私はクリスが運転するなんか凄いやつを心から堪能していた。アスカロンの竜より速く風を切りながら大地を駆け胸の奥に響く轟音を轟かせる乗り物。欲しい、この凄い乗り物欲しい、、、
楽しんでいると轟音が止みゆっくりと止まってしまった。
どうしたの?
燃料が無くなっちゃったの
燃料?
そう聞くと少し悩んだ顔をして「バイクのご飯だよ」と教えてくれた。
ねぇ!この乗り物私も欲しいわ!どこに売ってるのよ?
もう売って無いよ、あるとしてもこの世界に数台かな
ならクリスのを売ってよ、どんな値段だとしても買うわよ
私がそう言うと少しだけ笑ってこれはお父さんのだから売れないよって。そう言われたら諦めるしか無かった。
なら諦めるわ、そのお父さんはどこに居るのよ?
どうだろ?今頃どこかで研究でもしてるかもね
そう言って顔に影を落とした。嫌な事を聞いてしまったのだろうか?
ここからは歩いて行くよ
分かったわ
バイクを押しながら歩くクリス。たまに迫る化け物を斬り伏せながら荒野を歩いていると少しだけ見覚えのある街に辿り着く事ができた。
この街がこの世界で一番大きな街だよ
中心街だっけ?
知ってるんだ
昔来た事があるのよ、ならユグドラシルまでもうすぐね
そうだね、歩いて三日かな
2人で近未来な街並みを歩いて行く。以前の様な活気は何処にも無く荒れ果ててしまったこの街、その姿と相まってゴーストタウンの様だ。
クリスはお腹空かないの?
私は死んでるから空かないよ、ユリは?
そろそろお腹が空いたわ、少し休みましょ
うん
適当な瓦礫に腰掛けて鞄を漁る、確かこの中に非常食があったはずだ。中身を出しながら漁るとクッキーが一箱出てきた。早速開封していただく事に。
ねぇユリ、これって
これ?誰かの日記よ、見る?
目を丸くして私が持ってきたノートを指差すクリス。それを渡してあげると一ページずつしっかりと目を通していた。
クッキーを食べながら横目でクリスを見ているといつのまにか涙を流していた。慌ててどうしたのか問いかけた。
ずっと思ってたの、こんな事をするのはお父さんしか居ないって、けどそれは疑問だった。でもこの日記を読んで確信したの
ならその日記の彼女達って
うん、私とお母さんだよ、ユリはこの日記を読んだんだね
何かこの世界の手掛かりが掴めると思ってね、勝手に読んだことは謝るわよ
別に良いよ、なら教えてあげる、お父さんがどうしてこんな事をしたのかを
そう言ってクリスが話し出した。それを黙って聞く事に。
私達はね、事故で死んじゃったんだ、お父さんの目の前で。いつもは研究で忙しいのだけどたまたまお休みの日でさ、家族で何処かに行こうってその途中に
それからお父さんは狂った様に冥界の事を調べてたの、私達を生き返らせる為に。そしてこの研究を完成させた。
でもそれは失敗、冥界の魂は元の肉体に戻る事はできたけどそれは完全な物では無かった、それに地上世界を滅茶苦茶にして、、、私どんな顔すれば良いのか分かんないよ
そう言って泣き出してしまった、その姿を見ながら最後のクッキーにかじりつきそれをお茶で流し込み煙草に火をつけた。
それだけクリス達の事を愛してたのよ、良い父親だと思うわ
だけど!こんな事するなんて訳わかんないよ!
