※この作品はR-18です。

インテグラル・ノア サイドストーリーユリ物語   作:やす、

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何でも屋の仕事その2

暇ね

 

そうですね…

 

 

雑貨屋にポスターを置いてもらったおかげで少し依頼が来てくれるだがドブの掃除だったり街のゴミ拾いだったりと、来る仕事に文句は無いのだが相変わらず退屈な毎日を私達は送っていた。

 

 

また街に宣伝に行くわよ

 

でも誰か来るかも知れませんよ?

 

そうね…

 

 

お客が来るか来ないか分からないので私達は動けずにいた、家に居ながら何か宣伝できる方法は無いだろうか?…頭を悩ませても何も浮かばなかった。

 

 

お店の看板を作りませんか?

 

それもそうね

 

 

今も看板はあるにはあるのだが小さな物なので気付かれていないのかも知れない、この際だ、玄関の前に大きな看板を取り付けてやろう。

 

 

私が材料を買ってくるからアスカロンはどういう看板にするのか考えて欲しいわ

 

分かりました、気をつけて行ってきて下さいね?

 

大丈夫よ

 

 

財布をポケットにしまい家を出る、その時に玄関の上の大きさをメジャーで測っておく、なんとなくイメージができてきた、雑貨屋に行こう。

 

 

おじさん、これぐらいの木の板はあるかしら?

 

あぁ、それならこれを持っていきなよ

 

ありがと、いくらかしら?

 

1000ぜニーでいいよ

 

はい、また来るわ

 

まいどー

 

 

木の板を担いで家まで帰ってゆく、街の人に変な目で見られたが気になどしない。

 

 

ただいま、これで良いかしら?

 

はいっ、早速書きましょう!

 

 

鉛筆で下書きをしてからそれに色を塗ってゆく、少々不恰好だがなんとか形になってきた。

 

 

後は乾いてから飾るだけですね♪

 

私も楽しみになってきたわ

 

 

看板を日陰に置いて二人で店番をする、すると一人のお客が来てくれた。

 

 

この店にキル姫は居るの?

 

 

入ってくるなりアスカロンを問い詰めるオバさん。

 

 

えっと、二人共キル姫ですよ?

 

ならちょうど良いわ、どっちかうちの息子のキル姫になりなさい

 

あのっ、、、

 

こんな客の来ない店なんて一人居れば充分でしょ?早く決めなさい

 

 

………………………………

 

 

私は悩んでいた。このお客様、いや、客、違う、このババアをいつ店からつまみ出そうか、だけどお店の顔もある、どうするべきか、考えれば考える程イライラが募ってゆく。

 

 

ですからキル姫と奏官と言うものはですね…

 

良いからどっちか家に来なさいよ、息子の周りはみんなキル姫が居るのにうちの息子だけいないのはか不公平だわ!

 

 

よく分からない事を言い出すババア、こいつの息子はどんなのなのか、ふと興味が湧いた。

 

 

私が行くわ、アスカロンは店番を頼んだわよ

 

ユリっ!

 

大丈夫、すぐ戻ってくるわよ、お客様、私がその息子のキル姫になってあげるわ、もちろん報酬は弾むんでしょうね?

 

 

お金ならいくらでも払ってあげるわよ、ほら!

 

 

この店を買ったゼニーより多くのゼニーがあっという間にレジの前に積まれてしまった。

 

 

分かったわ、その代わり息子が私の事を気に入らなくても知らないからね

 

気に入る様に努力してもらうわ、着いてきなさい

 

アスカロン、無理なら店閉めておいても良いからね、行ってくるわ

 

もぉぉぉ…

 

 

アスカロンにお店を任せてお客様に着いく事に、店の玄関を開けると馬車が待っていた。

 

 

乗りなさい

 

ん

 

早く馬車を出して!

