透子さんはそこにいる 〜性欲が強い透明人間の女の子とイチャラブエッチする話〜 作:タナん
透子さんが僕の前に姿を表さなくなった。
最後にあった日、僕達はセックスをしていた。
正常位で透子さんを攻め立てながら僕は以前より大きくなった透子さんの胸の感触を楽しんでいた。
いつものように手で透子さんの体の形を確かめながら、胸から脇へ、そしておへそへと指を沿わせる。
僕は透子さんの体を見たことがないけど、隅々まで知っている。
もしかしたら本人よりもよく知っているかもしれない。
だからお腹へと指を這わせたとき、少し違和感があった。
「どうしたの?」
「あっ…いや、なんでもないよ」
透子さんすこし太った?
まさか女性にそんな事を言うわけにはいかないのでその言葉を飲み込む。
元々透子さんは肉付きは悪くない方だったけど、お腹が以前より丸み帯びて膨らんでいたのだ。
まあどんな姿になっても僕は透子さんを愛しているので関係ないし、これくらいなら全然気にならない。
そう思いながら、僕は再び透子さんとの行為へ耽っていった。
その次の日から透子さんは学校にこなくなった。
失踪したわけではない。ちゃんと連絡は毎日のようにしている。
だが、以前は透子さんの方から会いたいと言っていたのが、今は会えないというのだ。
一週間経っても、ニ週間経っても、いくら僕が会いたいと連絡しても会えないという言葉は変わらない。
もしかして誰かに誘拐されて誰かが変わりにメッセージを送っているのかとも思ったが、電話は繋がり、大丈夫だと言われ、家に直接行って既に顔見知りになっている透子さんの母親に、透子さんのことを聞いても
「あの子は大丈夫だから今はそっとしといてあげて。でもあの子は杉本くんの事が大好きだから絶対別れようとは言わないであげてほしい」
と諭され家には入れてもらえなかった。
透子さんに会いたい。
今日もそう思いながら鬱々とした日々を過ごしていたある日、朝のホームルームに現れる先生を眺めていると信じられない言葉が出てきた。
「透子さんは学校を辞めることになりました」
僕はその言葉を聞いて直ぐに席を倒しながら立ち上がり外へ駆け出した。
どうして?
なんで?
頭には透子さんへの疑問符が次々と浮かぶ。
このまま透子さんと別れるなんて嫌だ。
何としても透子さんと会わなければならない。
僕は透子さんの家へ走りながら電話を掛ける。
コール、コール、コール。
『はい透子です』
繋がった!
「透子さん!学校辞めるって本当なの?!」
『うん……本当だよ』
そう答える透子さんの声は、会ったばかりの時のようなどこか自身なさげで、申し訳なさそうな声だった。
なんだか僕にはその声が、僕と透子さんの心の距離が離れてしまったかのように感じて……不安になって……感情が大きくなっていく。
「なんで……一言くらい僕に相談してくれても良かったじゃないか!」
『ごめんなさい……訳は言えなくて……ごめんなさい……』
つい一言声を荒げてしまった。だがこのたった一言で透子さんの声は更に苦しく、辛そうな声になってしまった。
僕は透子さんのなんなんだろうか。
僕は彼氏なのに、何かに悩んでいて辛いはずの彼女を不安にさせてしまった。
そう思うとポツリとずっと抱いていた不安が漏れてしまった。
「……僕達は別れるの?」
『嫌!!』
僕の言葉に透子さんが悲鳴を上げた。
耳が痛い。
僕には茶目っ気を見せるけど、普段は大人しい透子さんが電話越しに僕の耳が痛くなる程の叫びを上げた。
『ごめんなさい杉本君!嫌いにならないで!』
「あ……」
『捨てないで!私には杉本くんしかいないの!』
「と……透子さん大丈夫だから落ち着いて……」
『お願いします!何でもしますから!』
「透子さん!」
『ひっ!』
「大丈夫だから。透子さんが僕の事を嫌いならない限り別れるつもりはないから」
『……本当?』
「うん。本当だよ」
『ありがっヒック…とう……ございます……』
「変な事言ってごめんね」
