※この作品はR-18です。

幼馴染に貰ったオナホでオナニーしてたら幼馴染が妊娠してた話   作:タナん

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15話 ドラゴンハント(エロ無し)

 騎士が数メートルに渡り宙を舞う。

 終わった姿だけを見ればただの前蹴り、だが騎士の重厚な鎧には綺麗な足型がつき、口から血を吐き出していることからその衝撃は内臓をも破壊しているようだ。

 片足を前に突き出している男に、仇討ちだと気合いの声を上げて王国兵が斬りかかるが、腕を振り下ろす前に、顔面に男のタトゥーの入った腕が突き刺ささる。

 

 その男は戦場でありながら武器や防具はなく、布の服のみで靴すら履いていない。

 髪は短く刈り上げた銀髪で、腕や靴の履いていない素足から除くタトゥーは全身に広がっている。

 その剣速ならぬ拳速は神速。

 己の肉体のみで戦う事を宣約することで(けん)を剣と化した男。

 コンラッド = ビーチャム

 

 皇国軍と王国軍が正面からぶつかる戦場は、部隊を展開させやすい平地で行われている。

 周りには遮蔽物はなく、お互いの動きを遮るものはない。

 にもかかわらず、不利な場所へ駆けつけるため戦況を見守っていた後詰部隊の隊長が突然、首から血を吹き出して倒れた。

 少なくとも矢の届くような場所には皇国軍はいない。

 

 なぜだ? どこから?

 必死に犯人を捜すが一人、また一人と首から血を吹き出して倒れていく。

 次は自分の番か? 幻でも見ているのか?

 そんな恐怖に支配される王国兵の中を滑るように走り抜ける者がいた。

 

 顔は黒いスカーフで隠し、全身を黒い服で包んでいる。

 全身黒づくめのその男は髪まで夜のように黒く、その恰好は夜ならば闇に溶け込むだろうが、真昼間では逆に目立つはず。

 だが王国兵はその男に気付かない。気付いた時には死んでいる。

 

 数百の目のある戦場で人の意識の隙間を見つけ出し、針のような狭い意識の隙間に潜っては手に持った黒塗りの短剣で首を割く。

 剣術を磨こうが、鎧で身を隠そうが、気付かなければ殺すのは容易いこと。

 赤子の時に暗殺を生業とする一族に拾われ、暗殺者として育てられた彼は、500年続く一族の者をして最高傑作といわしめる死神。

 エルネスト = ミクモ

 

「えええあああああ!」

「やめろ! 俺は味方だ!」

 王国兵が突然奇声を上げながら味方に斬りかかる。

 何か月も共に戦場を駆け抜けた戦友が錯乱した男を抑え込もうと後ろから羽交い絞めにするが、錯乱した王国兵の体が二回りほど大きく膨らみ、人間離れした怪力で拘束から抜け出した。

 錯乱した王国兵は振り返ると、戦友の頭を鷲掴みにする。

 

「ぐぅ……あが……やめ……マイク……」

 

 最後まで狂った戦友を止めようと声をかけるが、錯乱した王国兵は止まらない。

 頭を掴む力は徐々に強くなり、ミシミシと掴んだ頭が軋む音をあげていく。

 万力のような手に掴まれた頭には指が食い込み始め、あと数秒で頭が砕けるというところで味方の王国兵が錯乱した王国兵の腕を切り落とした。

「た……助かった……」

「マイク……一体どうしちまったんだ……」

 錯乱する王国兵は彼だけではない。

 あちこちで王国兵の気が狂い、信じられないような怪力で味方を襲う事態が発生した。

 

 まるで地獄、敵の攻撃を耐えながらいつ隣にいる戦友の気が狂うかがわからない。

 大盾を横一列に並べ、槍を構えるファランクスの陣形は、隣にいる味方を盾で守り、自分もまた味方に盾で守ってもらう味方との信頼関係がなくては成しえない陣形だ。

 前からも内からも攻撃され、いつ隣の自分の命を預けている男が狂うかわからない疑心暗鬼にかられ、陣形が崩壊していく。

 その様子を遠くから嬉しそうに眺める男がいた。

 

 彼は旅の医者だ。

 世界を渡り歩き、古今東西の医学を修めた医療の腕は、長らく不治の病と言われていたグール病の特効薬を作り出し、この世界ではあり得ない切断された手足を縫い合わせて繋げてしまうほどの外科技術。

