「………とは、言ったものの」
呟きながら顔を下に向ける。するとそこでは、先ほどまでの怒張はなんだったのかと言わんばかりに陰茎が萎みきっていた。
「この様では、その中に入れるのも厳しそうだ………それに、リズの方も」
同様に彼女の下腹部を見やる。
あんなに溢れ零れていた愛液は一旦その分泌が止まっていた。いや、もしかしたら中ではまだ続いているかもしれないのだが、少なくとも外部に漏れ出ていたりという様子はない。
湿っぽい話をした代わりに性器の湿りは抜けていたようだった。
「……どうしましょう、クラヴィスさん……」
「………うーん……」
二人して考え込む。
実のところ、もう一度ここまでと同じ流れを汲んで刺激し合うのは厳しい。というのも、私の体力が既にかなり消耗されてしまっているからだ。ついでにリズの方もきっとそう……かといって、じゃあ何もしないのかと言えばそういうわけにもいかない。
ただでさえリズは、日がな性器を活性化させる薬を塗りいろいろと手を尽くしての状態なのだ。愛液はきっと潤滑油代わりにもなるだろうし、多く分泌されているに越したことはないのだ。
なればやはり、
「………そうか。お互いにやればいいのか」
先ほどまでのように順繰りにやるのではない。
ここで思い出すのは、かつて万全な性行為を行うための調査をした時に閲覧したとあるサイト。
そこでは「性行為前に行う様々な前戯」という題目で記事がまとめられており、自分たちには全く想像がつかないようなものも書かれていたのだが、その中に丁度今の状況にぴったりなものがあることを思い出したのだ。
……が、しかし。
「……リズ。少しやってみたいことがあるのだが」
「……はい、何でしょう?」
基本的に私との会話のときは、リズは全く不平や不満を漏らしたことがない。それはもちろん彼女の精神性から来るものであるし、私たちの間にそういうものは起こり得ないという信頼から来ている。
……流石に羞恥心を持った彼女は少し驚くだろうか。
「……どう説明したらいいものかな………」
どういう体勢でやるかを頭の中で思い出しつつ、うまく言葉に出来るようにイメージしていく。
その間にチラリとリズの方を盗み見る。すると彼女は、ぺたんと女の子座りになりながら
「………」
思考が中断され、しなやかで美しく、しかし病的に細く白い肢体に見惚れてしまう。
______随一と言っていいほどの毛量を誇るウェーブがかった金髪は、部屋の蛍光灯を受けてまばゆく輝いている。
______汚れを知らないような青い瞳は、ただこちらに純粋な感情と色を向けてくる。
改めて彼女の美しさを認識し、顔に熱が集まるのをはっきりと知覚した。少しだけ気恥ずかしくなったが、それ以上に私の目はあるものに吸い寄せられて……っと、早く考えないといけない。
気力を振り絞って彼女から目をそらし……やがて説明の手順が固まってから口を開いた。
「……とりあえず、四つん這いになってくれ」
「……?分かりました」
快く____という訳ではないにしろ、何の疑いもない受け答えをした彼女は、座り込んでいた体勢から上体を傾け、私に向かって四つん這いになった。
「………う、ぉ…………」
瞬間、思わず感嘆の___あるいはそれ以上の感情が、呻きとなって湧き出てしまう。
その原因は、今目の前に拡げられている光景。自分で指示したはずの光景にある。
なんというか……その、端的に言えば。
四つん這いになったリズから漂う隠しきれない従順さや獣のような体勢、恥ずかしそうにしながらもしっかりとやってくれるその姿に……どうしようもなく
それでもどうにかそれを抑えつけて、私もこれからすることに適した形になるように体勢を整えた。
すなわち、仰向けに寝っ転がったのである。
何も隠さずに、体の横に両腕を放り出して、自然体でベッドに倒れ込んだ。
「っ……」
息を呑む音が聞こえた。誰のものかは言うまでもない。
きっと彼女には、四つん這いになったことでより私の局部が眼前に見えてしまっているだろう。
「リズ。私の上に、
「……っ、それ…………は、一体どのような?」
