まだ薄暗い時間に目を覚ましてしまった、腕時計を見ると午前3時、起きてしまったついでに煙草を吸いに行こう。起き上がりそろりとベッドから抜け出し振り返るとアマダスとそのマスターが居なかった。何処へ行ってしまったのか?まだ教会に行って欲しいって事を伝えていなかったのに。
ふむ
考えても仕方ない、ドアを開けてホテルの外へ、刺すような寒さの中煙草に火をつける。
ん?
ホテルの入り口近くに服が綺麗に畳まれて置いてあるのを見つけた、何を意味するものなのだろうか?まぁ良いか。
煙を吐き出しながら夜空を見上げて輝く星を見つめていると視界の端に何かが入り込んだ、すぐさまホテルの壁に身を隠し様子を伺う事に。
散歩か、、、
暗くてよく分からなかったが散歩をしている人がいた、その横には大型犬みたいなのも居る、こんな時間に散歩をする人もいるのか。
しばらく見ていると雲が流れ月明かりにその人が照らされた。犬だと思っていたのは人だった、目を凝らして見てみると女の人が全裸の男に首輪をつけて散歩をさせていた、私には理解できない光景だ。
はぁ
ため息を一つついて煙草を揉み消して部屋へと戻る事に、すっかり冷えてしまった身体でアスカロンに抱き付き至福の二度寝へ。
………………………………………
ユリ、起きてください
んっ、いま何時?
もうすぐ8時ですよ?
アダマスとマスターは?
もう起きてますよ
分かったわ
二度寝で怠くなった身体を起こし二人に挨拶をする、朝食もルームサービスで頼めるようなので適当なメニューを頼みその間に着替えを済ませる。
今日の早朝にすごい人を見たわよ
どんな人なのですか?
女の人が全裸の男を散歩させていたのよ、それを見た時は言葉を失ったわ
へぇ、そんな人がいるのですね
世界は広いわね、二人はそういう変な人を見た事あるかしら?
あぁ、うん、俺は見た事無いよ
私も見た事はないわね
そういえば私が起きた時にベッドに居なかったけど何をしていたのよ?
アダマスと散歩してたんだよ、ほら、久しぶりに会えたからさ
そ、そうよ、私が居ない間に何か変な事をしてないか聞いていたのよ
二人の挙動が変だがまぁ良いだろう、運ばれて来た朝食をいただきホテルを出る事に。
ユグドラシルの麓にある教会に行ってもらうわ、私の名を言えば伝わるからさ。
分かったよ、色々世話になったね
縁があればまた会いましょう
二人と別れてエゼル村に向かう事に、冬の寒さを和らげる日差しを浴びながら竜に乗り道を進んでゆく。
このまま真っ直ぐ行けばつきそうね
分かりましたっ
地図を見ているとアスカロンの声が響いた
ユリっ!エゼル村の方から煙が出ていますっ!
急ぐわよ!ポチ!!
ギャっと返事をして加速するポチ、それに振り落とされないようにしっかりとしがみついていると村が見えてきた。そのまま村の入り口まで連れて行ってもらう。
酷い光景ね
そうですね…
村の民家の大半が火に包まれていた、村人は大丈夫なのだろうか?
私の氷で消しとめますっ!
そうね、お願いするわ
行きますっ!これがレヴィアタンの力っ!!
剣を高く掲げて巨大な冷気の塊を作り出した、それを燃え盛る民家に向かって放つとそのまま氷に包まれてゆく。
流石アスカロンね
はぁぁぁっ、、、
どうしたのよ?
魔力を使い過ぎて動けませんっ、、、
もうっ、ほら
ごめんなさいっ
疲れ果ててしまったアスカロンを背負い村を歩いてゆく、民家が固まっている所以外は畑が広がってるようだ。
村って言うから小さいと思ってたけどなかなか大きいわね
そうですねっ
きっと農村なのであろう、畑を見るとネギのような物が生えていた、この村の特産品なのだろう。
ひとまず生存者を探すわよ、アスカロンは左右を見てて、私は前を探すわ
分かりましたっ!
村を歩いて行くとまだ燃えていない民家が合った、そこから人の気配がする、行ってみよう。
たどり着いた民家の前にエゼル村公民館と書かれた看板が立っていた。ドアのノックすると一人の村人が出てきてくれた、が、ドアの隙間から顔を覗かせるだけで出てこようとはしなかった。
ねぇ、私達は教会から依頼を受けてきたのよ、この村で何があったの?
キル姫二人と奏官二人がこの村で暴れたのだ、奴らはこの村に火を放ち三日三晩争いを続けたのだ。
なんて奴らなの、ねぇ、そいつらはどこに行ったのよ?
分からぬ、儂らはここで身を寄せ合い震えておったのだ
んっ、教会に報告しておくわ
そう言うとバタンと扉が閉められてしまった。これだけの被害を受ければキル姫の事を警戒するのは仕方のない事だ、少し休む為に近くの公園にやってきた。
この村には居なさそうね、この付近の村を探すわ
はいっ
ちょっと下ろすわね
アスカロンをベンチに座らせて地図を広げる。この近くだとディブロ村ってところね※公式だとエゼル村の新しい名前です。
歩いて行くのですか?