 通りすがっただけの村の人間をたちまち治療してしまうことから一部の地域では神の使いともいわれている。

 

 だが表があれば裏もある。

 彼の並外れた医療技術は膨大な屍の山の上に築かれたもの。

 実験と称して人を切り刻み、治療と称して劇薬を服用させてまた実験。

 もし旅の途中で野党などに襲われれば実験材料があっちから来たと大喜びする事だろう。

 

 彼にとってこの戦争はまるでおもちゃの山だ。

 合法的に実験できる相手が視界一杯で、戦いが終われば新しい治療方法を試せる実験材料が山のように運ばれてくる。

 王国兵の間で起こっている錯乱の原因は、前述した彼が治療法を見つけたグール病だ。

 グール病の症状は見ての通り、敵味方区別なく襲い掛かるようになり、異常な怪力を宿主に与えるというもの。

 

 彼は何十人かの皇国兵の矢に培養したグール病の病原菌を塗らせて攻撃させていた。

 矢をかすらせたもの、矢で動けない程のケガを負い、助けるために血まみれになりながら味方を担いだ者、グール病は空気感染こそしないものの、粘膜感染率100%という強い感染力を持っている。

 味方を助けた者が理性を失い、味方に殺される。

 敵とはいえ人道を無視したこの地獄を描いたのはこの狂気の医師。

 ジャスパー = ハーロウ

 

 

 鬼がいる。

 角の生えた兜は首に行くにつれて広がる変わった形をしており、顔面を覆っていない代わりに、しわがれた不気味な老人の顔をした面で目から下を覆っている。

 全身を覆う赤い鎧は、金属を重ね合わせて可動域を確保していて、動きを妨げぬように工夫が凝らされている。

 当世具足と呼ばれるその鎧は遥か東方で作られたもので、意匠が一目でこの地方の鎧とは違うことが見て取れる。

 

 その戦い様はまさに鬼。

 剣を向けられればその指を切り落とし、手に持った太刀と呼ばれる鋭い片刃の武器は皮鎧程度なら一刀のもとに切り伏せる。

 全身を鎧で包まれた重装歩兵に対しても全くひるまず、あっという間に武器を弾き、鎧の隙間に刀を通す。

 太刀を振れば振る程王国兵の腕と首が飛ぶ。

 その圧倒的な剣戟はまるで嵐。

 彼の周りでは血の雨が止むことはない。

 

 そんな彼の圧倒的な剣技に対抗する猛者が現れた。

 その猛者は全身鎧に身を包んだ重装歩兵で、鎧の隙間に刀を滑り込まれそうになれば体をずらして鎧で弾く。

 今までの王国兵は一合も斬りあうことができなかったが、この重装歩兵は10合も鬼の猛攻を耐えきった。

 だがそこで鬼の雰囲気が変わる。

 太刀を上段に構えるとフェイントも何もなく、鎧の隙間も狙うことはない、小細工抜きのただ力強い一撃を放つ。

 王国の重装歩兵はその太刀を剣で受け止めるが受け止められなかった。

 

 太刀が剣に埋まり、切断し、

 太刀が兜に埋まり、切断し、

 鎧に埋まり、切断した。

 

 その剛剣は、本来打撃武器以外の攻撃を完全に防ぐはずの鋼鉄製の鎧を断ち切り、重装歩兵の体が左右に真っ二つに分けてしまった。

 

 彼は遥か東方の国の騎士階級の者だ。

 ある日、船で戦場に向かう時に嵐に会って船が漂流、流れ着いたこの大陸で生きるため傭兵として腕を鳴らし、手柄を求めてこの戦場に現れた。

 彼は執拗に首を斬るその姿から剣の鬼、剣鬼と呼ばれた。

 カゲミツ=アラキ

 

 節くれた杖を掲げ、大地に突き刺す。

 すると杖を始点に大地が盛り上がるようにひび割れていき、目の前の王国兵へと迫っていく。

 王国兵は自分たちに迫ってくる大地の異変に気付き、背を向けて走り出すがもう遅い。

 圧倒的な速度で王国兵の元へひび割れが到達すると轟音と共に炎の壁が立ち上がり、王国兵を焼き尽くした。

 金色の靡かせた髪から覗く耳は笹の葉のように尖っており、まるで女のような美しい顔立ちはこの国では珍しい森の民、エルフだろう。

 そのエルフは、木を焼くため森の民が忌み嫌うはずの炎魔法を得意としており、森を離れて傭兵をしている森の異端児。

 マリウス=フェノウ

 