「……靴を重ねるときのように、私の頭の上にリズの性器が、君の顔に私の性器が来るように重なるのさ……それで、互いのモノを同時に刺激し合う」
すっかり縮んでしまったそれを指さしながら告げる。
それこそがこの状況を解決する方法____いわゆる、“シックスナイン”と呼ばれる行為だった。
無論、知識だけで判断したのだが。
「……そのようなものが、あるのですか………っ?」
見れば、彼女は僅かに目を見開いて動揺している。どのような格好になるのかを想像してしまったのだろうか。
……かく言う私も、漠然とした羞恥が心の裏から染み出してしまっている。何故なら今から私たちがやろうとしていることは、互いの一番大事な部分を直に見られるようなとんでもない状態になるのだから。
「……ああ。やってくれるか?」
けれど、きっと彼女は。
「………分かり、ました………っ」
それが必要であるなら____私の言葉なら、素直に従ってくれるのだ。
普段は気にならないその無垢さが、今だけは却っていやらしく思えた。
「ぅ……これ、あの」
「………言いたいことは分かる。しかしやるしかないんだ……」
結果。
思いの外おっぴろげな体勢が非常に恥ずかしかった。
「……リズのヴァギナは、小さくてかわいいな」
「……それは、褒められているのでしょうか………っ」
誉め言葉のつもりだ。
本当に目と鼻の先にある彼女の生殖器。過剰分泌され続けた粘液のせいか艶々と光っているそこは、鼻につくほどの濃い匂いを放っている。
ガードの固いぴっちりと閉じていたはずの大陰唇は今や見る影もなく、桜色のビラビラやその奥の膣口さえだらしく口を開いてしまっていた。受け入れ準備の整った穴からは時折タラリと銀糸が垂れ落ちる。
その上には、本来なら排泄するためにあるはずの穴____肛門さえ見えていた。
力が入っているのか、リズミカルにキュッ、キュッと収縮している。普段彼女でさえ見たことがないだろうその部分を見てしまっている背徳感が背筋を駆け抜けた。
そして何より、そんなにも卑猥な部分が私に対して
思わずじっと見つめてしまうほど非現実的な光景。遅れて、先ほど自分のしたこと……膣孔に自分の舌を挿して舐め回してしまった、ということを思い出してしまう。
当然、下腹部にぎゅんと血流が集まり、一瞬にしてペニスが最大硬度になった。
「きゃ………っ」
「っ……!」
ビクッ、とわずかに体全体をのけ反らせるリズ。その拍子に白く丸い彼女の臀部が少し迫ってきて、その詳細な濡れ具合をより間近で確認する羽目になってしまう。併せて、むせかえる生臭さも濃度が増した。
「う……あ………」
視覚と嗅覚、両方で彼女の淫らな姿を脳に焼き付ける。情報と興奮の暴力に私の脳はオーバーフローを起こし、酩酊した時のような感覚に陥ってしまう。
それはつまり、単純な思考さえもままならなくなってしまったということだ。
「……ちゅっ」
「はぅん……っ?!」
____果汁に塗れたその果肉を貪る他に、選択肢はなかった。
無意識に顔を近づけさせ、再度、小陰唇に口づけをする。
口淫しやすいように彼女の骨盤辺りを両手で押さえつけて、ぷっくりと膨れていた陰核のギリギリを責めるように少し上に軽く唇を触れさせた。
「あ、や、急に……んくぅっ」
「ちゅ、ぺろっ、ふぅっ、すん、すん………くちゅ」
「んやっ、ん、ひぅ、ぁっ……!」
ちょうど陰核に当たるか当たらないかくらいの付け根の辺りを舌先でくすぐる。トントンつつき、小刻みに舐め、時折その下にある性感帯を擦りに行く。弄ぶ度にふにふにとした柔らかい感触がして、まるで食肉を口にしているようだ。
「ひぃんっ……私、も………あぐっ」
「うおおっ?!」
突如下腹部を襲った生温かい何か。
それが何かと思ってそちらの方を見やると、完全にやる気と固さを取り戻した陰茎の上半分がリズの顔に埋まっているのを確認した。
亀頭が包まれている湿った温もりは、彼女の口内に取り込まれていたことによるもの。
「はぁむ、ちゅる、んふっ、じゅりゅ、ん、ふぅぅ……」
「う、ぐ………ちゅぷ、れろ、んちゅ……っ」
「んはぅっ、ぅっ、ふ、くぅ……んじゅぷ、はぶぅ………っ」
