「良いんじゃ無いですか?」
ユグドラシルにある教会を飛び出してからあたし達はインテグラルキラーズの情報を求めてひたすらに歩いていた。敵を知らなければ百戦危うからずってね。
「そのインテグラルキラーズって誰がいるのよ?」
「ファーストキラーズの人達ですね。フライクーゲル、アルテミス、マサムネ、パラシュ、ロンギヌス、レーヴァテイン、ティルフィングですっ」
「ファースト?って事は他のグループも居るの?」
「はいっ。その次の世代は私達セブンスキラーズなんですよ。ファーストキラーズの皆様は私達の先輩に当たるグループですっ」
「へぇ、ならある程度の事は分かるって事ね。でもなんで剪定?を始めたんだろ」
「さぁ?そこまでは私も分かりませんけど、、」
「ふむ」
そんな会話をしながら気が付けばあたし達はこの天上世界の最果てまで歩いて来ていた。アスカロンに聞くと海と呼ばれる場所らしくここから飛び降りると地上世界に行けるらしい。
そう言われて崖から下を覗くと紫色の雲が立ち込めその先は全く見る事ができなかった。
「いや、ここから飛び降りたら死ぬわよね」
「その辺りはなんとも言えませんけども、、、」
とりあえずその世界の果てまできた記念にここで一休みする事に。今からどうするのかを話し合う為に手頃な岩の上に腰掛けて煙草に火を灯していた。
「それで、これからどうするの?」
「そうですねっユグドラシルに戻りながら街を訪ねていきませんか?剪定をおこなうのであれば人が多い街にインテグラルキラーズは現れると思うので」
「そうね、そうしよっか」
最後に煙を吸い込みそれを吐き出しまだ火の付いた煙草を海へと向かい弾き飛ばした。するとあっという間に目で追う事ができなくなってしまっていた。
「行くわよ」
「はいっ」
立ち上がりお尻に付いた砂を払いながらあたし達は再び歩き始めていた。
「アスカロンは剣を使うのよね?」
「そうですねっ、それと私は氷を操る事ができます」
「氷を操るってどんな事ができるの?」
「相手を凍らせたり氷弾を飛ばしたりとある程度の事はできます。その代わり氷を扱うのにマナを使用するので使いすぎると動けなくなっちゃいますけどね。次は私が質問しますね、ユリはどの様に戦うのですか?」
「あたしはこの二本の剣を使うスタイルね。ほかは騙し討ちや暗殺、偵察は任せて」
「なんだが忍者みたいですね」
「忍者?何よそれ」
「昔に存在したとされる隠密活動を得意とする人達のことですよ」
「へぇ」
お互いの事を話しながら歩いていると一つの街が見えてきた。ここまで来た疲れを癒すためにもその街へと向かい歩いてゆく。
二人して関所から街を覗き見ると数える程の家が建ち人口は少なそうだ。これは街と呼ぶよりも村といった方が正しいかもしれない。
「とりあえず宿を探しましょ」
「そうですねっ、でもありますかね?」
「無かったら野宿よ」
そう言い切り先を歩くと少し遅れてアスカロンが歩みあたしの隣へと。その後二人して村を回ったのだが宿は見つからず気持ちを切り替え野宿しやすそうな場所を探し始めていた。
「野宿ならここね、近くに川もあるし動物の足跡もあるわ」
「野宿は嫌ですっ!誰か泊めてくれる人が居ないか探してきますっ」
住宅へと向かい走っていったアスカロンを見送りあたしは焚き木をする為の薪を集めていた。そんなに野宿は嫌なものなのだろうか?毎日野宿をしていたあたしには分からない感覚である。
薪を集め終わったあたしは河原に付いている動物の足跡を観察していた。この足跡はウサギか?この辺りを根城にしているのなら巣穴が近くにあるはずだ。身を屈め殺気を消し辺りを注意深く観察していると岩の陰に小さな穴を発見しそこに忍び寄ると穴の前にコロコロと糞が転がっていた。試しに一つ指で摘んでみるとまだ柔らかくこの穴に居るのは間違い無いだろう。
(・・・・・・)
腰に携えた鞘から剣を抜き出しウサギが姿を見せた瞬間に振れる様に構えその瞬間を待っていた。
「何をしているんですか?」
「静かに、今ウサギが出てくるのを待ってんのよ」
「あはは、、それより泊めてくれるって人が見つかりましたよ。早く挨拶に行きましょうっ」
「分かったわよ」
渋々ウサギを狙うのを諦めて嬉しそうに歩くアスカロンの背後に付いて歩いてゆくとこの寂れた村の中でも一番大きな家へと案内されていた。まぁ大きいと言っても他の家に比べたらの話なのだけど。
「ごめんください、私のマスターを連れて来ました」
そう言いながらドアをノックしてしばらく待っていると初老の男性がドアから顔を覗かせあたし達を舐める様に見た後ドアを完全に開いてくれた。
「やぁ、さっきのキル姫のアスカロンだね、それと、、」
「あたしはユリよ、まずは泊めてくれるみたいでありがとう。それとインテグラルキラーズに付いて何か知っている事があるのなら教えて貰いたいわ」
そう言いながらポケットからエンシェントキラーズのシンボルが彫られたライターを取り出し見せると一瞬目の色が変わった気がした。