 

 その男は全身を王国の騎士用の鈍く光る皇国正規鎧に身を包み、カイトシールドとロングソードを手に持った、他の重装歩兵と見分けがつかない装備をしている。

 構えも右手に持った盾を前に構え、左手に剣を持つ皇国軍が採用している何の変哲もない剣術だ。

 

 だが王国軍は決してこの男を傷付けることはできない。

 槍がくれば盾で受け止め、ハンマーがくれば体を反らして避ける。

 隙を見て振り下ろす剣は真っすぐな力強いお手本のような太刀筋で、全て教本に乗っているような洗練された動きだ。

 

 彼が扱う皇国剣術は攻守のバランスがとれた優れた剣術ではある。

 だがそれだけに使い手は多く、当然長い戦争の歴史で培った対策が王国軍には叩き込まれているはずだ。

 でも彼には通用しない。

 特別な理由などない、只々彼の剣術があまりにも完成されているだけだ。

 自分なら勝てると踏んだ王国兵が彼に次々と攻撃を仕掛けるが、彼を傷つける事はなく、屍の山が増えるだけ。

 どこまでも正統派な皇国剣術の使い手。

 バリー = ニコール

 

 

「隊長、あっちは問題なさそうだぜ」

 弓使いのルーパッドが英雄部隊の活躍を教えてくれる。

 彼は非常に目がよく、遠く離れた弓兵が腰に下げている矢の数を数えられるほどだ。

 その目を生かして部隊の目となって戦場の様子を逐一伝えてくれる。

 今俺たち英雄部隊は二つに分かれて戦っている。 6人が右翼側へ攻撃を仕掛け、残った俺たち4人は少し後方で中央の戦場を見ている。

 

「フェリオン、あの攻撃は止められそう?」

「流石に無理ですな、体の大きさも内包したマナの量も人とは違いすぎます」

 

 人間離れした怪力無双と恐れられるフェリオンで持っても戦場で暴れまわるあの化け物を止めるのは難しいらしい。

 まあそれも当然だろう。 生き物としての格が違いすぎるのだ。人間が多少鍛えたところであの化け物にとっては誤差の範囲だということだろう。

 

「私の槍でもあの鱗は貫けそうにないですね」

「ライアリーの槍でも無理か」

 

 鉄をも穿つ槍の達人であるライアリーもあの化け物の鱗を穿つ自信はないらしい。

 そもそも彼の槍は鋼鉄製で、作ったのが国一番の鍛冶師だろうと、それに見合う使い手だろうと、化け物の鱗より弱い素材では傷一つつける事などできるはずがない。

 

「本当、どうやってあんな竜を手懐けたんだろうか」

 

 俺たち4人の視線の先の化け物は、全身を赤い鱗に覆われた全高10メートルはある巨大な竜だ。

 大きな翼で空を駆け、角を持った頭に起用に人を掴む発達した前足、口からは鉄をも溶かす劫火を吐くその竜はレッドドラゴンに間違いない。

 レッドドラゴンはいきなり皇国兵のど真ん中に降り立ち、一方的な蹂躙を始めた。

 王国兵はその姿を見て恐怖するどころか、喜びの声を上げて攻めてくることからレッドドラゴンは王国兵の味方をしているようだ。

 

 尻尾をふるえば何十という兵の体がバラバラになり、前足で兵を捕まると口を大きく開けスナック菓子のように食べてしまう。

 肉も鉄も関係なく飲み込んでしまうとは途轍もない雑食性だ。

 物語でドラゴンの胃の中に自分から入って中から攻撃する話があるが、剣だろうと丸呑みしてしまう現実のドラゴンに対して有効だとは思えない。

 

 幾人もの兵が剣や矢で攻撃するが全て硬い鱗に弾かれて全く効いている様子がない。

 動きも巨体に似合わず俊敏だ。

 馬で走る騎士にもあっという間に4本足で駆け抜けて捉えてしまう。

 

 俺たち4人は今からあのレッドドラゴンを倒さなければならない。

 そのために他の6人と別れてこの4人でレッドドラゴンをどうやって倒すか観察しているが、見れば見る程、倒すのが不可能に思えてくる。

 できれば逃げ出したい相手だが、今や皇国軍の希望となっている俺たちが逃げるわけにはいかない。

 今もレッドドラゴンに意味のない攻撃を皇国軍が仕掛けているのは、全て俺たちが奴を倒すための情報収集するためなのだ。

 

