※この作品はR-18です。

インテグラル・ノア サイドストーリーユリ物語   作:やす、

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ユグドラシルの中へ

一体ここはどうなっているのよ

 

 

私は上下左右も分からない空間を彷徨っていた。

 

 

ん?

 

 

何かが頭の中に流れ込んできた。何かの映像?

 

 

水辺に佇む女神のような人、ラグナ達と戦う変な奴、海から飛び降りるティルフィング、色んな映像が走馬灯のように流れてゆく。これはこの世界の記憶なのだろうか?

 

 

しばらくすると急に落下した。

 

 

うわっ!いてててて…

 

 

あまりに急な事で受け身が取れずお尻から落ちてしまった。

 

 

もぅ!なんなのよ!

 

 

お尻をさすりながら辺りを見渡すと大きな部屋のようだ。部屋の真ん中に大きなベッドがありその横の椅子に座っている男が一人。

 

 

ねぇ、ここはなんなのよ

 

 

近づいて行き話しかけてみる事に。

 

 

君は……そうか、リサナウトが上手くやってくれたんだ

 

リサナウトって言ったわね、あんたが私のお父さんなの?

 

そうだね、久しぶりだね、ユリ

 

 

椅子に座ったままこちらにクルリと身体を向ける男。私を見るなり微笑んでいた。

 

 

ふふ、ティルそっくりだね

 

あんたに似なくて良かったわよ

 

 

別にブサイクって訳では無いが少し頼りなさそうな男。

 

 

まぁまぁ、どうしてユリはここに来たの?

 

ティルフィングを蹴飛ばしてその勢いでユグドラシルに触れたら吸い込まれたのよ

 

何してんの、一体

 

それよりティルフィングもユグドラシルに吸い込まれたはずよ!どこに居るのよ!

 

僕には分からないよ、この人になら分かるかも知れないけど

 

 

ベッドに寝ている人の頭を撫でる。

 

 

この人は?誰なのよ

 

この人はユグドラシルそのものだよ

 

何言ってんの?ユグドラシルは樹でしょ?

 

信じる信じないは任せるけどこの人がユグドラシル本人なんだ

 

ふーん

 

 

ベッドを覗くとスヤスヤと寝息を立てていた。当然樹なんかには見えない。

 

 

なら叩き起こして聞きなさいよ、こっちは急いでんのよ

 

それはやめてくれ、もう彼女には体力が無いんだ、誰かに聞かなかったかな?ユグドラシルが枯れるって

 

聞いた覚えがあるわ、ラグナ達がそれを止めようと頑張っているわ

 

そうだね、前ここに来た時に聞かせて貰ったよ、せっかく久しぶりに会えたのに深刻な話しかできなかったよ

 

そうなんだ

 

良かったらユリの事を聞かせてよ

 

その前に私の事を聞かせてよ、どうして私をリサナウトに託したの?その時に何があったの?

 

そうだね、話してあげる、その前に煙草吸いに行こう

 

 

立ち上がりベッドから離れた所に行く男、それについてゆく。

 

 

僕とティル、いや,お母さんとユグドラシルから少し離れた所に住んでいたんだ、ちょうどユリが3歳になる頃かな?インテグラルキラーズに攻め込まれたんだ

 

それはどうしてなの?

 

ユリは淘汰って知っているかな?

 

あまり知らないわ

 

うん、淘汰って言うのはねキル姫が最後の一人になるまで戦い続ける事なんだ

 

最後の一人になるとどうなるのよ?

 

神器が使えるようになるんだ、神器を使えればかなりの戦力になるからね

 

そうなんだ

 

ユリのお母さんが最後の一人だったんだよ、でもティルに勝てる奴なんてあの時居なかったんだ

 

でも淘汰されたんでしょ?