それはそうね、天上世界にも蘇った悪魔達が現れて大変だったんだから、その悪魔に私の店を壊されたし
私がそう言うと声を上げて泣いてしまった。それでも私は言葉を続けた。
でも楽しいわよ、私がまだ知らない強敵と戦えたしそれにあのバイクとか言う乗り物にも乗れたわ
そんなのっ大した事っじゃっないよっ
そうかな?ほら、顔を上げてよ、そんなに泣いてたら可愛い顔が台無しよ
可愛く無いよ
知ってるわ
そう言うと驚いた様な顔で私を見上げた、それに「ジョークよ」って答える。
バカっ
なら早く泣き止んで可愛い顔になりなさいよ
うん
クリスの頭を撫でてやると少し落ち着いた様だ。
もう大丈夫
良かった、それで死んだ人はまず何処にも行くのよ?
えっと、まずは冥界の最奥に送られてそれから地上世界の果てに飛ばされてそれからまた冥界に戻るの
詳しいわね
うん、死んだ時にパンフレットを貰ったから、今も持っているけど見る?
私が死んだ時の楽しみにしておくわ
ふふっ、そうだね
それから私達はいろんな事を話していた、私の生い立ちやお店の事、両親やアスカロンの事。クリスもいろんな事を話してくれた。
……………………………………………………
その頃ラグナロク達はティルフィングとユウが乗る竜を先頭にユグドラシルを目指し荒野を駆けていた。
地上世界って結構広いんだね
そうですね、でもこのスピードならすぐユグドラシルに辿り着くと思います
頼んだよ
任せて下さい
ティルフィングが竜を鼓舞するとそれに応える様に咆哮をあげスピードを上げた。それを見て背後の皆も加速して行く。しばらく進むとティルフィングが何かを見つけた様だ。
あれって人ですよね?
そうだね、何か知っているかも知れない
話を聞いてみましょう、合図をお願いします
はいよ
ユウが手を挙げて止まる事を合図しそれを見て皆が止まってくれた。
どうしたの?
人が居るんだ、ほら、あそこに
指差す方を見ると誰かが立っていた。それにユウが近づいて行く。
すいませーん
話しかけても俯いたままの人。もう一度声をかける事に。
すいませーん
2回目で気が付いた様だ、ゆっくりと顔を向けようとした。
僕達地上世界がどうなってるか知りたいんだけど何か知らないかな?
そう問いかけるとその人の首がゴロリと落ちた。
えっ?
突然の事で理解が追いつかなかった。何もしていないのに首が落ちるなんて考えてもいなかった。
なんて事するのよ!?
僕は知らないよ!勝手に首が落ちたんだよ!
手を振りながら弁解していた。その横をダモクレスが通り抜けて行く。
クレスが治してあげるからね
ダモクレスが魔法をかけるとその身体は灰となり消えてしまった。
あれ?
死人に回復魔法をかけるからよ
じゃあこの人は成仏したって事ですか?
そうだと思うよ?
ユウも死んだ時はあんなかんじだったのか?
うーん、思い出せないしそんな事考えたくも無いよね?
それもそうだな
豪快に笑うグラーシーザ。他にも同じ様に俯き立っている人が居たが近づくと身体の一部が取れてしまい話せる様な状態では無かった。気を取り直してまた進み出した。
止まります!
しばらく進んだ時にティルフィングがそう叫び竜を急停止させた。背後の皆も何とか止まる事ができた様だ。
今度はどうしたの?
女の人が飛び出してきたんです
女の人?
ほら、前に居ます
ティルフィングが前を指差すと両手を広げて行く手を阻む女の人が居た。
あなた達は生きているのですよね!?もし生者なのなら私の願いを聞いて下さい!
そう叫ぶ女の人、とりあえず話を聞く事に。
その願いって何なの?
私をユグドラシルのふもとにある冥界に連れて行って欲しいのです
もっと理由を聞かせて、そんな危険な所に行きたいなんてよっぽどの訳があるんだよね?
はい、実は……
そう言ってその女の人が話を始めた、聞くと冥界の扉を閉める為に向かっている最中だった様だ。
どうして冥界の扉の事を知っているの?
私の夫がした事なのです、私達を甦らせる為に、、、
その夫ってマーベルという名前?
はい、そうです、夫の事を知っているのですか?