しゃくり上げてお礼を言う透子さんは泣いている。どうやら泣かせてしまったようだ。
僕は電話を切ることなく透子さんを慰め続けながら透子さんの家へと向かう。透子さんを傷つけてしまった。なんとかしないと。
「透子さん! 今、君の家の前にいるんだ!」
だが、透子さんの家についた僕はやっぱり家にあげてはもらえなかった。
透子さんに電話で入れてもらえるように説得しようとしても、「ごめんなさい」 と透子さんは繰り返すばかり。
チャイムを鳴らすと家から透子さんの母親が出てきたが、申し訳なさそうな顔をして
「今は会いたくないみたいなの」
と言って、入れてはもらえなかった。
僕は肩を落として去ろうとした時、透子さんの母親は何かを僕には言いたそうに喉を詰まらせる。
口を開けては閉じ、何かを迷っているようだ。
そして肩を落とし小さな声で僕に言った。
「じゃあね。またあの子に会いにきてあげて……多分あと半年もすれば会えるようになるから……」
透子さんの部屋がある二階の窓の方へ顔を向けると、カーテンが揺れていた。
もしかしたら透子さんが僕を見ているのかもしれない。
僕は学校に戻ることなく自宅へと重い足を進めた。
次の日、目覚めるとスマフォに透子さんからのメッセージが入っていた。
――クッキー焼いてみたのでポストにいれています。食べてくれると嬉しいです。
僕は眠気眼でその文章を読むと布団をはねのけてベッドから飛び降りると、パジャマのまま玄関へと走って勢いよく玄関のポストを開けた。するとそこには緑のパステルカラーの可愛らしい袋が入っていた。
リボンで結ばれた袋の中を開けて覗いてみると中にはチョコチップが混ぜられたクッキーが入っている。
透子さんの手作り料理なんて初めてだ。会えないのは寂しいが、透子さんとの心のつながりを確認できたようで、ルンルン気分で部屋へと戻る。
「いただきまーす」
サクッ
口の中に甘い香りが広がり、その中にビターなチョコの味がとてもバランスがよくて滅茶苦茶おいしい。しかも彼女からの手作りクッキーと考えれば美味しさ二割り増しだ。
僕はまだ朝食前だというのに次々とクッキーを口に運んであっという間に食べ切ってしまった。
とてもおいしかった。透子さんにお礼言わないと。
そう思い、ベッドに放り投げられたスマフォを手に取ろうとした時、強烈な眠気が襲ってきた。
満腹になったからだろうか?
「せめて……返事だけでも……」
二度寝するにしても透子さんにメッセージを送ってからだ。
そう思うも瞼が酷く重くて頭がカクリと落ちる。そのたびに何度も何度も頭を振ってメッセージをスマフォに打ち込んでいくが、一文字打つのにも頭が働かず時間がかかってしまう。
やがてクッキーの感想を半分ほど入力したところで僕は力尽き、ベッドへと沈んでしまった。
なんだろうペニスが凄く暖かい。
まどろみの中あっけなく射精した。
どくどくと吐き出される精液の気持ちよさにここは天国かと思うような安心感が僕を包む。
「あぁ…気持ちよかった……ってやっば!」
あまりの気持ちよさについそのまま出してしまったがパンツの中がぐしょぐしょになってしまっているはず。今何時かわからないが親に見つかる前に処理しなければならない。
そう思って僕はベッドから体を起こそうとした。
だが両手が何かに引っかかりあえなくベッドへ引き戻されてしまう。
「なんだ?」
不可解な感触に僕は顔を横に向け、自分の腕を見てみる。
「なにこれ?」
正確には何かはわかる。腕を何かの布でベッドへ縛り付けられているのだ。それは足も同じで僕は今ベッドの上で大の字で寝かされている。
問題はだれがこんなことをしたのかだ。
「な?! あっ」
ペニスになにか生暖かい物が巻き付いていて、射精して汚れたペニスがずるりと何かがはい回るたびに綺麗になっていく。
ベッドの脇を見ると、脱ぎ捨てられた女物の衣服が散乱していて、左右に開かれた僕の股の間に精液が宙に浮いている。
この目に見えない搾精生物の正体は一人しかいない。
「透子さんなにしてるの?!」
「謝りに来たの」