 

うん、本来淘汰というのは一対一の戦いなんだけどインテグラルキラーズは先にティルフィング以外のキル姫で襲ってきたんだ、もちろん抵抗はしたよ、でもまだ小さいユリを連れていたからまともに戦えるはずもなくジワジワと押されていってね、なんとか教会まで逃げてきたんだ

 

その時にリサナウトに会ったのね

 

そうだね、このまま殺されるぐらいならってリサナウトに託したんだよ、二本の剣とライターと共にね

 

剣は分かるけどなんでライターもなの?

 

ライターはなんとなくだよ

 

そうなんだ

 

聞きたい事はこれぐらいかな?

 

そうね、あっ

 

何?

 

私の名前の由来ってあるの?

 

えっとね、僕のユウから一文字とティルの昔のコードネームから一文字取ってユリだよ

 

それだけ?

 

あと花の百合って知ってる?

 

知らないわ

 

その百合のように美しく、可憐に、ってね、詳しくはミネルヴァにでも聞いてよ

 

考えておくわ

 

 

お互いが二本目の煙草に火をつけた時だった。

 

 

やっと見つけました、ユグドラシル

 

 

何処からか現れたティルフィング。

 

 

ユリ、七元を貸してくれ

 

何するつもりよ

 

もちろん追い払うんだよ

 

えっ?

 

瞬時に私の腰から七元を抜き去りティルフィングと対峙する男。

 

 

久しぶり、ティルフィング

 

あなたは……

 

悪いけど帰って貰えないかな?

 

私にも目的があるので

 

なら追い払うまでだよ

 

 

七元を構える男。

 

 

もう一度殺してあげます

 

 

剣を構えるティルフィング。戦いが始まった

 

 

一体どうなっているのよ…

 

 

二人の姿を目で追う事ができない程のスピードで斬り合う二人、部屋には剣がぶつかる音と足音だけが響いている。私も少しは強くなったつもりでいたけどこの二人は次元が違った。

 

 

ギンッと金属音が響き二人が鍔迫り合っていた。私にこの戦いに入る事は出来なさそうだ。

 

 

目的ってなんなの?

 

あなたには関係のない事です!

 

そういう訳にはいかないよ、まぁどんな目的であれ帰って貰うけどね

 

 

ギリギリと睨み合う二人、恐ろしい程の闘気が発せられている。

 

 

半姫半人、私のお母さんがキル姫ならお父さんは人間なはず、なのになぜこの男はこれ程までに強いのだろうか。

 

 

くっ……流石大陸最強と呼ばれた男、簡単には行きませんね

 

娘の前だ、情けない姿は見せられないよ

 

 

二人が再び斬り合おうとした時だった。「剣を納めて下さい」そう可憐な声が響いた。

 

 

ユグドラシル!寝てないとダメだろ!

 

良いんです、話を聞いて下さい

 

 

ベッドから身を起こすユグドラシル。

 

 

二人共、宜しいですね?

 

 

可憐だが凄みのある声で囁いた。

 

 

…分かった、ティルフィング、良いね

 

分かりました

 

 

そう言って剣を納めるティルフィング。

 

 

ユリもおいで

 

うん

 

 

呼ばれて三人がベッドの周りに集う

 

 

はい、返すよ

 

ん

 

七元を鞘に納める

 

 

ティルフィング、あなた達が何をしようとしているかは知っています、それに地上世界のフォルカス達も、全ては私の為に、世界の為に

 

 

…………………

 

ラグナロク達は全ての人を救おうとしてくれていますね

 

 

ねぇ、なんであんたは枯れてしまうの?

 

私は膨大な量のマナでできています、本来なら私のマナが尽きるのはまだ先の事なのですが、ユリは神魔大戦を知っていますか?

 

いや、知らないわ

 

なら簡単に説明します。遥か昔、神々と悪魔は私に寿命がある事を知りました、その時私の寿命が尽きるのは遠い未来の話だったのですが神々と悪魔は来るべく終焉をどうするか話し合っていました、最初は話し合いで解決策を出すつもりだったのですがいつしか争いに変わりました、これが神魔大戦

 

 

うんうん

 

 

戦いは何年、何百年と続きました、そんな終わりの見えない戦いを止めるように訴えたのがティルフィングの父、エルライトでした、エルライトは平和の女神、エイレーネを目覚めさせ二人が力を合わせ神魔大戦を終結させました

 

 

うんうん

 

しかし戦争の終結の代償として神魔契約が結ばれてしまいました、神々はこの天上世界を、悪魔は地上世界を支配するという契約でした

 

神魔契約?

