結局一睡も出来なかった、疲れているのに、眠気があるのに全く寝れなかった、寒さのせいもあるかも知れないけど以前なら寝れたのに。
寝不足でふらふらする身体で立ち上がり大きく伸びをしてため息を一つ、一度教会に戻って聞いてみよう。
地図を広げて見てみるとこの距離ならお昼ぐらいには辿り着くことができるだろう、眠たい頭を起こす為にポケットを探り煙草を取り出す、開けると空箱だった。
ちっ
空箱を握りつぶし投げ捨て何も考えずに教会を目指して歩く、でもすぐにアスカロンの事を考えてしまう、ダメだ、私アスカロンに依存してるのかしら?
自分を嘲笑い前を向き教会へ向かう、しばらく歩くと外壁が見えてきた、時刻は午前11時、捜索を依頼して一日経っている、何か情報が入っているかもしれない、少しの期待を持って門を開けて受付へ。
何か情報は手に入ったかしら?
まだ何も、しばらくお待ち下さい
しばらくっていつまで待てば良いのよ
情報が入り次第自宅に手紙を送らせて貰います
分かったわ、お願いね
爆発しそうな感情をグッと堪えて教会を出る、一度家に帰って寝よう。
無心で家に帰り玄関を開けてそのまま寝室へ、剣を服から外しそのまま布団に寝転がる、アスカロンが見たら着替えて下さいと怒るだろう。
眠ろうと目を瞑ったのだが何かが足りない。そうだ、手を伸ばしアスカロンが使っている枕を私の頭の下に敷いた。
私はいつも腕枕で寝ているから私の枕はこの家に無いのだ、少しだけ残るアスカロンの匂いに安心したのかいつの間にか眠りに落ちていた
…………………………………………………………………
はっ!!
布団を跳ね除け起き上がり時計を見ると11時だった。窓を見ると太陽がある、どうやら丸一日寝てしまっていたようだ、立ち上がり身体を伸ばすとパキパキと骨が音を立てる。
迂闊だったけど寝不足は解消された、後はご飯を食べれば完全回復だ。それからまたアスカロンを探しに行こう。
玄関を開けて外へ、ポストをチェックして舌打ちをしてから教会のある街へ、適当なご飯屋を探して歩いて行く。
何を食べようか?少しだけ今を楽しむ余裕が心に生まれていた、立ち止まり街を見渡すとこじんまりとした洋食屋を見つけた、なんとなくそこに入って行き適当な席に座る、メニューを見るとオススメはオムライスのようだ。
おじさん、オムライスセット一つ
まいどー
待っている間暇なので店内を見渡すも私の他に客は居なかった、時刻は午後0時半、御飯時に人がいないって事は……うん、考えるのをやめよう。
お待たせしました
ありがと
運ばれて来たオムライスとスープとコーヒー、匂いは普通ね、スプーンでオムライスをすくって一口、んっ美味しっ。ふわとろたまごとチキンライスがいい感じに合わさっている、スープも美味しい、気がつけば私は夢中になって食べていた。
今度アスカロンと来よう
食後のコーヒーを飲みながら煙草に火をつけてそんな事を考えていた。
ん?新聞か…
なんとなく目についた新聞を取りに行き席に戻り広げて目を通してゆく、平和な記事ばかりだったが最後まで読もうとパラパラとめくってゆく、ひとつだけ気になる記事が。
[集え最強のキル姫]
マサムネ城をコロシアムとして再利用して勝ち抜き戦を行うようだ、優勝者には10.000.000ゼニーが支払われるみたいだ、そのゼニー欲しい…もう家にお金は残っていない、全財産は私が持っている50.000ゼニーだけだ、あの詐欺師に騙されていなければ……
嫌な事を思い出して怒りの炎が心を焦す、もし次会ったらあの前歯を全部へし折って奪われた金を返して貰おう。
ため息をついて新聞を戻しお会計をする、亭主に美味しかったって事を伝えるとまた来てくれとの事、また来るわと返して外へ、教会に行こう。
大きく伸びをして歩き出す、まだ情報が入って無かったらまた街を彷徨って情報を集めよう、期待せず門を開けて受付に行くと声をかけられた。
アスカロン捜索依頼を出したユリさんですね?
そうよ、何か情報が入ったのかしら?
キトゥリスで目撃情報がありました
分かったわ、ありがと
教会を出てキトゥリスを目指す、ついでにあの大会に出よう、ちょうどストレスも溜まってるし。ニヤリと笑いキトゥリス目指して草原を駆け抜けて行く、しばらく走ると懐かしい城が見えてきた。
城門で立ち止まり城を見上げる、相変わらず立派ね。
辺りを見渡すと人集りができている、あそこで受付をしているようだ、人をかき分けて名簿に名前を書きに行く。
おっ君も参加するのかい?
