※この作品はR-18です。

インテグラル・ノア サイドストーリーユリ物語   作:やす、

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何でも屋の仕事その3

いつもの時間に目を覚ました、立ち上がってんんっと伸びをしてから薄暗い部屋を見渡すとウィルはまだ寝ているようだ。煙草を吸いにテラスに出ようとするもカーテンを捲る事になるので諦めて外に煙草を吸いに行く事に。

 

 

階段を降りて廊下を抜けて外へ、適当なオブジェに座り登り行く太陽を見ながら煙草に火をつける。ウィルを何処へ連れて行こうか考えていたが何も浮かばなかった。

 

 

考えるのをやめて部屋に戻ろうとした時にリチャードに声をかけられた。

 

 

おはよう御座います

 

おはよ、早いのね

 

執事ですから、これをお渡ししておきます

 

何これ?地図?

 

はい、昔ワスレナと呼ばれた地方に異族が住まうとされる古城がございます

 

ありがと

 

それとこちらを

 

 

リチャードが背後から剣を取り出そうとした。

 

 

つっ!!

 

 

その瞬間に飛び退き距離を取りリチャードを睨む。

 

 

私に敵意はございません、これを坊っちゃまにお渡し下さい

 

 

刃を掴み柄を私に向けるリチャード。

 

 

癖なのよ、悪気は無いわ

 

 

剣を受け取り眺める、羽根の様に軽く上品な模様が彫られた剣だ。よく見るとかなり使い込まれている。

 

 

良い剣ね、リチャードの?

 

はい、私が昔練習で使ってた物です

 

ふーん、ありがたく使わせて貰うわ

 

いつ頃屋敷を出られますか?

 

そうね、私が部屋に戻って着替えたらウィルを叩き起こすわ

 

分かりました、武運を

 

安心して、必ず生きてこの屋敷に帰すわ

 

 

リチャードに背を向けウィルの部屋へ、いつもの服に着替えて地図を見て方角を覚える、よし、行こうか。

 

 

ウィル、起きなさい

 

なんだよ…まだ暗いじゃん…

 

行くわよ

 

何処にだよ

 

冒険よ、準備しなさいよ

 

僕には学校も勉強もあるんだ

 

そんなもんいつでもできるわよ!さっさとしなさいよ!

 

 

ウィルを睨むと私の威圧に負けたのか渋々着替えを始めた。

 

 

ほら、着替えたよ

 

行くわよ、あんたの覚悟を見せて貰うわ

 

うわっ!

 

 

ウィルを背負いドアを蹴り開け廊下を駆け抜け玄関を飛び出して門を飛び越えそのまま北に向かって土煙を上げながら走って行く。そろそろ良いだろう。

 

 

ここからは歩いて行くわよ、それとこの剣を貸してあげるわ

 

ありがと

 

 

リチャードから借りた白銀の剣を渡すとしげしげと眺めていた。

 

 

さぁ行くわよ

 

まだ朝ごはんも食べてないんだけど

 

そんなもんその辺に生えているわよ

 

何言ってんの?

 

ほら、ここにタンポポもよもぎも生えてるじゃない

 

こんなのただの草だろ

 

あんたその冒険家の本をよく見ていなかったの?

 

こんな事書いてないよ

 

なら覚えておきなさい、華々しい舞台の裏にはちゃんと努力があるのよ

 

 

適当に葉を千切り汚れを落としてから口に入れる、本来ならちゃんとした調理法があるのだがまぁ良いだろう。

 

 

ほら

 

いらないよ

 

食べれる時に食べて置きなさい、いつ飢えるか分からないわよ

 

こんな雑草食べるなら死んだ方がマシだよ

 

そう

 

 

摘んだ葉を鞄にしまい歩き出す、その後ろをとぼとぼと付いてくるウィル。

 

 

キル姫

 

何よ

 

喉乾いた

 

ん

 

 

小さな水筒を投げ渡す。

 

 

それ一つしか無いから考えて飲みなさい

 

これが無くなったらどうするんだよ!

