結局あたしは空腹で眠れずただ寝ているアスカロンをぼーっと見ていた。
それにしてもよく眠る奴だ。いくら睡眠薬を飲まされたからってここまで寝れるものなのだろうか?
そんな事を考えながら煙草を咥えて火を灯す。これだけ空腹だと煙草が不味い。そう思いながらも根元まで吸い切るのだけど。
「んっ、はぁぁぁ、、、。あっ、おはようございます♪」
「おはようじゃないわよ!このバカ!あれほど警戒しろって言ったじゃない!」
「えっと?何を怒っているんです?」
「あの時あんたはあいつらに貰った紅茶に薬を混ぜられたのよ。それで今まで眠ってたの!」
「あはは、全然気が付きませんでした、、、」
「平和ボケしてたら殺されるわよ。それで?この近くに町はあるの?」
「えっと」
がさがさと鞄を漁り地図を取り出すと方角と片道を照らし合わせ現在地を割り出してゆく。
「ここならコーラル村が近くにありますね。行きますか?」
「そうね。お腹も空いたしあたしは眠たいわ」
「じゃあ早速行きましょう!」
散々寝た為元気に歩くアスカロンの背後をあくび混じりについて行く。村に着いたら戦利品を売って何か食べて寝よう。そう決めながら。
しばらく歩きたどり着いた村は村という名が相応しいほどに畑が広がり住宅はちらほらと。村の真ん中にある風車がとても印象的だ。
「なんだか素敵な村ですね♪」
「・・・・・・」
「どうしました?」
「あたし、この村知ってるかも」
この村の風景をあたしは知っている。いつかは分からないけど遠い昔にあたしはこの村に来た事がある。
「ついてきて」
畑の間に作られたあぜ道を通り風車のふもとへ。そこにある一軒の家の前であたしは立ち止まった。
「風車の下のこの家。あたし来た事ある」
「この家にドロボーに入ったのです?」
「違うわよ!記憶が朧気だけどあたしはこの村のあの家に来た事があるの」
「じゃああの家を尋ねてみます?」
「それはちょっと、、、記憶に少しだけあるだけたし」
「違ったら違ったで良いんじゃないです?もしかしたらユリの過去の手がかりがあるかも知れませんし」
「あたしは記憶喪失じゃないわよ!」
そうはいってもこの記憶の事が気になるのは確かだ。アスカロンの言う通り違ったら違ったで良いじゃないかとあの家を尋ねてみる事に。
「アスカロンノックして」
「分かりましたよ。ごめんくださーい」
しばらく待っていると家の中から音がして中年の男性が顔を出した。
「あの、この子ってこの家に来た事ありますか?」
「・・・・?」
いきなり知らない人が二人も訪ねて来てこんな質問をされたら戸惑うだろう。もちろんおじさんも目をぱちくりさせながらあたし達を不審な目で見ていた。
「君達名前は?」
「アスカロンとユリです」
「アスカロンとユリ、、。そのユリってもしかして半姫半人の?」
「そうよ。ってなんでその事を知っているのよ」
「そうか、、なら君は私の従姉妹になるのかな?話は中でしてあげるよ」
そう言うとドアを開けあたし達に入れと促した。あまりに出来すぎた話に警戒しながら家の中へと入ってゆく。
「家系図を見せてあげるよ。少し待ってて」
リビングにあるテーブルに座るとおじさんは何処かへと。
「アスカロン。まだ信じるんじゃないわよ」
「あはは、、あっ、あそこに写真が飾ってありますね」
リビングから見える隣の部屋の仏壇の上に写真が見える。それが気になりあたしはそこへ見に行く事に。
先祖代々続く家なのだろう。写真だと思っていた物は遺影でそれがずらりと並ぶ。その中に見た事がある人の遺影が。
「ねぇ、あれってティルフィングじゃない?」
「ほんとだ、、えっ、、?その隣!ユウさんですよ!」
「ユウ?」
「ほら、ユリのお父さんの!じゃあこのティルフィングはユリのお母さん、、、本当に死んでしまっていたんだ、、、」
優しい笑顔の遺影を見上げピンときた。まだあたしが幼い頃両親に連れられてこの家に来た事がある。だから記憶にあるんだ。
「ほら、家系図を持って来たよ」