その声は紛れもなく透子さんの物だった。
一体何を謝ろうとしているんだろうか。会えない事? 泣いてしまった事? それはいい別に気にしていないし、むしろこっちが謝りたいくらいだ。
でもこの状況と透子さんの謝罪の意思はどう考えても繋がらない。
「お詫びに一杯気持ちよくするからじっとしてて」
透子さんがそう言い終わると、僕が何かを言う前にペニスが熱い空間に包まれた。
ペニスの表面をぴったりと張りつく感触が上下に往復すると、水音と空気が漏れる音が聞こえる。
これはきっと透子さんの口淫だ。
僕の開かれた太ももを巻き付いたのは透子さんの腕で、内またの部分をさわさわ撫でているのは透子さんの髪。透子さんの口はとても吸い付きがよくて、まるで口と僕のペニスを一つにしようとしているかのようだ。
透子さんのフェラは勿論目に見えない。でも僕のペニスをガラスで抑えたように変形した部分を見ると強く巻き付いた不可視の肉輪の存在を認識できる。
僕が快楽でうめくと透子さんの口淫がはげしくなる。透子さんがフェラをしてくれる度に、僕はいつも透子さんを褒め、頭をなでていた。
そのせいか透子さんはフェラが好きになったらしく、隙あらば僕のペニスをしゃぶっていいかとおねだりしてくるようになっていた。
一度、無理してフェラしなくていいよと言ったことがあるけど、その時透子さんは、
「無理なんかしてないよ。なんだか杉本君のを咥えてると安心するの。だから好き」
そう言うと僕のペニスからちゅっという音が聞こえてきたのを覚えている。
今も、僕が反応を見せれば見せる程、どんどんフェラが激しくなっていく。
透子さんの口の中では舌が裏筋を舐め上げ、亀頭をなでなでして、尿道をぐりぐりほじくってくる。
我慢汁が僕のペニスの先から溢れればすぐに拭き取られ、次の我慢汁を催促するかのように僕の根元から、唇でできた肉輪が根元を締め付けて尿道に残った我慢汁を絞り出した。
透子さんの激しい口淫の前に僕の射精感があっという間に高まってきた。
透子さんは僕の射精の瞬間を決して見逃さない。
射精が近くなって強くなる一方の激しい快感に、たまらず腰を動かして快感を逃がそうとするも、太ももをぐっと引き寄せられ、ペニスをバキュームする力も強くなる。
「透子さん出る!」
僕の射精の合図を聞くと透子さんは何も言わず、ただ僕のペニスを虐めるのみ。
どくんと心臓が大きく弾むと、縛られた手足がベッドを揺らして、ガチガチにそそり立ったペニスから精液が噴き出す。
射精を始めた僕の精液はいつものように、ペニスを包んだ透子さんという精液を飲み込むための容器に溜まっていく。
ドロドロの精液は僕のペニスの周りに溜まっていくが、ベッドを汚す事も僕の股を汚すこともない。いまだ透子さんが僕のペニスを咥えたままで、精液を飲み込んでいないという事だ。
精液の溜まった透明なグラスの中心に生えた僕のペニスは力を失い、半勃ちになる。
半勃ちになったペニスの周りに溜まった精液が、根元、竿、亀頭へとゆっくりと持ち上がっていくと、再び根元へ一気に精液が落ちていった。
「うあ! 透子さん! ああ! もうイったから! ちょっとまって!」
僕のイったばかりのペニスの周りを精液が激しく上下に移動する。
僕の懇願を無視して精液が激しくシェイクされ、まるで僕のペニスがミキサーにかけられたかのようだ。
あっという間に僕のペニスは硬さを取り戻し、手足を縛られた僕は、透子さんの精液をかき混ぜる作業にひたすら耐えるしかない。
敏感になりすぎたペニスは今、透子さんがどの位置を咥えて、どんな風にペニスを舐めまわしているのかが逆にわからない程の快楽の嵐を与えてくる。
一切何も言わず、ただただ僕のペニスをしゃぶり続ける透子さんの顔は見えない。
「あ! あ! あああ!」
何かが噴き出した。
精液とは違う透明な液体。
どろっとした重い精液ではあり得ない、激しい噴出する透明な液体のせいで頭が真っ白になる。
気持ちいい! 止めて! つらい! おかしくなる! 苦しい! 最高!