 

草からでも水分は取れるわ、そう言えば草を食べるぐらいなら死んだ方がマシだったわね

 

…………………………

 

 

ニヤリと笑うと泣きそうな顔をするウィル。

 

 

 

何よ、もう音を上げるの?いつでも家に帰してあげるわよ

 

僕には冒険なんて無理なんだよ

 

あんたの覚悟はその程度だったって事ね、帰って一緒にママに怒られてあげるわ

 

 

しゃがんでウィルに背を向ける。

 

 

ほら、早く乗りなさいよ

 

……もう少し頑張ってみる

 

良い心掛けだわ、行くわよ

 

 

再び草原を歩いているとふと空気が変わった、何かが潜んでいる。

 

 

ウィル、しゃがみなさい

 

なんだよ

 

何かが居るわ、早く

 

 

ウィルの頭を押さえてしゃがませ私も屈み辺りを見渡す。

 

 

何も無いじゃん

 

静かに、居るわね、1時と11時の方向よ

 

えっ

 

ほら、よく見てみなさいよ

 

ほんとだ…

 

盗賊ね、このままだと身包み剥がされるわよ

 

 

こちらに近づいてきている男が六人程、皆武器を構えているのが見える。

 

 

キル姫、助けてよ

 

あんたのその腰に付いている剣は飾りなの?

 

僕は剣なんて使った事も無いよ!

 

なら諦めて殺されなさい

 

嫌だ!死にたく無い……

 

そうね、なら私に命令しなさい、僕を助けてってね

 

キル姫!僕を助けてくれ!

 

残念ね、私はキル姫って名前じゃ無いわ、その命令は無効よ

 

そんなっ!

 

 

もう足音が聞こえる程に近づいて来ていた。顔を上げれば表情ぐらいなら分かるだろう。

 

 

えっと、、、ユリ!僕を助けて!!

 

 

分かったわ、任せて

 

 

ウィルを守る様に立ち塞がり話しかける。

 

 

私達になんか用なの?

 

金を出せ、それと食料とな

 

残念だけど何も持ってないわ、早く何処かに行きなさいよ

 

なら腰に付けた剣とそこの小僧が持っている剣を置いていって貰おうか、そうすれば命だけは助けてやる

 

私を怒らせないうちに消えなさい、そうすれば命だけは助けてあげる

 

けっ、お前ら!やっちまえ!!

 

 

その言葉の後に仕掛けてくる六人、暇だし遊んでやろうか。

 

 

ほら、どこ狙ってんのよ

 

なんだこいつ!ちょこまかと!

 

こんな攻撃目を瞑っていても避けれるわよ

 

 

軽やかにステップを刻み攻撃を躱してゆく、所詮は人間ね。

 

 

ほら、力の差が分かんないの?さっさと退きなさい

 

死ねぇぇぇ!!

 

 

盗賊の斧が私の頭を捉えた、普通の人ならここで死んでいるだろう。だが私はキル姫だ。

 

 

効かないわよ、もう良いかしら?

 

まさかお前…!

 

そうよ、キル姫よ、そろそろ私も反撃して良いかしら?

 

 

頭に当たったままの斧を押し返してゆく。

 

 

ならそこのガキを殺してやる!おい!

 

うわぁぁぁぁ!!

 

 

いつのまにかウィルを囲む盗賊達、弱い者を狙う、当然の判断ね。

 

 

ひっひぃぃぃぃ……

 

死ねぇぇぇ!!

 

死ぬのはあんたよ!

 

 

瞬時に距離を詰めて思いっきり殴り飛ばした。

 

 

私のマスターに何すんのよ、もう許さないんだからね!