「あの、その前にお線香あげさせて下さい」
線香をあげりんを鳴らした後三人で黙祷を捧げていた。この家はあたしの父、ユウの実家。まさかこんな形でこの家に来る事になるなんて。あたしの隣で頭を下げ少し涙ぐむアスカロンの姿も。
「ありがとうございます。もっと早く来るべきだったのですが、、、」
「いえ、きっと喜んでるよ。私はユウおじさんの弟の孫なんだ。だからユリちゃんの事は両親とおじいちゃんおばあちゃんから聞いててね」
「不思議な縁ね。そうだ、インテグラルキラーズを知らない?あたし達そいつらを探しているのだけど」
「インテグラルキラーズ?聞かない名前だね。エンシェントキラーズの人ならこの村に居るはずだけど」
「ほんと!?どこにいるのよ」
「昨日来て何かをしてるって聞いたけど、、、」
「ちょっとそこに行ってくるわ」
立ち上がった時あたしのお腹が盛大に音を立て苦笑い。
「戻ってくるまでにご飯を用意してあげるよ」
「ありがと。行ってくるわ」
そんな訳でこの村に来ているエンシェントキラーズを探す事に。
「こうやってお参りができて良かったです。もう会える事ないって思っていましたし」
「この村に来て良かったわ。でも従姉妹って呼ばれるとなんか複雑な気持ちね」
「あはは、、それはしょうがないですよ。
「ってかあたしが兄夫婦の娘で、弟夫婦の子供の子供って従姉妹の呼び方で良いのかしら?」
「さぁ、、?」
そんな事を考えながらあぜ道を歩いて行く。それよりこの村の畑は同じ野菜を作っているようだ。
「これってなんで名前なの?」
「これはキャベツって言います。このままでも食べれますし調理しても美味しいんですよ♪」
「へぇ、こんな丸っこいのがね」
薄緑色の球体植物を見ていた。食べれると言うなら食べるけども。
「まぁいいわ、さっさとエンシェントキラーズと合流してご飯にしましょうよ」
「さっきすお腹がすごい音立ててましたもんね」
「やっぱりウサギを食べるべきだったわ」
そう言って前を向くと誰かと目が合った。あどけない顔に胸元に輝くアクセサリーにエンシェントのシンボルマークが。
「ねぇ、もしかしてあんた、エンシェントキラーズ?」
「うん、そ〜だよ〜♪もしかしてアスカロンちゃんとユリちゃん?」
「はいっ、えっとフライシュッツさんですか?」
「やっと会えた〜♪おねーちゃん探してたんだよ〜♪」
そう言ってあたし達を抱きしめて嬉しいそうな顔をしている。
「ちょっ!苦しいってば!」
「こんなにも大きくて柔らかいだなんて、、羨ましい、、」
「えへへ♪おねーちゃんこうやってハグするの好きなの〜♪」
「分かったから!それより人を待たせてるからついて来なさいよ」
「は〜い♪」
フライシュッツと無事に合流し一度実家に戻る事に。そこでご飯を頂きながら何故この村に来たのかを聞いてゆく。
「何かインテグラルキラーズに付いて分かった事があるの?」
「おねーちゃんはただこの村に来ただけだよ〜?この村にキル姫は居ないから見回りをかねてね〜♪」
「ならまだインテグラルキラーズの手がかりは無いんですね?」
「う〜ん、そうだね、おねーちゃんがここに来るまでいろんな町を訪ねたけど被害に遭ったって話は聞いてないし」
「本当に奴らは動いているのかしら?ただの愉快犯じゃないの?」
「それならアルマスの存在が不明になります。ユリはアルマスと戦ったんですよね?」
「そうね、あいつは剪定するって言ってたし。ラグナは大丈夫なの?」
「ラグナロクちゃんはもう大丈夫だよ〜♪今はアルマスとインテグラルキラーズを探してるよ」
「ふむ。みんなとの連絡は?」
「それがどこに居るか分からなくて、、おねーちゃんもみんなに会いたいな」
どうやら手がかりは無しだ。まぁ戦闘は無いに越したことはないしもしインテグラルキラーズが現れたとしても三人居ればなんとかなるだろう。
「お待たせ。たくさん作ったからたくさん食べてね」
「「「いただきまーす」」」