 

はい

 

 

執事の様な人が運転する馬車に乗り込みフカフカの座席を堪能していた。お客様が息子の自慢話をしているが適当に返事をして聞き流す事に。

 

 

着いたわ、降りなさい

 

ん

 

 

しばらく馬車に揺れていると一件の屋敷にたどり着いた、見た限りモニカの屋敷よりも大きく立派な建物だった。

 

 

入りなさい

 

 

そう言われて屋敷の中に入ってゆく、高そうな壺やシャンデリア、内装が私をイライラさせてゆく。

 

 

それで?その息子はどこに居るのよ

 

今呼んでくるわ、待っていなさい

 

 

しばらく待っているとその息子が来た、なんだろう、ハリーを黒髪にした様な見た目でナヨナヨしているのも一緒だ。

 

 

…お母さん、またキル姫を連れてきたの?僕は奏官なんかにはならないよ…

 

周りの子はみんなキル姫を従えて居るのでしょ?ならウィルも同じにしなさい

 

はぁ………

 

 

その男の子はウィルと言うらしい、まだ幼そうだ。

 

 

まぁ良いや、おいでキル姫

 

私はユリよ、キル姫って名前じゃ無いわ

 

なんでも良いよ、早く

 

ちっ

 

 

思わず舌打ちをしてしまった。相手はお客様、相手はお客様。何度も自分に言い聞かせてウィルについてゆく、階段を登り廊下を少し歩き扉の前で立ち止まった。

 

 

入って

 

ん

 

 

そう言って開けられた扉。入り口から部屋を見渡してから中へと入ってゆくと広い部屋にベッドに机、タンスしか無い質素な部屋だった、ウィルはベッドに腰掛け私は壁に背を預ける。

 

 

それで?私になんの用なのよ

 

用なんて無いよ、僕だって早く帰って貰いたいよ、どうせ母さんに連れてこられたんだろ

 

そうね、なら早く私を解放しなさいよ、私には相棒も居るしお店もあるのよ

 

悪いけど母さんが飽きるまでここに居ないと行けないよ、すぐ飽きると思うけど

 

まぁ良いわ、それよりあんた何歳なの?

 

16

 

そう

 

 

私と変わらないぐらいの年齢だった。

 

 

ふーん、その年齢の割に死んだような目をしているわね

 

別に

 

どうせ暇だから聞いてあげるわよ、あんたはいつもどんな生活をしているのよ?

 

朝起きて学校に行って帰ってから勉強してご飯を食べて勉強して寝る

 

それだけ?

 

うん

 

他は?

 

それだけだよ、僕は父さんみたいな立派な人にならないといけないんだ、僕が父さんの起こした会社を引き継ぐんだ

 

くだらない人生ね

 

僕だってこんな人生なんて嫌だよ!何もかも押し付けられて!自分の好きな事なんてなんにもできないんだ!

 

なら抗いなさいよ、なんならこの屋敷を私が瓦礫に変えてあげるわよ

 

 

二つの柄に手をかけニヤリと笑った。

 

 

…キル姫に何が分かるんだよ、お前みたいに僕は自由じゃ無いんだ!

 

ウィル、自由には代償がついているのよ、あんたに人を騙し、殺してでもこの世界を生きる事はできるかしら?

 

そ、それは……できるさ!僕は自由に生きたいんだ!!

 

それなら私が外に連れ出してあげる、だけどそれから先は私は手助けはしない、野垂れ死のうと誰かに殺されようとそれも人生だわ、その覚悟があるのなら何処へでも連れて行ってあげるわ

 

…………………

 

覚悟があるなら言いなさい、そうすればあんたがどれだけ恵まれているか分かるわ

 

ならキル姫はどんな人生を送ってきたんだよ

 

人に話せる様な生き方はしていないわ、ただ生きる為に生きてきた、それだけよ

 

 

それから二人に会話は無かった、沈黙だけがこの部屋に流れている。ふとノックの音がした。

 

 

坊っちゃま、夕飯の支度が整いました

 

部屋に置いといて

 

かしこまりました

 

 

しばらくすると料理が部屋に運ばれてきた。

 

 

食べ終わったらドアの前に置いておいて下さい

 

 

美味しそうに湯気を立てる料理が机の上に置かれた、だけどウィルはベッドに座ったままだ。

 

 

食べないの?

 

お腹空いてない

 

そう

 

 

だんだんと良い匂いが部屋を漂ってゆく、グゥッと私のお腹が音を立てた。

 

 

食べて良いよ

 

いらない、初対面の人は信じないの

 

そうなんだ

 

 

料理が冷めてしまったのだろういつのまにか匂いも収まっていた。

 

 

それならお風呂に入りなさいよ

 

いい

 

ふんっ

 

 

ただただ沈黙、別に話す事も無かったから別に良いんだけど、でも疼いてきた。

 

 

ねぇ

 

何?

