次の日の朝目を覚ましたあたしは布団を抜け出し家の外へ煙草を吸いにいく事に。
(・・・・そうね)
少し面倒だけど近くにある風車へと登りそこで煙草に火を灯し雄大な景色を見ながら目覚めの一服。インテグラルキラーズがなにをしようとしているのかは分からないがあたしの両親を殺したのならあたしは許す事はできない。必ずこの手で奴らを殺す。憎しみが渦巻く心を抑え煙草を揉み消し実家へと戻ってゆく。
「おはよう。もう起きてたんだね」
「おはよ、朝は早いのよ」
「もうすぐ朝食ができるから食べてから行きなさい」
「ありがと、起こしてくるね」
部屋に戻るとまだ寝ている二人の姿が。寝ている時暑かったのか布団を跳ね除けたフライシュッツがアスカロンに抱き付きながら幸せそうな顔で眠っており抱き付かれているアスカロンの顔はどことなく苦しそうで。
「ほら起きなさいよ」
「「………………」」
声をかけても二人は眠ったまま。それならばとカーテンを全開にし朝の日差しを部屋に取り込みさらに窓を開け空気を入れ替えてゆく。少し肌寒い外の空気に二人も目を覚ましたようで。
「お〜は〜よ〜、、、」
「ぉはよぅござぃます、、」
「さっさとシャキッとしなさい。おじさんが朝ごはん作って待ってるわよ」
しばらく眠た眠たした後三人揃って食卓へと。用意してくれた朝ごはんを頂き食後のコーヒーをいただいてゆく。
「あたし達は次の街に行くわ。フライシュッツは?」
「おねーちゃんはラグナロクちゃんの所に報告に行くね♪また会えるかな〜?」
「はいっ、道のりは違っても目指す場所は一緒ですからきっと会えますよ♪」
「じゃあまたねのハグだよ〜♪」
フライシュッツにハグをされた後次の目的地を目指す事に。ここから最寄りの街はカレットの街か。
「いきましょうか」
「そうですねっ、おじさんありがとうございました♪」
「おじさんにもハグだよ〜っ♪」
フライシュッツにハグをされ困りながらもニヤけたおじさん。その後あたし達に「いってらっしゃい」っと声をかけてくれた。
「いってきます」
玄関を出てフライシュッツを別れあたし達はカレットの街を目指して草原を歩いてゆく。
「カレットの街、どんな街なのかしら」
「えっと、地図で見ると大きな街ですね。栄えているとは思いますけど」
「なら買い物もできるわね。今のうちに欲しい物を考えておきましょう」
「そうですねっ。何を買おっかなー♪」
ご機嫌なアスカロンを見ながら大きく体を伸ばしあくびを一つ。その時胸部に鋭い痛みが走り咳き込んだ。
「ゴホッゴホッっ!あーーっ!」
「おじさんみたいですよ?ってユリ!?」
「ん?」
戦慄した顔であたしを指さしていた。その意味が分からぬまま増してゆく痛みにまた咳き込んだ。
「え、、、?」
口を抑え咳き込み抑えていた手を見ると血で赤く染まっていた。吐血?そう思った時にはぐらりと意識が歪みその場へと倒れていた。
……………………………………………………………
「ここは、、、?」
目を覚ますと見知らぬ天井が見え起きあがろうとするとお腹の辺りに重みを感じた。
(?)
見ると椅子に座ったままアスカロンがあたしにうつ伏せとなり眠っている。それにあたしはベッドに寝かされており、ここは何処かの病院なのだろうか?
辺りを見渡すと他にもベッドが見える。天井からぶら下がるカーテンが空いているって事は利用者はあたししか居なさそうだけど。
起きあがろうとするがすやすやと眠るアスカロンを退ける事ができずベッドへと寝転がった。そんな時ドアをノックする音が。
「・・・・」
来客のようだ。だが見知らぬ土地、見知らぬ場所での来客に警戒心を宿し自分の剣は見当たらず帯刀しているアスカロンの剣の柄に手を置きながら返事を。
「良かった。気が付いたんだね」
部屋に入って来たのは金髪に赤眼鏡の女性。少しツンっとした顔に笑顔を浮かべながらあたしの元へと歩んでくる。
「誰」
「私はアスクレピオス。久しぶり、ユリちゃん」
「なんであたしの名を、、アスカロンに聞いたのね」
「うんん、ユリちゃんの名前はずっと前から知ってるよ。ユリちゃんが覚えてないのは無理ないけど」
「どういう事、詳しく教えなさい」
「その前に傷口を見せなさい。肋骨が折れて肺に刺さってたのよ」
「嫌よ。なんであたしが知らない奴に見せなきゃいけないのよ」
「つべこべ言わずに傷口見せる!」
「いったー!!」
そっぽを向こうとしたあたしの頭をカルテの下敷きで叩く。瞬時にアスカロンの剣を抜き応戦しようとしたのだが鞘から抜き出す前に手を下敷きで叩かれあたしの顔の前に下敷きを突き付けられた。
「口答えする元気がある事は分かったわ。まだ叩かれたい?」
「参りました、、、」
諦めて着替えさせられていたパジャマのボタンを外し胸元をさらけ出すと傷痕を指でなぞり満足気に頷いていた。
