あれからあたし達はラグナを探しながら街をふらふらと。店先で声を張り上げる店員に惹かれて店を覗いたり匂いに釣られて買い食いをしたりと。
「おいひぃでしゅね♪」
「しょうね、にゃかなかだわ」
現在あたし達は購入したたい焼きとジュースを両手にギルドの本拠地であるデュカキスの屋敷へと足を進めていた。そんな時前から歩いてくる二人組を見つけて思わず口が止まる。
「リャグナ!しひゃしぶり!」
「久しぶりねユリちゃん。それと食べながら歩くなんてお行儀が悪いよ」
「お久しぶりですラグナロクさん♪後ろに居るのは、、?」
ラグナロクの背後に居る青いショートカットの女の子。見覚えのある髪型髪色に癖毛。一瞬にして怒りが湧き起こりそいつの胸ぐらを掴み睨む。
「どのツラ下げて歩いてんのよこの青天」
「誰よあんた、いきなり何するのよ!」
「シラを切るつもり?あんたがした事忘れたとは言わせないわ、ぶっ殺してやるわ」
右手で剣を掴みそいつを斬ろうとしたのだがラグナロクとアスカロンに止められあたしは動けずに。
「いきなりなんて事するんですか!?」
「邪魔しないでアスカロン」
「落ち着いて、私がちゃんと説明するからね」
ラグナロクに止められて渋々手を離し話を聞く事に。聞けばアルマスはあの時擬彩化が解かれ記憶を失ってしまったようで。それで記憶を思い出す為にラグナロクと共に旅をしている。
「それにアルマスは私と共鳴してるからアルマスの考えている事も分かるの、今のアルマスはインテグラルキラーズに居た時の記憶は全く無いんだよ」
「えっと、ユリだっけ?インテグラルキラーズの時の私が何かをしたのならちゃんと謝るわ」
「もう良いわよ、記憶がないやつ殺しても復讐は果たせないわ」
なんとなくバツが悪くなったあたしはデュカキスの屋敷に向かい歩んでゆく。
「何があったのアスカロン、詳しく聞かせてちょうだい」
「実は、、。」
この街に着く前に寄ったコーラル村での話をしてゆく。インテグラルキラーズの事、フライクーゲルの事。ユリの両親はインテグラルキラーズに殺された事を。
「だからあんなに怒ってたのね、、」
「そう言われても私の記憶は本当に無くなってるの。その前の記憶も、、」
「うーーん、、ラグナロクさんはフライシュッツにはもう会いましたか?」
「まだだよ、気配は感じるから近くには居るとは思うけど、、」
「それと新しい種類の異族も見ました。あの異族はインテグラルキラーズの命令で動いているようです」
「それは私達も見たわ、確かにアルテミスの指示通りに動いていたし見た事の無い異族だったわ」
会話をしながら三人はデュカキスの屋敷へと向かう。
そんな頃一足先に屋敷に辿り着いていたあたしは門柱にもたれながら煙草を吸っていた。
アルマス、元インテグラルキラーズ。あいつが両親を殺したのに、記憶が無いだなんて。
記憶が無い奴を殺すのは気が引ける。どうにかして記憶を思い出させ罪の意識を植え付けそこを殺してやりたい。でもどうしたら記憶が戻るのか。
一つの方法を思い付き思わずニヤけてしまう。あとは三人がここに来るのを待つだけだ。吸い終わった煙草を投げ捨て二本目の煙草に火を灯してゆく。
しばらくすると三人がこちらへと歩いて来た。そこに向かい歩んでゆく。
「アルマスだっけ?あんた記憶が無いのよね?」
「そうだけど」
「じゃあ一発殴らせてよ。そうすれば記憶が戻るかも知れないわよ」
「さっきから何?人が大人しく話を聞いていれば好き勝手言って!」
「何よ。あたしはあんたの記憶を取り戻す手伝いをしようとしてるのよ。文句があるの?」
「はぁ?そのやり方で!?」
「そうよ、さっさと頭殴らせなさい!」
「まぁまぁ、、二人とも落ち着いてくださいっ」
「アスカロンは黙ってて!」
両腰に付けた鞘から伸びる柄を掴む。あたしと対面するアルマスも柄に手をかけ一触即発の雰囲気。そんなあたし達の間にラグナロクが入り込む。
「喧嘩はやめなさい。私達はインテグラルキラーズを止める使命があるのよ」
「それならまず元インテグラルキラーズから殺すべきよ。いくら記憶を失っているからってそいつが元に戻らない可能性はないんでしょ?」
「それは、、」
「もしアルマスがインテグラルキラーズに戻ったとしても私が必ず元に戻す。まだアルマスに剣を向けるのなら私が相手になるわ」