この村の名産品キャベツをふんだんに使った料理をいただく事に。塩タレを付けたキャベツにロールキャベツ、炒め物。キャベツだけでこれだけの料理ができるのかと感心しながら食べてゆく。
「んっ!美味しいですっ♪」
「この村はキャベツを育てるのに適した土地柄でね、甘くて美味しいキャベツができるんだよ。良かったらレシピを教えてあげようか」
「じゃあお願いします♪」
「おねーちゃんも作ってみたいな〜♪」
「あたしはちょっと散歩にしてくるわ。ごちそうさま」
キャベツ料理に興味津々な二人を置いてあたしは家の外へ行き風車へと向かって行く。確か風車の裏に梯子があったはずなのだが。
「あったあった。まだ登れそうね」
風車の上部へと登る事ができる梯子を見つけ手で揺らしてみると錆びてはいるがまだしっかりとしておりそれを登ってゆく。
「ん、懐かしい、、」
はるか昔にユウに連れられてあたしはここに来た事がある。そしてこの景色を見た。村一面に広がるキャベツ畑のを一望しさらに向こうにはそびえ立つユグドラシルを見る事ができるこの景色を。
あの頃の事を思い出して懐かしい気持ちになりながら煙草を咥えて火を灯す。あの時あたしの横にいたユウもこうやって煙草を吸っていたんだっけ。
もし会えるのならもう一度会いたい。なんて事を考えそれは叶わぬ願いだと笑う。そんな時キャベツ畑でゆらゆらと揺れる何かを見つけた。
かかし?キャベツ畑にもかかしがあるのかと納得し再び煙草に火を灯しゆらゆらと揺れるかかしを見ながら一服。気が付けばかかしが無数に居る事に気が付いた。あんなに合った?それならこの村に来た時きがついたはず。
疑問に思いながら見ていると近くに農家の人の姿を見つけあの人が設置したのかと納得し作業の様子を見守る事に。
「はっ?」
キャベツを収穫しようとしている農家がかかしに襲われている?意味が分からない光景が眼下に広がる。かかしだと思っていたものが逃げ惑う農家に何かをするとここからでも分かる程に鮮血が噴き上がっていた。
あれはかかしでは無く人を襲うナニカ。それならばと高台から飛び降りその場へと駆けて行く。
「うっわ」
その光景はあまりに酷い。先ほどの噴き上がった鮮血は首を落とされたからか。もう死んでいる農家に向かい執拗に攻撃を続けそこにあるのはぐちゃぐちゃになった肉の塊。
「gptojptxkpwjqwmjp!!」
そしてあたしの存在を知り武器を構えあたしへと攻撃を仕掛けてきた。人の言葉を話さず悲鳴のような声で仲間と連携をとる姿が非常に気持ち悪い。
「まぁ良いわ。あんたらの死体は畑の肥料にしてやるわ!」
繰り出される剣と槍を掻い潜り抜刀と同時に一閃を繰り出し目の前のナニカを斬り伏せる。そして突き出された槍を押さえ込み片手剣で首を刺す。
「pjdjgxmdtgmtg!」
仲間がやられても怯えずに向かってくるという事は知能は低いのか。それとも誰かの命令で動いているか。
最後に残ったナニカの首を落とし畑に立っているはあたし一人となった。
「見た目は人と変わらないわね。頭に花が付いているのか?」
首を掻き切られもがいているナニカを観察していた。よく見ても見なくても不気味な事には変わりないのだけど。そんな時背後に気配を感じ振り返った。
「pjdjgxmdtgmtg!!」
残党がいた。一人だけだしからかいながら習性をさぐるとしよう。そう思っていたら何かが飛んできてナニカを消し飛ばしてくれた。
「も〜ユリちゃん戦うなら言ってよ〜」
「そうですよっ!教えて下さいよ!」
「あんた達が気がつくのが遅いのよ。それで、これについて何か知ってる?」
煙草を咥えて火を灯し問うのだが二人とも知らないとの事。
「ってこれ人じゃないですか!?もぉ、、ダメですって、、」
「こんな頭に花咲かせた奴が人な訳ないでしょ!それにこいつらが農家を殺すのを見たのよ」
「ほんとだ〜頭にお花が咲いてる〜♪」
「フライシュッツはもっと危機感を持ちなさいよ」
ナニカの血は赤く生き物なのは間違いないのだがこんな人型の生き物がいるのだろうか?