当たり前よ、その為に足がついているのよ
アスカロンを背負いディブロ村を目指す事に、走って行くとすぐにたどり着く事ができた。
この村も酷いわね
そうですね
火災は起きては居なかったけど民家が何軒も破壊されている、早く犯人を捕まえなければ。
何か音がしませんか?
音?
そう言われて耳を澄ませる、確かに何かの音が聞こえる、この音は…
誰かが戦っているわね、急ぐわよ!
アスカロンを背負ったまま音の鳴る方へ駆けてゆくと四人の剣士が戦いを繰り広げていた。
あれって
クラウ・ソラスとカラドボルグね、あと二人は奏官?
キル姫二人に鎧を纏った二人が戦っている、止めに行こう。
アスカロンはここに隠れていて
一人で大丈夫ですか?
任せてよ
アスカロンを建物の影に置いて四人へ向かってゆく。
ねぇ何してんのよ
私の声が聞こえないぐらいに戦いに集中している二人、イラッとした。
ちっ、話を聞けって言ってんのよ!!
鎧の奏官の片方に背後から飛び蹴りを喰らわせ瞬時に狙いを変えてもう一人も払い腰で地に倒す。
邪魔をするな!
そうだ!これは我々の戦いだ!
うっさいわね!少し大人しくしてなさいよ!
そのままキル姫の間に割り込みクラウ・ソラスには右ストレートを、カラドボルグには右ハイキックを叩き込む。急所を突けたようだ、二人を気絶させる事ができた。
それであんた達は何してんのよ、理由次第ならこのまま教会に引き渡すわよ
私達は好敵手なのだよ
お互いのキル姫が争いを始めた、それならば私達もどっちらの剣の腕が上か雌雄を決していたのだよ
それでエゼル村に火を放ったの?
そうだ、夜戦は視界が効かぬからな
火を放ち明かりにしたのだ
………………
あまりの自分勝手な理由に言葉が出なかった、こいつらはここで殺そう、そんな事を考えていた。
それより起こしてはくれぬか?
この鎧は重く一人で立ち上がる事ができないのだ
そのまま野垂れ死になさい、あんた達はそれがお似合いよ
それはダメだ、まだコイツと勝負が付いていない
そうだ、このままだと死にきれん
どっちが先に飢え死にするか競ってなさいよ
私は頭を悩ませていた、もう何を悩んでいるのか分からないぐらいに頭がこんがらがっていた。こんな時は煙草を吸おう。そう思いポケットから煙草を取り出し火をつける。
うぉぉぉぉぉぉ!!
ぬぅぅぅぅぅぅ!!
………………………
二人の奏官が懸命に身体を起こそうともがいているが上手くいかないようだ、それを見ながら煙を吐き出してゆく。
マスター!しっかり!
早く私の手を!
二人が意識を取り戻したようだ、お互いのマスターを立ち上がらせていた。私の悩みの種が成長して花を咲かせてしまった。
よし!続きだクラウド!
望むところだディルドよ!
望むんじゃないわよ!!
うおっ!
ぬおっ!
再び奏官二人を地に這いつくばらせため息を一つ。
私のマスターに何をするのだ!
そうよ!もう容赦しないわ!
黙ってなさい!あんた達が何したのか分かってんの!?
えっ?
なんの事だ?
そうだ、操られている時は記憶が無いんだった、一から説明する事に。
って訳よ、分かったかしら?
なんと言う事だ…この私が…
操られていたとはいえこの手で村人を…
分かったなら大人しくしてなさいよ、もう私の悩みを増やさないで
カラドボルグ!
起こしてくれ!
クラウ!
分かった!
待っててね
二人を起こそうとする二人を制する。
ねぇ、起きたらまた戦いを始めるわよね?
当たり前だ!
どっちが強いか決めるのだ!
次私の前で戦いを始めて見なさい、その命斬り刻んでやるわよ
漆黒のオーラを纏いそう告げると私の殺気を感じたのか大人しくなった、ついでに起こしてあげる事に。
はぁ、んであんた達はいつから争っているのよ
我々が産まれた時からだ!
どちらが先に産まれたか、それが私達の始まりだ!
カラドボルグとクラウ・ソラスは?
私は別に、クラウが挑んでくるのよ
なっ!カラドボルグこそ私に挑んで来るではないか!
もう分かったわよ…
四人の話を聞いていると頭が痛くなってくる、それにエゼル村の民家もなんとかしなければならない、よし、煙草吸お。
悩む頭で煙を見つめていると一つ閃いた。
ねぇ、あんた達はなんでも争うのよね?
そうだ、私がクラウドに劣る事など何もない!
それは私のセリフだディルドよ!
なら私からお題を出すわ、良いわね?
おぉ!クラウドと戦えるならなんでも良いぞ!
望むところだ!