彼は教会で自死したわ、残念だけど
そう、、、なら早く私をユグドラシルへ連れて行って下さい!早く扉を閉めないと大変な事になります!
その扉が開いたままだとどうなるのかなー?
死者がこの世界に溢れ出します、やがて天上世界にも死者が彷徨う様になるでしょう
もうなってるよね?
そうですよね?
とにかくユグドラシルを目指しましょう、私の後ろに乗って
はい、助かります
ラグナロクの後ろに乗り込んだ、それを確認してからまた進み始めた。
……………………………………………………………
このバイクも両親の影響だったのね
うん、嫌な事があった時とか風になると忘れられるんだ
後ろに乗ってるだけでも楽しいから運転できたらもっと楽しいんでしょうね
最高だよ
そう言って笑顔を見せてくれた。うん、可愛い。
その燃料はもう無いの?
この街ならもしかしたらあるかも知れない、だからここに寄ったんだけど
それってどんなのなの?
赤いドラム缶に入ってると思う
ドラム缶?
えっと、大きな樽みたいなの
それを探せば良いのね、任せてよ
もし見つけてもそれの側で煙草吸ったらダメ
どうしてよ?
爆発するから
そんな物をこれは食べるのね、美味しいのかな?
食べ物って言ったのは例えだよ
えっ?
まだまだ私の知らない事がこの世界には沢山ある様だ。しばらく進むとその民家の前に置かれたドラム缶を見つける事ができた。
これの事?
うん、ちょっと離れて
そのドラム缶からホースの様な物でバイクに何かを移していた、ふむ、こうやって食べるのか。
終わったよ、行こっか
そうね、でも簡単にこの街を出れなさそうよ
周りを見渡すと人ではなく魔物が私達を取り囲んで居た。あの骸骨みたいな奴の他に紫に光る玉を胸につけた鎧を着た様な姿の魔物、そいつはカブトムシと呼ぶ事にしよう。
こいつらは私は襲わないから私の事は気にしなくて良いよ
分かったわ、さくっと倒してあげるわ
バイクに跨りエンジンを掛けその魔物の横を通り過ぎて行った。身震いする様な低音を響かせるバイク、欲しい……
そんな事を考えていた私に魔物達が向かって来た。先程より数が増えている。こんなにも何処に居たんだ?
けっ、どれだけ居ても全部斬り刻んでやるわよ
疑問を捨てて双剣を構えその群れへと斬り込んでゆく。骸骨みたいな奴は問題無いのだがカブトムシの鎧が硬く剣撃が弾かれていた。
もぅ!厄介ね!
攻撃を躱しながら観察する事に。あの光る玉を攻撃してみよう。カブトムシの剣を防ぎその隙に玉を突き刺すと目の光が消え動かなくなった。倒し方は分かったのだが数が多すぎる、後方に下がりながら反撃していると壁に背中がついてしまった。さて、どうするか。
攻撃を弾きながら考えると一つの方法を思いついた。よし、やってみよう。
ニヤリと笑いさっきのドラム缶を蹴り倒し蓋をこじ開けるとコポコポと燃料が流れて行った。これで準備は整った。
煙草を咥えそれに火をつける。一口煙を吐き出すとそれを上空へと弾き飛ばした。
それが落下する前に飛び上がりカブトムシの頭を踏ん付けながら飛び跳ねて行く。群れの外にたどり着いた時には燃え上がる炎に焼かれてゆく魔物の姿があった。
早く乗って!爆発する!
分かったわよ!
待っていたクリスの後ろに飛び乗ると一気にスピードを上げて走り出した。その後ろで爆発音が聞こえた。振り返ると他にもドラム缶があったのだろう。中心街全体に火の手が回っていた。
……これ程の威力があるとは思ってもいなかった。もしこの被害が私のやった事とバレたら損害賠償とか請求されてしまうのだろうか?まぁ良いや、忘れよう。そうだ、嫌な事は風になると忘れられるんだっけ