ラグナロクから伝わるプレッシャーでゾクリと背筋が震える。一瞬それに怖気付いたがあたしは止まらない。
「良いわよ、なんならあたしは二対一でも構わないわ」
両剣を抜刀した瞬間に首元まで氷に包まれ呆気にとられた。
「いい加減にしてください!少し頭を冷やしてください!」
あたしを凍らせた主があたしに向かい叫ぶ。
「何よ、アスカロンまで肩を持つつもり?こんな氷であたしを止められると思ったら大間違いよ!」
氷を割ろうと力を込めた時アスカロンがあたしの頬を打った。
「今はアルテミスを止める事が最優先です。ユリの気持ちは分かりますけど選択を間違えないで下さい」
「だから何?あんたは悔しくないの!ムカつかないの!殺したくならないの!?殺すべき相手が目の前に居るのよ!?」
「私も悔しいです、仇を討ちたいです。でもそれは今ではありません」
あたしを見た顔は悔しさで震え血が滲む程唇を噛み締めていた。
「ユリのお父さんお母さんは私にとっても大切な人でした。ユリの気持ちに負けない程、分かってください」
「・・・・・・分かったわよ」
「もうアルマスを攻撃しようとしませんか?」
「しない」
「絶対にですよ?」
コクリと頷くと一瞬にして氷が解凍され水溜りを作る。
「・・・・・アルマスだっけ、ごめん。熱くなりすぎた」
「理由は聞いているわ、私もそんな理由ならユリと同じ事をすると思うの、だから絶・許してあげる」
笑顔であたしに向かい手を差し出した。その手を躊躇いながらも握る。
「おーおー友情が芽生える瞬間も乙なものですなぁ♪」
振り返った先には青髪の女の子の姿。その後ろにはデュカキスの姿も。
「良いものを見させてもらったのである。ラグナロク殿、これより今夜襲撃するアルテミスの対策を練るのである」
「分かったわ。話は部屋でしましょ」
一行はデュカキスの案内の元、屋敷の一室へ。ドアを開けると広い部屋に長机が置いてありそこにはアクスレピオスとテュルソスの姿が。
「お待たせーじゃあ対アルテミス会議始めちゃおっか」
全員が席に着くと青髪の子がボードの前に立ちペンで図を書きながら作戦を言い合ってゆく。
「ねぇ、その前にあんたは誰なの?キル姫?」
「私はケラウノスだよ♪このギルドの頭脳と呼んでくれたまえ♪ユリの事はアスカロンやラグナロクから聞いてるから把握済みだよ♪」
「ふむ」
しばらくしてボードにはこの街の地図が書き出されていた。このデュカキスの屋敷を囲うように住宅が並んでいるのが分かる。
「前回のアルテミスの言っていた事が本当なら狙いはうちのマスター。それなら攻めてくる場所はこの屋敷となる。そ・こ・で、アスカロンの力を借りちゃおっかなー」
「私、ですか?」
「うん♪人を一瞬にして凍らせる程の冷気を操れるのを見たからね♪その冷気はどこまでの範囲で使えるの?」
「えっと、私の魔力次第ですけどこの街全体を冷気で包む事は可能です。でもそんな事したらすぐ魔力切れを起こしちゃいますよ」
「それならテュルソスに回復させてもらいながらなら問題ないね♪マスター」
「である」
ケラウノスがデュカキスへと案を伝えると承諾され部下へと伝える。案を伝えられた部下は何処かへと走ってゆく。
「これで防御は大丈夫だね♪その次に問題なのはアルテミスが呼び出す擬彩異族だ。これはユリとアルマスにお願いしよっかな」
「私は良いけど、どうして私とユリなの?」
「身軽な君達には擬彩異族が出現し次第街中を駆け回ってもらうよ。それで擬彩異族の殲滅を行なってもらう。君たちが打ち損じればこちらにも被害が及ぶことを念頭にね」
「それで最後、アルテミスは私とラグナロクで叩く。私が魔弾を撃ちまくるからラグナロクは隙を見てやっちゃってね♪それとアクスレピオスは私の回復と被害者の救助だね♪」
「他に何かあるなら遠慮なく言ってよ、作戦の数は多ければ多い程選択肢となるからね」
「あたしはアルテミスと戦いたいんだけど」
「それは無理な相談だね。君の事情はさっき聞いてたけど君の復讐よりこの街を守る事の方が大事だ」
「あんた良く聞いててそんな事が言えるわね」
「ユリ」
「っ」
アスカロンに嗜められるあたしを見た後たんたんとボードを叩きながらケラウノスが告げるが誰も手をあげずニヤリと笑う。そんな時部屋の角に蹲る赤髪の子を見つけた。
「ねぇ、あの子は?」
「あーあの子はアポロン。アルテミスの妹なんだけどこないだアルテミスに襲撃された時アルテミスを攻撃できないばかりか手傷を負わされた役立たずだよ」
