働き始めて二週間が過ぎた。最初の頃を思えばお客も安定して来るようになり私達はそれなりに忙しい日々を送っていた。今日も開店前に目を覚ましてパジャマ姿で準備をしようとしていた。
そろそろお休みの日を決めませんか?
そう言えば決めてなかったわね
営業時間は決めてあるのだが休日を決めるのを忘れていた。あんまり働き過ぎると労働基準局に目をつけられるかも知れない、私はよくわからない心配をし始めていた。
アスカロンはどれぐらいお休みが欲しいの?
そうですね、一週間に2日ぐらいは欲しいです
分かったわ、水曜と日曜を休みにするわ
ありがとうございます♪
たまにはのんびりする日を作らないとね
はいっ♪
お客が来るようになった。そうは言っても何もしていない時間は目立つ、が、誰か来る事を心配して二人、または一人は店に居なければならない、心と身体を休める時間も必要だ、カレンダーを見ると今日は日曜日、早速休みにしよう。
玄関に本日定休日と札をかけておく、これで今日は自由だ。そうは言っても
暇ね
そうですね…
常に働いていた二人に急な休日はやる事を迷子にさせていた、頭をフル回転させてやりたい事を探す、そうだコーヒーを淹れる機械を買いに行こう。
私はやりたい事が決まったわ、アスカロンはどうなの?
私は…何も思いつきません…
そう、私は雑貨屋に行くわよ
それなら一緒に行きませんか?
分かったわ、準備をしましょ
はいっ!
お互いいつもの服に着替えて戸締りをして店を出る、目指すは雑貨屋だ。
雑貨屋さんに何を買いに行くのですか?
コーヒー豆を挽く奴が欲しいのよ、このままだと私はお預けのままよ
そういえば楽しみにしていましたね
あの屋敷で飲んだコーヒーは美味しかったわよ
その話をまだ私は聞いていませんよ?
ならコーヒーを飲みながら話してあげるわ
もう私の頭の中をあのコーヒーが支配していた、あの味を落ち着いて家の中で楽しめる、そう思うだけで心が躍る。
おじさん、コーヒー豆を挽く機械ってあるのかしら?
いつのまにか雑貨屋に着いていた、さぁ早く私の前にコーヒー豆を挽く物を差し出しなさい。
あぁーーコーヒーミルの事かな?
コーヒーミル?
そうだよ、ちょっと待っていなさい
分かったわ
私、店内を見て回って来ますね
分かったわ
レジの前で待ちぼうけを喰らう、ついでにライターのオイルも買って帰ろう、それと欲しい物を考えて置かなければ。
お待たせ、これの事だね
何よこれ?
これがコーヒーミルだよ
へぇ
おじさんに使い方を説明してもらいフィルターとセットで購入する事に。
ユリちゃんとアスカロンちゃんはコーヒーを良く飲むのかな?
嗜む程度よ
ならこの大きさで問題無いよ、二人分なら丁度いいだろう
ありがと、後50番のカートンとライターオイルを貰うわ、アスカロンと一緒に会計をするから待ってて
分かったよ
しばらく待っていると沢山の調理道具をカゴに入れたアスカロンがやってきた、家にある物は古くて使い物にならないのが多いんだって。
ありがとうございましたー
また来るわ
会計を済ませ沢山の荷物を持って帰路に着く、あぁ早くコーヒーが飲みたい。
私、買った物をしまってきますね
なら私はコーヒーを淹れるわ
私の分もお願いしますね?
任せて
コーヒーミルの蓋を開けて豆を入れて閉じる、そしてハンドルを回してゆくと粉末が出来上がった、それをフィルターの上に乗せてコップにはめ込みお湯を注ぐと良い香りが部屋中に巡ってゆく。
ーーーー♪
いつのまにか鼻歌を歌っていた、アスカロンに聞かれてないか辺りを見渡すと柱の影から私を見ていた。
…今のは早く忘れなさいよ
ユリもこういう一面があるんですね♪
もう、怒るんだからね!
怒られてもお釣りが来るので大丈夫ですよ♪
むぅぅぅぅ
恥ずかしくて顔から火が出そうだった、けどもうすぐコーヒーが飲める、ゆっくりフィルターを外せば出来上がりだ。
ほら、アスカロンの分もあるわよ
いただきますね♪
先程から上機嫌なアスカロン、笑顔でフレッシュとシュガーを注いでいる、それを見ながら一口、まっずっ
うげっ何よこれ、飲めたもんじゃないわ
そうなのですか?私は美味しいと思いますよ?
それだけ入れればそうなるわよ、私はブラックで飲みたいのよ、これは改善が必要ね
また私が頭を悩ませていると玄関がノックされた、急に休みにしたから気付かない人が来たのだろうか?
私が出るわ、アスカロンはゆっくりしていて
はいっ♪
今日は定休日よ、依頼なら明日引き受けるわ、そう言いながら玄関を開けると見慣れた顔が二つ。
キル姫、遊びに来たよ
坊っちゃまのお供で参りました
ちょうど良いところに来たわ、リチャード、コーヒーの淹れ方を教えてよ
畏まりました
キル姫!僕は無視かよ
私はキル姫って名前じゃないわよ、二人共に入りなさい、アスカロン、お客よ
依頼が来たのですか?