「良かった、無事に治ってるわ。跡は少し残っちゃったけど」
「良いわよそれぐらい。で?あんたはなんであたしの事を知っているのよ」
「あたしがユリちゃんのお母さんの出産の主治医だったからよ。ユリちゃんを取り上げたのはこの私。大きくなったわね」
丁寧にボタンを直しあたしの頭を撫でてくれた。そんな事より聞きたい事がある。
「お母さんってティルフィングの事?」
「そうよ、お父さんはユウって奏官。キル姫と人間の間にできた初めての子がユリちゃん。ユリちゃんのお産には大陸中の医師が集められありとあらゆる事態を想定して万全の体制で行われたの」
「ふぅん、そうだ。あたし達インテグラルキラーズを探してこの街に来たんだけど」
「それも知ってるわ。アスカロンが教えてくれたから。アスカロンが気を失ったユリちゃんを連れてこの街に来たのよ。街で私を見つけるなり泣きながらユリを治してくれって」
「そうなんだ、、あたしはどれぐらい気を失ってたの?」
「三日だよ。ずっとアスカロンがここに居てくれたの。起きたらちゃんとお礼を言っておきなさい。そろそろ私行くね。あとでうちのマスターにもお礼を言うのよ」
またあたしの頭を撫でた後笑顔を浮かべ部屋から出ようとした。その背にありがとうと伝えた。
「お礼を言われる様な事はしていないわ。それにユリちゃんの両親には返し切れてない恩が残っているから。それと明日には退院して良いからね」
そう言って部屋を出て行った。残されたあたしはまだ眠っているアスカロンをベッドへ引っ張り上げぎゅっと抱きしめながら眠りへと落ちてゆく。
次の日の朝、あたしは誰かに揺らされて目を覚ましていた。
「なによ、、、」
「ユリ、、、良かった、、元気になったんですね♪」
目に少し涙を浮べ笑顔のアスカロンに抱き締められていた。あたしもぎゅっと抱きしめ返してゆく。
「ありがと。アスカロンのおかげで助かったわ、この借りは必ず返す」
「そんなっ!良いですって!私がしたくてしたので」
「いーや、借りた借りは返すわよ。話を戻すわね、ここはカレットの街なの?」
「はいっ、ギルドオリュンポスの座が支配するカレットの街です」
「なんか嫌な響きね。でもこうして助けてくれたのなら悪い感じはしないけど」
「荒くれ者が集まってできた街みたいですね。私も詳しくは知りませんけど」
「ふーん?まぁ良いわ。そのギルドリーダーにお礼を言いに行くわよ」
「待ってください、もうすぐ朝ごはんの時間ですよ」
アスカロンが指差す方にはスケジュール表が。そこには朝食が朝八時となっており後五分ほどで朝食が運ばれてくる時間だ。
「そうね。お腹も空いたし」
何日も寝たきりだったとはいえお腹が空いた。気を抜いたらお腹が音を立ててしまいそう。しばらく待っているとノックの後扉が開いた。
「おはよ。元気そうね」
「おはよ。おかげさまでね」
「今ご飯の準備してあげるね」
ベッドに簡易のテーブルを装着しその上にご飯を置いてくれた。
「ほらほら快気祝いに飲みなって」
そんな時やたらとテンションの高い人にコップを渡され並々とボトルから何かが注がれてゆく。
「この馬鹿っ!何朝から酒進めてんのよ!」
「何って快気祝いだって♪お酒は百薬の長ってね♪」
「あははははっ、、、」
「お酒はいらないわ。それよりあんたは?」
「あたしはテュルソスだよ。アスクレピオスと一緒にこの街のヒーラーやってんだ♪そんで後ろに居るのがこのギルドのマスターであたし達のマスター」
ゆっくりと姿を見せた中年の男性。顔は優しいが何処となく戦歴の猛者なる風格が漂う男性。
「おっほん。余がこのギルド、オリュンポスの座のギルドマスターデオン・デュカキスである」
「ん、あたしはユリ、それで相棒のアスカロンよ。助けてくれてありがとね」
「礼ならアスクレピオスとアスカロンに言うのである。余は君達のギルド入りに反対であったのである」
「ん、そりゃあ血反吐吐いた奴なんてどんな病気持ってるか分からないからね。正しい感覚だわ。それで?今からでも出てくけど」
「だが。君達が教会関係者ならば話は別である。ラグナロクから話は聞いているのである」
「ラグナから?この街に来てるの?」
「うむ。君達がこの街に来る少し前にインテグラルキラーズのアルテミスの襲撃に合いこの街の危機を救ってもらったのである」
「なるほどね。そうだ、助けてもらったお礼がしたいわ。あたしにできる事があるなら言ってよ」
「うむ。時にユリくん、君は剣を扱うと聞いたが腕には自信はあるのか」
「それなりにならね。それがどうしたの?」
「近々アルテミスが再びこの街に来るという情報があるのである」
「分かったわ。この街を守るのに力を貸せって事ね。助けてもらった借りも返せるしあたしにとって奴らは殺したい相手だからお互いの利益になるわね」
