※この作品はR-18です。

インテグラル・ノア サイドストーリーユリ物語   作:やす、

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もう1人の私。

中心街を抜けて私を乗せたバイクはユグドラシルに向かって荒野を矢のように進んでいた。

 

 

たまに飛んでくる飛び石から顔を守る為にクリスにしがみついているのだが少しだけ顔を上げるとそびえ立つユグドラシルがもう目の前に迫っていた、もうこんな所まで来ていたのか。

 

 

ここからは歩こっか

 

分かったわ

 

 

ゆっくりと止まったバイクから飛び降りユグドラシルを見上げた、見上げてもその頂上が見えない程の大樹。私何人分なのだろうか?

 

どうでも良い事を考え煙草を咥えて火をつけた。その横にクリスが来てくれた。

 

 

何見てるの?

 

ユグドラシルよ、あれの何処に冥界があるのよ?

 

根元の方に入り口があるの、ここからだと良く見えないけど

 

ならさくっとその扉を閉めて帰るわよ

 

うん

 

 

煙草を投げ捨て歩き出そうとした時だった、何処からか迫る強い気配を感じた、それも一つじゃない、複数の強い気配がこっちに向かって来る。

 

 

クリス、強そうなのが来たわよ

 

えっ?何処から?

 

まだ分からないけど相当な手慣れね、離れてなさい

 

分かった

 

 

クリスが何処かの物陰に隠れたのを見てから双剣を構え大罪の力を解放する。本気で行かないと勝てないだろう。ギュッと柄を握りしめ気合を入れ前を向く。どっからでもかかって来なさいよ!

 

 

だんだんとその集団の姿が見えて来た。目を凝らして良く見てみるとあの竜に乗っているのはアスカロン?

 

 

見覚えのある蒼い竜の頭の上に乗っている栗色の頭の女の子、向こうも私を見つけたのだろう、竜の咆哮が聞こえ私を目掛けてスピードを上げた。

 

 

ユリっ!!!

 

 

そう私の名を呼ぶ声、間違いない、アスカロンだ。竜の頭から飛び降り私に抱き着いてくれた。

 

 

心配してたんですからねっ!ケガとかしていませんか?

 

私は大丈夫よ、それよりどうしてここに?

 

ユリが心配でみんな来てくれたんですよっ

 

 

アスカロンの胸から顔を出し後ろを見るとティルフィング達にラグナ達が竜に跨っていた。

 

 

ありがとみんな!お礼にみんなからの依頼なら格安でやってあげるわよ!

 

お金取るんですね…

 

ユリ、大丈夫ですか?

 

この通りどこにも怪我なんてして無いわよ

 

なら良かったよ

 

それよりその女の人は?

 

 

ラグナの後ろに座っている女の人。雰囲気からしてキル姫では無さそうだ。

 

 

この人はマムって言うの、冥界の扉を閉める為にユグドラシルへ向かっていたの

 

へぇ、なら手伝ってあげるわよ

 

それにその扉を閉めないと私達も帰れないからね

 

 

「お母さん!」そう聞こえて振り返るとクリスがこっちに向かって走って来ていた。そのままマムと抱き合っていた。

 

 

ユリも誰かと一緒にいたの?

 

うん、クリスって言うの、私もここに向かう途中で出会ったのよ

 

 

抱き合う2人を眺めていると気が済んだようだ。とりあえず今からどうするかを話し合う事に。

 

 

その冥界に入れば良いのよね?

 

そうですけどどうやって行くのですか?

 

このまま根元に歩いて行けば入れます

 

 

そう言うのはマム、冥界ってそんな感じで入れるんだ、なんかもっと儀式とかがいると思っていたのに。

 

 

普段なら入れませんが今は扉が空いていますので

 

 

何も言ってないのに説明をしてくれた。私の心が読まれたのか?

 

 

早く行きましょう。これ以上被害が広がる前に

 

そうね、早く店も直したいし

 

 

そんな訳でみんなでユグドラシルまで歩いてゆく事に。たまに出てくる魔物を撃ち払いながら進んで行く。そうは言っても魔物が姿を見せた瞬間にフライクーゲルやアルテミス、ラグナ、ミネルヴァが撃ち抜いているので私達は楽をさせてもらっていた。

 

 

もう終わり?そんなのつまんなーい!

 

 

そう言いながら銃を構えているフライクーゲル、あれだけ簡単に倒していると何かのゲームみたいで魔物が可哀想だった。まぁ同情する必要なんて無いんだけど。

 

 

あそこが入り口になります

 

 

マムが指差す方を見るとユグドラシルに大きな穴が開いているのが見えた。あれが冥界の入り口、あの中にはどんな奴が居るのだろうか?