私のお客よ、ウィルと執事のリチャードよ
こんにちわ
お邪魔しております
私、アスカロンって言います、よろしくお願いしますね♪
この人がキル姫の相棒?
そうよ、相棒でもあり友でもあるわ
キル姫より可愛いね
斬り刻むわよ!
まぁまぁ、それでお二人はどうしたのですか?
今日は学校が休みだから遊びに来たんだ、キル姫、後で剣技を教えてよ
たった今あんたに教える事なんて無くなったわよ
ユリ様、コーヒーの淹れ方と交換で如何ですか?
ムスッと答えるとすかさずリチャードが交換条件を出してきた。
それを言われたら断れないわね、ならアスカロンに教えて貰いなさいよ
私ですか?
そうよ、私に剣を教えてくれたじゃない
ええっとウィル君でしたよね?私で良ければ教えてあげますよ?
アスカロンさん、よろしくおねがいします
ちょっと!私も名前で呼びなさいよ!
キル姫はキル姫なんだよ
そこそこ戦えるようになったら二度と立ち直れないぐらいにシバいてあげるわ
キル姫なんかに負けないよーだ
少し裏庭に行ってきますね、大人しくしてて下さいよ?
分かってるわよ!リチャード、お願いね
畏まりました
リチャードにコーヒーの淹れ方を教わる事に、よく分からない専門用語を言いながらリチャードがコーヒーを淹れてくれた。
こうすれば美味しいコーヒーが淹れれますよ
分かったわ、やってみるわ、それよりウィルはあの後怒られなかったの?
少し奥様と喧嘩になりましたが私が仲裁に入り難を逃れました
そうなんだ、ウィルは冒険家になれそうなの?
どうでしょうか?
リチャードが淹れてくれたコーヒーを飲みながら煙草に火をつける、あぁ、幸せ
リチャードは誰と旅をして居たの?
私はゲイボルグと共に旅をしておりました
聞かない名前の姫ね
然るべき時に繰り出される槍は実に頼もしい、何度も私の危機を救ってくれました
いつか戦ってみたいわね、まだ共鳴はしているの?
はい、今も何処から私を見守ってくれています
気配を察しても何も分からないわ、余程の手慣れね
客人と喋りのんびりとコーヒーを飲む、なんて充実した休みの日なんだろう。
話は変わるけどシャンプーとかどこで買っているのよ?後あのコーヒー豆も
輸入品でございます、一般の方が手に入れる事は困難かと
私も欲しいわ、今度代行をお願いするわよ
分かりました、手配しておきます
頼んだわよ、アスカロン達の様子でも見に行きましょう
はい
玄関を出て家をぐるりと周り裏庭へ、アスカロンとウィルが打ち合いをしていた、
へぇ、なかなか良い筋してるじゃないの
坊っちゃまは飲み込みが早いのです
アスカロンも手加減をしているのだろう、それでも果敢に攻め立てている、そろそろ私が相手をしてやろう。
ユリ様、台所をお借りしても宜しいですか?
構わないわ、何をするつもり?
そろそろ昼食のお時間なので
本当ね
腕時計で確かめるともうすぐお昼だ、言われてみればお腹も空いた気がする。
二人共、もうすぐお昼よ
はいっ
もうお昼か
ウィル、あんた強くなったわね
もうキル姫にも勝てるよ
舐めんじゃないわよ、後で泣かせてやるわよ
へへーんだ
私お昼ご飯作りますよ?
リチャードが作ってくれているわよ、行くわよ
はーい
家に戻ると美味しそうな香りが漂っていた、聞くとオムライスを作っているみたいだ、しばらく待っているとテーブルに並べてくれた。
オムライスとコンソメのスープでございます
いただきまーす
四人でオムライスを食べる事に
リチャードさん、すっごく美味しいです!どうやって作っているのですか?
コツがありまして、良ければ教えてあげます
はいっ!お願いします!
確かにこのオムライスは美味しい、その辺のレストランに負けていないだろう。
ウィルはいつもこんな美味しい物を食べていたの?
爺のご飯しか食べてないから分からないよ
後で八つ裂きにしてあげるわ
なんでだよ!
こんな美味しい料理を食べ無かったからよ
今は残さず食べてるよ、食べ物のありがたみが良く分かったから
良い心がけね、冒険に連れて行った甲斐があったわ
坊っちゃまは成長しました、強くもなり優しくもなりました
ユリはウィル君に何をしたのですか?
冒険に連れて行ったのよ、と、言っても私が昔してた生活をさせただけだけどね
どんな生活をしていたのだろう?気になったけど口に出すのをやめた。
ご飯を食べ終わり少しのんびりしてからアスカロンはリチャードに料理を教わるようだ、私はウィルと剣の練習をする事に。
さぁ、ウィルの力見せてもらうわよ
キル姫なんかに負けないよ!
お互い剣を構えて対峙する。
やぁぁぁぁぁ!!
何よ、口程にも無いじゃ無い
軽やかなステップで躱し軽口を叩く。
なんで当たらないんだよ!