「である。アルテミスの襲撃は今夜。それまでに準備を整えておくのである」
そう言ってデュカキスは去っていった。残されたあたし達もご飯を食べ終えて後は着替えるだけだ。
「あれ?あたしの服は?」
あたしの所持品はベッドの横に置いてあるのを見つけたのだがあたしが着ていた服の姿が見当たらない。
「あの服なら捨てたわよ。汚れて穴だらけだったし」
「え"っ!なんて事してくれたのよ!あたしのお気に入りだったのよ!?」
「ごめんって、じゃあお金あげるから新しい服買って来なさい」
「まぁ良いわ。街の様子も気になるしちょっと出かけてくるね」
そんな訳でアスカロンと二人でカレットの街を歩く事に。久々にベッドから降りたせいか少しふらついたけどすぐに元の感覚へと戻り華やかで活気のある街を歩いてゆく。
「こういう街って良いですね♪」
「そうね。良いパーカーがありそうな店はっと」
「なんでそんなにパーカーにこだわるのです?」
「なんでってフードがあるからよ。顔を隠せるってメリットだしフードに物を入れる事もできる。それに直射日光から身を守れるわ。荒野で生きて行くにはベストな服ね」
「あはは、私そんな目線でパーカーを着た事ありませんよ、、。そうだ。鎧とか着てみるのはどうです?」
「嫌よ嫌。確かに防御力は上がるかもしれないけど関節部分にどうしても隙間ができるし身動きがし辛くなるわ。それにファンキルのアーマー持ちの姫なんて全く役に立ってないじゃない」
「そう言われてしまうと返す言葉が無くなってしまいます、、、」
そんなこんなで近くにあった武器屋さんへ行きこないだの戦利品を売り払いホクホク顔なあたし。
「君達ってこの街に来た教会の使者?」
「そうよ。良く知ってるわね」
「噂になってるからね。それなら買い物するならちょとはおまけしてあげるよ」
「ん、なら何か買うわ」
「俺の店は街一番の品揃えでね。まっ、ゆっくり選びなよ」
アスカロンと二人で店内を散策してゆく。剣、斧、槍、弓、杖、銃の武器コーナーから多くの盾が並び見ているだけで楽しくなってくる。
「新しい剣でも買います?」
「あたしはこの剣が良いの。アスカロンは何か欲しい物あるの?」
「私も特に、、でも見ていると楽しいですね♪」
所狭しと並ぶ武器を見ていると店舗の奥に衣装コーナーが。見てみるとキル姫の服が着る事ができるらしく。
「へぇーこんなのあるのですねっ、あっこれパラシュの服だ」
「パラシュってインテグラルキラーズの?」
「インテグラルキラーズでは無い方ですね。私が昔居たケイオスリオンのパラシュです。懐かしいなぁ、、」
マネキンに着せられた服を見ながら感傷に浸っている。服の上にある案内板を見ていると確かにアスカロンが言う様にケイオスリオンと書かれており他にはハルモニアだったりトレイセーマだったり。そんな中奥の方にあるブラックキラーズと書かれたコーナーへ。
「あっ」
その中の一つの服にあたしは一目惚れしていた。黒を基調とした色合いのマントに右手には青ラメがあしらわれたアームカバー。それに腰にはベルトに通されたポシェットが。欲しいと思った物は買う。試着もせずにあたしはその服をレジへと持ってゆく。
「おじさんこれ買うわ」
「了解。良い物を選んだね」
「そうなの?」
「素材から着心地まで本物に限りなく近づけた一着さ。ちと値は張るけどおすすめの一品だよ」
「へぇ、それと右手のアームカバーって左手用のもある?」
「ちょいと待ってなよ」
そう言って奥へ入っていった店員を見送り服を選ぶアスカロンへと目線を向けるとケイオスリオンコーナーの服を体に当ててニコニコとしている姿が。
「お待たせ。合ったよ」
「ありがと。はい、代金」
ゼニーと引き換えに手に入れた服を持って試着室へ。ズボンと上着を脱ぎタイツを履きワンピースとなっている服を着てベルトを巻き両腰に剣を携えれば完璧だ。動かし難いかな?っと思っていたアームカバーは動きを遮る事なく追従し満足度を高めてくれる。それに思っていたより硬く多少の攻撃なら防げそうだ。
良い買い物ができたとご機嫌なあたしはルンルンにアスカロンへと話しかけてゆく。
「どう?似合う?」
「その服、、、ふふっやっぱり親子ですね♪」
「えっ、なんでよ」
「その服はユリのお母さんが着ていた服と同じですよ」
「そうなんだ、、なんかこれを選んだのよね」
「可愛いしカッコいいですよ♪」
「ありがと。アスカロンはまだ買い物する?」
「私は、、もう良いかな?」
「ならラグナを探しにいきましょうよ。この街に来るって言ってたし」
「そうですねっ、行きましょうか」
新品の服の匂いに包まれながらラグナを探すために外へ。
アルテミス襲撃まで残り480分