「異族に似てますけど異族ではありませんねっ。新種の異族でしょうか?」
「う〜ん?おねーちゃんも見た事ないから分かんない。ラグナロクちゃんに報告しておくね」
「異族ってなによ?」
しばらく見ているとそいつらは溶けるように跡形もなく消えていった。これじゃあ肥料にはならなさそうね。
「とにかくこれが異族だとすれば人々が脅威にさらされてしまいますね。残党が居ないか確認しましょうっ!」
アスカロンの声により辺りを捜索するのだが他に異族の姿は無く。
「ユリちゃんは異族達が現れるのを見ていたの〜?」
「あたしが気が付いたら時にはもう居たわ。なんかいつの間にか居たって感じ」
「誰かに召喚されたのでしょうか?」
「う〜ん、、そんな事できるのは居ないはずなんだけどな〜」
「ねぇ!あれ!」
そんな時空に浮かぶ何かを見つけて指を差し叫ぶ。それはふわふわと宙を浮きながらこっちへと来ていた。
「はぁーい♪ヘアピィしてる?」
陽気にあたし達を見下ろし話すピンクの髪色をした女。髪色はティルフィングと同じだが雰囲気が全く違う。
「あっフライクーゲルちゃんだ〜♪おねーちゃんはハッピーだよ〜♪」
「フライクーゲルって?」
「ファーストキラーズの一人、、ならあのフライクーゲルはっ!!」
「せっかく私が擬彩異族でみんなをヘアピィにしようとしたのに全然ヘアピィにならないから来てみたら、、君達だったんだね」
「だったらなんなのよ。んな事より降りてきなさい!」
「んー?答えはノーっ!君がユリだね?他はフライシュッツにアスカロンか。君達は新しい世界に不要だからここで私がデリーッしてあげるよ!」
ふわふわと宙を舞いながら両手に付けられた竜の手の様な何かを光らせると手のひらをこちらへと向けた。
「ユリだけは見逃してあげる。残りの二人はバァーイ♪」
手のひらから放たれたのは光の魔弾。それも大きく早く、そして。
「この魔弾に当たったらダメだよ〜っ!!」
フライシュッツが叫び手に持つ銃で応戦を始めた。フライシュッツへと向かう魔弾に魔弾を放ち相殺しようとするのだがフライシュッツの魔弾を飲み込みフライシュッツへと迫る。
「フライシュッツさんっ!!」
魔弾がフライシュッツに当たる寸前にアスカロンが作り出した氷壁が魔弾の軌道を逸らし難を逃れた。そして流れた魔弾が着弾した地面にぽっかりと穴が空いてしまっている。
「ありがと〜♪じゃ無くて、みんな気を引き締めてね!」
「分かってるわよ。それより宙に浮かんでたらあたし達は手が出せないわ」
「フライシュッツさんしか攻撃できませんね、、でもサポートならお任せくださいっ!」
「りょーかいだよ♪おねーちゃん頑張っちゃうから♪」
「ヘェーイ!さっきの私の魔弾を見たでしょ?フライシュッツの魔弾なんてノンノン!」
フライクーゲルの言う通りフライシュッツの放つ魔弾ではフライクーゲルの魔弾には及ばない。なんとかしてあいつを地面に引き摺り下ろさないと勝機は掴めない。
「アスカロン、あんたの氷が届く範囲は何処までなのよ」