あまりの刺激の強さに快楽と辛いという相反する感覚がごちゃ混ぜとなって僕の脳をかき回す。
さっきより激しく腰を捻って透子さんのフェラチオから逃げようとするが、ペニスの装着された快楽ミキサーは決して外れることはない。
むしろ精液とペニスをかき回すための舌の動きがより激しくなるだけだ。
精液と透明な液体は透子さんの透明なグラスの中で混ざり合って、泡立っていく。
「ああ……」
空虚な意味のない声が僕の口から漏れ出し、数秒なのに永遠にも続くかと思った快楽の嵐がペニスから抜け始めた。
放心する僕のペニスからシェイクされた精液がペニスの周りを持ち上がっていくが、吸い付いた透明な唇によって、精液を一切残さずに空中へと離される。
宙に浮いた精液と透明な液体は、ぐちゅぐちゅとかき回され、入念に混ぜ合わされるとゴクリという嚥下の音と共に、食道へと落ちて細くなっていく。
「杉本君……どうだった?」
その声はどこか不安気で、僕の機嫌を伺う媚びたような印象を受けた。
透子さんの事だ。この執拗な攻めも僕への善意でしかないんだろう。
「男の人も潮吹きするって見たの。そうすると凄く気持ちいいって」
「杉本君と会えない間、会ったときに喜ばせられるようにネットで一杯勉強したんだ」
返事するのも気怠く、息を荒げながら僕は天上をぼけっと眺めて透子さんの話を聞く。
「クッキー食べてくれた? お母さんに教えて貰って焼いてみたの。口にはあったかな?」
矢継ぎ早に話す透子さんは返事を待っているようで、僕の返事を恐れて何も話させないようにしているのかもしれない。
結局、かもしれないだ。僕は透子さんの表情は読めない。
事実、透子さんの悩みが何を悩んでいるかわからず目の前から姿を消す予兆を感じ取ることができなかった。
透明人間である透子さんと向き合う方法。その手段が今ないことがすごく悔しい。
その時、腕を縛る拘束が緩んでいることに気付いた。さっき透子さんのフェラチオから逃げようと散々暴れたからだろうか。
都合のいいことに両手とも頑張れば抜けそうだ。
僕は一気に腕に力を込めると、手首を縛っていた布から手を抜くことができた。僕はその勢いのまま起き上がり、股の間に座っているだろう透子さんへ向かって両手で抱き着こうとする。
透子さんは目に見えないから捕まえるのは難しい、だから僕は両手を目一杯広げて万が一にも逃がさないように大げさに抱き着く。
もう逃がさない。僕は透子さんと徹底的に向き合う。
表情も何もわからず本心を言わない透子さんと向き合うただ一つの方法、それは直接触れる事だ。
縛られていてはできない、僕なりの透子さんとを知る方法。
僕は透子さんと一杯触れあってきた。
暫く会う事も出来なくなっていたけど、透子さんの形は僕の中に深く刻まれていて決して忘れることはない。
柔らかい透子さんの背中の感触が僕の腕に感じる。
僕の胸に潰された透子さんの大きな胸。
頬で感じるすべすべの頬。
そして、僕の知らない透子さんの大きなお腹。
「透子さん……このお腹……」
「あ……あああ……」
透子さんが絶望に濡れた声を上げた。
その声は力が宿っておらず、人に意味を伝えるという役目すら込めることを放棄した力のなさ。
これが透子さんの隠したがっていたことだ。
「妊娠したんだね」
「ごめんなさいごめんなさいごめんんさいごめんなさい」
やっと出た言葉はさっきとは打って変わって強い怨念が籠っていた。
僕と透子さんがセックスする時は必ずゴムをつけていたはずだ。
一体誰の子供なのだろうか。
彼女が謝る理由。