 

ベランダに出してよ

 

ん

 

 

窓を開けてベランダに出る、手すりにもたれながら煙草に火をつけ満点の星空を見ながら煙を吐き出してゆく、もう少し優しくしてやるか、少し落ち着いた心でそう考えた。

 

 

ゴソゴソとポケットを漁り取り出した携帯灰皿に煙草を押し込んでウィルの元へ。

 

 

お風呂に入るわよ、準備をしなさい

 

いい

 

わがまま言ってんじゃ無いわよ

 

 

首根っこを引っ掴み扉を蹴り開け廊下を進んでゆく。

 

 

苦しいって!離せよ!!

 

うっさいわね、そんなに嫌なら本気で抵抗しなさいよ!

 

坊っちゃま!何事ですか!?

 

 

騒ぎを聞きつけて執事が駆けつけてきた。

 

 

キル姫が暴れているんだ!爺、助けて!

 

風呂の場所を教えなさい、さっさと教えないとその辺の川でこいつを洗ってやるわよ

 

 

その爺とやらを睨む。

 

 

浴室は彼方へ、ご案内します

 

賢明ね

 

爺!お前なんか母さんに頼んでクビにして貰うからな!

 

都合の良い時だけ母親を頼るんじゃ無いわよ!!さっさと歩きなさいよ!

 

 

案内された通りに歩いて行くとお風呂場が見えてきた。

 

 

ほら、入るわよ、洗ってあげるわ

 

くそっ!

 

 

脱衣場で服を脱ぎ捨て裸になる、ウィルはまだ服を着たままだった。

 

 

何よ、自分で服も脱げないの?

 

ぬ、脱げるさ!

 

先に入っているわよ

 

 

私の家の何倍もある浴室を少し羨ましく思いながら掛け湯をしてウィルを待つ事に、しばらくするとタオルで前を隠しながら入ってきた。

 

 

ほら、洗ってあげる、座りなさいよ

 

 

無言で椅子に座るウィルの頭からシャワーを浴びせ頭を洗ってゆく、やはり良いものを使っているのか家のとは泡立ちが違う。

 

 

上手じゃん

 

別に、いつもして貰ってるみたいにしてるだけよ

 

キル姫は一人でお風呂に入れないの?

 

入れるわよ、節約してんのよ

 

そうなんだ

 

誰もがあんたみたいに金持ちじゃ無いのよ

 

知らないよ

 

ほら、頭終わり、身体も洗ってあげるわよ

 

身体は良いよ!自分でやる

 

そう

 

 

ウィルの隣に座り頭を洗い身体を洗って行く、嗅いだ事も無いような良い匂いが私の身体から香るのを感じながらシャワーで洗い流し湯船に浸かっていた。ライオンの形をした蛇口?から流れるお湯を私は眺めていた。

 

 

キル姫、その傷はどうしたの?

 

これ?昔盗賊にやられたのよ

 

そうなんだ

 

あんたは綺麗な身体してるわね

 

別に

 

あんたは夢とかあるのかしら?

 

無いよそんなの

 

それなら自由にならなくても良いじゃない

 

……………

 

何よ、あるなら言いなさいよ

 

冒険家になりたいんだ

 

へぇ、なんでそうなりたいと思ったの?

 

昔その冒険家の書いた本を買って貰ったんだ。前人未到の地をキル姫と共に旅をするって話なんだけどその本を読んでいると部屋に居るはずなのになんだろ、その、冒険をしているような気になるんだ。草木を掻き分け泥に足を取られ倒木を避けて進む、またある時は未知の生き物と戦い財宝を手にする、僕はいつのまにかそうなりたいと思っていたんだ

 

ならそれを目指せば良いじゃない、簡単な話よ

 

さっきも言ったけど僕は父さんの会社を引き継ぐんだ、冒険なんてできやしないよ

 

なら、私がその会社を叩き潰してやるわ、場所を教えなさいよ

 

言わないよ、本当に潰しそうだから

 

そうね、私は嘘はつかないわ

 

…………………………

 

そろそろ出るわよ

 

うん、先に出てるよ

 

そう

 

 

脱衣場に行くウィル、広い浴槽には私一人だ、少し泳いでやろうか?いや、やめておこう、大きく身体を伸ばし溜息を一つついてから私も出る事にした。

 

 

借りるわよ

 

うん

 

 

柔らかなタオルで身体を拭き肌心地が良いパジャマに着替える、タオルとパジャマだけでいくらするのだろうか?