あんた達が壊したエゼル村の民家とこの村の民家を多く直した方が勝者よ
よし!やってやるぜ!
クラウ、私の鎧を外してくれ
分かった
カラドボルグ!私の鎧も頼む
分かったわ
鎧を脱ぎ捨ててゆく二人、気づいたらTシャツと短パン姿になっていた。
よし、行くぞ!
フハハハハハハハ!
笑いながらエゼル村に走って行く二人、少しだけ肩の荷が降りた気がする。
そういえばユリは一人で旅をしているのか?
二人よ、あそこの民家の影に居るから連れてくるわね
アスカロンを呼びに行くと動けるぐらいには回復していた、そのまま二人の元へ。
私アスカロンって言います、よろしくお願いしますねっ
私はクラウ・ソラスだ
私はカラドボルグよ
あんた達のマスターを追うわよ、見張ってないと不安だわ
二人を追って再びエゼル村へ、あの二人は大丈夫なのだろうか?
その前に二人共、私とアスカロンの上着を貸してあげるわ
なぜだ?
あんた達がこの村を破壊したのよ、なのにまた来たことが分かったらパニックになるわよ
それもそうか、すまんが借りよう
ん
クラウに私の上着を貸してあげる、カラドボルグはアスカロンの上着を羽織っていた。
ボタンが閉めれないわ
あぁぁぁっ羨ましいぃ………
うん、その嫉妬、好きだわ
クラウ、その上着似合うわね
なかなか防御力の高そうな服だな、気に入ったよ
さぁマスターを探すわよ
あそこにいるわ
何処よ?
ほら、あそこよ
カラドボルグが指差す方にものすごい勢いで家を建てている二人がいた。
マスターはディルドと色々な事を競っていたからな
そうね、戦うだけではなかったのよ
フハハハハハハハ
アーハハハハハハ
楽しそうに笑いながら家を建て直していた、その姿を見て破壊と再生は表裏一体、そう誰かが言っていたのを思い出した。
よし!次はディブロ村だ!
次こそ決着をつけようじゃないか!
気がついたらエゼル村の復興は終わっていた、奏官二人はディブロ村に駆けて行った。
はぁ…なんだか疲れたわね
私もですっ、嫉妬の心が敗北を認めないんです
それは知らないわよ
ディブロ村にたどり着く頃にはもう復興が終わっていた、仁王立ちで二人が私達を待っていた。
さぁ!審判を下すが良い!
まぁ私の勝利に間違いはないがな
ごめん、よく見てなかったから引き分けよ
なんと言う事だ!
やはり剣で雌雄を決するしか道は無いっ!
腕時計を見るともうすぐ16時だった、まだお昼ご飯を食べていない事を思い出した。
ねぇ二人は料理はできるの?
もちろんだ!
我々にできぬ事など無いっ!
ならご飯作ってよ、どっちが美味しく作れるか審判してあげるわ
任せよ!
アーハハハハハハ!
彼等の扱いが上手くなった気がする、まぁもう出てくる事は無いのだが。
私のマスターを使うのはやめて貰いたい
そうね、助けて貰った恩はあるけどこれ以上は見逃せないわ
ごめん、もうやめるわね
二人はいつからマスターに仕えて居るのですか?
私達はマスターが産まれてすぐに共鳴したんだ
双子なんですよマスターは
へぇ、本当は仲が良いんじゃないの?
だと思うわ、じゃなければずっと一緒にいれるはずがないものね
それは私も同感だ
喧嘩するほど仲が良いって言いますもんねっ
四人で話していたら二人が帰ってきた、何かを持っている。
さぁ!審判の時だ!
公平な審査を!
そう言って私達に差し出された料理、量的に六人分はありそうだ。
あんた達は食べないの?
私は勝利の晩餐に取っておくのだよ
私もそのつもりだよ
でもそれだと冷めてしまうわ、勝利のご飯は美味しいけどそれはこのご飯の本来の美味しさではないと思うわよ?
確かに
言われてみれば
それにみんなで食べた方が絶対美味しいですよっ♪
うむ!確かにそうだ!
いただこうではないか!
いただきまーす
んっ、これ美味しいわね
それは私が作ったものだ!
これも美味しいですっ♪
そっちは私が作ったものだな!
マスターのそういうとこ、好きだわ
流石マスターだ、見直したよ
ナァーハッハハハハハ!
ファーハッハハハハハ!
高らかに笑い声をあげる二人。そろそろ夕暮れも近い、宿を探そうか。
私達はこの辺りで宿を探すつもりだけどあんた達はどうするのよ?
そうだな、我々は教会へ走ろう!
そうだな、君達には感謝している!
ハーっハッハハハハハ
ハーっハッハハハハハ
そう言って教会の方へ走って行ってしまった、その後ろをカラドボルグ達が手を振りながら後を追いかけて行った。
私達は宿で疲れを癒すわよ
そうですねっ♪
今日はなんだか疲れた、でも久しぶりにアスカロンと二人で寝る事ができる、早く宿を探そうか。