透子さんは浮気するような子では決してない。でも、このただならぬ様子の透子さんを見て不安がよぎる。
僕は乾く喉を無理やり開き、真意を確かめる。
「誰の子供?」
「……杉本君で……す」
「そう……なんだ」
泣きながら語る透子さんのその言葉に僕はホッとした。
もし無理矢理で望まぬ妊娠を強いられた可能性があったからだ。
となるとあとはなぜ妊娠したかだ。
「透子さん、僕とする時はゴムをしてたよね。あ、でも初めての時は生でしてたしその時の子供なのかな?」
「実は……アナルセックスするって言っておまんこに入れてました……」
「え?!」
思わず声が裏返った。
ホッとしたが、もしかしたら僕に知られたくなくて強姦されたことを言えないだけという可能性が、予想をはるかに上をいく言葉で吹っ飛んでしまった。
「ど……どうしてそんなことを?」
「中出しが好きだからです」
「そ……そうなんだ……」
道理でお尻もおまんこも感触が似ていたわけだ。
性欲が強いとは思っていたけど、こっそり中出しさせていたなんて……泣きながら告白しているところ悪いけど正直エロい。
「なんで妊娠を教えてくれなかったの?」
「よく若いカップルが妊娠して捨てられたのテレビで見てたから怖くなって……しかも私勝手にゴム無しでしてたから……」
「大丈夫だよ、僕はそんなことしない」
透子さんの背中をさすりながら、子供をあやすように体を揺らす。
高校生で妊娠を経験したこの少女にとってそんなテレビの出来事が途轍もなく恐ろしく、確定した未来のように感じたのかもしれない。
だから僕は慰める。
僕はここにいる。透子さんを見ていると。
しばらくそうしていると、ギュッと力が入って緊張状態だった透子さんの体が、力が抜け僕へと体を預け始めた。
ようやく安心させることができたようだ。
僕はそのタイミングで次の疑問を透子さんに問う。
「妊娠がバレたくなかったのはわかったけど、どうしてこんな縛ったりしたの?」
「だって……だって……」
透子さんの体がまた緊張で堅くなる。
「私…杉本くんの中から消えちゃう……」
震える手で僕に縋り付きながら絞り出すような声だ。
「どういう意味なのかな」
「ずっと会えてなかったから忘れられちゃうと思って……だから忘れられなくなるくらい気持ちよくしてあげようって……」
そういうことか。
言葉足らずだけど、僕にはその言葉だけでやっと透子さんの悩みがわかった。
透子さんはずっと不安で自分に自信がなかったんだ。
顔も思い出してもらえない彼女の体質は今までどんな悲劇を彼女にもたらしたんだろうか。
彼女の一番の特徴である透明なところは大きなコンプレックスでもある。
そのことについてはわかっていたつもりなのに……
僕はそんな透子さんを愛しているというのに……
でも僕の気持ちが伝わってなければそれは同じことだ。
じゃあやることは一つだ。
「ああ……そんな……杉本くん……」
僕は縋りつく透子さんを引き剥がすと勉強机へと向かう。
引き離された透子さんは絶望に濡れた声をあげる。
そんな透子さんに「僕は大丈夫だから待ってて」と出来るだけ安心させるように優しく声をかけ、机の引き出しからスケッチブックを取り出した。
「僕ね、結構絵描くんだ」
「……?」
「いいからそこ座って」
僕は手探りで困惑したように立ち尽くす透子さんの肩を見つけ、そっと押してベッドへと座らせる。
僕はぺらぺらとスケッチブックをめくり、白紙の部分を開くとベッドに座る透子さんの横に置く。
そして手を彼女の頬に当てて位置を確認すると、じっと透子さんの目を見つめながら思いを口にする。
「僕は透子さんの顔を知ってるよ」