 

 

この先は未知の領域よ、少し休んでから行きましょう

 

 

ラグナがそう言っていたので煙草に火をつける事に。他のみんなもストレッチをしたりおやつを食べたりと士気を高めていた。

 

 

ユリは怖く無いの?

 

当たり前よ、私よりアルマスの方が怖がってんじゃないの?

 

私はお化けとか絶・信じないから平気よ

 

死者をお化け呼ばわりは少し失礼じゃないですかね?

 

似たような物よ、アスカロンはそう言うの信じるの?

 

私は、、、信じてはいませんけどあまりそう言うのは好きではありませんね、、、

 

お化けが居るならこの目で見てみたいわね

 

同感ね、所詮は仮想の物だし

 

なら2人をラグーナ島のジャングルの島にあるログハウスへ招待しますね

 

 

そう話に割り込んで来たのはティルフィングだった。真面目な彼女がお化けの話をするのは意外だった。

 

 

そのログハウスがどうしたのよ?

 

ジャングルの島のログハウスにはこの世の者ではない何かが潜んでおるのだ

 

 

マサムネまで同じ様な事を言っていた。そこまで言われると気になってくる。

 

 

良いわよ、そのログハウスに私とアルマスで行ってお化けなんていない事を証明してあげるわよ

 

そうね、絶・楽しみにしてるわ

 

 

そう意気込む私達、一瞬だけ2人が笑った気がした。

 

 

何事も苦労の後に楽しみがあるって言うのはいい物ね、もう私の頭の中はラグーナ島の事を考え始めていた。

 

 

何か来るわ!みんな気をつけて!

 

 

私の妄想はラグナの叫びにより掻き消された。瞬時に戦闘モードへ切り替え双剣を構えラグナが指差す方を睨むと冥界の入り口から黒いモヤの様な物が出てきていた。

 

 

見ているとそれは黒い影へと変わった。あれは私を冥界に引きずり込んだ奴にそっくりだった。

 

 

その影は揺めきながらゆっくりと人の形へと変わってゆき完全な人の姿へと変わった。桃黒色の髪、ブラックキラーズのティルフィングそっくりな服装。腰に携えられた双剣。間違いない、あれは、私だ。

 

 

そいつを見ていると胸の奥から何かが込み上げてきた。その衝動に導かれるように一歩、また一歩とそいつに向かって歩いてゆく。

 

 

私も手伝ってあげるわよ!

 

 

そう言って私の横に来たアルマスをティルフィングが制した。

 

 

淘汰が始まります、この先は何人たりとも介入は不可能です

 

 

この胸の奥から込み上げてくるのは淘汰が始まる時の高揚感なのか。

 

 

ついに私はそいつの前に立った。私がそれを睨むとそいつも私を睨んだ。そして同時に双剣を構えた。

 

 

合図が合った訳でもないのにお互いが同時に動き出した。まだそいつと出会って1分も経っていないのに本能が私を突き動かす。こいつを殺せと。向こうも同じなのだろう。お互いが急所を狙い合い一瞬の隙も許されない命のやり取り。それなのに斬り込む度に心が躍り自然と口元が緩んだ。

 

 

楽しい、ズィーヴァと戦った時も楽しかったけどそれの比じゃない程の快感が剣を交える度に私の頭を支配する。この戦いに勝ったら達してしまいそうだ。

 

 

何度も何度も剣を交えるも実力は同じぐらいのようだ、剣を振るえば弾かれ振われた剣を弾き返す。ならば戦い方を変えよう。

 

 

後方へ飛び跳ね双剣を構え直しステップを刻みリズムをとる。ズィーヴァ直伝の双剣の煌めきを見せてやるわ

 

 

繰り出される剣撃を躱しその隙を刺す。しっかりと太刀筋を見極め的確な反撃を放ってゆく。不慣れな守りの戦い方だが何よりも勝ちたかった。

 

 

そいつもそれに気が付いたのだろう。先程よりも剣撃が激しさを増した。守りが硬いのならばそれ以上の攻撃を叩き込めば良い。簡単な事だ。

 

 

攻撃を防ぎ後ろに飛び跳ねるとそれに追い討ちをかける為に私に向かって来た。それを迎え打つ為にそいつの動きを観察し動きを予想する。このまま七元で斬り込んで来る、ここまでは予想できた。

 

 

私が反撃の体制を取るとそいつは一瞬立ち止まった。反撃の一閃は空を斬った。すぐさま体制を整えようとした時だった。何かが私の両目にかけられた。

 

 

っつ!