 

 

キル姫、その胸の傷は?

 

これね、斧で斬られたのよ

 

 

肩から臍にかけての傷を指でなぞる。

 

 

そうなんだ

 

背中の傷もこの傷も私の生きた証だわ

 

カッコいいね

 

ありがと

 

 

部屋に戻ると料理は下げられており変わりにコーヒーが置いてあった。

 

 

ねぇ飲まないの?

 

いらない

 

そう、なら貰うわよ

 

 

コップを手に取りまず匂いを嗅ぐ、そして少しだけ口に含み確かめる。

 

何このコーヒー!美味しいわね

 

別に、いつでも飲めるよ

 

ベランダに行ってくるわ

 

 

返事を聞かずにベランダへ、コーヒーを飲みながら煙草に火をつける、このコーヒーは買いに行こう、後で銘柄を聞くとしよう、少し高くてもこのコーヒーは買う価値がある。

 

 

部屋に戻るとウィルはもう寝ていた、ついつい楽しみすぎてしまったようだ、私はコップを返しに行く為に屋敷を彷徨う事にした。

 

 

広い屋敷ね

 

 

なぜデュカキスもモニカもこんな広い屋敷に住みたがるのか?不意に気配を感じて立ち止まった。

 

 

誰よ

 

私です、爺です

 

そう、コップを返しに来たわ

 

それはそれは、ご丁寧に

 

あんた奏官ね、バイブスを感じるわ

 

昔の話です

 

それに強い力を感じるわ、腕利きの奏官だったのね

 

お褒めに預かり光栄です、しかしそれも過去の話、今はただの執事でございます

 

興味が湧いたわ、少し話をしてよ

 

構いません、が、しばしお待ちください

 

ここの庭で良いかしら?煙草が吸いたいの

 

はい、畏まりました

 

 

階段を降りて玄関を開けて外へ、少しひんやりとした空気が私を包んでゆく、煙草に火をつけて待っていると来てくれた。

 

お待たせ致しました

 

構わないわ、昔は何をしていたのよ?

 

えぇ、ただの冒険家をしていまして

 

………本とか出して無かった?

 

一冊だけ、随分と感が宜しいようで

 

あんたもね、ウィルも冒険家になりたがっていたわ

 

存じています

 

このままだとあの子はつまらない人生を歩むわ、あんたはそれを許せるの?

 

坊っちゃまがそれで幸せになれるのなら

 

なら奏官としてのあんたに聞くわ、ウィルの事どう思うの?

 

そうですね…もっとこの世界の事を知って頂きたいです、楽しい事も辛い事も、それに坊っちゃまの夢を叶えて頂きたい

 

明日ウィルを借りるわよ、私が冒険に連れて行ってあげるわ

 

なら奥様に言い訳を考えておきます

 

ありがと、名前を聞いておくわ

 

リチャードで御座います

 

そう、後あのコーヒーはどこで買ったの?気に入ったわ

 

それなら御帰りの際に包んで差し上げます

 

助かるわ

 

 

つい楽しくなってきて二本目の煙草に火をつけていた。

 

 

そのライターのシンボルは…

 

これ?エンシェントキラーズのシンボルよ

 

懐かしい、ラグナロクは元気でしょうか?

 

元気よ、今は世界中を駆け回っているわ

 

それはそれは、以前一度だけお会いした事がありまして、遠い過去の話です、運命の歯車は己の力で回すの、その言葉に何度も救われてきました

 

流石ラグナね、明日の朝にウィルを連れて行くわ、適当に言い訳しておいてね

 

かしこまりました、そういえば見慣れないキル姫ですね

 

私は半姫半人、ハーフよ、今はキル姫だけど

 

ふむ、世の中にはまだ私の好奇心を擽る事があるようで

 

へへっ、そろそろ寝るわ、ありがと

 

はい、おやすみなさい

 

 

屋敷を彷徨いウィルの部屋へ、寝ているのを確認してから壁にもたれかかり目を閉じる、どこに連れて行ってやろうか、そんな事を考えていたら眠りに落ちていた。

 

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