「! そんなの誰も私の事なんんっ?!」
僕の言葉に信じられないと激昂しかけた透子さんの後頭部へ腕を回して強引に唇を押し付ける。
透子さんの唇はプルンと震えて、瑞々しくて、高校生なのに色っぽさを感じる唇。
「あ……え……?」
「温かいね。透子さんがいる」
押し付けていた唇を離すと、僕は鉛筆をもってスケッチブックに今感じた事を描いていく。
透子さんは唖然とした様子で声を漏らしているが、今意味のある音はシャッシャッという紙をこする鉛筆の音だけだ。
僕は左手で鉛筆を、右手は透子さんの頬に当て、するりと指先でなぞる。どうやら透子さんは口が開けっ放しになっているようだ。なんだか可愛い。
「柔らかいね。透子さんがいる」
僕はそう言うとまたスケッチブックに今指先で感じた事を描いていく。
「あ……」
透子さんが口にした言葉にならない音、でも今度は只の音に意味が宿ったように聞こえる。
「凄く落ち着く香りがする。透子さんがいる」
「目は……すこしたれ目気味かな? あ、二重なんだね」
「サラッとしてて凄く綺麗な髪だね」
「鼻筋が通ってて綺麗な形してる」
透子さんがそこにいることを確かめて……スケッチブックに僕の知る透子さんを作っていく。
「出来たよ。これが僕の知ってる透子さんだ」
「これが……私……?」
「うん。思ったとおりとっても可愛いよ」
スケッチブックの端がすこしクシャリと歪む。
きっと透子さんが握りしめてるんだろう。
僕の絵を見て透子さんは何を思ってるんだろうか。
「そうなんだ……私、杉本君の中にいるんだ……」
「そうだよ、もう僕の中は透子さんだらけなんだ。」
スケッチブックには僕の知る透子さんがいた。
髪はロングに伸ばしたストレートヘアー。
目はたれ目気味だけど大きくて、唇はぽってりと厚い。
鼻筋は通っていて形がよく、まつ毛が長い。
彼女は自分に色がないと言った。
軽く放たれた、あの言葉の裏にはとても一言では表せない感情が込められてたんだと思う。
「僕、頑張るからさ、一緒にこの子を育てようよ」
「いいの?」
「うん、もちろん」
「……嬉しい……」
透子さんはそう言うとスケッチブックをめくり始めた。僕はその手を慌てて止めようとしたが、時すでに遅く、透子さんは恥ずかしそうに僕へ声をかける。
「もう……すけべ……」
「う……透子さんがエッチだからしょうがないよ」
そこには透子さんの裸体が書かれている。
以前から透子さんはどんな人なんだろうと、手で触れてすこしづつ透子さんのスケッチをしていた。
だが、僕も男だ。透子さんと肉体関係を持ってからは、透子さんの体を余すことなく書くようになっていた。
セックスした相手の体を視覚的に楽しみたいと思うのは仕方がない事なのである。
ちなみに流石に目に関しては間違えてつつくと危ないので、今日まで透子さんがたれ目気味だとはしらなかった。
「もう……絶対に人に見せちゃだめだよ」
そういう透子さんの声はどこか晴れ晴れとしていて、クスリと僕達は笑いあった。
僕は透子さんのその透き通った瞳を見ることはできないけれど、指先に感じるのはきっと悲しくなんかない綺麗な涙。
それを見ることができないのは少し残念だけど、僕の中にはちゃんと透子さんがいる。
僕はこの先、彼女を何度も見失うと思う。
高校生のバイトもしたことがない僕がお父さんになるのだ。
きっと想像もできない大変なことがあるに違いない。
でもその度に見つけよう。
だって透子さんはそこにいるんだから。
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