要求していた。
「はいどうぞっ。これからどうしますか?」
「そうね、ここを出て適当に彷徨うわ」
昨日洗濯へ出し戻ってきている服を着て大きく伸びを一つ。やっぱりこの服が一番しっくりくる。
「その服白色だったのですね」
「そうよ、目立つからわざと汚しているのよ」
あたしが着ているパーカーの色は元は白色なのだ。だけど先ほども言った通り目立つ色なので地面に擦り付け色を付けている。いえばカモフラージュだ。
「どうしてそのような事を?」
「身を守るためよ。そろそろ行くわよ」
宿で朝食をとった後宿を出て街を抜けて再び荒野を歩いてゆく。あたしの旅に行き先は無い。好きな所に行き好きなように生きてゆく。それだけ聞くと自由に聞こえるが常に死と隣り合わせの旅路。少しでも生存率を上げる為の努力はしているつもりだ。
「どっちに行きますか?」
「ん、南ね」
適当に方角を決めしばらく進んでゆくとそびえ立つ大樹が目に写った。
「あの木は何?」
「あれはユグドラシルの大樹です。この世界に必要なマナを蓄えた樹なんですよ」
「へぇ、で、なんでその樹が鏡写になっているのよ」
あたしの目に写る樹は先端からもう一つ同じ様な大きさの樹が伸びていた。鏡に写された様に、まるで反転しているかの様に。
「さぁ?気になるのなら樹のふもとに行ってみますか?」
「そうね。気になっちゃったし、それに目的地もないからちょうど良いわ」
目的地をユグドラシルのふもとに決めのんびりと道を進んでゆく。しばらく進み太陽が天辺へ上がった頃木陰を見つけ少し休む事に。
「暑ければ言ってくださいね」
「アスカロンに言うとなんかあるの?」
「私は氷を操る事ができるので冷やしてあげますよ♪」
「便利なのね。まだ大丈夫だから良いわよ」
木陰からユグドラシルを覗きながら煙草に火を付けていた。すると反転したユグドラシルから何かが落ちてくるのが見えた気がした。それを目を凝らして見ているとこっちに向かって来ている。まだ距離はあるのだがとんでもなく強い気配を感じ取り腰に携えている剣の柄へと手を伸ばしていた。
「ユリ、私の背後にいて下さいっ」
気配を感じ取っていたのはアスカロンも同じ様で私の前へと立ち剣を抜き出し構えていた。
「別に自分の身ぐらい守れるわよ」
そう言い終わるか終わらないぐらいで私達の前に女の人が降り立ち長い桃色の髪の間から鋭い目線で私達を見ていた。
「ユリ」
「なんであんたまであたしの名前を知っているのよ、答えなさい」
「いえ、答える必要はありません。あなた達二人はここで私が剪定するので」
そう言い放った後その女は目の前から姿を消した。次の瞬間にフードをギュッと引っ張られ後ろへと下がると切っ先があたしを掠めながら振り払われていた。
「ユリっ!逃げて下さい!ここは私が引き受けますっ!!」
一閃を外した事に驚く主に向かい剣撃を繰り出しながらアスカロンが叫ぶ。言われた通りに逃げようとしたのだが何か不思議な感覚へ陥りアスカロンの隣へと並び二本の剣を構えていた。
「悪いわね。あたしは売られた喧嘩は買う主義なのよ。ねぇ、あんたは誰なのよ、どうしてあたしの名を知っているの」
「私はあなたの、、、くっ、まだ私の邪魔をするのですか」
「今よアスカロン!」
「はいっ!嫉妬の氷よ、私に力をっ!!」
顔をしかめ頭を抑える女に向かいアスカロンが斬り込んでゆき作り出された隙をあたしが斬り込み徐々に追い詰めてゆく。
「部が悪いですね。また会いましょう。その時は剪定させてもらいます」
二、三歩下がり空へと舞い上がり何処かへと飛んでいった。それを見届けると力が抜けその場にへたり込んでいた。
「アスカロンはあいつの事何か知ってる?」
「ティルフィングというキル姫だとは思いますけど少し雰囲気が違うのでなんとも言えません」
「キル姫ってろくなのが居ないのね」
「そんな事ありませんよっ!」
「どうだか。それよりさっきはその、ありがと。引っ張ってくれなかったらあたしは真っ二つだったわ」
「当然の事をしただけですよ」そう言ってくれたアスカロンに向かい笑顔を見せていた。あたしの笑顔を見て笑い返してくれるのが少し嬉しかった。
「何かこの世界に異変が起きているかもしれません。ユグドラシルへと急ぎましょう」
「分かったわよ」
差し出されたアスカロンの手を借りて立ち上がり埃を払うとそびえ立つユグドラシルへと向かい歩き出してゆく。