「えっと、最長で五メートルぐらいです。フライクーゲルには届きません、、」
「分かったわ。じゃあこうしましょ」
アスカロンへ耳打ちをしてあたしはフライクーゲルへの真下へと。
「さっさと降りて来なさいよ。あたしの故郷の村を滅茶苦茶にされるのは向っ腹が立つのよ」
「へぇ、じゃあその記憶を
「辛い過去?あんた何言ってんのよ」
「そう、両親を殺され天涯孤独となったそんなユリの過去だよ。だから私の元においで」
「あたしはそんな事一言も言ってないわ。まさか…っ!」
「イェス!君の両親を殺したのは私達だよ。アーユーオケ?」
「………………そう。ならこの記憶をピンチして貰うわ」
「ユリちゃん!」
「黙ってて。あそこにある風車があたしの一番の思い出だからあそこでピンチしてよ」
「アハ♪君は素直で助かるよ♪じゃあレッツゴー!」
泣きそうな顔であたしを見るフライシュッツに目配せをした後宙を浮かぶフライクーゲルと共に風車の真下へと。
「じゃ遠慮なくやっちゃってよ」
「オケー!メイクセーンス♪」
にんまりと笑うフライクーゲルが地面に降り立ちあたしの頭に向かい手を伸ばしてゆく。
「嫉妬の氷、味わってみますか?」
「ーーー!?」
風車より飛び降りたアスカロンによりフライクーゲルがカチカチに凍り付いた。どうやら作戦がうまくいってくれた。
「ありがと、こいつはあたしが殺す。みんなは手出ししないで」
ギロリとフライクーゲルを睨むと二人が神妙な顔であたしを見た。
「ユリちゃん、、、」
「何よ」
「殺したりしたらおねーちゃん悲しいよ、、、」
「はぁ?じゃあこいつに殺されたあたしの両親はどうなるよ!あんたも話聞いてたわよね?聞いててそんな事が言えるの!?」
「うぅ、、、でも、、」
「あたしに指図するならあんたも殺すわよ。それが嫌なら文句を言わないで」
「フライシュッツさん、私もユリに同意です。あの二人は私にとっても大事な人でした。事故ならともかく殺したとなれば私もフライクーゲルを許す事はできません」
「………………」
しゅんっとしながらフライシュッツが下がった。
「話が分かるじゃない。この首切り落としてやるわ」
両手に持つ剣を交差させ挟み切ろうとした瞬間に凍り付いているはずのフライクーゲルの目がぎょろりと動いた。
「!?」
「まさか凍らされるなんてね。でももう同じ手はくわないよ」
全身から湯気を出しフライクーゲルが再び宙を舞う。
「どうして私の氷を溶かす事ができたのですかっ!」
「私の魔弾はとーってもホット!これぐらいの氷を溶かすなんてイージーさ。それよりティルフィングからユリは生かせておけって言われてたけどここで剪定させてもらうよ!」
フライクーゲルの目に狂気が宿る。だけどあたしにはそんな事どうでもいい。
「良いわよ、、、あたしから両親を奪った罪を償わせてやるわ」
相手が宙にいるのならあたしとアスカロンの攻撃は届かない。頼れるのは魔弾を操るフライシュッツだけだ。
「フライシュッツ!あいつに一発撃ち込んでやりなさいよ!」
「そう、だね。おねーちゃんのお友達を殺したんだ。絶対に許さないよ!