もっと相手をよく見てしっかり隙を狙うのよ
くそっ!
イラつくんじゃないわよ!もっと冷静になりなさい!
振り下ろされた剣を躱し首に双剣を突き付ける。
冷静に対処出来ないなら勝てるものも勝てないわよ
うっうぅぅぅ……
リチャードが言うように筋は良いわね、後は努力と根性よ
剣を下ろし煙草に火をつける
勝てると思ったのに
潜った修羅場の数が違うわよ、ウィルも命をかけて戦えば強くなるわよ
今度やってみるよ
ちゃんとリチャードが近くにいる時にするのよ
うん!
煙を吐き出しながら私もまた修行しようか、そんな事を考えていた。
アスカロンさんも強いの?
当たり前よ、私と同じぐらいじゃないかしら?
ならこの世界にキル姫とアスカロンさんに勝てる人なんて居ないんだ
そんな事無いわよ、上には上がいるわ
世界って広いんだね
そうよ、まだまだ私にも知らない事が沢山あるわ
煙草を揉み消し家に戻る事に、キッチンを見ると沢山の料理が並べられていた。
保存の効く料理です、3日程なら持つと思います
ありがと、助かるわ
それとキル姫、僕から前のお礼だよ
ウィルから渡された袋。
何が入っているのかしら?
うちのシャンプーと石鹸だよ
ありがと
ニヤける顔を見せない為に背を向けるとアスカロンと目が合ってしまった。
そんなに良い物を貰ったんですか?
アスカロンも使って良いわよ
楽しみにしてますね♪
坊っちゃま、そろそろ
分かったよ、キル姫、アスカロンさん、もう帰るね
分かったわ、また来るのよ
うん!
ウィルとリチャードを見送り家に戻ってゆく。
ウィル君良い子でしたね♪
ただの生意気な子供よ、片付けてご飯にするわよ
はいっ♪私も頑張って作ったんですよ?
楽しみにしているわ
少し片付けをして夜ご飯にする事に。
んっ、美味しいわね
リチャードさんに教えて貰ったんですよ、あの人何者なんですか?
昔は冒険家をしていたみたいよ、それに奏官だわ
気づかなかったです
人にしては強い力を秘めているわ、今は執事をしているんだって
あの紳士的な立ち振る舞い、それにこんなに美味しい料理を作れるなんてあぁ、羨ましい
アスカロンはああいう男が好みなのかしら?
いえっ、違いますよ!
ジョークよジョーク、食べ終わったらまだ楽しみが残っているわよ
何があるのですか?
お風呂に行けば分かるわよ
片付けをして一緒にお風呂へ。
たまには私が洗ってあげるわよ
アスカロンを椅子に座らせシャワーを浴びせ頭を洗ってゆく。
すっごい良い匂いです!
ウィルに貰ったのよ、私もこの香りが気に入ったのよ
頭洗うの上手くなりましたね
ウィルにも褒められたわよ
一緒にお風呂に入ったのですか?
一回だけよ
ウィル君も年頃なのでそう言う事はやめておいた方が良いですよ?
私は気にしないわよ
シャワーで洗い流し次は私が頭を洗ってもらう。
やっぱりアスカロンの方が上手よ
いつも洗ってあげてますからね
それなら私も練習しなきゃね
頭を洗い流された後に手を石鹸で泡立ててアスカロンの身体を洗ってゆく
くすぐったいですよっ
たまには良いじゃない、大人しくしてなさいよ
なら私もユリを洗ってあげます
アスカロンも手に泡を立てて私を洗ってゆくとだんだんと二人の身体が泡に包まれてゆく。
くすぐったいわよ
さっきのお返しですよ♪
もうっ
あっ
アスカロンが泡で滑り私に抱きついてくる、そのまま床に押し倒されてしまった。
大丈夫ですかっ!?
なんとか大丈夫よ
今退きますねっ!
アスカロンが立ち上がろうとしても泡で滑り上手く立てないようだ、私の身体をぬるぬると弄ってくる。
うぅぅぅぅぅ……わざとよね?
ちがいますっ!
そう言う割に手つきがイヤらしいわよ
こ、これは偶然手を置いた場所が悪かっただけで!
私の右胸を鷲掴みにするアスカロン、少しからかってやろうと思い両手を伸ばしアスカロンを抱きしめた。
あっ……
脈が早いわね、どうしたのよ?
抱きしめてアスカロンの体温と素肌を楽しむ、たまにはこう言うことも良いだろう。
ユリっ……
なによ
少しだけ身体を離して見つめ合うと悪くない雰囲気が二人を包む。
……………………
お互いが唇を近づけようとした時だった
いたっ
石鹸が私のおでこに落ちてきた、我に返る二人
い、いい今退きますからねっ
ん、、
身体を捩り私の上から離れるアスカロン、泡をシャワーで洗い流しそのまま湯船に。
良い石鹸も考えものね
そうですね…
そのまま少し湯船に浸かり身体を拭いて寝室へ。
寝るわよ
はいっ
布団に潜り込みアスカロンに腕枕をしてもらい眠りにつく事に。
おやすみ
おやすみなさい