 兵は俺たちが仇を取ってくれると信じて戦っている。

 死ぬとわかっていても家族のため、仲間のため、泣き叫びながら命を散らしている。

 すでに俺たちのために何百という犠牲が出ているのだ、今更逃げるなんてできるわけがない。

 

 今はレッドドラゴンは皇国兵を食べて満足したのか、それとも蹂躙に飽きたのか、空を飛んで地上に向かって火を吐いている。

 こうなればもう人間には手も足も出ない。

 火の地上に届かせるために飛行高度は20メートルほどの低空を飛んでいるが、その高さは人にとってはあまりにも高い。

 だが俺たちならギリギリやれそうだ。

 

「算段が付いた、そろそろ行こうか」

「隊長ならやれんのか?」

「届けば斬れる」

 

 俺たちは空を飛ぶレッドドラゴンへ向かって走り出した。

 全身全霊の全力疾走、こうしている間にも俺たちのために皇国兵が犠牲になっている、これ以上の犠牲を出さないためにも時間をかけるわけにはいかな。幸いにもレッドドラゴンはこっちへ向かって飛んできている。

 

「フェリオン!」

「応!」

 

 レッドドラゴンまであと100メートルのところで、俺は先行させていた怪力無双のフェリオンの背に向かって名を叫ぶ。フェリオンは全力疾走から急停止を行い振り返って俺たちの方を向いた。

 フェリオンは腰を少し落とし、手の平を上に向けて太ももの前に構えると、俺とライアリーはそのフェリオンの手を全力で踏みつけた。

 

「ふん!」

 フェリオンは俺とライアリーの足を掌で受けると全力で上空へ投げ飛ばした。

 歯を食いしばり盛り上がった筋肉で加えられた上方向の力は、地面にその巨体を支える足をめり込ませながら、二人の大の大人の横向きの力を上へと変換することに成功した。

 その人間離れしたフェリオンの膂力と、極限まで鍛えぬかれた俺たちの脚力は一気に10メートルもの跳躍に成功した。

 

「ルーパッド!」

「しくじんなよ!」

 

 ルーパッドは上空のレッドドラゴンへ向けて矢を射かけた。

 普通の弓兵二人がかりでやっと引ける程の剛弓から放たれた矢は、重力に逆らい上空のレッドドラゴンへ向けて飛んでいく。

 彼が狙うのは唯一効果が見込めそうな目だ。

 弓の名手である彼の矢は、寸分たがわずレッドドラゴンの目へと吸い込まれていくが、顔を反らされて弾かれてしまう。

 だが彼は速射の腕も尋常ではない。 既に5本の矢がレッドドラゴンへと放たれていて、顔を反らした後の目へ向かって矢が殺到する。

 だがレッドドラゴンはそれを瞼を閉じることで弾いてしまう。

 狙い通りだ。レッドドラゴンは顔をそむけたことで、このままでは俺たちを焼くはずだった炎は横に反れた上、ややバランスを崩したレッドドラゴンは飛行高度を18メートルまで落としている。

 

「ライアリー!」

「頼みましたよ!」

 

 ライアリーは空中で手に持った槍を横に突き出すと、俺はその槍の上に足を乗せる。ライアリーはそのまま俺ごと槍を上空へ向かって振り回した。

 俺は空中で得る事の出来ない足場を手に入れ更に跳躍する。これで高さは15メートルだ。

 俺はいつものように水の剣を3メートル伸ばす。レッドドラゴンの高度は18メートル程、思った通りギリギリ届いた。

 俺は水の剣をレッドドラゴンの翼の根本へ向けて軽く振るう。全力の一撃は必要ない。これはあくまで魔法なのだから。それより空中という慣れない環境で姿勢を崩して空振りしない事だけに集中する。

 

 水の剣は研磨材を高速でぶつけて相手を削る魔法だ。

 俺が普段使っている研磨剤は鉄の粉末、レッドドラゴンの鱗より柔らかい物質、確実に効果がないだろう。

 だから今回は、

 

「とっておきだ」

 