そのつもりよ
運が良いね、後一人で締め切ろうとしてたんだよ
私は悪運が強いのよ
名簿に名前を書いて他の参加者の名前を見る、リットゥ、バルムンク、グラムにクラウ・ソラス、デュランダル、他にもいるのだが一つ気になる名前が合った[レヴィ]なんとなく何処かで聞いた事があるような気がする。
この大会は何時から始まるのよ?
明日の朝8時からだよ
分かったわ、集合場所はここで良いのね?
そうだよ、健闘を祈る
ん
返事をして懐かしい城の広場を歩く、ここで師匠に稽古をつけてもらったんだよね、そう言っても一方的に向かって行っただけだけど。
私が叩きつけられて気を失っていた壁を撫でて煙草に火をつける、あの時より私は強くなっている、でも心はあんまり強くなっていないみたいだ、すぐにアスカロンの事を考えてしまう。
会いたい、会ってギュッてしてもらいたい、なんて恋する乙女みたいな事を考えていた、ふと我に返り顔を叩き気合を入れる、時刻は午後4時、宿を探そうか。
城下町を歩き空いている宿を探す、同じ事を考えている人が多いのか何処の宿も満室の張り紙が貼ってあった、諦めずに探していると街を少し離れた宿に一部屋だけ空いているのを見つけることができた、そこにチェックインして案内された部屋に荷物を降ろして一息つく事に。
はぁ、、、
そうは言っても出てくるのはため息ばかりだ、気分転換に窓を開けて煙草に火をつける。夕飯の時間が7時で今が5時、少し身体を動かそう、煙草を揉み消してホテルを出て少し歩いて街の外へ、この辺りで良いだろう、久々に二本の剣を両手に握り素振りをする。
ステップを刻みながら一本だけ生えている木に向かって剣技を繰り出す、反撃を予想して後方へ飛び退きながら骸斬と七元を鞘に戻す、そして。
一紅閃っ!!
居合い切りのように七元を振り抜きそのまま一回転、その勢いで骸斬を振り抜きもう一回転。
二紅閃っ!
二本の剣は木を挟み込むように寸止めで止まっていた、うん、久しぶりだけど上等だろう、今度ウィルに一紅閃を教えてやろう、満足したので手頃な石に座り煙草に火をつけた時に何かの気配を感じた。
………誰よ?
フッフッフッ、良く気がついたね
いつから見ていたのよ
最初からだよ、名を知らぬキル姫よ
全身を黒いローブで包んだ男に話しかけられた、顔はフードを深く被り分からなかったが不愉快な感じがする。
なんでも良いけど早く消えてよ、私は忙しいのよ
良かったら名を教えては貰えないか?
嫌よ、あんたに名乗る名前なんて無いわ
ふんっ、まぁ良いだろう、また会おう
なんかキモい事を言ってその男は去って行った、追いかけて行って殴りたい衝動を堪えて煙草を揉み消す、あいつ奏官ね、微かにバイブスを感じた、あんな奴に仕えているキル姫の顔を見てみたいものだ。
はぁ、、、気が抜けてしまったので宿に帰る事に、ちょうど夕飯の時間だったので食堂でご飯を頂きそのまま温泉へ。
脱衣所で服を脱ぎ捨て掛け湯をして温泉へゆっくりと浸かる。
はぁ…
湯船の壁に腰を預けて足を伸ばして温泉を堪能する、疲れと悩みがお湯に溶けてゆくのを感じながらぼぉーっと外の景色を眺めていた。
んっ
目の前に落ちる白い埃みたいなもの、一つだけじゃなく無数に湯船に向かって落ちて行く、空を見上げると沢山宙を舞っていた。
雪か…
最近急に冷え込んだのは雪が降る前兆だったのか、うぅ…寒っ
肩まで湯に浸かり寒さを凌ぐ、こうなると身体を洗いに行くのが億劫になってくる。後20数えたら身体を洗いに行こう、舞い落ちる雪を見ながら数えて意を決して洗面台へ、急いで身体を洗い再び湯船に戻る。
はぁ…幸せ…
少し眠たくなってきた、再び20数えて脱衣所へ、浴衣に袖を通して借りた部屋へ。もう準備してあるお布団に潜り込んで目を瞑る、明日の大会、意地でも優勝してやろう、そんな事を考えていたらいつのまにか眠りに落ちていた。