 

 

的確に急所に拳を叩き込んでゆく、しばらくすると立ち上がる者は居なくなった。

 

 

ウィル、金目の物を奪うわよ

 

もうやだよ……こわいよ………

 

だらしないわね

 

 

半泣きのウィルを尻目に倒れる盗賊から金目の物を漁っていた。

 

 

何も持って無いじゃない、シケた奴らね

 

もういいから行こ………

 

分かったわ

 

 

再び古城を目指して歩き出す。

 

 

キル姫はなんでそんな事をするんだよ

 

生きる為よ、あいつらもね

 

そうなんだ…

 

情けは無用よ、奴らにはその覚悟があるから

 

………………

 

あんたがどんだけ恵まれているか良く考えなさいよ

 

 

空を見上げると太陽は真上にあった、目的地には夕方頃にはたどり着くだろうがそろそろ昼飯の準備もしたい。荒野を見渡すと良い獲物を見つけた。

 

 

ウィル、あんた肉は好きかしら?

 

好きだよ

 

なら大丈夫ね

 

 

手頃な大きさの石を握りウサギ目掛けて投げると見事に当たり仕留める事ができた、その足を持ち首を切断すると心臓の鼓動と共に血液が辺りを赤く染めてゆく。

 

 

何してんだよキル姫!可哀想だろ!

 

何って食べるのよ、肉は好きなんでしょ?

 

好きだけどこんな事しなくても良いじゃないか!

 

あんたが食べてる肉は見えない所でこういう事が行われているのよ

 

 

お腹を斬り裂き内臓を取り出し毛皮を剥ぎ取る、小柄な身体の割に筋肉質なお肉が見えてきた。

 

 

おぇぇぇぇぇっ………………

 

だらしないわね、それでも冒険家に憧れてるのかしら?

 

 

内臓があった所によもぎを詰め込み岩の上に置いておく、薪を集めて火を起こそうか。

 

 

ウィル、薪を探してきなさい、ゲロなんて吐いてる場合じゃないわよ

 

もう動けないよ………

 

ちっ、ならそこで大人しくしていなさい、それと蛇には気をつけるのよ

 

 

煙草を咥えながら手頃な薪を拾い集めてくる、それと枯草も、これだけあれば良いだろう。

 

 

ウィル、石で窯を作るわよ

 

……………………

 

ほら、早く

 

 

二人で石を集め積み上げていくとなんとか竈が出来上がった、薪を入れて枯れ草で煙草を包み息を吹き込むと火種になってくれた。消えないように薪を足しながら空気を送り込んでゆくと薪に燃え移ってくれた、そろそろ良いだろう、下処理をした兎を焼いて行く事に。

 

 

夜はあんたが食べ物を採りなさいよ

 

無理だよ

 

最初から諦めるんじゃないわよ、教えてあげるわ

 

 

だんだんと香ばしい匂いが漂ってくる、ひっくり返して反対にも火を通そう。

 

 

良い匂い

 

もう少しで出来上がるわよ

 

 

少し切れ目を入れて焼けているかを見てみる、うん、良い感じだ。

 

 

ほら、食べるわよ

 

うん…

 

 

適当に切り分けて綺麗そうな石の上に置いてあげる。

 

 

どうやって食べるのこれ

 

かぶりつけば良いのよ

 

 

大きく口を開けて丸焼きにかぶりつく、少し臭みを感じるが良いだろう。

 

 

ほら、やってみなさいよ

 

う、うん…

 

 

ウィルも意を決して一口。

 

 

美味しい…

 

さっさと食べなさい、火を使ったから居場所が特定されているかもしれないわ

 

うん

 

 

半分ずつ兎をペロリと平らげまた歩み始める。

 

 

キル姫はなんでこんな事を知っているの?

 

こうして生きてきたからよ

 

それはどうしてなの?

 

こうするしか無かったからよ

 

親は?