 俺は大地に引き寄せられながらレッドドラゴンの様子を見る。

 流石にレッドドラゴンの鱗の硬さなど、実験材料にされた記録がなく、わかるはずがない。

 もし今使った【とっておき】がレッドドラゴンの鱗より柔らかければ、このあと俺たちは炎で焼け死ぬしかない。

 だが賭けには勝ったようだ。視界の中で小さくなっていくレッドドラゴンの翼から血が噴き出した。

 

「おっと!うまく行きましたね隊長」

「ああ、ほっとしたよ」

 

 俺はフェリオンの逞しい腕に受け止められると、すぐに地響きと轟音が聞こえてきた。

 フェリオンに降ろされ、俺は自分の足で立つと、空を飛ぶ勢いのまま落ちたレッドドラゴンが少し離れたところに墜落したのが見えた。

 どうやら流石のレッドドラゴンもその巨体で宙から叩き落されるとこたえるようで、立ち上がろうとしても脳震盪を起こしたのかフラフラとして何度も崩れ落ちている。

 

 俺は地面に這いつくばるレッドドラゴンの傍まで近づくと、再び水の剣を振り上げた。

 その時、レッドドラゴンと目が合った。

 その目には絶対的強者としての威厳はなく、恐怖におびえた小動物が命乞いをする目をしていた。

 竜は非常に頭のいい種族だ。人の言葉を話し、必要であれば自分の巣に家具まで作ってしまうほど。

 それゆえにその目は酷く恐怖の色を俺に伝えてくる。捕食者と被捕食者が入れ替わった瞬間だった。その時、隣に立つ俺にレッドドラゴンが初めて言葉を発した。

 

『マテ……』

 

 俺は水の剣を振り下ろした。もし言葉を発することを許して開いた口から炎を出されたら終わりだ。

 あくまでレッドドラゴンが生物として上位者なのだ。下位の生物である俺が油断するわけにはいかない。

 ジュイイイィ!と金属がひしゃげる音に似た掘削音がレッドドラゴンの首に巻かれた水の首輪から鳴る。

 レッドドラゴンは必死に水の首輪を掻きむしるが、効果はない。

 

 俺が研磨剤として用いたとっておきは金剛石、つまりダイアモンドという宝石を砕いたものだ。

 父さんが戦争に行くにあたって商会の財力にものを言わせて用意してくれた。

 非常に貴重で高価な宝石で、砕けやすいがその硬さはオリハルコンをも凌駕する。

 

 砕けやすく硬いこの宝石は採算度外視するのであれば俺の魔法にはうってつけだ。

 立場を悪用して商会の金でダイアモンドを買いあさったため、商会がすこし傾いたそうだが、そのおかげで生き残ることができた。本当に父さんには感謝だ。

 そういえば父さんの目の前でハンマーでダイアモンドを砕いた時は何とも言えない顔をしていたな。

 

 そんなことを考えているうちにレッドドラゴンの首がどすんと落ちた。巨大な体をから噴き出る血はあたり一面に降り注ぎ、逃げまどっていた皇国兵に降り注ぐ。

 血の雨に濡れたことで、信じられないものを見たような顔で呆けていた皇国兵がこれが現実のものだと理解したようだ。

 

「やった!やったぞ!英雄部隊が!レイがレッドドラゴンを倒した!」

「ありがとう……あいつの仇をとってくれて……」

「信じられない……竜を倒すなんて……」

「見たか王国のクソ野郎共!こっちには竜殺しのレイがいるんだ!」

 

 皇国兵が次々に俺たちへの賞賛の言葉を叫ぶ。

 その声は次々と兵たちに伝搬していき、程なくして戦場中に響き渡った。

 竜殺しの英雄が味方にいることで勢いづいた皇国兵が王国兵を押し始める。

 長く続いた戦争で、落ちていた士気がここにきて最高潮になったようだ。

 

 俺は3人を引き連れて前線へ走り出した。

 俺には喜んでいる暇はない。この竜殺しは何百という命の上に成り立ったものだ。

 命の価値が途轍もなく低い戦場では忘れがちだが、彼ら一人一人に数十年の命の重みがある。

 それを二十年も生きていない若造のために、犠牲になってくれた。

 彼らには俺が知らない多くの経験を重ねてきた歴史があるはずだ。

 

 その歴史の重みに俺のまだ軽い歴史が潰されそうになるが、それは周りに横たわる黒い塊のためにも許されることではない。

 俺はこの重みに潰されてはいけない。この重みは託されたもの。錘にするのではなく、礎に。

 それが英雄を目指した俺の責任だ。




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