 

 

私の目線から離れた瞬間に剣で地面を削り砂を私に向かって飛ばしたようだ。その作戦は見事私の視界を奪う事に成功した。すぐさま視線では無く気配を探ろうとしたがその隙をそいつが逃すはずは無い。迫り来る剣撃を七元で防ごうと構えた。

 

 

ガンッガンッと重たい衝撃が剣に浴びせられた。そこまでは耐える事が出来たのだがそいつはそのまま一回転し勢いをつけ再び連撃を私に浴びせられた。

 

 

その衝撃に耐えきれず七元が私の手を離れクルクルと宙を舞った。それを拾いに行く暇など与えられず双剣による乱舞が私を攻め立ててゆく。何とか応戦するも防ぎきれない剣技が私に傷をつけていった。

 

 

何度も目をシパシパして砂を取ろうとするのだがそうする度に涙が溢れてさらに状況は悪化。微かに見える視界は涙によりボンヤリとしか見えなかった。それでも気配を探り果敢に骸斬を振るい反撃してゆく。

 

 

そんな私に骸斬の衝動が襲いかかる。破壊と殺戮を望む骸斬の破壊衝動。それが手から私の身体に溢れてゆく。この衝動に流されれば勝つ事は出来るかも知れないがそれは私が望む勝利では無い。自分自身の持てる力で自分自身に勝ちたかった。

 

 

そう願う私に容赦の無い剣撃が打ち込まれてゆく。どこが痛いのか分からない程の傷が私の闘争心を萎えさせてゆく。私はそいつに淘汰されるんだ、ここで死ぬんだ。だんだんと弱気な事を考え始めていた。

 

 

その心を打ち消す様に骸斬の衝動が押し寄せる。このまま死ぬぐらいならこの衝動に身を任せてしまおうか。心を空っぽにしてその中にドス黒い感情が流れてこんできた時だった。

 

 

ユリっ!!!絶対に勝って下さいっっ!!!!

 

 

アスカロンの泣きそうな叫びが聞こえた。そうだ、私には帰る場所がある、待っていてくれる人が居る。こんな所で死ぬ訳にはいかない。

 

 

両手で骸斬を握りしめ萎えていた心に喝を叩き込む。骸斬の衝動に飲まれるんじゃない。私の心で骸斬を飲み込むんだ!

 

 

一呼吸して神経を研ぎ澄ませ私の持てる力全てを今、ここで解放する。

 

 

ピンっと張り詰めた精神。それは私の感覚を極限まで研ぎ澄ませた。見えていなくてもそいつの動きが手にとる様に感じた。自分が自分で無い様な、全てがゆっくりと感じる様な不思議な感覚。

 

 

私の正面、左側から切り込んで来る。一本は上から、もう一本は横から剣を振るうのだろう。

 

 

一瞬前進しそいつの剣が振り下ろされる瞬間に後方へ下がった。顔に剣の風圧を感じた瞬間に渾身の一太刀を振り下ろした。

 

 

その一閃は服を斬り裂き肉を断った。その勢いで一回転しありったけの力で骸斬を突き出すと何かにズブリと突き刺さった。

 

 

二本剣が落ちる音が聞こえてそいつが突き刺さった剣を掴み押し返そうと力を込めるがやがてその抵抗も無くなった。ゴシゴシと目を擦り両目を開くと胸に剣が刺さったまま私を睨む私が居た。

 

 

そいつは諦めた様にため息をつき煙草をくれとジェスチャーをした。それを見て箱から一本取り出してそいつに咥えさせ火をつけてあげる。

 

 

大きく煙を吸い込み美味そうに吐き出した後にそいつの身体はキラキラと光の粒となり私の身体へと吸い込まれていった。その快感に私はブルリと身を震わせ座り込んだ。そんな私の元にアスカロンが来てくれた。

 

 

ユリっ、大丈夫ですか?

 

アスカロンの言葉がなかったら勝てなかったわよ、ありがと

 

 

何とか立ち上がりアスカロンにギュッと抱き着いた、そんな私の頭をヨシヨシと撫でてくれた。

 

 

淘汰した気分はどうですか?

 

上々よ、あれは何だったのよ?

 

私の推測ですけどユリがティルフィングの呪いを使った時に死んだ人の部分だと思います、地上世界にユリを引き込んだのもきっと淘汰を行う為だったのでしょう

 

そう言うことね、それより疲れたわ

 

ならクレスが癒やしてあげるね♪

 

ありがと、助かるわ

 

 

ダモクレスに癒やしてもらい煙草に火をつけた。充実感はあるけど喪失感をなんとなく感じていた。

 

 

もう少ししたら行こっか

 

 

ラグナがそう言っていた。今のうちに少しだけ眠ろう。なんだか疲れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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