 

居ないわ

 

そうなんだ

 

 

見渡すと彼方に古城が見えてきた、もう少し進んだら休む場所を探そう。

 

 

もう歩き疲れたよ

 

そうね、食べ物を探して休むわよ

 

食べ物なんて無いよ

 

しっかり目を凝らして探しなさい

 

 

地面を這いずる生き物を見つけそれの顔の前をトントンと剣先で地面を突くと威嚇のために首を持ち上げている。

 

 

ウィル、あんたも剣を構えなさい

 

何するんだよ

 

こうするのよ

 

 

狙いを定め一閃を繰り出し蛇の首を切断し頭を踏み潰す。

 

 

やってみなさいよ

 

無理だよこんな事…

 

やらないと晩御飯は無しよ、それと噛まれたら死ぬから

 

嫌だよ…

 

なら一緒に探してあげる、ほら

 

 

注意深く地面を観察すると見つけた。

 

 

あそこに擬態しているから上手くやりなさいよ

 

どこだよ

 

あの岩の横よ

 

 

トントンと剣先で地面を突くと威嚇の体勢をとっていた。

 

 

うぅぅぅぅ………えいっ!

 

 

ウィルの放った一閃は空を切り蛇が牙を向いてウィルへと飛びかかっていった。

 

 

ちっ

 

 

ウィルに噛み付く前に首を切断し頭部を弾き飛ばす。

 

 

危なかったわね、ちゃんと獲物を見て剣を振りなさい

 

できっこないよこんな事

 

なら教えてあげるわよ

 

 

剣の使い方を教えてあげてからもう一度挑戦する事に、先程と同じように蛇と対峙するウィル。

 

 

しっかり狙いを定めなさい

 

うん、えいっ!

 

 

見事蛇の首を切断する事ができた。

 

 

やるわね、蛇は生命力が強いから切断した頭は触らないか踏み潰しなさいよ

 

もう疲れたよ…

 

まだ一仕事残っているわよ

 

 

蛇を平な岩の上に転がし皮を剥ぎ内臓を取り出してゆく。

 

 

一人二匹だからね

 

嫌だよこんな気持ち悪い事

 

ならそのままぶつ切りにして食べなさいよ

 

蛇を食べるつもりなの?

 

そうよ、じゃなければこんな事しないわ、火を起こすからその間見張りを頼むわよ

 

 

薪と枯れ草を集め焚き火を起こす、焚き火の前に平な岩を一つ置いて熱されるのを待つ事に。

 

 

焼いて食べるわよ

 

うん…

 

 

熱された岩に蛇を並べて焼いてゆく、しっかり火を通さなければ。

 

 

どう?冒険家になった気分は

 

嫌な事だらけだよ

 

そうね、本で読むだけだと分からないわ

 

でも

 

何よ

 

少しだけ楽しいよ

 

なら良かったわ、これを食べたら寝るわよ

 

うん

 

 

こんがりと焼けた蛇にかじりつく、懐かしい味だ。

 

 

うげぇぇまっず…

 

皮と内臓を取らないからよ、仕方ないわね、私のを食べなさいよ

 

そうする

 

 

私のとウィルの蛇を交換する事に。

 

 

全然違う…こっちの方が美味しい

 

だから言ったじゃない、人の言う事を聞かないからよ

 

ごめん…

 

食べたら寝るわよ、明日は古城を探検するんだから

 

お風呂は?ベッドは?

 

どこを見たらそんなのがあるように見えるのよ

 

そんな…

 

諦めなさいよ

 

 

焚き火を消して適当な所に寝転がる、見上げると満点の星空が輝いていた、それを見ながら煙草に火をつける。

 

 

すごく綺麗な星空だね

 

そうね、あんたもたまには空を見上げなさいよ

 

そうするよ

 

ほら、貸してあげる

 

 

腰のマントを外しウィルにかけてあげる。

 

 

ありがと

 

別に、早く寝なさいよ

 

う、うん

 

 

すぐ目を覚ませるように意識を尖らせながら眠りにつく、アスカロンに会いたくなってきた。

 

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