射精後によりひと際敏感になっている亀頭ごと湿潤した口内に迎えられ、そのまま舌を使って集中的に責められてしまう。ひどく愛おしそうに鈴口を撫でられ、飢餓状態からご馳走にありつくように一心不乱に肉棒を咥えられてしまっている。
そしてその度に……彼女が私のモノへ愛撫する度に、目の前にある膣穴からドロリ、ドロリと塊のような愛液が零れ落ちてくるのだ。
フェラチオで自らも快楽を得ている事実を目の当たりにして、
「んふぅっ?!んぐ、ぷはぁっ………ちゅ、えぅ…………あんっ、ちゅる、ん、ふぅ、くひぃん……っ!」
「ぅあっ……」
かと思えば彼女は一旦上の口からペニスと取り出し、そのまま可愛らしく外表に吸い付き始めた。
血管の浮いた茎にわざとらしいリップ音を立て、ちろちろと舌先でくすぐるように舐められる。亀頭にとろりとした感触を覚えてそちらを見やれば、ローアングルで見える彼女の唇から桜色の舌が顔を出し、亀頭へ銀糸を掛けた。
「う、おお……!」
_____よく見ると、私からは彼女の性器や顔だけではない。重力で少し膨らみが増してその頂点が硬く尖っている、控えめな下乳まで丸見えだ。彼女が頭を動かすのに合わせて、少しだけ乳房がふるふると揺れる。正直、あまりにも卑猥すぎてペニスの勃ち具合がそろそろ危険域になってきている。
「待て、リズ…………少し待ってくれっ!」
「んぶぁ………は、ぇ?」
もう我慢の限界かというラインになったところで、慌てて彼女に“待った”を掛けた。
「……どうして、ですか?どうして、お止めなさるのですか………っ?」
上体を上げてこちらを向いたリズの顔は、おもちゃを取り上げられた赤子のような悲しい表情を浮かべていた。
少し……かなり心苦しい。
「た……互いに刺激し合って、挿入に適した状態にするのが目的のはずだ。今2人とも絶頂を迎えては、また疲れてしまう……だろう?」
「………私は、まだ舐め足りませんのに…………」
「っ……!」
その苦しさをおくびにも出さず、いやちょっとだけ滲みだしながら説明をすると、しぶしぶ彼女は私の上から退くと同時にとんでもなく淫靡な言葉を吐くものだから、私の心の臓が飛び跳ねるのをしっかりと感じ取った。
「っふー…………さて」
「……もう、理解していますよ………クラヴィスさん」
「………ああ。横になってくれ」
私は正座で。
彼女は私の言葉のまま、ベッドにぽすんと横たわる。
何故か何の気なしに彼女の頭へ視線を向けると、彼女もまた両手をへその位置で重ねながら私の方を向いていた。とっくにいろいろと限界なはずの彼女の顔は、最大限に朱に染まっていながらもどこか安らぎさえ感じる。
それは恐らく、この性に塗れた空間には似合わない
「………リズ」
「……はい」
余計な会話もない。
ただ名前を呼ぶと、彼女は明後日の方向に目をそらしながらも、三角に立てられていた両脚をそっと自らがばりと開いた。
そこに見えるは、ついさっきまで至近距離にあった受け入れ準備ばっちりの生殖器。分泌液に塗れ、必要以上に部屋の灯りを反射している柔肉の花弁だ。
ちょうどそれにぴったり重なるように、私も姿勢を変える。
シーツを多少引きずって移動し、わずかに震えていた両ひざを掴んで支えとした。
「ゃ………っ」
か細く声を漏らすリズ。その理由は、そっぽを向いて眉をひそめている表情によく表れていた。
あまりにも彼女自身の感情を色濃く反映した様子に、やはり思わず笑みが漏れてしまう。
「……やっぱり、君は感情表現が随分と豊かになったな。本当に、嬉しい……」
「……私だけではありません……貴方も、抑圧や重圧が消えて素直になったように思えます」
「……そうかな。いや、そうかもしれないね」
私たちは似た者同士。
同じ記憶喪失で、同じ籠の中の鳥。
それでも、そんな彼女と確かに交流し、言葉を交わし、絆を育んだ。
きっかけはどうであれ、それがあってこそ今の私たちがいるのは紛れもない事実。
「_____リズ。挿れるよ」
「_____来てください、クラヴィスさん」
その極致にある行為が、今から果たされようとしていた。
あと数話で開花編(実質本編)も終わりそう。終わったら深窓編が待っている。
とはいえ最近はすごく忙しいのですが。