「ちょっとケラウノス!あんた言い過ぎよ!」
「言い過ぎも何も本当の事を言っただけだよ。姉妹だかなんだか知らないけどマスターの為に戦えないのなら役立たず以外の何者でもないよ。どうしてマスターはアポロンをギルドから追い出さないのか不思議だよ」
肩をすくめた後もう一度意見を取り直しこの会議は終了となった。
「アルテミスが来るまでにまだ時間がある。それまでに街の全体を見ておいてね♪」
笑顔でそう言いケラウノスは部屋を出て行った。残されたあたし達はケラウノスの態度に怒り心頭なのだが。
「あ〜ムカつくわね、、、!何なのよあいつは!」
「ケラウノスは優秀なんだけどちょっと口が悪いかな」
「ちょっとどころじゃないわ!絶・悪すぎよ!」
「まぁまぁ、そんな怒ってたら美味い酒も不味くなるよ。一杯飲んで落ち着かなって」
「もうすぐ戦闘になるって言うのに何進めてんのよ!」
「そー怒らないの。アクスレピオスも一杯飲みなって♪」
「ん、良い酒飲んでるじゃない」
「ってアクスレピオスも飲むんですか、、」
テュルソスに渡されたグラスを煽り満足そうな顔をした後思い出したかのように怒り出すのだが。
「さっき聞いたけどアルテミスはなんでデュカキスを狙ってるのよ?」
「余が持つバイブスがインテグラルキラーズの剪定対象である。それが何であるのかは分からないが」
「バイブスにも種類があるのね?」
「うーむ」
「そういえばフライクーゲルもあたしを連れてゆくとか生かしておくって言ってたわね」
「そういえば言ってましたね。それが何を意味するのでしょう?」
「半姫半人だから?バイブスとキラーズを持っているのが珍しいから?」
「うーん?」
考えるのだが理由は分からないまま。
「ねぇユリ街を見に行きましょうよ」
「そうね、ちょっと行ってくるわ」
「二人で大丈夫?」
「子供じゃないわよ」
夜に備えあたしとアルマスは街を見に行くことに。ラグナロクとアスカロンが塞ぎ込むアポロンの元へ。
「元気出してくださいよ」
「ほらアポロン、私達が話を聞いてあげるからさ」
「うぅ、、、」
「場所変えよっか、みんなが居たら話しずらいよね」
振り返るラグナロクにアクスレピオスが隣の部屋を貸すと言い三人は隣の部屋へ。
「ボクはアルテミスお姉ちゃんと戦いたくないんだ、、それがマスターの頼みであっても、、」
「でも戦わなければ街は守れないわ、それにマスターであるデュカキスの事も」
「アルテミスがどうして攻めてくるのかは分からないのですか?」
「そんな事ボクが聞きたいぐらいだよ。昔は一緒だったのにいつの間にか離れ離れになっちゃって、やっと会えたと思ったらボクに向かって矢を放って、、。うぅ、、」
今にも泣き出しそうな顔で項垂れてしまう。
「それならユリ達と一緒に擬彩異族討伐に回ります?それならアルテミスと戦う事はありませんし」
「でもアルテミスお姉ちゃんを撃ち抜けるのはボクしか居ないんだ。それに夜はアルテミスお姉ちゃんが最も得意とする時間」
「うーん、、じゃあアポロンにお願いを一つだけして良いかな?」
「なんだよ、、」
「今夜アルテミスを撃ち抜いて欲しいの、別に命を奪えとは言わないわ。身動きを取れなくして欲しいの」
「そんな事したらみんながお姉ちゃんを殺しちゃうよ、、」
「うんん、そんな事はさせないわ、約束する」
ラグナロクの瞳を見て言葉に偽りが無いと悟る。それでもまだ心に姉を撃つ事を躊躇う気持ちが残る。
(嫌な風ね)
先程まで快晴であった空は雲に覆われ生温い風が吹く。その頃。
「へぇーあんたも大変なのね」
あたしはアルマスの話を聞きながら街を歩いていた。アルマスが話してくれたのは生まれも両親も分からず気が付けばインテグラルキラーズに居たという話。
「でもユリも辛い思いをしてきたじゃない」
「ん、まぁね、、ねぇ、あれ食べましょうよ」
カレットの街は賑やかで街の至る所に出店があり美味しそうな匂いを漂わせる。そんな匂いにつられてたこ焼きを購入しベンチに座りいただくことに。
「おいひぃわね」
「ほんしょた」
出来立ての熱々のたこ焼きを頬張りジュースで流し込む。そして前歯に付いた青のりを見てお互いが笑い合う。
「そろそろ屋敷に戻りましょ。もう時間よ」
「分かったわ」
デュカキスの屋敷へと歩んでゆく。
アルテミス襲撃まで残り、35分