 

 

はい、その契約が結ばれた為に人類は次第に数を減らしていきました、人類は神にも、悪魔にも抗う力はありませんでしたから、しかし、人類は神器から抽出されたキラーズとマナを結びつける事によってキル姫を産み出す事に成功しました、それによって人類は天上世界を、地上世界を神々と悪魔から奪還する事に成功しました

 

 

良い話じゃないの

 

 

はい、しかし人類は争いが終わった後もキル姫を作り続け大量にマナを消費し続けていました、そして愚かな事にキル姫を使い人類同士で争いを始めたのです、私は何度も警告を出しましたが気づかれることもなく私のマナは尽きようとしています

 

 

……………………………………

 

 

もうすぐこの世界に私の死と共に終結がもたらされます、ティルフィングが作り出そうとしている擬彩されし不可逆世界も、フォルカス達がしようとしている神々の黄昏計画ももう無駄なのです、私が死ぬ事によって全てが無に還ります、どこに居ても、何をしようとも

 

 

しかし、この世界と関係を切り離してしまえば問題はないと思いますが

 

いえ、この世界で作られたマナを秘めている限り崩壊から逃れる事はできません。全てが無へと還るでしょう

 

そんな…なら私達がしようとしていた事は……

 

はい、全ては無駄なのです、その姿からして神々にそう言われたと思いますが

 

そんな、、、なら今までの私達がしてきた事は、、、、、

 

 

そう嘆き崩れ落ちていた。

 

 

私のマナの残量からして持っても一週間でしょう、一週間後にこの世界に終焉がもたらされます、弱い私を許して下さい

 

 

そう言ってユグドラシルは再び眠りについた。

 

 

………………………………………………………

 

 

沈黙が訪れる、部屋に響くのはティルフィングが泣きじゃくる声だけだった。

 

 

ティルフィング、顔をあげてよ

 

ユウ…私を慰めるつもりですか?あなたを殺し、最愛の妻も殺した私を

 

別にそんなつもりは無いよ、でも一つだけ君達に感謝しているんだ

 

感謝ですか?

 

うん、キル姫は永遠とも言える寿命を持っているのは知っているだろ?それに比べて僕はただの人間だ、僕の方が先に死ぬのは決まっている、そうしたらティルが悲しむでしょ?

 

……

 

でも君達のおかげ、って言い方は変だけど二人同時に死ぬ事ができた、ありがとう

 

 

涙が落ちる音が聞こえた。

 

 

あぁ、この人はお母さんを心から愛していたんだ。

 

 

それにこうして成長した娘にも会う事ができた、僕の人生に悔いは無いよ

 

 

私の頭を乱暴に撫でていた。温もりが、優しさが頭に伝わってくる。

 

 

この事はラグナ達は知っているの?

 

いや、知らないと思う、帰って伝えてあげてよ

 

分かったわ

 

ユリ

 

 

ティルフィングに話しかけられた

 

 

何よ

 

一度だけ、一度だけ抱きしめても良いですか?

 

何よいきなり

 

ユリ、ティルフィングには淘汰したお母さんの記憶が残っているんだよ、抱きしめてもらいなよ

 

仕方ないわね

 

 

ゆっくりとティルフィングに抱きしめられる、あぁこれが母親の温もりなんだ…

 

ユウもお願いします

 

うん

 

 

私の背中から抱きしめられ父と母、二人の温もりを身体中で感じていた。

 

 

気づいたら私は涙を流していた、悲しみの涙でも悔し涙でも無い、不思議な涙が溢れてゆく。

 

 

その中で私は決心をした、この世界を守ろうってこの命に変えても。

 

 

いつしか私は眠りに落ちていた

 

 

 

 

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