「これはこれは、教会の使者だったのか。それならば丁重にもてなさなければね。立ち話もなんだ、お茶でも出そうじゃないか」
着いてきなさい。そう言われて家の中へと入り家主の後をついて行く。家の外観より綺麗な廊下に棚の上には高価そうな装飾品がちらほらと置かれている。
(良い人と出会えて良かったですねっ♪)
(安心するにはまだ早いわよ。アスカロンも警戒してて)
(考えすぎですって)
そして廊下を進みドアを開け一室へと案内され四人がけのテーブル席へと、男性とテーブルを挟み向かい合わせて席へと座っていた。
「飲み物は紅茶で良いかね?」
「はいっ、お願いします」
そう言って席を立ち他のドアから部屋を出ていった。それを見送ってから部屋を見渡して行く。
この部屋にもあちらこちらに高価そうな剣や盾、装飾品が置かれており部屋を彩っている。だけど何となく違和感を感じていた。
その違和感を探るべく五感を澄ませるのだがアスカロンのお腹の音が邪魔で何も感じ取れずにいた。
「そんなにお腹すいたの?」
「だってここに来るまでほとんど何も食べていなかったじゃないですか、ユリはお腹空いていないのです?」
「あたしもお腹空いたわよ。だけどご飯を出されてもすぐに食べたらダメよ」
「はぁいっ」
唇を尖らせ返事をしてくれた。やっぱりウサギを一羽狩って食べてから来るんだった。そんな後悔を少しだけしていた。
「待たせたね、ほら冷たいアイスティでもどうぞ」
「あっ、ありがとうございまっす♪」
おじさんが机にグラスを置いてくれた後手を伸ばし両手でグラスを持つと喉を鳴らしながら一気にアイスティーを飲み干していた。
「おかわりもあるからね」
「なら、お言葉に甘えて、、、」
恥ずかしそうに空のグラスを前に出すとおじさんが微笑みながらティーポットから紅茶を注いでいた。それを再び飲み干してゆく。
「ユリちゃんは飲まないのかな?」
「・・そうね、いただくわ」
そう言って目の前に置かれたグラスへと視線を向ける。水滴を光らせるグラスを持つとカラカロと涼しげな氷の音が。そしてゆっくりと口へと運び唇を付けると少しだけ口の中に含みグラスを置いた。
少し口に含んだだけで口から鼻へと茶葉の香りが抜けてゆく。それに程良い苦味と爽やかな甘味、あたしは紅茶の事はよく知らないが美味しいアイスティーなのだろう。ただ、口に残る僅かなエグ味を除けば。
「それで、インテグラルキラーズに付いて何か知っている事はある?」
「うむ、しばし前にテレビで見た後この近辺の街に現れたと聞いている。その者達が剪定を行うと剪定された人物は光となりあの反転したユグドラシルへと向かい飛んでゆくそうだ」
「なるほどね、それが剪定をした証ね。んで、その剪定を行った街は何処にあるのよ」
「この街からユグドラシルへ向かい10キロ程進んだ所にあるよ」
「分かったわ。明日の朝そこに向かうわ。そうだ、宿代ぐらい払うわよ」
ポケットから財布を取り出そうとした時礼など要らぬと言われ顔を上げた。
「ただ、身体で支払ってもらうよ」
おじさんが立ち上がり3回ほど手を打つとドアが開き若そうな男性達が姿を見せてくれた。
「まっ、こんなこったろうと思ってたわよ。どーせ飾ってある装飾品もこの手で奪った物なんでしょ」
相手の数は10人程か。見た限り武器は持っておらず、代わりに気色の悪い笑顔が顔に張り付いていた。
「キル姫に助けを求めても無駄だよ、彼女はすっかり眠りの中だからね」
「知ってるわよそんな事」
チラリと横を見ると椅子に座ったまま幸せそうに眠るアスカロンの姿が。それを見て軽くため息を吐いた後煙草を咥えて火を灯す。
「まぁ良いわ、誰でも良いから好きな様にかかってきなさいよ」
あたしの言葉に一番若そうな奴が先陣を切りあたしに飛びかかる。その顔目掛けグラスを投げ付けると鼻へと直撃した。
「〜〜〜〜〜っ!!!」
鼻を押さえながら後退してゆく、その手の下から拳を振り上げ顎を打ち抜く。
アガッ!っと悲鳴をあげ倒れた若者を蹴飛ばし残りの連中へ向かい手招きを。
「ほら次!あたしは今寝不足と空腹で良い感じにイライラしてるんだからね。手加減なんて期待しないでよね」
ギラギラと睨み付けると一人、二人と後退り顔に汗を浮かべてゆく。それを見て腰に携えた鞘から二本剣を抜き出し両手に構え一歩大きく踏み出す。
「あたしが死ぬ順番を選んであげる。そうね、一番歳をとったあんたからよ」
狙いを定めると一気に床を蹴り加速。その姿を見て逃げ出そうと走り出したのだが逃すはずもなく走る男達の頭上を飛び越え目の前に降り立つ。
ひっ。これが彼等の最後の言葉だった。
その後家を漁り金目の物をカバンへと詰め込みアスカロンを背負い村を出る事に。
しばらく歩き見晴らしの良い所でアスカロンを下ろしあたしも横になる事に。
目を閉じてしばらくすると少しの眠気が。それが段々と強くなってゆく時にお腹が鳴りその音で眠気が去ってゆく。
(やっぱりウサギを食べておくんだったわ、、、)
後悔先に立たず。そう言わんばかりにお腹の音が鳴り響いてゆく。