「私とユリでフライシュッツさんをお守りしますっ!」
相手はフライクーゲル一人だが反撃できるのはフライシュッツ一人のみ。相手が宙に浮いていなければ戦えるのだが。
「そうだ。アスカロンはフライシュッツをお願いね」
「ちょと!?何処に行くんですか!」
迫り来る魔弾を塞ぐ氷壁から抜け出しあたしは畑へと向かう。
「それならその壁ごと撃ち抜いてあげるよ!」
片手で一発ずつでは無く両手で魔弾を作り始めた。その魔弾は今までの魔弾よりも光を放ち高いエネルギーを感じる。
「これでフィニッシュね!ぐっ!?」
「けっ、どう?あたしの故郷のキャベツの味は!」
魔弾を放とうとした瞬間にあたしが投げたキャベツがフライクーゲルの顔面をとらえた。ギロリとあたしを睨む顔には鼻血が垂れる。
「そこだよ!」
フライシュッツが身を乗り出し放った魔弾がフライクーゲルを捉え力を失ったのか地面に向かい落下してゆく。
「やっと落ちて来たわね。あたしの両親に謝ってから地獄に行きなさい」
落下しうずくまるフライクーゲルに向かい駆け出し剣を振り上げた。
「バーン♪」
「!?」
駆け出したあたしに向かい手を向け魔弾を放った。この距離では避ける事もアスカロンの氷壁も間に合わない。魔弾に撃ち抜かれたあたしは吹き飛び風車へと叩きつけられた。
「が、、くぅ、、」
魔弾の衝撃と叩きつけられた衝撃で体が酷く痛み意識が掠れる。それでも立ちあがろうとしたのだが気が付けば意識が飛んだ。
(大きくなったねユリ。会えて嬉しいよ)
(あんたは、、、?)
(ユリのお父さんだよ。ゆっくり話したいけど時間が無いんだ。君にこれを教えてあげる)
(ありがと、、ねぇ!待ってよ!)
(ごめんね。アスカロンによろしく)
目を開けるとそこには誰も居ない。それでも確かに教えて貰った事は覚えている。
体力を消耗したのかフライクーゲルは宙に浮かばず地上に立っている。それなら。
あたしは骸斬を鞘に納め七元を構え腰を落としフライクーゲルとの距離を測る。そしてここだと思った瞬間に駆け出した。
「黒式、、、!」
雷鳴よりも早く走る、その姿雷の如く。
「一紅閃っ!!!」
剣を振り抜いた瞬間にフライクーゲルの顔が。それを叩き斬る一閃。
「アゥチ!ここは引かせて貰うよ。次に会った時は必ず選定させてもらう」
切り裂く寸前で伸ばされた手が軌道をズラし致命傷は避けられたが辺りにはフライクーゲルのグローブの破片が散らばる。しばらくは行動を止められただろう。
「ユリ、、今のって、、、」
「夢で教えて貰ったわ。あたしの、、、」
「今のカッコよかったよ〜♪ユリちゃんハグだよ〜♪」
「むぎゅぎゅ。ちょっと!あたしが話してる途中!」
「ぎゅ〜〜〜♪」
笑顔なフライシュッツにハグをされしばらくしてあたしの実家に向かう事に。
(………………)
犠牲者はあの農家の人一人だけ。それだけで済んだ、って言えば良いのか一人死んでしまったと言えば良いのか疑問は残る。そして戦闘で踏み荒らされたキャベツ達が何となく悲しそうな顔をしている気がする。
「お疲れ様。君達のおかげで村は守られたよ」
「うん、そうね」
返事が重い。それでもお腹は空くもので用意してくれた夕ご飯を頂いてゆく。
「………………」
無言の夕食の後お風呂を貸してくれるようで一人一人がお風呂に。しばらくしてあたしの番となり脱衣場で服を脱ぎ浴室に入る前に鏡に映る自分を見た。その胸元には魔弾によるアザが大きく残っていた。
(良く生きてたわね)
なんて考えながらお風呂を済ませ眠る前に煙草を吸いに行く事に。
煙草を咥えて火を灯そうとした時オイルライターの空きが悪い。見てみるとあの時魔弾に当たった為少し歪んでいた。
(あたしを守ってくれてありがと)
夜空に向かい呟いた声は誰にも届く事なく消えてゆく。